↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

158/390

第145話 八岐大蛇『前編』

「ギィュシャァァァァァ!!」

「うわっと!」


 数本の首が天に向けて吼えると共に8本のうち一本が俺を飲み込むべく噛み付いてくる。俺はそれを横っ飛びで躱して、反撃の一撃を浴びせた。


「くっ?!堅っ?!」


 しかし、八岐大蛇の大きな鱗はギャリィンッ!俺の自家製の刀を寄せ付けることなく弾き飛ばす。だが、その予想以上の堅さに驚く間も無く絶えず攻撃が飛んでくる。


「ちっ!けど、こいつも噛みつきや毒吐きだけか?・・・ここならみんなもいないし“鑑定”を使ってみるか・・・」


 みんなもいないし、禁じ手にしていた戦闘前のボスの“鑑定”を行おうか1人呟く。けれどそのためか脳裏にボスの能力は“鑑定”出来なかった過去が過ぎる。


「でもま、やるだけやってみるか」


 できなかったらそれはそれだ。やってみてわかるのならめっけものと思えばいいだろう。俺はその精神で目の前の八岐大蛇へと“全鑑定”を行った。




 名前:ヤマタノオロチ

 種族:多蛇王族

 状態:特殊

 スキル:許可されておりません。

 称号:許可されておりません。




「やっぱりか・・・ん?」


 見えた結果は予想通りだった。名前も知っているもの、スキルなどに関しても予想していたものが書かれてある。しかし、ひとつだけ見覚えのないものがあった。


「状態、特殊?」


 おそらくこのヤマタノオロチの現在の状態を指しているのだろうが、改めて奴を眺めてみても変わった様子は見られない。と言っても、最初の状態を知らないため、もし変わっていたとしてもわかるはずがないが。


「ギィリュ・・・・GYAAAAAAAAA!!!!」


 分からないことで頭をいっぱいにして目の前の戦いに勝てる相手でもない。俺は一度『状態』のことについては頭の片隅に寄せ、奴の攻撃に集中することにした。


 すると向こうも俺の意識の変化を読んだのか、それとも単純に、俺に攻撃が当たらない今の状況に焦れたのか、すべての首を少し内側に折り畳むや否や、これまでとは別種の叫び声を上げた。


「GYAAAAARAAAAAAARAAAAAAA!!!!」

「頭が・・・割れる・・・!」


 その叫び声は、耳を塞ぎたくなるような汚い高音だった。けれど、塞いでも聞こえるその濁声にはどこか歌うような色も感じることもできる。そう感じた瞬間、ふと肌が焼けるような痛みを感じた。


「づっ!?なんだ・・・?!」


 見ると俺の腕が一部爛れていた。傷自体はそこまで大きなものではないが、今もなお爛れは俺の腕を少しずつ侵食している。


「とりあえず・・・アレを止めないと・・・!」


 俺は腕に“自己再生”をかけながら自らの体に発破をかけるように、痛いほど刀を強く握り込む。そして、地面を蹴り奴に向けて走り出した。


「くっ!!」


 すると奴に近づけば近づくほど、腕の爛れた部分の侵食速度が速くなることに気付いた。そして、今も奴の歌声はこの部屋中に響き続けている。


「なるほどな・・・。なら、やっぱり」


 仕組みは理解できた。おそらくアレは奴のスキルの一つなのだろう。ならばやはり早急にあの歌をなんとかして止めなければ。


 俺は一度元の位置まで引き下がり、魔力を練る。爛れ続ける肌が俺の集中力を削いでくるが、そこは気合だ。そして、練り上げた多量の魔力を全て“魄雷魔法”へと変換していく。


「こんな時にシルフィがいてくれれば」


 言っても詮ないことだが、思わずそう呟いてしまう。すると俺の攻撃の機会を察したのか、奴が身動ぎをする。だが、全ての頭でしか、その歌は出せないのか、やつには俺の攻撃を中断させる方法はないようだった。


 ならば、と俺はありったけの魔力を用いて白き稲妻を作り出す。高まった魔力から変換された稲妻は飛び出したそうにバチバチと俺の周りで暴れ回る。


「GYARAAARAAARAAARAAA!!!!」

「ぐっ?!」


 すると、さすがに身の危険を感じたのか奴の歌声がさらに大きくなった。それに従って爛れていく速度も遥かに増す。“自己再生”に回す余裕もなく、いつの間にか爛れは首や胴体まで侵食していた。


「まずい、早く完成させないと」


 放つのはかつて【暴食】の魔王にトドメを刺した白き雷。だが、その規模は前のものとは比べるべくもない。なにせ相手の巨大さが桁違いだ。


 最初は一本の雷ではなく、複数に拡散させて放とうかとも思ったが、それだと威力までも拡散してしまう。そうするとあの堅い鱗を突破できないと思ったのだ。


 だが、その巨体に見合うような一本の雷を作ろうとするとどうしても時間がかかってしまう。けれど、その時間は奴がこちらの行動を阻害できない現状を見て解決した、はずだった。


「まさか、火力をあげられるとはな」


 この場合は火力というよりか歌唱力、と言ったほうが正しいだろうか。いや、あれをそんな大層なものだとは思いたくないな。


「・・・っと、よし。これで充分だろ」


 そんな益体もないことを考えて体に走る痛みから意識を逸らしていると、ようやくこちらの準備が整った。

 天には奴の歌に勝るとも劣らない轟音を放ち、青白い雷を迸らせる雲。それは俺の指先一つで奴へと天罰を下せる。


 少し思考に余裕が出来た俺は“並列思考”を使って自身を回復させる。肉体の欠損ではないので、そこまで大幅に魔力を使わない“熾天魔法”で回復してみたが、効果覿面だった。


 それで分かったのだが、どうやらこの爛れている原因は毒なのだそうだ。自身で回復しておきながら何を、と思うかもしれないが、相手の能力が分からない以上、どんな回復方法が適正かも分からない。


 そのため、俺は“熾天魔法”で回復させると共に自身を蝕んでいる原因を摘出した。するとそれは触れるだけでその部分が壊死してしまうほど強力な毒だった。俺が耐えられていたのは、単に“猛毒耐性”のスキルがあったからに他ならない。


 また、それは“神聖魔法”では侵食は抑えられても回復することは出来ず、完全に回復させるためには俺の持つ“熾天魔法”か回復特化のユニークスキルかのどちらかくらいなのだそうだ。


「・・・またスキルに助けられたな」


 本当につくづく自分の収集癖と運の良さに助けられる。今まで、事前に敵の情報を取得できていたのが、あれほどアドバンテージになっていたのかと痛感する。


「さて、これで終いだ。お前は耐えられるか?」


 だが、これでもうあの歌は怖くない。俺はそれ一つで奴の体を覆い隠してしまえるのではないか、というほど大きい雲を指差す。


 その雲の威容に怯えているのか、警戒しているのかいつの間にか奴の歌は止んでいた。だからといってこちらが止めるはずがない。俺はこの先に進んで仲間に会い、目的を達成しなければならないのだ。




『白絶なる天雷轟(レランパゴ・グランデ)』




 今回は対巨大向けに作ってあるから、そのままでは格好がつかないだろう。さしずめ、




『白絶なる巨雷轟(レランパゴ・エノルメ)』




 と言ったところだろうか。




「堕ちろ」


 俺は指先を振り下ろす。すると音を置き去りにした白い稲妻が巨大な一本の柱となりヤマタノオロチへと降り注いだ。あれほど巨体だったヤマタノオロチを飲み込むほどの稲妻は、放った俺の目さえも灼き潰してしまうのではないかというほどの光を放つ。


 次いで響いた轟音が奴の歌で弱っていた俺の耳を今度こそ破壊した。

ブクマと感想、YouTubeのチャンネル登録よろしくね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。