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違和感、そして別れ

かなり時間かかってしまいましたすみません!!!

何をどうすればここまで短い文で三週間もかかってしまうのか…


今回はそれなりに気合を入れて書いてきたので、どうぞ!……伏線もそれとなく潜ませてみました。

「これより、御魂返しの儀を執り行う。」

私は唯衣の前に立って大幣を構え、高らかに誓言した。

博麗神社の境内裏。そこにある苔むした小さな鳥居の下で、私達は着々と、淡々と儀式を進めて行く。


仮にも神聖なものである御魂返しを行う上で、それで良いのかという気持ちも無い訳では無いけれど…外から来た人間は唯衣が初めてでは無いし、適当なものでも問題無いというのは実感している。とっくに慣れてしまった、というのもあるのだろうけれど。

「八雲紫を始めとする五人の大妖怪により設立された『幻想郷システム』、そしてそれを古来より見守り続けし八百万の神々よ。今ここにある、迷える一つの魂を本来あるべき場所へと還す事を、ここに誓おう。」


「……御魂、返し?僕、魂って扱いなんですか?紫さん。」

「いいえ。これはあくまで儀礼的なものだから、言っている事にあまり意味は無いわ。そもそも前回とだいぶ違うもの、この台詞。」

「それで良いのかい、霊夢……」

後ろから何やら聞こえてくるが、外野達の戯言は黙って聞き流す。

邪魔なものは見て見ぬ振り。それが一番だ。

良くも悪くもアクの強い幻想郷の住人達と付き合って行くには、スルースキルも必須なのである。

日常生活には何の役にも立たないスキルだけが身について行くなぁ、と改めて実感。……下手に平穏な毎日よりは退屈しなくて済むのだろうけれど、そう思えてしまっている時点で色々と駄目な気がしなくもない。


そんな事を考えているうちに私は一通りの儀式的な段階を終え、残る役目は演舞のみとなった。




「博麗の巫女の演舞をこの尊き魂に、そしてこの場に在りし神々へと捧げ奉る。」




〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「……はー、踊った踊った。ゆっくりな動きって、それだけで疲れるわよね。」

そして無事に演舞も終えた私は、階段へ直に座り込んで、火照った身体を冷やしていた。

普段の運動よりは遥かに楽な筈なのに…何だろう、この疲労感は。

「儀式が終わった瞬間にこの変貌っぷり……」

「何か言った?」

「何でも無いです、はい。」

背筋を伸ばして、カチコチという擬音が付きそうな程に動きを目に見えて硬くする唯衣。

そ、そんなに緊張しなくても良いのに。こちらも、あくまで冗談のつもりで言ったのだから………あ、冗談に聞こえなかったのか。

こういう、ここぞという場面で日頃の行いの悪さが祟るとは。どこまでも運の悪い…いや、悪いのは素行だったか?いやいやどうでもいい。


そして、その様子を見かねたのだろう。少しからかう様に、紫が唯衣へと笑いかけた。

「見事に尻に敷かれてるわねえ、唯衣君。」

「……そう、なんでしょうか……」

「ちょ、変な事言わないでよ紫!別に尻に敷いてなんかいないわ!」

というか唯衣も、そこは否定して欲しかった!……いやまぁ、否定する要素が無いという事は、十二分に理解しているのだけれども。


「ま、仲がよろしい様で何よりね。私には多少目に毒なものがあるけれど、その辺は良しとしましょう。………ところで、霊夢に唯衣君。」

いかにも疲れた様な素振りを見せながら語っていた紫が、一変して厳しい表情になって私の顔を見つめて来る。

突然のことに、私は驚いて背筋をピンと伸ばした。

「もう、会えなくなるのよ?心残りは無くしておきなさいな。」

「…………ええ。」

……ん?

今の紫の言葉、どこか違和感があった。付き合いの長い私でなければ見過ごしていた様な…そんな、微妙な感覚。

(ま、いつもの事だけどね…?)

だがよく考えてみれば、確かに紫は胡散臭いという表現がこの上なく似合う、言わば『信用ならない』妖怪だ。……しかし。


このスキマ妖怪は、嘘を吐くという行為を、無意識に嫌っている節がある。


それは逆に考えれば、嘘すら吐かずに相手を手玉に取れるという、それだけの余裕があるということなのだろうけれど。

要約するなら、実際にコイツが口に出した事は裏を疑いさえすれば…要は額面通りに受け取りさえしなければ、この場合はそこまで問題視する程のものでも無いということになる。

その面で言うなら、妖怪の山の連中(特に天魔を筆頭とした石頭の大天狗達)は神経質になり過ぎていると言えなくもないが…それはともかく、だ。

恐らく本人は否定するだろうけれど、紫は決して悪い妖怪では無いのである。


だが、となると私が先程感じた違和感の正体が掴めなくなってしまう。

やはり、どこかで私に嘘を吐いているのか……?いやしかし、仮にそうだとしても紫に転がり込むメリットが予想できない。

唯衣自身はどこにでもいる普通の人間だし、利用価値など無いに等しい。というか、そもそも紫には優秀な式神がいるのだから、わざわざ他の手を借りる必要は無いだろう。


………謎だ。


自慢する訳では無いけれど、ここ一番の時の勘はそれなりに鋭い自信がある。

私が違和感を覚えたという事は、それに値する原因がある筈なのだ。

だが……肝心の正体までは、勘では掴みきれない。歯痒いけれどここまでが限界の様だ。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「……ぃむ、霊夢、大丈夫?」

「………………え?」

気付けば、私は階段に座り込んで下を向いていた。

心配そうに顔を覗き込んで来た唯衣と、思いっきり目が合う。互いの顔の距離は……目算で二寸(7cm)。

「「………………」」

三秒程硬直した後、同時に顔を背ける。

どうしようもない程に、頬が熱くなっているのがわかった。

「ご、ごめんね霊夢……」

「何であなたが謝ってるのよ、全く…そんなだから魔理沙にヘタレとか言われるの。」

「そんな事言われてたの僕!?」

「ええ、ええ。言われてましたとも!」


勢い良く会話を始めて、はたと気付いた。

私達は、何のためにここにいるのだったか?……そう、唯衣を元の世界に送り返す為だ。

こんなところで談笑などしていたら、余計に辛くなってしまう。


「……さぁ、そろそろお話も終わりよ。紫…後は、頼んだわ。」

「もう、良いの?」

「良いのよ。」

「えっ、霊夢……?」

きっぱりと言い放つと、雨に濡れた子犬の様な目で唯衣が見つめて来た。……ああもう、そんな目で見るな!

「唯衣、これ以上無駄話をしている訳にはいかないわ。……本当に、帰りたいのならね。」

「……ッ!」

意地悪な言い方だと思う。

一見吹っ切れた様でいて、私はまだ唯衣が元の世界へ戻る事を止めようとしているのである。

……本当に、嫌な女だ。

私だったら絶対お断りなんだけどな、こんなの。


今更ながら不思議に思っていると、そんな私の前で唯衣が小さく口を開いた。

「………わかったよ。さよならだ、霊夢。」

両の目に強い光を湛え、私へと右手を差し出してくる。

私は唯衣の目を見つめ返し、その手をしっかりと握り締めた。

愛しい相手と触れる事の出来る、最後の瞬間。それはとても長く、いつまでも続く様に思えた。


「唯衣君…準備が、終わったわ。」

「はい。ありがとうございます、紫さん。」

だが、終わりは当然の様に訪れる。

唯衣はそっと私の手を優しく離して、私の目を見て微笑みながら、紫の方へ振り返った。

離れた掌が凍りつく様な寂しさに襲われて、思わずその後ろ姿を追い掛けてしまいそうになる。…が、理性で何とか押しとどめた。

唯衣があそこまで強く決意しているのだ、私にそれを邪魔する権利は無い。

だから私は、後ろから一つだけ、声をかけた。


「……元気でね。」

「うん。」


古びて、今にも自壊してしまいそうな小さな鳥居。その内側には、黒々とした『穴』が口を開けていた。

「この中に入るのよ。行き先は既に設定してあるわ。」

「何から何まで…ありがとうございます、紫さん。」

「良いのよ別に。これが私の仕事ですしね…あと、唯衣君。これは貴方への餞別よ、本当に困った時に使いなさい。」

紫はにこりと微笑んだ後、懐から小さな箱を取り出して唯衣へ手渡した。

そして、礼を言いながらそれを受け取る唯衣。

……くそっ、まただ。また例の、独特の『違和感』を感じる。

先程は紫に対してだったが、今度はまさかの唯衣。ますますもって意味がわからなくなってきた。

だが、ここで唯衣に詰め寄っても仕方ない。どうせもう帰ってしまうのだ、最後位は普段の仏頂面を引っ込めて送り出してやろう。




「じゃあ、今までありがとう。霊夢。」

唯衣は、もう一度私を振り返って笑みを浮かべ、


ーー忘れないーー


そう、小さく口を動かした。

その一言で、私の中に押し留められていた感情が堰を切って溢れ出る。

意識するよりも先に、前へ走り出していた。

その後の事などどうでもいい、今は唯衣を止める事が最優先であるかの様に思えた。

だが。

伸ばした手が掴んだのは、何も無い空間で。

私が見たのは、薄く笑いながら穴に落ちて行く唯衣の姿だったーーー

えー、霊夢と唯衣君の物語も、残すところあと一話か二話程になって参りました。

ここまで読んで下さった皆様方、本当にありがとうございます!


ちなみに、第一章が終わってもこの二人には作者の気が済むまでイチャイチャしてもらう予定でございます(黒笑

作者自身、甘い小説って大好きなもので。


では、次回の前書きでまたお会いしましょう!

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