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黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
第6章

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第137話 霧の晴れぬ樹海

今回は自分で書いててちょっと気持ち悪かった・・・

「視界が悪すぎる・・・」


 私は視界いっぱいに広がった白い霧の中を慎重に進む。かろうじて足元は見えるが、数メル先は見えないし、側に木々が生えているのは分かるが高さがどれほどなのかがわからない。


「あー!!もう!!」


 ぺちんっと自身の肌を叩く。何かを潰した感触に掌を見ると一部分が青黒く汚れていた。そしてそのそばには潰れた5本足の虫がべっとりと張り付いていた。


 そう、いつからこの森にいたのかは分からないが、今も絶えず周りで耳障りに鳴り響く虫の羽音に、私は起こされた。







 最初、目を覚ました時は貧血で倒れそうであり、私の周りにはこの気持ちの悪い虫が大量にいたことからすぐに血を吸われたのだと気付いた。


 理由は起きてからも悠々と私に張り付く虫がいたこともそうだが、似たような性質を持った虫が故郷の村にも生息していたのだ。さすがに掌の半分ほどの大きさで足が御本ではなかったが。


 その虫は霧の中でも目立つ黒の外殻をしており、背中にはあるかないか分からないほど薄い翅。腹の下には太い足を一本、それを支えるようにして生える細いがとても長い足が4本生えている。口には長い棒のようなものを携えており、それを敵に突き刺して血を吸うようだ。


「ひっ?!」


 私は本能的恐怖から喉が干上がるような悲鳴を上げる。そして反射的に腕から虫を振り落とそうとするが、しがみ付く力が強いのか全く動じる気配はない。それどころか、気づくと私の足や腰、果ては喉や顔付近にまで虫は張り付いており、とてもではないが、暴れてなんとかなるような状況でもなかった。


「うっ・・・!」


 私はそれなりに苦手な虫に張り付かれている状況に泣きそうになりながら、かろうじて側に転がっていた槍を掴んで振り回す。それだけである程度の虫は追い払えたが、如何せん食事中の者は振り払えなかった。


「うわぁーーー!!!」


 恐怖に耐えきれなくなった私は飛びかけている意識と倒れそうになる体と闘いながら、自身の手で虫を叩き潰していく。すると気持ち悪い感触は残りながらも簡単に潰せることに気づいた私は片端から潰していく。


 それから足に止まった最後の一匹を潰してようやく落ち着いた私は体が青黒い血に混じって赤いものが混じっていることに気づいた。


「やっぱり血を吸ってたのね」


 私は貧血で震える手を動かしてカバンにしまっていた増血剤を少量飲む。あの歓楽街で購入していたことが功を奏したが、少量の食料品とともに全ての増血剤を私が持ってしまっていたため、他の仲間たちの分もあるのだ。


「みんな無事かしら・・・」


 虫を追い払えたことで少し休息の時間が訪れた私の脳内にはピエロに飛ばされた瞬間がフラッシュバックされる。


 他のみんなは分からないが、目の前に黒より昏い闇の渦を迫り、それに飲まれてからここで目を覚ますまでの記憶がない。おそらく他のみんなも同じ状況だろうと仮定すると、生きてはいるのだろう。


 だが、みんなの居場所が分からない。実際、私自身もこの場所があのダンジョンの中なのか、それとも外まで飛ばされてしまったのかは不明である。


「でも、まずは進まないと」


 震える体と怖気付く心に喝を入れる。ここがどこであろうと生きているという仮定があるならそれに従って進むのみだ。もう仲間を失いたくないからこそこの地に挑んだ。


 ならばなるべく早く、彼らの元に辿り着かなければ。そのためには立ち止まってなどいられない。それにあの【色欲】に挑むためには今よりもっと強くならなければならないのだから。


 私は汚れた体と虫からの病気を防ぐために自身に“神聖魔法”を使って前へと進んだ。







 それから二日後の今、ようやく冒頭に戻る。あれから槍で木に傷をつけながら進んでいくと、見覚えのある階段にたどり着いた。それによりここがダンジョンであることは把握できた。


 しかし、不安になることもいくつかあった。それは道すがらで出くわす魔物の死骸だった。ここまでに多種多様の魔物の死骸があったが、そのどれもが干からびていた。


 だが、数えるだけで十数種類もの魔物がおり、中には見たことのない魔物もいたにもかかわらず、襲ってくるのはあの5本足の羽虫のみ。おそらく血を吸うこの羽虫が他の魔物の血を吸い尽くし殺しているのだろう。


 そう考えると、よく私は死ななかったな、と今更ながら背筋が凍る思いだ。


 だか、朗報もある。やはりダンジョンの生物であるからなのか、ここまでですでに何体倒したかなど分からないこの羽虫は経験値効率が良いようで、気持ちのいいくらいにレベルが上がっていく。





 名前:テミス・レギド

 種族:姚魔族

 Lv:847

 スキル:颶眼Lv.- 看破Lv.10 神聖魔法Lv.10 自然魔法Lv.10 咒力特自動回復Lv.7 体力自動回復Lv.4 槍聖術Lv.6 突破Lv.8 紫電Lv.6 牙突Lv.1 連突Lv.1 風車Lv.8

 称号:限界突破者 超越者 飂之眼 観看者 然の寵愛 聖の寵愛 槍技覚者






 スキルがレベルアップし、さらにレベルもついに800を突破した。虫を叩き潰すだけで数レベルが一気に上がるため、まだ跳ね上がったステータスに体が慣れていないが、それでも喜ぶべきことだろう。


 さらに周りに集る虫を回転して倒していたらいつのまにか新たな武技も獲得し、レベルも上がっていった。それならば、とさまざまなスキルを試してみるが、他のものだと当たっても一匹だけだったり、そもそも当たらなかったりと効率が悪くなることがわかった。


「仕方ない。今はレベルを上げることに集中しましょう」






 次の日、夜も羽虫が絶えず襲ってくるため、満足に睡眠を取れていないが、木々を私の周りに厚く生えさせることで急場ではあるが、休息場を作った。


 そして目の前にはこのエリアでの二つ目の階段。ここが何階層なのかは不明だが、カイトさん曰く十階層ごとの環境変化だというので、それを把握するためにも階段を降りていく。


「また・・・」


 階段を降り、カイトさんがしきりにマジックミラーだという透明の壁をくぐりぬけるとまたも同じような霧に背丈の不明な木々。そして耳障りな羽音がこだましていた。


 だが、これまでと違う点もあった。それは絶えずこだまする羽音に混じって、他の生物の鳴き声も聞こえたのだ。甲高く近くで聞けば頭が痛くなりそうな音だが、生きている他の魔物に出会えるのは大きい。


 彼らがどうやってこの虫の大群を退けているかもわかるし、何より一つでもこれまでと違う点があるというのは精神的にとても楽になる。


「音が聞こえたのは・・・あっちかな」


 私は一瞬聞こえた音を頼りに、周りに集る羽虫を追い払いながらその方向へ向かった。

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