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東方迷人記〜空から降って来たのは男の子でした〜  作者: 長良
二章…すれ違い続ける者たち
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魔術使いの物理学者

どうも、遅くなってしまって申し訳ありません!テストやら何やらで忙しくてですね(言い訳)


……まあ、とりあえず一つだけ。

この辺りから、だいぶ展開が早くなる予定です。もしかしたらよくわからない場面等も出てくるかと思われますので、わかりづらい描写があれば、感想の方で愚痴って下さい。出来得る限り直します。


それでは、今話も皆様が楽しんで読むことが出来ますように。

「…………ねえ、パルスィ。」

「なによ?」


立ち上る黒煙をちらりと見て、私はパルスィへ視線を戻した。

「アレ、地霊殿でしょ?紫の近くにいる分には唯衣も安全だろうから、私はさっさとこっちに向かわせてもらうつもりだけど…その前に。」

「……何よ?」

パルスィがその双緑を光らせ、胡乱げにこちらを睨む。

怖い怖い、とおどけながら、私はその目を見返した…いや、睨み返した。


「あの爆発。さっき言ってた、(おぼろ)って奴の関係よね?それと、この地底に充満してる、奇妙な妖気。」


どうせ、全部繋がっているのだろう。私が関わってきた異変は、どれも似た様なものだ。恐らくだが今回も、目の前にあるものの中に、予想の斜め上を行くギミックが隠されている。

神社の資料を見ても、ここまで面倒な異変を立て続けに経験している巫女はいなかった。…全く、生まれ持っての不幸というのは、こういうものの事を言うのではなかろうか。


「…………幻様が関わっているのは、多分正解よ。それと、あの妙な人間。」

「あぁ、あの雑魚共が口を揃えて言ってた人間ね。評判は相当悪いみたいだったけど?」

パルスィの家を強襲する前に、聞き込み(という名の恐喝)をしていた時。その名も知らぬ妖怪達が決まって言うのが、『気持ちの悪い赤づくめの人間』の事だった。

玩具、手下、愛人、etc…様々な憶測が飛び交っていたが、そのどれもが形を持たぬ、噂の域を出ないもの。それそのものは当てにせず、そういう人間がいるという事実だけを頭にしまっておいたのだが…どうやら、そうしておいて正解だったらしい。

「やっぱり、一枚噛んでるのかしらね?」

私がそう言うと、パルスィは心外そうに手を振り、否定の言葉を口にした。

「いえ、そういう意味では無くて…恐らくこれは、幻様とあの人間に対する不信感が爆発したものじゃないかと思うのよ。」

「………はぁ?」

目の前の妖怪が何を言っているのかわからず、無意識に声が出る。どうせ変な顔をしてるんだろうなぁ、と自分で思った。

「そう言えば、貴女はこっちに来たばかりだったわね。それなら知らないのも無理は無いわ。」

そう言うパルスィを前にして、私は動きを放棄していた脳味噌を、久しぶりに回転させてみる。


先程パルスィの口にした『不信感』、そして例の人間の評判の悪さ、地底の長と行動を共にしているという、その意味……

「…………そういう、事…ッ!」

想像し得る限り最悪の事態が進行している事に気付き、私はほぞを噛んだ。

「用事が出来たわ、やっぱり至急地霊殿へ行く!アンタは避難するなり何なり、好きにしなさい!」

「え!?ちょっ……」

パルスィの声をも置き去りにする勢いで、未だ煙を上げる地霊殿へと飛び立つ。今は、ただひたすらに時間が惜しかった。



〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜



地霊殿の門付近ては、かなり規模の大きい乱闘が始まっていた。

空を筆頭とした火力自慢が形ばかりの応戦をしているが、やはり多勢に無勢、反撃という意味での効果は薄い様だ。

……不幸中の幸いは、まだ両陣営に大きな怪我を負った者が出ていない点だろうか。だとすると尚更、早期解決の必要性が高まった事になる。

いくら弾幕ごっことは言え、一度怪我人が出てしまえばそれが『ごっこ』で無くなる可能性が出てくるのだから。


(……ん?)

手を出しあぐね、空中を漂っていると…ふと、視界の端で何かが動いた。

それは地霊殿の三階の窓から、身を乗り出す様なポーズを取っていて。


「……ッ、あれは…」

赤い髪に赤い服。そしてその身体から吹き()で、地底全体に拡がって行く不気味な妖気。

『赤づくめの奇妙な女』はこちらに気付くと、その赤い、赫い、(あか)い目を細め…にたりと、嗤った。


「お前が、元凶か……ッ!」


グンッ!!と、服の端が千切れそうな勢いでの急加速。凄まじい速度で流れる景色に、頭がくらくらする。

事情?そんなものは後でも構わない。今はこの女を…先程の嗤みを見て感じた悪寒を、その源から消し飛ばすのが先決だ。

私は一瞬で女に迫り、そのままゼロ距離で弾幕を放とうとした。

ーーーその、時。



世界から、音が消えた。



先程まで妖怪達が群がっていた、地霊殿の門。そこから目も眩む様な光が放たれ、次の瞬間、地底を揺るがす轟音が響き渡った。

そしてその直後に襲い来る、凄まじいまでの衝撃波。

私は驚きのあまり、体内で収束させていた霊力の制御を手放してしまう。身体の前に浮かんでいた光球が、輝く欠片を散らしながら消えていった。


(な、っ……)

そして、光と振動が収まった後。私が門を見ると……そこに散らばっていたのは、先程まで元気(?)に群がっていた妖怪達。

幸いにも死者はいない様だが、誰も起き上がろうとしない。気を失っているか、戦う意欲を削がれてしまったか…少なくとも全員、戦闘不能状態にまで追い込まれているのだろう。


私は、未だ目の前でにやにやと笑っている女を見て、砕けてしまいそうな程に歯を食いしばる。

恐らく、このままあの場所へ向かうのは簡単だろう…下手人を捕まえるのは別として。だがそれは、つまり『目の前にいる女を放置する』という事。

正直なところ、今はそちらの方が恐ろしかった。


私は再度女を見つめ、手の中に霊力をかき集める。

「………霊符。」

「…………………」

「『夢想封い、ッ!?」


弾幕(スペル)を展開する、その瞬間。言葉に表せない『嫌な予感』が、電気の様に全身を駆け巡った。


咄嗟に、狙いを右へずらす。ドゴドゴドガッ!と、地霊殿の壁に私の弾幕が突き刺さり、破片を散らした。

深まっていた女の笑みが、それを見て少し不愉快そうな色を帯びる。ざまみろ。

「ったく、危ないことするわねアンタ…しかも、随分と意地の悪い手口だこと。」

目を凝らしてよく見ると、女の正面に薄い妖力の流れが見て取れた。

何らかのトラップか、それともその振りをしたギミックか……とにかく、危なそうなものには触れないに限る。


私が強く睨み付けると、女の顔は先程の不愉快そうな表情から、やや呆れた様な、うんざりした様な表情のそれへと変わっていった。

そして、その口が小さく動く。


「………スペルカード。斥力『キネティックリフレクション』」


「んな、ッ!?」

突然のスペル宣言。

敵は目の前、至近距離。回避は不可能。ならば……迎撃しか無いッ!

私も負けじとスペルカードを展開、懐に入れてある(アミュレット)に霊力を込める。


「夢符『退魔符乱b」

「ちょ、ちょっと待って!」

もう少しでスペルが完成…といった所で、ひどく慌てた声が私の目の前から聞こえて来た。

一瞬何を言っているのかわからず、前を見る。…と、そこには、両手を前に突き出して『待った』のポーズを取る赤い女の姿が。

「………は?」

「私が言ったのは『さっき使ったスペル』の名前よ!まだ戦闘は始まってないでしょう!?」

「………はあぁ?」

何を言っているのか、こいつは。

なんだか一気に馬鹿らしくなって、身体中が脱力するのを感じた。

「そんな事はどうでもいいから、さっさと倒させなさいよ。」

今の所は大人しくしているが、いつ門から第二撃が放たれるかわからないのだ。無駄な時間は、無くすに越した事は無い。

「そうもいかないのよ。こっちにも目的ってものがあるのだし、それを達成しない事には……ねえ?」

……やはり、全てが繋がっている。直感的にそう感じた私は、心の中で歯噛みをした。


……非情な話かもしれないが。

これは一度、博麗神社まで戻って、改めて準備をし直して来た方が良いかもしれない。


ここで仮にこの女を倒せたとしても、その先に待っているのはあの超・大火力弾幕。それに、更に言うなら、敵がこの二人(門のアレが単独犯だとすればだが)だけであるとも限らない。

良くも悪くも、情報が無さすぎるのだ。こんな状況下で挑んでは、勝てる戦も勝てはしない。

文のありがたさが、今になって心に染みる。


「ちょっと、敵を前にして考え事?随分と余裕がある様ね。」

私が思考を巡らせていると、窓から身を乗り出す様な格好になった女が、いかにも咬ませ犬といった感じの台詞を吐いてきた。

待てと言ったり敵主張してみたり、都合の良い奴である。

「まだ自己紹介も済ませて無いのに、弾幕ごっこも何も無いでしょ。さっきはアンタから来たんだし。」

「そもそもそれ自体が誤解なんだけどね…ま、それは良いわ。」

はぁ、と小さくため息を吐き、女はマントを翻す。


「それじゃあ、改めまして。人間界の魔術師、同時に比較物理学教授の岡崎夢美よ。以後宜しくお願いするわ。」

「はいはい、ご丁寧にどうも。幻想郷の素敵な巫女こと、博麗霊夢よ。

……さっさとかかって来なさい、時間の無駄。」




「「………スペルカードッ!」」

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