陰と陽の、心の交わり
ようやっと更新ッ!どうもお久しぶりです、毎度お馴染み長良です。
今回はあんまりすごい修羅場にはならないよー、って言っておきながら…いやはや、結構キツい展開ですよ(堂々とネタバレ)。
それでは、本編をお楽しみ下さい。
勇儀から重要な証言(?)を得た私は、今まさに下手人たるパルスィを目の前に正座させ、首根っこを掴み上げていた。
因みに勇儀は、今は文を相手に文字通りの鬼ごっこを楽しんでいる様である。
「……さぁ、今度は吐くのはアンタよ。私の堪忍袋が切れる前に、きりきり喋りなさい。」
「もう切れてる様に見え「あ゛あ゛ん゛?」何でも無いわ……」
どこか諦観した様に溜息を吐き、こちらを睨むパルスィ。
……何故、そんな目で見られなければならないのだろう。少なくとも、私が恨まれる理由は(友人を吹き飛ばした以外は)殆ど無い筈だし、そもそもの話、何故こいつが唯衣をここまで庇い立てするのかがわからない。
偉そうな事を言っておきながら、当の私自身が現状を把握しきれていないのだ……全く、紫がいたら何と言われただろうか。
「……ねぇ、博麗の巫女。」
と、思考の整理で手一杯になっているところに、パルスィの声が割り込んで来る。
集中を乱された私は、つい衝動のままに食ってかかってしまった。
「あぁ!?何よ、人が考え事してるってのに!」
「ひッ……!?」
ビクッ、と硬直するパルスィ。
よほど恐ろしい形相になっていたのだろう、涙目になって縮こまる姿に少しの罪悪感が湧いた。
「あ、いや…何でも無いわ。ちょっと色々複雑で、気が立ってたの。悪かったわね。」
「え、ええ……?」
ただでさえ正座中の身には辛かっただろう、胸ぐらを吊り上げられた状態。そこへ更に上へ向かって力が込められたのだから、たまったものでは無かったと思われる。
少し咳き込みながらも怒りを見せないパルスィに対し、少し申し訳なく思いながら、話の先を促した。
「で?何よ、さっきの。」
「いえ、大した事じゃ無いのだけどねーーー」
少女説明中…
「……………はぁ?何よそれ。」
「いやだって、わざわざ貴女がこんな所まで。」
パルスィの話の内容は、簡潔に説明するなら『私が唯衣を捜索している理由は、彼が何か大きな悪事を犯したからである』という根も葉もない推論そのものだった。
勿論そんな事はありえないし、そもそもあんなちっぽけな人間一人に一体何が出来ると言うのだろう。
「……要は、最初から誤解だったって訳ね。」
「そうなるのかしら。」
呆れ返った私をちらりと一瞥し、つまらなそうに言うパルスィ。
だが息をついたのも束の間。その口から、再び衝撃的な言葉が発せられた。
「でもね、巫女。まだもう一つあるのよ……『勘違い』が。」
「………え?」
彼女の言葉の真意を確かめようとした、その時。私は、気付いてしまった。
空気が、凍る。私が結論に行き着いてしまったその瞬間、周囲の温度がまるで氷点下まで下がった様な錯覚に囚われた。
そう。私は一度パルスィの家に上がり込んでいる。ついでに言うなら、コイツの家は所謂長屋、縦に長く狭い構造になっていた筈だ。
なら。
なら…何故、唯衣が家の中にいなかった?
「気付いたみたいね…つまりはそういう事よ。これは、今度は貴女の勘違い。」
「………ッ!!」
私は、気付けばパルスィを地面に押し倒し、首筋を片手で締め上げていた。
ひゅう、という空気の漏れる音が、周囲に虚しく木霊する。
「妖怪風情が、私の唯衣を何処へやった…吐きなさい!」
まるで身体の中を溶岩が流れている様な、そんな感覚だった。身体中が熱くなり、頭と顔に熱が集まって行く。
「今の貴女の方が、よっぽど妖怪みたいね……ゲホッ!苦しいわ、離して頂戴。」
パルスィから見た私の表情は、先程とはまるで比べ物にならない様な凄まじいものの筈である。なのにコイツは、今度は全く恐れる様子を見せない。寧ろ、嘲りや哀れみを込めた笑みを浮かべ、不敵に私を見返してさえいた。
その表情を見ていると、何だか心の内がむかむかして来る…いや、そんな生易しいものでは無い。今、スペルカードルールから逸脱した明確な『殺意』を、私はこの妖怪に対して抱いていた。
「………………。
アンタの知っている事全てを、嘘偽り無く言いなさい。そうすれば、離してあげる。」
だが、私は中立を守る博麗の巫女。こんな薄汚れた感情には、呑まれる訳にはいかないのだ。
嗚呼、苦しい。この身体に秘められた負の情の全てを解き放つ事が出来たなら、どんなに楽かわからない…だが、永遠にその時が訪れないのもわかっている。
だから私は、持てる全ての理性を総動員して、こう言うのだ。もう一度。
「さぁ、きりきり吐きなさい……私の堪忍袋の緒が、切れる前に。」
そんな私を見たパルスィは、少し以外そうに目を瞬かせた後に、突然小さく吹き出した。
「……どうしたの?さっさと喋りなさい。」
「いや、一寸おかしかっただけよ。……あのね?博麗の巫女。」
「あ?」
今も尚締め付けられている、パルスィの首。その元凶たる私の腕を強引に引き剥がし、パルスィはいきなり私の後頭部を掴んで引き寄せて来た。
「……ッ!?」
そして、互いの鼻がぶつかりそうな距離まで近付いた時。彼女が私を強く睨んでいるという事に、ようやく気付くことが出来た。
ありったけの嫉妬、敵意、嫌悪…それら全てが込められた目線を私に向けながら、彼女は小さく口を開く。
「やはり、私の見間違いなんかじゃなかったわ…貴女は、弱くなった。」
見る者が震え上がる様な、悍ましい笑み。それを更に深め、パルスィは私に言い聞かせる様に、ゆっくりと呼びかけて来る。
「……何がよ。まだ老いてなんかいないけど?」
「そもそも耄碌するまで続かないでしょ、そんな稼業。……そうじゃない。私が言っているのは、精神面のことよ。」
「……………」
「さっきの貴女…とても美味しい『嫉妬』の念を感じたわ。貴女は、私の事を狂おしいまでに妬んでいる。勿論、今この瞬間も。」
黙り込んだ私にも構わず、滔々と話し続けるパルスィ。
彼女の言っている事をこれ以上は聞きたくないと、心が叫んでいる。それなのに、過剰なまでに近付いたその顔を離そうとは、不思議と思わなかった。
「…………私は、」
何か言わなければと思い、口を開く。だがそれも、続けて放たれたパルスィの声に封殺されてしまう。
「それは何故か。
純粋に、妬ましかったからでしょう?彼と…唯衣君と、自分の知らない所で『何か』を共有している私が。」
「うっさい…」
「そう言えば、さっき『私の』唯衣とか言ってたわね。貴女が弱くなった理由は……それかしら?」
「五月蝿い、黙れッッ!!!」
流石に、我慢の限界だった。
私を馬鹿にするだけならまだ良い。だが唯衣を引き合いに出して、彼をも愚弄するのは許せない!
「黙らないわ!こういう淀んだ人間は大嫌いなの、自分と同じ位に。
……ねえ、博麗の巫女。唯衣君は、貴女の、何?」
「…………恋人よ。誰よりも大切な。」
「そう。…でも今の貴女は、どうしてもそういう風には見えないわ。」
全ての込めた私のその一言を、パルスィはばっさりと否定する。
いつしか、互いの立場は逆転していた。
「どういう、事よ?」
「今の貴女は、まるで巣を護る親鳥のよう。雛が巣から連れ去られれば慌てて探すし、その元凶を全力で排除しにかかる……その姿勢は正しいわ、彼が本当に雛なら…ね。」
「……何を言っているのか、わからないわ。」
「わからないならそれで結構、私は私の言いたい事を言うだけよ。
はっきり言うわ。貴女、唯衣君が此処に来て尚生き残れた理由…まさか私が保護したからだとか、偶然だとか思ってはいないわよね?」
「……それ以外に、人間が生き残る術なんて無いわ。」
これは、既に文とも話していた。そういう意味で言うなら、唯衣がパルスィの家に来ていたのは幸運と言えただろう。
「ええ、それは正しいわよ。…でもね?彼の持つ生存への意思は、私から見ても凄まじいものがあった。」
「………?」
何を言っているのかわからず、黙り込む。
「私は、彼がこっちに来てすぐに全てを説明したわ。多少記憶が飛んでいる様だったけど、今考えてみればアレは嘘ね。
…これが何を意味するか、わかる?」
「何を…言っているの?」
「ありのままの真実。
考えてわからない?彼は全く知らない地に放り込まれて、展開に呑み込まれるがままそこの住人に保護された。普通ならパニックよ?しかもその状況で、記憶喪失のフリをして自分の素性を隠すなんて荒業までやってのける……土壇場の精神力と、頭の回転が半端じゃないわ。恐ろしく弱いが故に、彼は誰よりも生きる力を身につけようとしたのよ。」
「…………でもそれは、守られなくて良い理由にはならないわ。」
「ええ、全く以てその通りよ。でも、それを差し引いても貴女は過保護だって言ってるの。」
「…………………」
「ま、そうそう受け入れられる事じゃ無いって位はわかるわ。さっさと迎えに行って、それでよく話し合いなさい。唯衣君の性格からして、正しい在り方を見つけるのは決して難しくない筈よ。」
「………礼は、言わないわよ。」
「私だって言われたかないわ。さぁ、早く迎えに行って……あぁ、そうそう。」
「ん?」
「唯衣君……誘拐されちゃったんだった。」
………………えっ?
「………はあぁ!?」
はい、終始圧倒されっ放しだったパルスィさんが無双する回でした。
でも、今回も最後の最後でいい感じに収める事が出来たのは、ひとえにパルスィの性格あってこそだと思います。何だかんだでいい奴っぽいイメージなんですよね、僕の中では。
霊夢とパルスィって、互いに結構な鬼門ですよね。魔理沙とは逆に仲良くなれそうですけれど。
魔理沙とかは、キツい事言われても笑って受け止めてそうです。




