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東方迷人記〜空から降って来たのは男の子でした〜  作者: 長良
二章…すれ違い続ける者たち
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暗闇の会話

暗い、本棚ばかりが並べられた部屋に、二人分の足音と息遣いが響く。

規模以外は紅魔館の大図書館に似ているが、どうやらそれに少し近代的な意匠が追加されている部様な、そんな部屋。

そこかしこにある椅子と文机(ふづくえ)には華美な装飾が施されており、一目見ただけで高級な品だと察する事が出来る。


と、部屋の中を歩く二つの影の内、背の低い方がもう片方に話し掛けた。

「……ねぇ、童子(どうじ)さん。」

ゆったりとした知性を感じさせる、女の声。

少しの不安が含まれたそれに対し、童子と呼ばれた大きい方の影ーー額に一本の角を生やした、大柄な男に見えるーーが、伸びのある低い声で返事をする。

「何だ、岡崎殿?」

……必要な事以外は一切含まれていない、簡潔極まる返答。それが、この童子の性格の一端を表していた。

そして岡崎と呼ばれた女性は、おずおずと口を開く。

「貴方を疑う訳では無いわ。でも、もう一度確認しておきたいの。」

「……話してくれ。」

どこまでも淡々とした様子を崩さない童子。それに対して、岡崎はどこか呆れた様な声で告げる。

「貴方がこれから行う行為は、向こうからすれば明確な裏切りに当たる筈よ。もしかしたら、もう気付かれているかも知れない…それでも貴方は、私達に(くみ)すると言うの?」

「……………」

それを聞いて、初めて童子が足を止めた。そして岡崎の方へと向き直り、やはり抑揚を感じさせない口調で言う。

「今、拙者は望んで此処に立っている。それも、妖怪の未来を憂いてだ。……今救える者達を見捨ててまで、あの場所に戻りたいとは思わん。」

「………………っ。」

「裏切りだと?この裏切りに、何の負い目を感じる必要がある?少なくとも我々にとっては、これが自分達の『正義』だろう。」

強い眼光を放ち煌めく、双の瞳。その視線が、岡崎を貫く。

岡崎は大きく溜息を吐き、やれやれとでも言いたそうに手を広げた。

「私の負け、か。ちょっとどういう反応が来るか試してみただけだったんだけど…まさか、ここまで見事に論破されちゃうとは。」

「……それは、褒められているのか?」

「多分ねー。」

先程までのしおらしい雰囲気は何処へやら、一変して快活な空気を纏い出す岡崎。

「さて、じゃあ今回の私達の役目を話すわ。私はとりあえず『向こう』に行ってひと暴れして来るだけで充分、貴方は私の護衛&補佐役。」

「一見無意味…寧ろ向こうの警戒心を煽るだけの様に見えるが、何か意味があるのか?」

少しの疑問を声に混ぜ、岡崎に問う童子。

その声からは、かつての同胞を少しでも傷付けたくないという思いが滲み出ていた。

「ひと暴れって言っても、そんなに派手にする必要は無いわ。私達の存在が向こうに広まれば、それで首尾はオーケー。」

「成る程…それなら、拙者にも出来る事はあるだろうな。」

「ええ、そうよ。……あ、そうそう。私達が向かう先は、地底の奥の方ね。」

「了解した……と言うより、恐らくそうだろうとは思っていたが。」

「なら話が早いわ。

もう準備は整っています…行きましょう。」


そうして、立ち止まっていた影は、再び歩みを進め始める。


「……あぁ、童子さん。」

「どうした、岡崎殿?」

「今回は、魔理沙も来るから。地上の事は、あの子に任せて良いそうよ。」

「奴が、か……加減を誤らないと良いが。」


岡崎は、童子のその発言にくすりと笑い……そしてその後、二人の間に会話は無くなった。

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