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黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
第6章

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第149話 新たなる相棒の銘は

「へぇ」


 俺は頭の中に久方ぶりに響いた声に感嘆を漏らす。キノの時、あれだけ俺を弄んだくせによく性懲りもなく出てきたものだ。


 だが、どうにかしようとしてもどこからこの声を俺に向けて送信しているのか不明な以上、手を打つこともできない。


 それに今はそれ以外に考えなくてはならないことがある。俺はこの『アナウンス』は一旦頭の隅に寄せた。するとそのタイミングを見計らっていたかのように銀狐が、甘えたいのか頭をすり寄せてきた。


「よしよし、お前はかわいいな。ありがとな、助かったよ。あと、最期を横取りしてすまなかったな」

「キュフル!!」


 俺は改めて銀狐に感謝と謝罪を伝えると、『気にするな』と言わんばかりに首を左右に激しく振った。やはり、こいつはこちらの言葉を解している。


「なぁ、お前はいったいーー」

「キュ?!?!」


 魔族ではないがただの魔物でもない。これまで人語を解する魔物など会ったことなかった。ならば、何かしら特殊な魔物だろう。俺はそれを尋ねようとした瞬間、何かに呼ばれたように銀狐が彼方を振り向く。


「キュ!!キュガーーー!!!」

「ど、どうした?」


 そしてその方向へ向けて鳴いたかと思うと牙を剥き出しにして怒りを露わにした。俺は突然の出来事に驚くが、銀狐はこちらを気にする様子もない。


「キュ・・・、キュフューー・・・」


 そして一頻り怒りを撒き散らすと落ち着いたのか、俺の方へと向いて頭を下げながら俺の頬を舐めた。それは俺に対する申し訳なさを表しているようで、名残惜しそうにペロペロと俺の頬を舐める。


「なぁ、どうしたんだよ?」

「キュ!!」


 そうして満足したのか、それとも急がなくては行けないのか俺の問いには反応せず、修復しかけだった自分で壊した壁の穴から姿を消した。


「なんだったんだよ・・・」


 まさしく置いてけぼりになってしまった俺は手持ち無沙汰になり、無意識に手に持った刀を鞘にしまおうとして、この刀に鞘がないことに気付いた。


「うーん、ないな。どうしよう、コレ」


 そうして少し台座の周りを確認してみたものの鞘と思われるものはなく、かといってコレを覆うような物も見当たらない。どうしようもなく、とりあえず剥き刃のまま歩こうかと思った瞬間、黒っぽい糸のようなものが刀の刃の部分に纏わり付いた。


 ソレはギュルギュルと微かに音を立てながら瞬く間に刀を視界から隠していく。そして数秒もしないうちに深い紺色をした鞘が刀を覆っていた。



 名前:久裟薙剣(クサナギノツルギ)

 Gr:伝説級



 周囲の魔力を吸収し蓄えるという性能を持つ刀。その魔力は触れるものに譲渡することも斬撃に纏わせて放つことも可能。また、その魔力を用いた自動修復機能も有する。



「これは・・・また、すごいな」


 俺は確認した刀の性能を見てほぅ、と息を漏らす。ボスの名前がアレだったのだ。刀の名前については想像がついていた。しかし、俺の知っている漢字ではなかったが。


 それよりも注目すべきは能力だ。魔力タンクとしての役割は知っていた。何しろあのヤマタノオロチも利用していたものだし、さらに言えば今持っている俺の魔力もすでに全快近くまで回復している。


 それだけでもとんでもない能力であるのに、さらにその魔力は譲渡だけでなく、多種多様な使い道があるという。ちょうど俺の刀も先の戦いで失っていたところだ。


 誠に剣の道を歩む者ならころころと刀を取り替えるなと怒られそうなものだが、俺はその道を進んでいた者ではない。前世でも剣道を習っていたわけでもないしな。


「さてと」


 俺はお誂え向きに鞘ができた時に、一緒に出来た肩紐を使って大太刀を背に背負う。そして、どこかに消えた狐を少し想いを馳せ、次の階層へと続くであろう階段を降りた。







 ーーーーーーーーーーーーーーー







「ちょっとグルニオラ!!せっかくいいところだったのに!!あのカイトが!!初めて妾(わたし)に!!可愛いって!!言ってくれたのに!!なんで邪魔するのよ!!」

「悪かった。だが、現界の時間も迫ってた。ああでもしければ、君は一生あそこにいただろう?」

「当然でしょ?!ああああカイトに会えたカイトにせっかく会えたのにもっとおしゃべりしたかったでもかっこよかった傷だらけだったけど生きててくれてよかった誰よカイトにーー」

「ふぅ。これで彼女も少しは気が晴れただろう。ウルティア、後は頼めるだろうか?」

「いいわよ、恋する乙女は見てて飽きないもの」

「では、私は他に仕事があるので、この辺りで失礼させてもらう」

「はぁーい」


 グルニオラは白い部屋を出てどこかへ行ってしまった。それを見送ったあたしは未だトリップしているカナディアを眺めながら右手に持った酒を傾ける。


「女の子がトリップしてる姿はいい肴だわぁ。でも、そろそろ合議が始まるから戻さないと。もったいないわぁ」

「ああカイトカイトカイトカイト待っててね今妾(わたし)がーー」

「カナちゃぁーん?そろそろ戻っておいでー」

「・・・え?ウルちゃん?」

「あ、戻ってきた。もうすぐ合議が始まるからおいでー」

「あ、もうそんな時間なの?・・・わかったわ。行こ」


 あたしは髪を振り乱してトリップしていたカナディアを連れて、この部屋から唯一繋がる扉を潜り大広間に出る。そこには12個の椅子とその中心には大きな円卓が備えられてあった。そしてそこにはすでに9人の人物が座っている。


「ウルティア、カナディア、ようやく来たか。席についてくれ、そろそろ下界に関しての新たな関わり方を決める合議を始める」

「あれ?あの子は?」

「いない。アレはいつも通りだ。放っておけ」

「はぁーい、行きましょカナちゃん」

「よし、これで揃ったな。では、始める」


 そう言って上座に立つ男は全体を1人ずつ見回す。


 その男の名はレティクル・シュバルツ。白い瞳以外全てが黒いその男は透き通った声で開会の音頭を取った。

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