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東方迷人記〜空から降って来たのは男の子でした〜  作者: 長良
二章…すれ違い続ける者たち
20/31

修行ルートの行く末は

さぁ、今回は諏訪子様のターンです。

あと今回は、ちょっと下ネタ染みたネタ(本人達は至って真面目です)も出て来ますので、苦手な方は今回は飛ばして頂いてもさして問題は御座いません。ストーリー的にも、あまり重要な回ではありませんし。

「……鍛え、る?」

呆然と呟く唯衣。頭が展開について行けていないのが丸わかりの、(ほう)けた表情である。

「ええ、そうよ。詳しい事情は今は話せないけれど…今は貴方を、妖怪と渡り合える位に強くするのが先決。」

目線で詳細を求める唯衣対し、それでも柔らかい口調とは言え『理由は説明しない』と明確に言い放った神奈子。

確かに正直さというものは、人間の間では美徳とされる。しかしこの場合、唯衣を相手にそう宣言したのは、神奈子にとっては失策以外の何物でも無かった。


彼は少し躊躇う仕草を見せた後、後ろを振り向かないまま尋ねる。神である神奈子に背を向けるのは、礼に欠けると判断したのだろう。

「……紫さん、貴女は知っているんですか?神奈子さんが隠している事、全部を。」

「私?ええ、知っているわよ。」

事も無げに頷く紫。

それを聞いた唯衣は小さく「そうですか」と呟き、姿勢を正す。そして神奈子を正面から見据え、深く頭を下げた。

「では、お願いします。」

彼の中で、どういう葛藤があったのかはわからない…いや、寧ろ『ここにこれだけの面子が集まっている』という時点で、何かを察していたのかも知れない。

「ええ、任せておきなさい…ま、直接指導するのは私じゃ無いんだけどね。」

苦笑しながら頭を掻く神奈子に対し、そして唯衣は更に言葉を重ねる。


「あと、これは僕の勘なのですが、何かこう…良くない事が、起ころうとしているんじゃ無いですか?

霊夢より先に藍さんが来たのが不思議で、ずっと考えていたのですけど……」


その唯衣の台詞に神奈子は目を見開き、紫は小さく口角を吊り上げ、魅魔はひゅうと口笛を吹く。




「OK、合格だよ。唯衣君…だっけ?こっち来て。」


時間が止まったかの様な、その一瞬。刹那の間を縫う様に、いつの間にか隣に立っていた諏訪子(唯衣が飛び上がって驚いたのは言うまでもない)の声が、静まり返った場に響き渡る。

そしてまだ何か言いたそうにしながらも、諏訪子に手を引かれ社の中へ進んで行く唯衣。



去り行く二人の後ろ姿を見ながら、神・妖怪・悪霊の三人は、溜息を漏らして話していた。


「何かあの子……鋭いとかってレベルじゃ無いわよ?一体どんな教育したの、八雲紫。」

未だ笑みを浮かべたままの紫に、驚きと疑念の混じった鋭い視線を向ける神奈子。

「……私は何も。強いて言うなら、恐らく霊夢の影響を強く受けているのでは無いかと思われますわ。」

「巫女の?まぁ確かに、感受性の高そうな子ではあったけど…でもあんな異常なまでの勘、そうそう身に付くものかしら。」

唯衣の入って行った社の入り口を、神奈子は穴でも空きそうな程に見つめながら毒付いた。

「あんな素直で良い子が、まさか幻想入りとは……外の世界も、もう本格的に腐って来てるのかも知れないわね。」

「………そうですわね。幻想郷、それ即ち全てから否定され、忘却されし者の行き着く最後の楽園…と言った所でしょうか。あの子も可哀想に。」

何があったらこんな事になるのでしょうね、と呟く紫の顔を、その時神奈子は見ていなかった。だからこそ、気付かなかったのも致し方ないだろう。


その時紫が、見る者を震え上がらせる様な、静かな()みを浮かべていた事に。





「………あれ、魅魔はどこ行ったの?」

「さっき麓の方へ飛んで行きましたわ。大方(おおかた)魔理沙にでも会いに行ったのでしょう。」

「親バカここに極まれり、か……」



〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


唯衣が社の中に入って直ぐ、奥から誰かが怒鳴る様な声が聞こえて来た。

「……あれ?あの声は…」

「お、早苗も頑張ってるねぇ。」

一月前に聞いて以来まだ記憶に新しい、少女特有の澄んだ声。

この神社の巫女…もとい風祝(かぜはふり)という立場に立つ、東風谷(こちや)早苗(さなえ)の声である。

互いに少し前まで外の世界に住んでいたというのもあり、唯衣にとって早苗は心おきなく話せる友人として認識されていた。一度会っただけではあるが、双方共そんな事は気にも留めていない様子。

そして唯衣が察するに、どうやら声は突き当たりの小部屋から聞こえて来る様だ。


「……諏訪子様、で宜しかったでしょうか。」

「んー、そうだけど?どうしたのさ藪からスティックに。」

スティック!?と危うく表情を崩しそうになる唯衣だが、何とか平静を保つ事に成功。そしてあえて神妙な雰囲気を漂わせたまま、諏訪子に尋ねた。

「あの部屋……一体、何があるんですか?」


彼自身も自覚している、最近身に付いた奇妙な『勘』。本人も少し不気味に思うそれが、今回ばかりは有難かった。

それほどまでに、唯衣は例の部屋から尋常では無い『嫌な予感』を感じていたのである。


「ふーん…やっぱ不思議な子だねえ。私に気付いたり、魅魔の霊力にビビってたり。単純に力を恐れるってのとも違う気がするし……やっぱり巫女の影響、いやでもあれが人に影響を与えられるか……?」

「あ、あのー…諏訪子様?」

何をぶつぶつ言っているのか、という問いと、自分の質問に答えて貰っていないぞという訴えを織り交ぜた言葉で、唯衣は何やら独り言を零す諏訪子に声を掛けた。

「私の事は諏訪ちゃんで良いよ、私がそう言ってるんだから構わない。……んでさ、唯衣君?」

自分の世界に入りながらも、一応声は聞こえていたらしい。諏訪子は唯衣の問いに対して答えになっていない返答を返し、今度は彼女から質問を投げ付けた。

……投げ掛けた、では無い。投げ付けたという表現が(まさ)にぴったりな様子だった。

「はい、何でしょうか?」

「敬語も要らない…って言っても、どうせ君は聞かないんだろうねぇ。もう少し聞き分けが良いと女の子にモテるよ?」

「べ、別にモテたい訳では……」

頬を軽く朱に染め、視線を逸らす唯衣。恋愛事に疎いのは一月経っても変わらなかった様である。

「そんな可愛い顔して何言ってんのさ……ま、良いや。

唯衣君はさ、確か巫女と同棲してたんだよね?その間に一回でも目交わった事って、ある?」

「え?まぐ、わ………なっ…!?」

聞き慣れない単語に目をぱちくりとさせていた唯衣だが、直ぐにその意味を察したのか、瞬間的に今度は顔を真っ赤にして叫んだ。

「あ、ある訳無いじゃないですか!?」

「嘘ぉ、無かったの?……うーん、確かに乳は無いけど器量は良いし、それにいざ啼かせれば結構良い顔すると思うよあの子?食指が伸びない方がおかしな気がするけど。」

「良い顔、って……そういう問題じゃありません!男として、そこは僕が分別を付けないと!」

これでも我慢したんです!と色々台無しな台詞を吐く唯衣。しかし気が動転しているのか、恐らく自分の言った事の意味に気が付いていない。

「ふーん…ま、その辺は君も男の子だしねぇ。わかってあげなかった巫女も悪い、か。

さて、じゃあ本題に入ろう。」

「っ……」

本題じゃ無かったんですか、と突っ込みを入れようとした唯衣だが、諏訪子のその目を見て口を噤んだ。

「私のさっきの質問にも、一応意味はあったんだよ…ねぇ、唯衣君。夜伽の時、何をとは言わないけれど男の子は『出す』側で、女の子は『出される』側じゃない。」

「…………………まぁ、そうですね。」

自分が霊夢に『出し』ている所を想像してしまったのか、再び顔を赤くしながらも頷く唯衣。

「……今何を考えたのかわかるけど、あえて私は何も言わないよ。

で、だ。問題はそこ、君が『出す』側だって事なのね。」

「はい?」

「男の子の精っていうのは、生物学的な意味で見ても生命の塊の様なものなんだよね。例えば特殊な薬を作る際、時に魂そのものにすら例えられるソレを使う事も多い。」

「…………」

最早、どう反応して良いのかわからない唯衣である。

「そしてそれを自分の身体に受ける女の子は、その魂が持つ性質をモロに受け止めてしまうんだ。表面化する事はあんまり無いけどね。」

まるで保険の授業をする教師の様な面持ちで、神妙に語る諏訪子。

本人は至って真面目であり(そして唯衣が場の空気に耐える様を見て楽しんでおり)、唯衣もそれを感じているので目を逸らす訳にもいかず、ずっとそわそわと居心地の悪い様な雰囲気を感じていた。

「仮にこの構図が逆だとするなら、唯衣君…君が巫女の『勘』を、精を通じて受け取ったという仮説が成り立つんだよ。でもそれは違う、だって君男の子だし。」

「あっ……!」

漸く、話の意図に気付いた唯衣。

「そ、つまりはそういう事。もしかしてもしかしたら逆もあるのかと思ったけど…何とまぁ、まだ一回もヤって無いそうじゃない。」

「それはそうですっ…!」

幻想郷の生活水準は、大体江戸時代後期から明治時代初期の農村程度でストップしている。勿論この時代に『避妊』などという概念は無い。作りたきゃヤれ、じゃなきゃヤるな、と。

霊夢も唯衣も、互いにそれを理解していたから今まで間違いを起こす事は無かった。

だがしかし。

(この人の前じゃ、そんな事言っても意味無いんだろうなぁ……)

先程から話していて唯衣が感じたのは、生きる事に対する、神特有の余裕。そしてどうせ生きるなら笑わにゃ損々、とでも言いたそうな陽気さであった。

神奈子とは真逆の、本当の意味で親しみやすい…しかしある種の隔絶をはっきりと感じさせられる、そんなタイプである。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


気付けば、二人は扉の前で立ち止まって話をしていた。分厚い板を隔てた向こうからは、未だに早苗の怒声が響いている。

「おっとっと…早苗の頭の血管がプッツンする前に早く行かなきゃ。」

「中がどんな状況なのか、教えて欲しいのですが……」

「入ればわかると思う。

早苗ー!唯衣君連れて来たよ!」

バンッ!と、幼い身体に似合わぬ膂力で扉をぶち開ける諏訪子。

その中では。


「……………入ってもわからない時は、どうしたら……?」


部屋の中にいたのは、布団に寝転がる美女と、その胸倉を掴んで額に筋を浮かべながら怒鳴る早苗、そして壁を向いて体育座りをしている翼の生えた少女。

混沌(chaos)ここに極まれり。傍目だけではどう考えても理解不能な光景が、二人の目の前に広がっていた。

さぁ、諏訪子様が良い感じに引っ掻き回してくれました。そして更に新キャラ登場!

更に波乱の予感です…!


皆様、次回をお楽しみに!

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