回想〜A strange phenomenon〜
何やらここ最近(というか二章に入ってから)、毎日のPV数が100人を超えていて……少しどころじゃない、かなり驚いています。
純粋なラブコメ(のつもり)よりも、やはり異変とか盛り込んだ方が読む側としては楽しいのですかねえ…?
「ほら文、あんたもっと早く飛べるでしょ!何もたもたしてんのよ!」
「えー…だって私、地底には行きたく無いんですよぉ……」
「あんたの意見なんか聞いて無いの!」
「横暴だーッ!?」
私達は唯衣を連れ戻すべく、地底への穴を目指して飛んでいた。
……そう、私 達。
私の隣にいるのは、唯衣に関する情報の提供者、射命丸文。今こそトロトロ飛んでいるが、本来なら私の三倍近い速度で飛ぶ能力を持つ、自他共に認める幻想郷最速の少女である。
「地底に行くと言うのでしたら、萃香様にでもついて来て貰えば良かったじゃないですか…何故に私?ただのしがない新聞記者に、一体どんな働きを期待されているんですか霊夢さんは。」
「あーもう、さっきからぐだぐだと煩いわね…あっちの地理ならあんたの方が詳しいでしょ?それに、いざという時の為に足が必要なのよ。」
仮にも幻想郷の無法地帯・地底に行くのだから、それ相応の準備はしておいて当然というものだろう。
「いざという時、とは?」
………もしかしてこの烏天狗、思考回路までマッハでどこかへ飛んで行ってしまったのだろうか?
「向こうで何やら言いがかり付けられて、面倒臭いのに絡まれでもしたらどうすんのよ。」
「いやまぁ、そんな事もあるでしょうね。何しろ地底ですし。」
そこまで想像が付くのなら、何故わからない……文だって、頭が悪い訳では無いのだろうに。
「唯衣は戦力にならない、むしろ足手まといでしか無いわ。つまり、あいつを保護する係が必要……これで戦闘要員が一人減るわね。」
「あ、成る程…そういう事ですか。」
ようやく気付いた様だ。
最近の幻想郷は気持ち悪い位に平和だし、文も少し平和ボケしているのかもしれない。
「そうよ、あんたには唯衣を抱えて逃げて貰う。」
「そうさせて下さい…ちょっと、今回ばかりは逃げに徹させて頂きますね……」
そう言うと、文は顔を青くして震え始めた。
この天狗の行動がよくわからないのはいつもの事だが、何やら今回は奇妙な雰囲気を感じる。
「………文。あんた昔、地底で何かあったりしたの?」
コイツのことだ、どこに敵がいてもおかしくない。
特に、地底などという荒くれ者の集まりみたいな場所では……言わずもがな、である。
「いえ、そういうのじゃ無いんです。」
だが意外にも、そういった類の理由では無かった様だ。
……こうなれば、真っ正面から尋ねてみるしか無いだろう。蟠りが残った状態では、行動に支障をきたす恐れがある。
「じゃ、何なのよ?そういうのじゃ無いって…その位しか思い浮かばないんだけど?」
あぁもう、と文は頭を抱えて、叫んだ。
「だって、地底には鬼がいるじゃないですかッ!!」
…………あ。
「あー…そういや、そんなのいたわね。天狗は鬼に逆らえないんだっけ?」
「そうです。良くも悪くも本人達があまり気にしていないのは有難いのですけど、それでも…ね。」
「成る程。ま、そりゃ下手に動く訳にはいかないわね。」
文がいざという時に戦力として役に立たないのは痛かったが、まあその程度は私がカバーしよう。
重ねて言うが、そもそも文は単純な速度のみで言うなら幻想郷最速の妖怪である。これほど逃げ役に適した人員がいるだろうか?いや、いない。反語表現。
「じゃ、そういう事で。あと……何だっけ、文に訊きたい事があったんだけど……」
「何ですか?」
珍しく歯切れの悪い私に、首を傾げる文。
「んー……忘れちゃった。」
「は」
呆然とした様な文の声が、虚空に響いた。いや、飛んでいる最中なのだから、虚空と呼べるほど静かでも無いのだけれど。
「何だか最近、気付いたらぼーっとしてるのよね。一度永遠亭で診て貰った方が良いかしら。」
「そうですね……あ、そうそう。」
ふと、文が何かを思い出した様に手を叩いた。
「魔理沙さんも何だか体調が優れないだとか、そんな様な事を言っていましたね。何でも、妙に頭が痛むんだとか。」
「あー…そういや、そんな事言ってたわねあいつ。」
脳内の海をサルベージして、それに類する記憶を何とか引っ張り出す。
これは先日、アリスを訪ねるついでに、魔理沙の家に顔を出した時の事だ。
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
「魔理沙、入るわよー。」
霧雨魔法店のドアを、半ば蹴破る様にして中に(押し)入る。
答えは聞かない。聞こえない。仮に拒否されてしまった時、そのまま引き返さなければならないからだ。
そしてそのまま、居間、台所…と、見知った姿を探し歩く。
が、その何処にも、いるはずの白黒魔法使いの姿は無かった。
(……いないのかしら?)
感覚を研ぎ澄ませてみたが、そもそも家の中から人の気配がしない。もしかしたら本当に留守なのか…と、引き返そうとした、その時。
「……うふ、ふ……」
魔理沙の寝室から、何やら奇妙な笑い声が聞こえて来た。
「!?」
独特のハスキーな声は、確かに魔理沙のもの。しかし、私はそこに僅かな違和感を感じた。
(……魔理沙が、『うふふ』…?)
〜だぜ、という話し方が目立っている様に、魔理沙は普段からまるで男の様な口調で話している。それはそれで、アイツなりに一応理由があっての事らしいのだけれど……それは今語るべきでは無いだろう。
そんな魔理沙の笑い声が……うふふ?どちらかと言うとあはは、とかはっはっは、という様な笑い方の方を聞き慣れている私から見れば、その事実は少し奇妙なものに思えた。
「魔理沙ー、今度は何を怪しげな……あら。」
扉を開け、寝室へと入る。
部屋の中は窓から入る夕焼けに照らされて、幻想的な雰囲気を醸し出していた。そしてそこには、案の定机に突っ伏して眠る魔理沙の姿が。
(全く…寝言だったのね。何かと思ったじゃない。)
毛布でも掛けてやろうと、後ろのベッドに向かう…その途中で、魔理沙がまた奇妙な寝言をこぼしていた。
「魅魔様に勝っちゃった……うふふ……」
(……魅魔様?)
魅魔とは、博麗神社の近くに住む悪霊の名前。
幼い頃、家を飛び出して来た魔理沙を保護し、魔法を教えた…そして何より今の魔理沙の厄介な人格を作り上げたに等しい、言わば彼女の母親代わりの様な存在である。
魔理沙は魅魔に対して正に信仰とも呼ぶべき敬愛を捧げており、その感情のままに『魅魔様』と呼んでいる。
(魅魔を倒す、ねぇ……今の魔理沙じゃ、到底無理じゃないかしら。)
恐らく、魔理沙が今見ている夢は、文字通り彼女の描く『夢』そのものなのだろう。
私自身、本気で戦ってもアイツには勝てるかどうかわからない、し……
「あれ?」
魔理沙を見ていたら、ふと、おかしな事に気が付いた。
薄暗い部屋の中でも尚輝く、少しウェーブのかかった髪の毛。普段は日の光を反射して金色に光るそれが、オレンジ色に染まっている様に見えたのだ。
「……魔理、沙……?」
「………んぅ…………誰よ勝手に……」
私の呟く声で目が覚めてしまったのか、魔理沙がゆっくりとした動作で頭を持ち上げる。
「……ん、靈夢なの……?」
「そっちこそ誰よ、靈夢って。あんたまだ寝呆けてんの?」
「んー…………」
まだ眠たそうに、ふらふらと頭を揺らしていた魔理沙。
が、突然。
ガンッ!
「ひぃッ!?」
強く、頭を机に打ち付け始めた。
ガンッ!ガンッ!
「………………」
焦点の会わない目をした少女が、木製の机に頭をぶつけて(これでも柔らかい表現だ、察して欲しい)いる。
かなりシュールかつ、サイコな雰囲気のする光景だった。
………もう良い、好きなだけやらせてやろう。もう私は知らない。
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
いつしか机と額との鈍い衝突音が止み、静かになっていた室内。
机の上にぐったりと頭を投げ出したまま微動だにしない魔理沙に、内心恐々としながら声を掛ける。
「…………目は、覚めたかしら?」
「おう、お蔭様で爽快な目覚めだぜ。」
「爽快だったんだ今の………」
頭を上げ、こちらを見てにっこりと笑う魔理沙。その髪色は……普段通りの、金だった。
恐らく、室内に差し込んでいた夕日の影響で橙色に見えたのだろう。よくある事だ。
「ぁ…ってて……」
唐突に、魔理沙が頭を押さえる。
……そりゃあそうだろう、あれだけ激しくガンガンやっていたのだから。
「あんだけ頭ぶつけてれば、そりゃ痛くもなるでしょ。馬鹿なの?」
「随分と酷い言い草だなあおい!
……いや、なんか最近頭が痛いんだよ。気付いたらぼーっとしてたりさぁ…咳も出ないから、風邪って訳でも無さそうだしな。」
「……珍しい事もあったものね。永遠亭にでも行って来たら?」
魔理沙が体調を崩したというのは、正直言って意外だった。
健康が売り…という程では無いが、かく言う私も、魔理沙が病気になった回数なんて片手で数えられる程度しか知らない。
「っていうか、そんな状況なのに何を暢気に机に向かってんのよ。そんなに重要な調べ物してた訳?」
ふと、魔理沙の寝ていた机の上を覗き込む。そこには一冊の本が。
ひょいと手に取ると、ずしりとした重さが伝わって来た。
「なになに、『異世界召喚術【平行世界・パラレルワールド編】』……あれ?これって確か、原理的には不可能なんじゃ無かったかしら。」
一時期魔理沙が傾倒していたので、私もよく覚えている。
「そうだよ、同じ時間の自分が二人いるって矛盾が解決出来ない限り、そもそも平行世界を観測する事すら出来ない。
まずこの技術に辿り着く前に、時間移動と空間制御の術式を完成させないといけないんだが……ま、現段階では精々メートル単位の空間制御が手一杯、時間移動なんて夢のまた夢。平行世界なんてありませんって方が、よっぽど信憑性は高いわな。」
「……あっ、そう。私は素人だから、そんな難しいとこまではわからないわよ。」
実際、話を聞くだけで軽い頭痛がして来た。
もしかしたら、専門外の話というのはそれだけで毒になり得るのかも知れない……そんな戯言を、真面目に信じてしまいそうになる。
「で?アンタはなに、わざわざ頭痛を押してまでそんな半分都市伝説みたいな本を読み漁っていた、と。」
「そうなるな。……ま、私なりに考えあっての事なのさ。」
「ふーん……まぁ良いわ、どうせ私には関係無いし。
じゃあ、私はそろそろお暇するわよ。近いうちに永遠亭、行っときなさい。」
「おう、心配かけたな。……いや、現在進行形でかけてるのか?」
にひひと笑いながら、魔理沙が呼び掛けてくる。
いや、実にどうでも良い。
「いきなり押し入ったりして、悪かったわね。じゃ、また。」
「おう、じゃあな!」
「………いとか…前…本………って……か?」
「ん?魔理沙、何か言った?」
「んにゃ、何でも無いよ。じゃあな!」
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
「……と、言う事があったのよ。」
魔理沙が最後に何を言ったのかはわからないが…どうにも怪しい。
これは勘だが、どこか腹に一物抱えていそうな匂いがするのだ。
「はー、パラレルワールドですか。魔理沙さんも興味深い事を研究しているのですね。」
「あるかどうかは知らないけど、実際に見ることは不可能ね。向こうに行くなんて以ての外。」
「ま、そうでしょうね。専門的な事はわかりませんが、パラドックスとか色々あるのでしょう?」
無理と知って尚、興味津々と言った様子で尋ねてくる文。
新聞記者という職業柄か、やはり好奇心の塊の様な性格である。
「………しっかし、さっきから何か忘れてる気がするのよねー……何だっけ。」
さして重要な事だった覚えは無いが、それでもやはり気になるものは気になるのだ。
「むむむむ………」
軽く、頭を掌底で叩く。周囲に鈍い音が木霊した。
「………あ。」
脳内に電流が走る。思い出せた事に対して安堵すると同時に、私のおつむは壊れたテレビと同等なのだろうかと、少し悲しくなった。
「やっと思い出したわ、ねえ文。」
「はい、何ですか?」
首を傾げる文。私がここまでして思い出そうとした内容が気になるのだろう。
……生憎、実につまらない質問な訳だが。
「あれ、アンタの同僚が念写したんでしょう?」
「あれ…あの写真の事ですか?はい、そうですよ。」
「そう………ねえ、文。」
何でもない風を装って、軽く尋ねる。
だが、この時点で私の『勘』が、これは只事では済みそうに無いと警鐘を鳴らしていた。
「あんた、あの写真、いつ撮ったの?」
「えっ……?」
勿論、これそのものは何気ない問いである。
だが私はこの後、この質問をしてしまった事に…そしてもっと早くこの事態に気付けなかった事に対して、心の底から後悔する事になるのだった。それこそ、今回持ち前の勘が発動しなかった事に対して、怒りを覚える程に。
「うーん…確か、十日位前だった様な。」
「…………………………は?」
さて、今回は伏線等をバシバシ入れさせて頂きました。勘の良い方はもう気付いていらっしゃるかも…?
ちなみに、今のところ最も異変全体の真相に近くまで迫っているのは、霊夢でも紫様でもなく魔理沙です。紫様が今回蚊帳の外な理由は……まあ、後々出てきます。
不憫な魔理沙ちゃんは一章での出番が少なかったので、今度こそちゃんと活躍させてあげたいな(願望
あと突然ですが、この話を書いている途中にふと思った事があるので、ここに書かせて頂きます。面倒臭えよって方は飛ばして頂いても一向に構いません。
東方二次小説(読む側)の醍醐味を個人的に語らせて頂くなら、異変を解決するシーンよりも『異変』という謎めいた現象の核となる出来事、そして黒幕が異変を起こすに至った経緯等を主人公達が追って行く…そのプロセスがどれだけ読み応えのあるものに仕上がっているかというのが、特に大切な要素であるという風に思っています。まあ、あくまで個人の感想というか、見解なのですけれども。楽しみ方は人それぞれですし。
とりあえずそういう訳ですので、僕自身は皆様がこれを読みながら『黒幕は誰だ?』『何でここでこのキャラが?』『そもそも何故こんな事が起きているんだ?』などと悩んでいる姿を想像しながら、ここはもっとわかりづらく、ここでちょっと伏線を加えて、という風に書かせて頂いております。
先述した通り今回はこれでもかという位に伏線が仕込まれているので、どういう異変なのか考察しながら読んでみて下さい。
あ、そうそう。あともう一つ。
これは皆様お気付きかと思われますが、唯衣サイドと霊夢サイドとでは、今回は時間軸に多少のズレが存在します。その辺は後々収束させるつもりですので、ご安心下さい。
それでは、僕の書いた文章が貴方の心に少しでも残る事を祈りつつ。




