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東方迷人記〜空から降って来たのは男の子でした〜  作者: 長良
二章…すれ違い続ける者たち
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幻(おぼろ)の胎動、そして波乱の予兆

ううむ……誰か文才を下さい。切実に。


というわけで、今回はその元々無い文才を振り絞って書いてみました。伏線もばっちり仕込んであります。

というか、何故か魔理沙が謎めいたキャラになりつつある……解せぬ。


十日…前?そう言ったのか、この阿呆は。

「ちょっとあんた…どういう事よ。十日前?そんなモン、地底に行ったところでもう妖怪の餌になってるに決まってるじゃないのッ!」

「一日目を生き延びる事さえ出来れば、十日だろうが一ヶ月だろうが生きて行けますよ。あそこはそういう場所でしょう?」

冷静になって下さい、霊夢さんも判っているでしょうに…と何食わぬ顔で言う文。私はそれに対して、黙ってほぞを噛む事しか出来なかった。


確かに、コイツの言は正しい。地底という無法地帯において弱い者が生き残るには、それこそ強者の影にお邪魔する位しか方法が無いのだから。

ただしそれは、その例から漏れた者は容赦無く淘汰されるという、救いの無い現実が存在する事も意味している。そして唯衣がその中で生きていけるかと言えば…恐らくだが、五分五分と言った所だろう。

「それもそうだけど……」

「大丈夫ですよ、そう簡単に死ぬ人にも見えませんし。」

「…………」

しかしこの烏天狗、やけにあっさりと言い切る。

疑問より先に、状況をよく把握出来ているのかと怒りが湧いた。

「……何か、まるで直接見たかの様に言うわね。アンタにはあえて近付かせなかった筈なんだけど?」

良くも悪くも正直な唯衣の事だ。この悪魔(天狗だが)に、有る事無い事吹き込まれでもしたら困る。

「あやや、やっぱりそうでしたか…でもまぁ、関係ありませんけどねそんなの。それこそネタ欲しさにストーキングしっ放しでしたし。」

「…………あ?」

「あっ………」

時間が、止まった。


「地の果てまで吹き飛べッ、射命丸文ッ!!」

「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛!」



〜五分の(のち)


「まぁ確かに、あいつに限って万が一ってことは無いか…どうせ変な妖怪にべったり好かれて、今頃困ってんでしょ。」

私の勘が、そう言っている。時に未来予知をも凌駕する、女の勘が。

「まぁ確かに、無駄に良い人ですしねー。そいでもって性格はおっとりしてて気弱、ついでに顔も良いと…霊夢さん、よくあんな人墜とせましたね「今度こそ焼き鳥にするわよ?」勘弁して下さいよぉ…」


……兎にも角にも。

「まずは、唯衣が地底のどこにいるのかを突き止めなきゃ。文、写真はあと何枚ある?」

「あー、っと……」

冷や汗を垂らしながら、虚ろな目で(くう)を見つめ始めた文。

これは、まさか…….

「………ねぇ、文さん…?」

「家に忘れて来ました、すみません!」

「夢想封印ッッ!」

「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛!」




(とりあえず、と……)

私は、吹き飛んで行く(バカ)を尻目に思考する。

(目下警戒すべきは、唯衣(あのこ)に付く悪い虫ね。それが最優先、と。)

先程も話していた通り、唯衣はあの通りの成りである。生きているなら、そしてどこぞの妖怪に世話になっているのだとしたら、向こうが余計な気を起こさないとも限らない。ただでさえ女性比率の高い種族なのだから、妖怪は。


………さて。場合によっては、彼とは少し話し合わなければならないかもしれない。

「恐いです霊夢さん、殺気収めて。」

「何、生きてたの?」

「酷いですぅ……」



〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜



そして、そんな下らないやり取りから約半刻の後。


「……お、やっと見えて来たわね。」

遠くの森に見える黒い点は、地の底へと続く暗い道。

幻想風穴……普通の人間もそうでない人間(私含む)も、普段は立ち入る事すらしようとしない第一級の危険地帯である。

その名の通り、この地においてすら幻想となりつつある…言わば、地上から排斥された妖怪達の集う場所・地底と、明るい地上を結ぶ道。それが、この深く暗い縦穴だ。


「……さて、文。」

「ええ、わかってます。にしてもこれは……予想よりも、遥かにやばい事になってそうですね。」

「そうね……何か、すごく気持ち悪いわ。」

そこら中に渦巻く凄まじい妖気に気付いていたのは、どうやら私だけでは無かった様だ。


いくら入り口とは言え、ここはまだあくまで『地上』にカテゴライズされている場所だ。

それは、言うなればその程度の危険しか無いという事で…つまり、そこまで強い妖怪はまだここにはいないという事。


そもそも地底にいる妖怪は、鬼等の規格外な存在を除けばあまり力で押してくるタイプでは無いのだ。それそのものの『在り方』や能力を、周囲に否定され尽くした者達の集いなのだから、あそこは。

だが、しかし。

そんな事前知識と噛み合わない程の途轍もない妖力が、現在進行形でこの穴から噴き出ていた。


「これは……鬼とかじゃ無いわね、もっと純粋な妖気よ。」

私の勘が告げている。この先、長くなるぞーーーと。

「………霊夢さーん。」

「あ?」

「帰って良いですk「アンタは黙ってろ逃げ専」ですよね〜…」

全く、何を言っているのかこの天狗は。……まあ確かに、この分だと『唯衣を連れて帰る』の他に、もう一つ仕事が増えてしまいそうな雰囲気ではあるけれど。

「……ま、異変解決も巫女の仕事ってね。」

私はそう呟き、自分に気合いを入れようとした。

その瞬間ーーー



「おーい、霊夢ぅーーっ!」


私達が飛んでいる、その真下辺り……つまり森の中から、聞き覚えのある声が。


「……魔理沙さんの声、ですかね。」

「ああもう、何よこんな時に……文、ちょっと待ってて頂戴。」

「わかりました、聞き耳立ててますね!」

「お好きにどーぞ……」



〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


森の中に降りてみると案の定、そこには見慣れた姿が。

「いやはや、こいつは丁度良かったぜ。ちょっと用があってなあ…探してたんだよ、霊夢。」

「用?私に?…何にせよ、とっとと済ませて頂戴。こちとら急いでんの。」

低い身長に似合わぬ、不敵な佇まい。それは相変わらずだった…のだが、何故か、トレードマークの箒を持っていない。

修理にでも出しているのだろうか…何だかそれだけで、目の前の少女が魔理沙に見えなくなってしまった様な、そんな恐ろしい錯覚を覚えてしまいそうになる。

それに……


(この子、まだ頭痛治って無いじゃない…)


恐らく隠し通せているつもりなのだろうが、首筋を伝う汗や上気した顔を見れば一目瞭然。

どう見ても、全快している様には見えなかった。



「ん、お前は地底に行くのか?……今の地底(あそこ)は、あまりお勧めしないぜ。」

「んな事ぁわかってるわよ。それも含めて、ちょっと用事が出来たの。」

そんな分かり切った事より、今は早く要件を話して欲しいのだが…あとついでに、魔理沙の抱えている問題も話してくれると尚良い。


「用事が『ある』じゃなくて『出来た』ねぇ……」

「アンタも来る?」

「まさか。私は自ら死地に赴く様な理由は無いんでね、どっかの巫女と違って。」

「ぐぅ………」

何か言い返してやりたいが、悔しい事に反論の余地が全く無い。

と言うかこの魔法使い、実は全部知っているのでは無かろうか?何だかどうしても、その様な言い回しに聞こえてしまう。

「とっ…とにかく、その用とやらを早く言いなさいよ!私達も忙しいんだから。」

私が矢継ぎ早にそう言うと、魔理沙は意外そうに目を瞬かせ、

「私…達?他に誰かいるのか?」

「……アンタ、視力落ちた?上で文がホバリングしてるわよ『私はハチドリじゃありません!鴉です!!』ほら。」

「あー、本当だ。お調子者の声が聞こえて来るぜ。」

やれやれと肩を竦める魔理沙。だが、やはりその動きにはキレが無い…寧ろ、やっと動かしているとまで言えそうな程だった。

……これは、おかしい。先日の頭痛騒ぎがあったにせよ、そもそも魔理沙がここまで体調を崩しているという事自体、もう既に異常事態と言っても過言ではない程のものである。


……あぁ。お願いだから、これ以上不思議を増やさないで欲しい。そろそろ私の容量(キャパシティ)の限界を超えてしまいそうだ。

幾つもの事を並行して行うのは元々苦手だというのに、ましてやそれが全く無関係のもの同士でも無いと来れば…言わずもがな、である。


「はぁ……魔理沙、あの後何かあったりしたの?」

「あの後…?心当たりがあり過ぎて、よくわからないぜ。どの後の事を言ってるんだ?」

魔理沙はその細い首を傾げ、すこし思い出そうとする様な仕草をした…が、五秒も経たない内に諦めて手を下ろす。

いや、もうちょい粘れよ。

「…私がアンタの家に無断で侵入した時よ。頭痛いとか言ってたやつ。」

「あ、不法侵入だって自覚はあったのな。……しかしあの後、ねぇ…

あぁ、そう言えば何か突然魅魔様が訪ねて来たな。んで頭が痛いって言ったらえらく心配して、痛み止めの薬草をくれたんだった。」

「それだけ?」

「それだけ。」

事も無げに頷く魔理沙……もしかしてこの子は今、自分が置かれている状況を上手く自覚出来ていないのでは無いだろうか。

しかし……心配などらしくないというのも、自分が一番よくわかっている。

だから、私は。


「…………そう、それなら良いわ。くれぐれも、無理はしない事ね。

後は、えーっと…そうそう。用って何の事よ?」

「ん、いきなりで悪いんだけどさーーーー















「霊夢さん……魔理沙さん、本当に大丈夫なんですか?相当参っている様に見えましたけど。」

私が上空に戻ってすぐ、隣を飛ぶ文が尋ねてきた。

……こうして考えてみると、文と魔理沙はどこか似ている。だからこそ、やはり文としても心配なのかも知れない。

「大丈夫よ、多分。それに何か『その(とき)が来れば治るから』とか言ってたわ。」

「その…刻?」

不思議そうに首を傾げる文。

「ええ。ま、どうせ碌でも無い事考えてるんでしょ。」

「そうですかねぇ……あ、そうだ霊夢さん。魔理沙さんの用事って結局何だったんです?」

「身代わりの札。」

「え…?」

再び、文の首が横に曲がる。

「だーかーら、身代わりの札よ。スペルカードの効果によらない場合に限り、ダメージを一回だけ無効化できる…言わば、今の幻想郷においては無用の長物ね。」

「はー……そんなもの、何に使おうって言うんでしょうね?」

「私が知るかっての……とにかく、今はあいつの事はほっときましょう。一番の目的は唯衣の救出よ。」

「はい。では………行きましょう。」


そうして私達は、依然として不気味な妖力を吐き出し続ける風穴へと飛び込んだ。

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