↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/390

第118話 聞き耳を立てる者

 日が中天に差しかかる頃、俺はサニアと共に城へと向かう裏路地を歩いていた。念のため既に気配遮断は使っている。どこで誰が見てるとも知れないからな。警戒しておいて損はないだろう。


「すまないな、テミスたちと一緒に行かせてやれなくて」

「......別に興味ないからいい」


 というのも俺たちと別れて地下の祠の場所を探るテミス・ミユ組は、厳重に警備されている可能性を鑑みて、ショッピングをしつつ聞き込みも同時に行うということになった。


 そのため足りなくなっていた食料や日用品は当然のこと、嗜好品や女性にとって必要なものもここで買ってもらうことにした。そのため本来であればサニアも行かせてやりたかったのだが、さすがに俺1人で探すのは骨が折れすぎてしまう。


 だからサニアには悪いが、今回はついてきてもらったのだ。まぁ、強がりでもなんでもなく本当に興味が無さそうなのが救いだが。


「城は・・・あれか」


 裏路地とは言いつつも日中だからかそれなりに人はいる。それに気配を消しているとはいえ、人に当たれば見つかるし、運が悪ければあらぬ疑いをかけられる可能性もある。


 そのため出来るだけ人混みを避けて歩いていると、建物の端から石造りの城が垣間見えてきた。


 と言っても、サロモン通りと呼ばれる大通りにそのまま続くため城自体を見つけるのには苦労しなかった。だが、問題はここからだ。見る限りそこまで厳重ではないが、警備兵がいる。


「思ったより人がいるな」

「......入ってみる?」

「やってみる価値はあるか」


 どうやら城には手続きさえ踏めば誰でも入れるらしく、それなりに人垣がいた。俺たちは可能な限り気配を消し、その人混みに紛れて城の中へと入っていった。








 ーーーーーーーーーーーーーーー








「うわぁ〜!沢山あるね!これなんかどう?美味しそうじゃない?」

「それはウレの実ですね。果汁がたくさん入っていて美味しいですよ。ナイフで皮を削って空いた穴から果汁を飲むんです。暖かい季節にはちょうどいいですね」

「おっけ!もうだいぶ暑くなってきてるし1人一個くらい買おっか!」

「そうですね!」


 うち達は『地下の祠』の情報収集兼買い出し班だ。最初は城と『地下の祠』の場所を探すのが目的だったが、場所はこの大通りの目の前。一目瞭然だった。昨日は暗かったからか、それとも周りのネオンに気を取られていたからなのか全く気づかなかった。


 そのため場所はいいだろう、と言うことで今は些細なものでもいいから『地下の祠』に関する情報を集めていた。


「あん?嬢ちゃんらあの『祠』に興味があんのかい?うーん、強そうには見えねえけどなあ」

「そこってそんなに危ないとこなの?」

「ま、オレは行ったことないから知らんが、危ないとこだって話は聞くぜえ?それでも金銀財宝やら願いを叶えるやら怪しい噂があるから、外からそれ目当てに来る奴も少なくねぇんだ」

「できればその噂についてもっと詳しく」

「あん?なら・・・」


 店番をする男は無言で手を出す。意味するところは簡単だろう。情報が欲しいなら対価を支払え、ということだ。うちは銀貨一枚を手の上に載せる。


「これっぽっちかよ、まあいいか。誰が言ったかは知らねえがその『祠』とやらには不思議な力があるんだと。んで、それに対価を支払えば願いを叶えてもらえるんだとよ。だが、実際は噂ばかりが先行して実際に願いを叶えたって奴は聞いたことねえ。それでも釣られる奴はいるんだな。ま、そのおかげでオレもこうして商売できるんだが」


 それ以上は話せることはない、と手で追い払われてしまった。だが、銀貨を支払った割には昨日聞いた内容とあまり差異がない。


「うーん、他にもっと情報ないかなぁ。あのヴァイスって人は地下にダンジョンがあるって言ってたよね?」

「そうですね。おそらく金銀財宝というのはそのダンジョンから得られるもののことを言っているんだと思いますが・・・」


 流石に何の予備知識も無くダンジョンに挑むことがどれだけ無謀かは理解している。最初にうちが行った帝国の迷宮街ではそれで何度も危ない目にあった。


 テミスもそれは理解しているようでなんとか情報を探り出そうとしていた。しかし、誰一人として『ダンジョン』と言う言葉を使わないことが、うち達が一歩踏み込めない要因でもあった。


「思い切って言ってみる?」

「少し怖いですけど、それしかないのかも知れませんね」


 他人からどう見えているかは分からないが、少なくともこの国を知り尽くしているようには見えないだろう。そんな人間の口から『地下の祠』にはダンジョンがある、などと言う話を聞かされて信用されるだろうか。


 嘘っぱちだと、頭ごなしに否定されるだけであれば構わない。しかし、誰も使わないその言葉を使って変なことに巻き込まれるのだけは避けたかったのだ。


 それでもここまでいくつかのお店や情報通の人たちに話を聞いてみたが、話す内容は皆一様に同じようなものだった。


 うちは次に向かう場所で意を決して聞いてみることにした。向かった場所は、もう時間もいいところということで、普通のレストラン。そこでオーダーを取りに来る店員に尋ねてみることにしたのだ。


 店に入ってすぐに可愛らしい女性店員に席へ案内される。内装はいかにもレストランという感じで目に痛くない黄色がメインで彩られた店内だった。


「何にします〜?」

「うちはこれ!テミスは?」

「では、私はこれをお願いします」

「了解で〜す」

「あ、すいません!聞きたいことあるんですけどいいですか?」

「はい?なんですか?」

「この国の『地下の祠』ってところにダンジョンがあるって聞いたんですけど本当ですか?」

「あぁ〜あの『祠』ですか?うーん、噂はよく聞きますけど、ダンジョンの話は聞いたことないですね〜。ごめんなさい」

「あ、いえ。大丈夫です。ありがとうございます」

「は〜い、失礼しま〜す」


 3本の細い尻尾をフリフリさせながら女性店員は厨房へと戻っていく。意を決して聞いてみたが、何の情報も得られなかった。


「ここまで伝わってないとなると、後はもう出来る限りの準備しか出来ないなぁ」

「そうですね、後で装備や道具も見てみましょうか」

「そうだねー。入るのに何か手順が必要って時が一番厄介なんだよなぁ」


 これでだいぶ望みが薄れてしまった。無策でダンジョンに挑んで入り方を間違え、カエルの巣に叩き落とされたトラウマが蘇る。


「とりあえずご飯食べてカイトさん達と合流しましょう。ね?」

「うん、わかったぁ」


 怖気で震える肩を押さえながら料理が来るのを待つ。うちが頼んだのは日本で言うパスタもどき。テミスはお腹があまり空いていないのかサンドイッチを頼んでいた。




 それから料理を食べ、しばらく雑談した後うち達は店を出てきた。日はすでに中天を超え、傾き始めている。大体3時くらいだろうか。


「ねぇ、お嬢さんたち」


 そんな時、うち達の後ろから声がかけられる。店から出てすぐのところだが、周りにいる女性はうち達だけだ。となればこの声はうち達にかけられているのだろう。


「はい?私たちですか?」


 声に釣られて振り返る。そこにはこの晴天の日差しの中、真っ黒なローブを頭まで被った人物が立っていた。身長はうちとそこまで変わらない。テミスより少し低いくらい。


「そうそう、可愛いお嬢さんたち。君たちさっき店員さんに何か聞いてたでしょ?それぼくにも教えてほしいなぁと思ってさ」


 声は男の子とも女の子とも取れる中性的な声。しかし、顔をローブに隠されていて分からない。そんな人物が先ほど店員さんに聞いていた内容を聞きたいと言ってきた。


 しかし、先ほどの店の中では、他者に聞こえないくらいの声で話したし、店内もそれなりに喧騒があった。ならば、相当うち達の近くにいないと聞こえなかったはずだが、うち達の周りに誰もいなかったことは確認してある。


 うち達は彼?のその言葉に言い知れぬ気味悪さを感じた。


「やだなー、そんなに警戒しないでよ。ただぼくはちょっと人より耳がいいだけだからさ。たまたま聞こえちゃったから気になったんだよね」

「聞こえたなら内容も分かるでしょ?何を知ってるの?」

「いやいや、ダンジョンって聞こえただけさ。だから君たちがなんでそれを知ってるのかなぁと思って聞いてみたのさ」

「私達も知りません。だからこうして色んな人に聞いていたのです。では問いますが、あなたがなぜそれを、というのであれば、それは私達以上に何かを知っているのではないですか?」

「・・・あちゃー、そういうことかぁ。これは一本取られたね。先走りすぎたかな?じゃ、お互い誤解は解けたしここらで・・・」

「ちょっと待ちなさいよ!」


 無理やりお茶を濁そうとするローブの彼を慌てて引き止める。確実に何かを知っているのだ、ここで彼を逃す手はない。


「知ってること話しなさいよ!こんなタイミングで逃すか!」

「えぇ〜、じゃあ話してあげるけど、もちろん対価はくれるよね?ぼくの対価は高いよ〜?」

「な、なによ」


 声は間延びして覇気はないが、肩を掴むうちをじろりと睨めあげるその目は危うげな光を宿していた。

ブクマと感想、チャンネル登録よろしくね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。