第148話 救済の闖入者
二回連続で遅れてごめんなさい!次は遅れないように致します・・・。お納めください・・・。
「グギャオァァァァ!!!!!」
ボスの部屋にヤマタノオロチの叫び声が響き渡る。その声は苦しそうで、何より衝撃を受けている声だった。
「な、なにが・・・?」
俺は今目の前で起きたことが分からず動転してしまう。俺の右側には本来破壊出来ないはずのダンジョンの壁に大きな穴ができていた。
ふと、視線を感じてその方向を向いてみると、そこには銀色に光る体に6本の尾とその先にそれぞれ小さな歯車を携えた狐がこちらを睥睨していた。
「は・・・?いつの間に・・・」
白銀の煌毛を携えた狐は、しかして所々に赤い血が混じっている。綺麗に伸びていたはずの爪は割れ、口からは血を垂れ流し、息は絶え絶えだ。
「キュフイ!」
俺が銀狐の存在に気づくと、側に咥えていたヤマタノオロチの首を投げ捨てて、ゆっくりとこちらに忍び寄ってきた。
「キュルキュル・・・、キュフゥゥ」
その姿はまるで何かに警戒しているような、というよりかはこちらに対して遠慮しているような感じだ。俺から一切視線を逸らさず、伺いを立てるようにゆっくりと寄ってくる。
「いいよ、こっち来な」
「キュフ?!キュルル!!」
俺は銀狐に対して手招きをする。おそらく何かしらの魔物であるはずなのに、なぜかこの狐に対しては警戒心、というか敵対心が湧き上がらなかった。
そのため、つい近所のペットに声をかけるような感じで声をかけてしまったが、それが嬉しかったのか、それまでどこか慎重だった銀狐は俺に飛びかかってきた。
「いてっ!やめ、やめろって。まだ怪我してるんだから・・・」
「キュルル!キュルルフ!!」
俺に飛びかかってきた銀狐は、その喜びを示すように俺の顔を舐め回す。不思議とよだれは無い生物なのか顔がベタつくようなことは無かったが、少しくすぐったかった。
「ん・・・、お前・・・」
そのまま俺の顔だけでなく体中を舐め回す銀狐に、押し除ける体力のなかった俺はされるがままになっていたが、ふと体に絶えず走っていた熱が消えていることに気がついた。
そうして自分の体を見てみると、地面のヤスリによって作られた傷はおろか、先ほどまで絶望しかけていたゾンビのような足も綺麗に治っていた。
「キュ!!」
銀狐は『褒めて!』と言わんばかりに俺に頭を擦り付けてくる。こちらの考えていることが分かるのか、それとも言葉がわかるのかは不明だが、とりあえずこいつのおかげで傷が治ったことは確かだ。俺は擦り付けてくる頭を撫でくりまわした。
「ギィリャァァァァァァァァ!!!!」
「っ?!」
するとその瞬間、怒りに狂ったヤマタノオロチがその怒りに任せて俺と銀狐に向かって魔法と首を寄越す。だが、不思議ともうあの全てを諦めるような感覚はなかった。
「キュアウ!」
ヤマタノオロチの怒りの声を聞いた銀狐は俺を守るようにヤマタノオロチに立ち向かう。普通なら俺を助けてくれた銀狐に危ない目は遭わせたくないため、退くように言わないといけない。
体格もとぐろを巻いているだけで10m近くある敵に対して、銀狐の大きさは横になった成人男性程度。とてもではないが敵う相手ではないはずなのだ。
けれど、そんな傲慢な気持ちは一切湧かなかった。それは先ほどのヤマタノオロチの首を一瞬で噛み切った姿を見ているからだろうか。
もちろん、ヤマタノオロチも一筋縄で敵う相手ではない。すでに銀狐に噛み切られた首は再生している。おそらく魔力もある程度回復して、万全には届かないもののそれなりに戦えるようにはしているのだろう。
ーー勝負は一瞬だった。
瞬きと同時にその姿を消した銀狐は次の瞬間、ヤマタノオロチの首を3本噛みちぎり、2本を割れた爪で裂きちぎり、残りの3本を尾の歯車を使って捻じちぎった。
「ィギィァァァァアアアア!!!!!!」
「キャフル!」
首を全てちぎられたヤマタノオロチは大音声で断末魔の雄叫びをあげる。しかし、それも長くは続かず徐々に弱々しくなったその声とともにズシーン!と地面を揺らして倒れ伏した。
「・・・終わった、のか?」
圧倒的だった。
俺の刀では傷をつけることさえ叶わなかったあの堅固な鱗を割れた爪で切り裂くなど、どれほど切れ味が良いのか想像もつかない。さらに、その動きも速く、強くなったと思っていた俺でさえ姿を追うことすら出来なかった。
「あれは・・・」
そうして気付いたのだが、ヤマタノオロチの体の一部が地面に埋まっていた。しかもその一部と言っても結構な大きさで、数ある首よりも太い部位が埋まっていた。
俺は少し力が戻った体に鞭打って立ち上がる。すでにヤマタノオロチが息絶えたことを表しているのか、地面のヤスリは消えていた。
「キュフ?」
「これはどこに繋がってるんだ?」
これもダンジョンの仕様なのか、それとも銀狐のように強大な力さえあればダンジョンの壁など容易く破壊できるのか分からないが、ヤマタノオロチの体の一部は地面の中からどこかへ伸びているようだった。
「ギャフギャフ!」
「お、おいおい!お前もう爪割れてるのに、そんな無茶なことしなくても!」
俺の考えていることを読んだのか、隣に立っていた銀狐が割れた爪を使って、埋まった地面を掘っていた。慌てた俺はそれを止めようとしたが、地面はどんどんと掘り進められ、その道先を示していく。
「これは・・・」
その繋がっていく先を見ると、それは先ほど俺が求めた刀の刺さる台座に続いていた。
「そういうことか・・・」
俺は台座までめくり上げられた地面の下を見て、ようやく謎が解けた。
なぜ、あそこまでこの台座に触れられることを嫌ったのか。そもそもなぜあそこからヤマタノオロチは頑なに動こうとしなかったのか。
結果から言うと、台座の下には9本目の首が埋まっていた。そしてその頭に刀が突き刺さっている。さらに、本体から伸びたこの9本目の首には動けないように一定間隔で、枷が敷かれていた。
これだけならむしろこの仕掛けを解いてもらいたがると思うのだが、どうやらこの台座から魔力を補給していたらしい。刀に触れるとそれだけで魔力が三割ほど回復した。
おそらくこの刀から魔力を補給していたのだろう。だからあれほどまでに早い回復力や堅固な鎧、数多の魔法を使うことが出来たのだ。
そんなことを考えていると、後ろでのっそりと巨体が動いた。振り返るとヤマタノオロチがその強靭な生命力でもって自らの首を再度、生やそうとしているではないか。
「キュグルル!!」
それを見た銀狐が威嚇し戦闘態勢に入る。しかし、俺に焦りはなかった。
「だって、なぁ?」
カラクリは見えた。そして、そのタネは今俺の手の届く位置にあるのだ。
俺はゆっくりと手を伸ばし刀の柄を握る。するとその気配を察したのかヤマタノオロチがその行動に怯えるように、諫めるように体を揺らす。
「じゃあな、強かったよ。こいつがいなきゃ俺は確実に殺されていた。でも、勝ちは勝ち。これで、終わりだ」
聞こえているかは分からない。けれど、意志は伝わった筈だ。なぜなら体の揺れが大きくなったから。
俺は柄を握る手に力を加える。そして、一気に引き抜いた。
「グキャアアア!!ギィリャアアガアァァ!!!」
封印という名の楽園から切り離されたヤマタノオロチの最後の首が台座から離れて暴れ回る。どうやら最後の首が“神聖魔法”を司っていたようで、懸命にちぎられた首を再生させようとする。
しかし、魔力タンクの役割を担っていた刀を失ったせいか、上手くいっていない。そもそも“神聖魔法”では傷の再生までは不可能なはずだ。魔力タンクがあったとしても難しいだろう。
俺はゆっくりと最期の首に近づく。するとそれだけで9本目の首は動きを止めた。その目は救いを訴えているようにも見えるが、俺の頭に情け容赦の文字はない。
「ふっ!!」
「ギィィィィィ!!!!」
短い呼気と共に刀を袈裟斬りに振り下ろす。そうしてヤマタノオロチは金属を擦り合わせるような不快な声を上げてその命を落とした。
『経験値を獲得しました。スキル:簒奪により取得経験値が半減します。スキル:簒奪の効果により、スキル:壊毒旋律 壊刃毒牙 七天魔法 超再生 魔鱗堅鎧 豪炎魔法 極氷魔法 雷嵐魔法 自然魔法 大地魔法 神聖魔法 暗黒魔法 並列思考 を獲得しました』
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