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黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
第6章

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第127話 罠解除の糸口

 あれから小一時間ほど作戦会議をしたことで、進み方については話が煮詰まった。というのも今回のこのエリアも俺のスキルがなければまともに進めないことに難色を示したテミスが一つの案を提示したからだ。


「それではこれを機に私たちも自力で罠を見つけられるようにした方がいいと思います。このエリアを抜けた先に罠がないとも限りませんし、“罠解除”や“罠看破”のスキルは私たちでも獲得することは可能ですから」


 本来であれば、テミスの言うように経験を積むことで獲得できるこのスキル。しかし、俺はこれを他人から奪っているため、罠がどんなものでどこにあるのかはわかるが、何が罠の仕掛けでどんな違和感や違いがあるのかまでは分からない。


 今回はそれを分かるようにする、というのも名目の一つとし、俺が罠を見つけたらそれをどう解除するのか探りながら進むこととなった。


「時間はかかりますが、この先のことを考えると背に腹は変えられません。自分の命が無くなっては意味がありませんから」


 当然ながら俺もだが、テミスはどうしても早く【色欲】のもとにたどり着きたいようだ。しかし、現段階での力不足もあり、とてもジレンマを感じているのだろう。


「スキルさえ手に入ればそこからはペースアップできるさ。俺もこの機会に罠を見分けられるように出来るのは好都合だしな」


 俺の言葉に軽くうなづいたテミスは次にフォーメーションについて話し出す。


「では、まず罠を見つけられるのはカイトさんだけなので申し訳ありませんが、先頭でお願いします。そして罠を見つけたら教えてください。後は私たちが見分けられるようにします」

「分かった。今罠を見つけられるのは俺だけだからな、それは構わないさ。ただ問題はーー」

「あの岩男ですね。この壁が魔法を弾くせいで動きを止めることもできないですし・・・」

「あぁ。ただ、あいつが岩ではなくこのエリアに生息する魔物なのだとしたら倒すって手もある。あいつは驚かせるのが目的みたいだからそれを誘発して、体を出したところで倒すのでもいいし、なんなら岩が転がるスイッチを押さなきゃいい」

「あ、そうだった。そういやうちがボタン押したからあいつ出て来たんだった。ごめんなさい・・・」

「まぁ過ぎたことはいいさ。あいつも罠の一つならボタンさえ押さなければ出てこない。それにこのエリアは魔物の気配がしないからそれに関しても、あまり気にする必要がないのがありがたいな」


 俺自身、だいぶこの“超嗅覚”に慣れて来たのもあってか結構広い範囲を索敵できるようになっている。ざっくりいうと半径1キロくらいであれば大まかに何がいるかは判別できるようになっていた。


 それを使った上で、このエリアには生物の匂いがしない。まぁ過去に罠にかかったであろう者の血や肉の匂いさえしないのが少し不安が残るが。


 あるいはここには誰一人来れなかった、もしくは誰も罠に引っかからなかったなどが考えられるが、前者はまだしも後者に至ってはあり得ないだろう。というかあり得たとしてもその楽観は命の危険を呼びかねない。



 そんなこんなで先を進む際の注意点などを再確認した俺たちは、一度は戻ってきた道を再度進んでいく。そして一つめの曲がり角を曲がるとそこにはミユによってすでに押された地面のボタンと左右から飛び出る槍と矢、そして大きく口を開いた落とし穴とその先に待ち構える槍衾があった。


「これは・・・もう罠が発動してるってことでいいのか?」

「そんな感じですね。おそらく先ほどの岩が全部開けてくれたんでしょうか」

「おそらくな。それに辺りを探しても隠れている罠はなさそうだ。感知にも反応しないしひとまずは大丈夫だろう」


 俺はもしものために念を入れて辺りに罠がないか探る。この“罠看破”はあくまで所有者の身に危険が迫るまで自動的には発動しない。なので周りに罠があるかを確認するには能動的に発動させなければならないのだ。


「この調子だとこの先の罠も開けられてる可能性があるし、俺も逐一確認はしていくが油断はするなよ」


 俺はそう言って目の前の角に向けて進む。角を曲がるとその先の道も先ほどと同じように所々の壁や床が開いており、陰険な罠が垣間見えている。


 中にはボコボコと気泡が浮かぶ毒の池やパッと見ただけでは判別がつかないほど細い糸が辺りに散らばっており、その先を辿ると壁につながるため、気づかず進めばよくて切り傷、最悪体が千切れてしまうかもしれないものだった。



 それから何回か曲がり角を曲がり、10分ほど進んでいくと壁の材質は同じもののまっさらな道に出た。そしてその道の中心あたりの壁では大きく扉が開いており、そこには先ほど俺たちを脅かした岩が収納されていた。


「これは生きてる・・・のか?」

「今は動いてないみたいだけど・・・」


 匂いは感じない。それに“罠看破”でも特にこれといった反応はなかった。それ故に気になる。生き物である限り何かしらの匂いがすることはこれまでの経験上明らかだ。


 たとえ自身の匂いを何かしらで隠しても、ほかに存在する匂いの中から浮(・)く(・)のだから何かがいることくらいは分かる。


 だが、この目の前の岩からは土の匂いでさえもしなかった。であれば人工物である可能性もあるが、それなら製作者の匂いが多少なりともつくはずなのだ。


 それすらないとはもはや不思議を通り越して不気味の域だった。


「そうみたいだな。なるべく刺激しないように通ろう。それにこの先はこいつが破壊した罠もない。ということは罠が健在のはずだ。注意して進むぞ」


 岩男の前を抜け曲がり角まで到着する。そしてその先の道へ“罠看破”を使うと、脳内に浮かんだ道が白一色で埋まる。多種多様な罠が新たな獲物に歓喜しているようだった。


「みんなここから進むな。ここから先はもう一歩進めば罠の嵐だ」

「分かりました。どんな罠がありますか?」

「1番近いのは・・・これだな、スイッチを踏めば天井から何らかの液体が降ってくる。まずはそのスイッチを探そう」


 相変わらず何が起動となって何が発動するかは分かるが、どこにそれがあるのかまでが分からない。これでは欠陥もいいところなのではないかとも思ったが、そもそもこのスキルはこういった使い方ではないことを思い出し、ため息をついた。


 それから俺たちはスイッチを探す。するとサニアの足元に目がついた。一度目に入ると違和感は異物へと変化する。調べると目の錯覚を利用したスイッチが押してくれと言わんばかりに存在していた。


 そのスイッチはこの壁や床を構成している反魔材の色である淡い黒に隠れるような色合いをしており、形状も床の魔材を繋ぐ繋ぎ目の間に綺麗に収まるように出来ているためパッと見ではすぐに見つけられない。


 そのくせそのスイッチは大抵の人間が通るであろう少し右寄りの中央に位置しているのだから、ここの製作者はさぞ性格が悪いのだろう。


 ただ見つけてしまえばこちらのもので、スイッチの解除方法もいたって単純だった。仕組みも見えて作動キーも分かったのであればあとは“鑑定”で調べるだけ。するとスイッチはただ型に嵌めてあるような状態らしく押さないように気をつけて引き抜けばそれで解除ができた。



 それから一歩進むごとに罠を解除していく。紐を引くことで発動するものは糸を焼いたり切ることで中との接続が切れた。センサーで感知して矢を放つような罠はセンサーを破壊すればいい。


 このように罠さえ見つけてしまえば解除すること自体は簡単であり、解除方法もとても単純で複雑なものといえば、せいぜいが大元を破壊せずに取り外さなければならないもので、これも手先の器用なミユが一度仕組みを理解するとあとは片手間でできるようなものだった。


 ただ、これも破壊しなければならないセンサーのものと破壊してはいけないセンサーのもの。糸を切ればいいだけのものや触れずに進まなければならないものなど、すべての解除方法が同じではなかったため気をつけなければならなかった。






「これでようやく一階層終了か・・・」


 それから約5時間かけて進んだ先に下へと続く階段を見つけた。ここまで一本道ではあったため迷いはしなかったが、それでも一つでも失敗すれば連鎖的に発動する罠のせいで常に神経を尖らせなければならず、何度危ない目にあったかわからない。


 センサーを破壊せずに取り外さなければならないのに天井にあったり、そのために天井に手を伸ばすため台を作ろうとしても魔法が使えず、仕方なく肩車になるとそこは重量制限のある床だったようで基底の重量を超えた瞬間その道にある罠が全て作動した時は本当に死ぬかと思った。それも壊したはずの罠でさえも。


 ただ、ようやくこのエリアを攻略する糸口が見えたため、疲労はあれど絶望はなく、みんなの顔にはどこか達成感さえあった。


「よし、それじゃあ下へ降りるか」


 これなら案外簡単に行けるのではないか、という期待がどこかに芽生えた。先に待つ地獄など知らないままーー。

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