第106話 新たな旅立ち
あれから一週間が経過した。元村長の家でゆっくり療養させてもらえたことで体調も良くなり、今となっては普通に動けるようになった。
だが、割と眠っていた期間が長かったため、硬くなった体を動かしがてらエルフたちの復興の手伝いもしていた。
“自然魔法”で樹を生やし、戦闘で削れた家屋などを補修していく。また彼女たちも俺が寝ている頃から手伝っていたし、先の戦闘の件もあるからかどこに行っても黄色い声が上がっていた。
「まるでアイドルだな」
サニアの側には以前俺に食事を持ってきてくれたヘリブラがくっついている。抱きつかれて疲れた顔をしているが、サニア自身もあまり嫌がっていないのがわかる。
一応その近くにキノもいるが、相変わらずエルフたちには見えていないらしい。ただ、サニアが説明したことで(エルフから見れば)勝手に荷物が動く現象にも理解が得られているようだ。
最初はめちゃめちゃ騒がれたらしいからな。
後はミユとテミスか。2人は武術と風を使えるからそれを活用させるためにエルフ達と木の伐採に行っていた。斧術をミユは使えるためとても効率よく伐採できているらしい。
人間に対しての憎悪が消えたわけではないが、ミユが身を呈して彼らを救い共に戦ったおかげか、彼女はエルフたちにとても気に入られていた。....まぁ隊長がミユに甲斐甲斐しく世話を焼いているのもあるかもしれないが。
「ぷりゅん?」
「お前は毎回どこに逃げてるんだか....。まぁ無事で良かったよ」
俺は1人黙々と樹を生やしては刈りをつづけていると、もぞもぞと俺の背中からテロルが出てきた。こいつは毎回俺から離れた気配がないのに、本格的な戦闘に入ると、途端にどこにいるのか分からなくなる。
まぁそれで無事なのだからむしろ喜ぶべきだな。
「それにしてもなぁ.....」
俺は自身のステータス画面を開きながらついぼやいてしまう。
名前:日向 海斗
種族:人魔族
年齢:20
Lv:1213
ステータス:軀力127651
咒力129087
剛撃128123
堅禦128612
閃煌126481
賢智141110
スキル:New脚刃一鉄Lv.- New暴食Lv.-
今回の戦いで得られたスキルはこの2つだけなのだ。意識がまだあった時はきちんと全て取れたアナウンスが流れたはずだったのだが、蓋を開けてみればこうなっていた。
それにレベルももうほとんど上がらなくなってきていた。いくら経験値が半分しか得られないとはいえ、ほぼ同レベルのものを倒した経験値がこれなのはちょっと残念だ。
「まぁそれだけ成長してるってことなんだろうけどさ」
スキルを得られなかった理由はわからない。ただ、あのタイミングで俺が倒れてしまったことと何かしら関係はあるだろう。むしろ無いと余計分からなくなる。
「カイトくんやりすぎっ!」
「.....えっ?あ、あぁすまん」
「こんな広いところにいっぱい樹を生やしてどうするのよ!」
「考え事してたらつい....」
考え事をしていて自分が何しているのか完全に忘れていた。俺の目の前には高さ3メートルほどの樹が十数本生えている。それだけならまだいいが、俺が生やしている場所は村の一番広い場所だった。
一応、ここに生やした方が集める方も集めやすいし伐採しやすいと言われてやっていたのだが、さすがにやり過ぎたらしい。
「大丈夫ですよ、ミユさん。確かにもう樹は必要なくなりましたが、よろしければ是非これを置いておいてください」
「いいのか?」
「はい!むしろ我らの方からお願いしたいくらいです。これでこの村には村長の大樹と我らの英雄の聖樹が出来たことになるのですから」
「いや、聖樹って....」
「いえいえ、それほどのことですよ。何しろ我らを救って下さったのはあの聖霊様と契約なされたお方なのですから」
「随分と持ち上げるな...。それにしても聖霊?この間も少し思ったが、精霊ではないのか?」
「呼び方に関しては我らも詳しいことは存じません。しかし、この世のどこかに存在する聖なる地に住まう霊体の神様、と我らには伝わっています。そのため我らは彼らを聖霊様、とお呼びするのです」
「なるほどな」
俺は横でふわふわと浮かぶシルフィを見る。その両の手には自身の体よりも大きなレツァーを抱え、ガムシャラに食べている。
「はむ?」
「なんでもないよ」
「はむはむはむ」
俺の視線に気づいたのかシルフィがチラッとこっちを向く。しかし、何でもないと答えるとまた目の前のレツァーに夢中になった。小さいサニアみたいだな。
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「それじゃあ世話になった。そろそろ俺たちも出発するよ」
「名残惜しいですが、仕方ありませんね。我らのわがままで引き留めるわけには行きませんから」
「すまないな。むしろ2週間近く居させてもらえて助かったよ」
「にしゅう....?ま、まぁカイトさんが元気になったのならよかったです。ミユさんや皆さんもお元気で」
「サニアぢゃぁぁぁぁん!!行がないでーー!!」
「......うるさい、離れろ」
「ゔぁぁぁぁぁん!」
「.......あぁ、うっとうしい」
「ゔぁぁぁ......え?」
サニアに抱きつくヘリブラを引き剥がそうとするがなかなか離れない。そんなヘリブラにサニアは唐突に抱きついた。そして背中を少しポンポンしてすぐに離れた。
「........ほら、これでいい?」
「きゃぁぁぁぁ!!愛してるぅぅぅ!」
「........もっとうるさくなった」
引き剥がすためにやったのにヘリブラのストライクゾーンにドストライクだったのか、より騒がしくなってしまった。
「......主さま、どうしよう」
「もう少し、やらせてやりな。サニアも嫌じゃないんだろ?」
「................」
頷かなかったが少し赤くなった耳を見れば一目瞭然だった。それに隊長も何やらミユに思いの丈をぶつけているようだし、他にもテミスのところへ行く者もいた。
さらにはどこかに向けて感謝の気持ちを告げている者もいる。きっとあれは....。
「キノ」
「....うん」
先日、誰もいないはずの場所から勝手に物が運ばれるという怪事件が起こったと言われたときに、騒ぐエルフたちへ必死に説明するサニアを見かけた。
それはわたしたちの仲間だと、名前はキノと言い、姿を見せることは出来ないけど仲間思いのいい子だと。
普段あまり饒舌に喋らないサニアがキノのために必死に説明している姿はとてもカッコ良かった。あたそれをはたから見ていたキノも涙を隠しきれないような表情をしていたのを覚えている。
残念ながらキノの特性もあって名前はエルフ達に覚えてもらえなかったが、それでも彼らも戦闘中に何か分からぬものに助けられた記憶があったのだろう。
思いの外戸惑われずに受け入れてもらえた。今やその中でも何人かが、居場所も名前も分からぬキノに向かって感謝を告げている。
俺はキノを彼らの元へと行かせて差し出されている花束を受け取らせた。いきなり受け取られた花束に彼らは驚いていたが、すぐにキノがいることに気づいたのかその方向へと何度も頭を下げていた。
「隊長。一応、教えてもらったやり方に少しアレンジを加えて、より見つかりにくくはした。だから当分は安全に暮らせるだろうが、俺よりも強い奴らはきっといる。だからあんまり過信しないでくれよ」
「ありがとうございます。今回のことで痛感いたしました。我らはもっと強くならなければならない。過去の栄光に縋らず、けれども過去に負けないほどに」
「あぁ、お前たちならきっとできるさ。.....それじゃまたどこかで」
「えぇ、また」
俺たちは惜しまれる声を背にエルフの村を後にした。
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