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黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
第6章

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第132話 光を照らす闇『後編』

ごめんなさい!一部矛盾点が発覚したので内容を少し変更させていただきました。物語に大きな影響はありません!(8/5.8:00 改稿)

「くそがぁ!!!」


 俺は怒りに任せて刀を抜き、武技“刹那”にて一気にピエロへと距離を詰める。そして一瞬でピエロの目前まできた俺はさらに武技“重斬”を放つため、刀に魔力を込める。


「はぁぁぁ!!!」


 だが、思い切り振りかぶり叩きつけた俺の刀はピエロに当たる直前で不可視の壁に阻まれた。音もなく俺の放った技は弾かれ、俺はバランスを崩してたたらを踏む。


「ゲーム二。カタナイト」

「ワタシニハ!キズツケラレナイヨ!」

「ふざけるなぁ!!サニアをどこにやった!!」

「カノジョハ。ゲーム二。マケタノサ」

「ドコニ!イッタカナンテ!シラナイヨ!」


 俺は怒りで目の前が真っ赤になった。酸欠だった頭にさらに無理やり血を上らせたせいで目から血が溢れていたのだ。


「ふっ!!」

「はぁ!!」


 その時ピエロの後ろの左右から聞き覚えのある声と共にピエロに向けて槍と刀が振るわれる。だが、不意を突いたにもかかわらず、その攻撃はまたしても不可視の壁に阻まれ、ピエロに届くことはなかった。


「ダカラ。イミガナイト。イッテイルノニ」

「ソレトモ!ハヤクツヅキガシタイノカ!」

「ナラバ。ツギノ」

「シレンヲ!アタエヨウ!」

「くっ!」

「きゃ!」

「なんだ?!」


 その瞬間、ピエロを中心として周りを一斉に吹き飛ばした。それにより俺もテミスもミユも、同じような場所へと戻されてしまう。


「くそ!待ってろよ、サニア。絶対に助け出してやるから!」







 ーーーーーーーーーーーーーーーーー







 あれから何時間が経過しただろうか。体は傷だらけになり息は絶え絶え。それでも、ピエロの数は中心の2体にまで減らせていた。


「はぁ・・・、はぁ・・・、くそ・・・」


 けれど俺の周りにはすでに誰もいなかった。試練の4つ目では出された謎の解き方が分からなかったミユが、8つ目では当人の悪夢を蘇らせる幻惑に抗うことが出来ずにテミスが消された。


 しかも試練を失敗すればピエロは消えない。そうなれば奴は再挑戦と称してまた違った内容の試練を与えてきた。奴の言う10回というのは最短のものだったのだ。


 俺は刀を地面に突き刺しなんとか立ち上がる。ここまでの戦いで魔力をほとんど使ってしまった上、体力も残り少ない。徐々には回復しているが使う量の方が多かった。そんな時またも耳障りなピエロの声が響いた。


「スゴイネ。スゴイネ。イマノシレンヲ。タエラレタモノハ。ハジメテミタヨ」

「ウマクイケバ!アトニカイダヨ!ガンバッテネ」

「く・・・そが・・・」


 ピエロはまたも高速で何かを詠唱していく。するとどこからか溢れ出した水が俺の足を濡らしていく。それは瞬く間に量を増やし、俺の肩辺りまで来ても止まることはなかった。


 俺はすでに地面に付かなくなった足をバタつかせ、体力がない中、なんとか増えていく水の水面を維持するため平泳ぎの要領で耐える。


「コレクライデ。イイダロウ」

「ソレジャア!ハシメルヨ!」

「コノミズデウメタ。ヘヤノドコカニ。ツギヘトススム。カギヲカクシタ」

「ソレヲ!ミツケラレレバ!キミノカチ!ミツケラレナケレバ・・・!」

「くそっ!」


 それだけ言ってピエロはケケケと嗤いながらその姿を消した。俺はなんとか息を確保するため水面に氷の土台を作り登る。水量はすでに天井まであと2メートルほどというところまで埋まっており、この中から探すのは困難を極める。


 それにあまりゆっくりもしてられない。奴は時間制限に関しては何も言わなかったが、ここまでの試練を考えても時間制限なしということはないだろう。おそらく水量が天井に着くまで、など色々考えられる。


 であるなら闇雲に潜って探しても答えは見つけられないだろう。そのため先に息を保つための方法を考えなくてはならない。しかし、奴は俺に考える時間を与えてくれなかった。


「熱・・・?な・・・水(・)面(・)が(・)燃(・)え(・)て(・)る(・)?」


 大量に水があるところではありえないはずの熱を感じて辺りを見回すと水面を舐めるような火が覆っていた。火柱自体は高くなく小指程度だが、そのせいで残りわずかの空間の酸素を減らし、さらに俺の座る氷を溶かしていた。


「厄介なことしやがって!!」


 俺は時間を稼ぐため火に対抗するための氷を大量に作り出す。そしてそれを使って火を覆い、燃焼を食い止めることにした。その間にも息を保つ方法を考える。だが、俺のどのスキルを探っても水中で呼吸をするためのスキルは無かった。


 幸い、と言ってもいいのかは不明だが、水量が増える速度はそこまで早くない。ただ、何故か波があるため正確な時間は計りきれないのが不安を煽る。


「・・・ふっ」


 俺は大きく息を吸って、さらに出来るだけ“魄雷魔法”でこの残りのエリアに残った酸素を集め、朧げに見える程度の球体に纒める。これで俺は水面に上がれなくなったが、致し方ない。火が酸素を食い尽くすのを黙って見ているわけにもいかない。


 俺は球体を顔の近くに浮遊させたまま、水中へと潜った。水中はも同様真っ暗なため“神聖魔法”で明かりをつける。さすがのピエロも何の光もなく探させるようなことはしなかったようで、ここまでとは変わり光を出すことができた。


 俺は球体とは反対側の顔の近くに明かりを浮遊させて水の中を探索する。運良く“水泳”のスキルを有していたため、地球にいた頃より早く泳ぐことができた。


 そうして怪しいところを隈なく探していく。壁の隙間や部屋の角、明かりを近づけて壁に何か刻まれていないかを逐一確認し、限界まで息が苦しくなれば横の球体から酸素を吸収する。


「・・・!」


 すると大きな扉から見て左側の壁の中心に何やら書いてあるのを見つけた。それは文字のようでありながら絵のようでもあり、俺は象形文字の印象を受けた。


 俺は見つけた文字を読んでみる。運良くこの世界に来たときのスキル欄に表示されない言語理解能力が働いたようだ。それによると『6つの世界の中心をつなげ』と書いてある。


(6つの世界・・・?)


 書かれている文字はこの一文のみ。この一文がまるで絵を描くように描かれている。だが、これだけではまだ分からない。俺は引き続き探すことにした。


 それからさらに探していくと今度は先ほどの壁とは反対の壁に同じような一文で描かれた奇妙な絵を見つけた。そこにも先ほど見たのと同じ文章が描かれている。


(いったいどういうことだ?)


 すると読んだ文章が光を放った。その光は俺の出している光より一際強く輝いている。そこで俺は一つ気づいた。左側の壁、そしてその反対側。両方とも中心にこの文章があった。ならば他の場所にもあるのではないかと。


 そこで息が苦しくなり、球体から酸素を取り入れる。球体の酸素量はすでに半分を切っていた。さらに水面もあと僅かで天井についてしまうだろう。のんびりはできない。他の壁を探ることにした。



 予想通り床と壁四面全てに同じ文章を見つけた。しかし、二つ目の文章を見つけて呼んだ途端、壁の文章の光が消えた。そしてさらに他の2つを見つけても新たに光ることはなく、俺は一つの仮説に行き着いた。


(6つの世界の中心はそれぞれの壁の中心。それをつなげ、ということは・・・)


 俺は仮説を証明するため、再度最初に光った壁の文章を読みにいく。すると先ほどと同じように光を放った。そして今度はさっきとは違う、扉から見て正面の壁の文章を読む。すると今度は正面の文章も光り始めた。


(やっぱり・・・!)


 俺は推測を確信に変え、次の文章を読みにいく。壁に書かれている文章の『六つの世界』というのはこの部屋を囲む壁のこと。その中心をつなげ、ということはそれを順に読めということなのだろう。



 俺は球体から最後の酸素を取り入れて部屋の壁から壁へと泳いでいく。順序など示されていないため虱潰しに探していくしかない。


 そうして最後の床の文章を読み、五面全ての文章を光らせた俺は最後の壁である天井へと足を進める。息も残り少なく、苦しくなってきた。だが、それでもこいつは倒さなければならない。倒して消えた仲間たちを取り戻さなければならない。


 俺はその一心で必死に足を動かし、水面へと手を伸ばす。水面を舐める火が、徐々に水面へと近づく俺の手を温めていく。そうしてもう少しで天井に手が届く、というところで水量が天井に達した。


(くそっ!一歩遅かったか!!)


 水面が天井に達したからか水面を舐めていた火の熱がなくなっている。だが、おかしい。ここまで試練が終了すればすぐにピエロが終わりを宣言していた。


(まさか、まだ終わりではないのか?ならば、まだ可能性がある!)


 俺は疑問を一旦振り払い、降って湧いた幸運を手にするため天井の中心に描かれているはずの文章を読む。


(あった!やはり同じ文章!!)


 そして推測通り、読んだ瞬間天井の文章も光を放った。


(これで!!)


 だが、いつまで待っても終了の宣言が出ない。まだ足りないのか。ならばあとはなんだ。俺は必死に頭を巡らせる。


(そうだ。奴は鍵をさがせと言っていた)


 ならば鍵はどこにある?俺はなんとはなしにいつもの癖で視線を下に移す。すると俺の漂う真下、ちょうどこの部屋の中心を位置する場所が淡く光っていた。


(ん、あれは・・・?)


 俺は導かれるようにその光へ向かう。近づくとその光が正四角形の形で回転しているのがわかった。手をかざしてみるとその四角形は俺がきたことを感知したのか回転速度を早め、光量を上げた。


(眩しっ!けど!)


 俺は光に目を細めつつもそれに抗い手を伸ばす。だが、突如俺を襲った浮遊感によってそれを掴むことは叶わなかった。


「がはっ!?」


 俺は背中を強かに打ち付けたせいで一瞬呼吸が止まる。それに追い討ちをかけるように奴の耳障りな声が響いた。


「アトイッポ。ダッタネ」

「デモジカンギレ!バツノジカン!」

「く・・・そ・・・」


 痛みと酸欠と絶望で悪態すら弱々しくなる。だが、最後まで屈するものかとピエロの張り付いた笑顔を睨みつけた。その俺の目の前には一寸先すら見えない部屋の中でありながら、光を照らすような光沢のある闇が迫っていた。

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