第5章 第192話 二度目の勝負
レースは、いよいよ終盤へ入っていた。
五位以下を走る六台は、すでに予定していた給油をすべて終えている。先頭のクロフォードと二位の御堂もピットを済ませており、まだ給油を残しているのは三位のサラと四位の鷹宮だけだった。
その鷹宮が、長い直線へ入ったところで燃料計へ一瞬だけ目を落とした。
残量は、もうほとんどない。
本当なら、サラより後まで引っ張りたかった。先に相手をピットへ入れ、その動きを見てから自分が入る。その方が少なくとも判断はしやすい。
だが、燃料がそこまで持たなかった。
「……給油頼む。ピットまででギリギリ」
鷹宮が無線を入れると、メカニックはすぐに返した。
『了解。今準備する。この周入って』
「頼む」
鷹宮は視線を前へ戻した。前方にはまだサラの《フェルゼン911R》がいる。ここまで何度も距離を詰め、そのたびに攻め続けてきた。ブレーキを遅らせ、立ち上がりでも少しでも早くアクセルを踏み、崩れればまた取り返そうとした。
速い。
だが、その分だけ無駄も多かった。
最終コーナーを抜けたヴェルティアX12は、そのままピットロードへ進路を変えた。
「鷹宮さん、入った」
悠斗がピットロードへ向かう車を目で追う。
その頃、サラ側の無線にもすぐ知らせが入った。
『サラ、鷹宮入った』
「入った?」
『ああ。燃料まだ持つ?』
「次入る」
『オーケー。用意は済んでる』
「了解」
サラは短く返し、そのままフェルゼン911Rを走らせ続けた。
一方、ヴェルティアX12は自分のピットへ滑り込み、所定の位置で停止する。すぐに給油担当が作業へ入った。
『そのまま……よし、給油入る』
鷹宮はハンドルを握ったまま、大きく一度息を吐いた。
『今のうち肩の力抜け』
「そんな余裕ある?」
『車止まってる間くらいあるだろ』
「それはそうか」
ほんの短い時間だったが、攻め続けていた鷹宮にはそれでも貴重だった。
給油が終わる。
『終わり。出ろ!』
「了解!」
ヴェルティアX12が再び動き出し、ピットレーンを抜けてコースへ復帰していく。
そして次の周。
最終コーナーを抜けたフェルゼン911Rが、今度はピットロードへ進路を変えた。
これが、このレースで最後に残った予定給油だった。
『サラ、そのまま入って。給油だけ』
「了解!」
サラは明るく返しながら速度を落とし、ピットレーンへ入る。
フェルゼン911Rが定位置へ滑り込むと、車体が完全に停止するのと同時にサラ陣営のメカニックたちが動いた。給油担当は迷いなく作業へ入り、周囲のスタッフも余計な動きを見せない。
「これ、どれくらいの差で戻る?」
悠斗がピット出口とコースを交互に見ながら尋ねる。
「ほとんど差なかったからな。ここは作業の差がそのまま出るぞ」
カイもサラ側のピットへ視線を向けた。
『そのまま。動かすなよ』
「分かってるって」
サラはハンドルを握ったまま前を見ている。
数秒。
そのわずかな差が、今は二台の距離に直結する。
『よし、終わり! 出て!』
「早っ。ナイス!」
フェルゼン911Rがすぐに発進した。
ピットロードを走るサラ。一方、コース上では先に給油を終えた鷹宮が最終区間を抜け、ホームストレートへ向かってくる。
「来るぞ」
蓮が身体を前へ出した。
サラがピット出口へ近づく。
フェルゼン911Rが速度制限区間を抜け、アクセルを踏み込んだ。その少しあと、鷹宮のヴェルティアX12がストレートへ姿を見せる。
「サラさん、前のままだ」
悠斗が声を上げた。
フェルゼン911Rは三位を守ったままコースへ戻り、その後方にヴェルティアX12が続く。
三位、柊サラ。
四位、鷹宮セイヤ。
ただし、ピットへ入る前より二台の間隔はわずかに広がっていた。
『サラ、三位のまま。少し離した』
「よし!」
サラの声が弾む。
『こっちは仕事したぞ』
「ありがと。じゃあ、あとは私が守ればいいんでしょ?」
『そういうこと』
一方、鷹宮側にもすぐ状況が伝えられる。
『セイヤ、サラが前。ちょっと開いた』
「マジか」
『向こう、作業も少し速かったな』
鷹宮は前方に見えるフェルゼン911Rへ視線を固定した。
「……ピットでも負けたか」
『まだレースは終わってない』
「分かってる。追うよ」
ピットでの勝負は、サラ陣営がわずかに上回った。
そしてサラがコースへ復帰したことで、このレースに残っていた予定給油はすべて終わった。ここから先は、全車ともコース上だけの勝負になる。
◇
その頃、先頭では別の勝負が始まろうとしていた。
最終コーナーを立ち上がった《アルシオン・セレス》が、《ラグナード・ヴェノム》の真後ろへぴたりとつく。
そしてホームストレートへ入った瞬間、御堂が動いた。
セレスが横へ出る。
「来た!」
蓮が身を乗り出す。
クロフォードもすぐにミラーで気づき、第一コーナーへ向けてラインを寄せた。御堂は内側、クロフォードは外側。二台はほとんど並びかけたままブレーキングへ入り、セレスの鼻先がわずかに前へ出る。
それでもヴェノムは簡単には引かなかった。クロフォードは外側から速度を残し、コーナー出口で完全に前へ出させない。
「まだ!」
悠斗が思わず拳を握る。
次のコーナーではクロフォードが先に内側を取った。御堂は無理に並び続けず、一度セレスを後ろへ戻す。
『エリック、よく守った』
「一回だけね」
クロフォードは軽く返したが、声の奥にはわずかに緊張が混じっていた。ミラーへ一瞬だけ視線を送り、すぐ前方へ意識を戻す。
一方、御堂側にも無線が入った。
『一成、無理しなくていい』
「分かった」
返事は短い。
御堂は無茶に飛び込まない。それでも引きもしなかった。次のストレートではヴェノムの後ろから半台ほど外へ出し、クロフォードのミラーへセレスの鼻先を見せる。コーナー進入では一度後ろへ戻るが、立ち上がりではすぐに距離を詰め、次のブレーキングではまた内側へ寄る素振りを見せた。
「ずっと来てる……」
悠斗が呟くと、蓮も二台から目を離さない。
「休ませる気ねぇな、御堂さん」
カイが小さく頷いた。
「抜けなくても意味あるんだよ。あれだけ毎回見せられたら、クロフォードは自分の走りだけしてりゃいいってわけにいかねぇ。どこから来るか、ずっと気にしなきゃならない」
クロフォードも守るだけの走りにはならない。先頭のペースを落とせば、それこそ御堂に一気に詰められる。速く走りながら、後ろの動きも読み続けるしかなかった。
『エリック、また来るぞ』
「分かってるって。……ほんと休ませないな、一成」
クロフォードは苦笑しながらミラーを確認し、次のコーナーへ向けてヴェノムをわずかに内側へ寄せる。そのすぐ後ろで、御堂はまたセレスを外へ振った。
◇
ピットで少し離された鷹宮も、そこで諦めたわけではなかった。
数周もしないうちに、ヴェルティアX12は再びサラとの距離を削り始める。ただし、ピット前のように一気にすべてを取り返そうとはしていない。
長い直線へ入ったところで、鷹宮は左手を一度ハンドルから離し、グローブ越しに指を開いてから握り直した。額には汗が浮かび、呼吸も序盤より明らかに荒い。
『セイヤ、まだきついだろ。焦るなよ』
「分かってる」
今度は素直に答えた。
『一発で全部取り返そうとするな。向こうも速い』
「それも分かってる」
『今日は初めて信用できそうだな』
「うるさいな」
鷹宮は苦笑しながらも、サラの後ろへ丁寧についていく。
その前を走るサラも、ミラー越しに後方を確認していた。
『サラ、また来てるぞ』
「ほんっとしつこい」
口ではそう言うが、声には嫌そうな響きがほとんどない。
『嫌そうに聞こえないけどな』
「そりゃ面白いし。でも抜かれるのは絶対イヤ」
サラはそう返しながら、いつも通りの位置でブレーキへ入った。フェルゼン911Rは安定した姿勢のままコーナーを抜ける。
『相変わらずよく喋るな』
「レース中くらい黙っててほしい?」
『走りが崩れてないなら別にいい』
「じゃあ問題なし」
言葉は賑やかなのに、操作はまったく雑にならない。鷹宮が距離を縮めてきても、急にブレーキを遅らせたり、無理に立ち上がりを早めたりはしなかった。
もちろん、その無線は悠斗たちには聞こえていない。それでも、二台の走り方の違いは見ていれば分かる。
「サラさん、また詰められてるけど、全然走り変わらないね」
「そこが強いんだろ」
カイが答えた。
「鷹宮さんは速い時はかなり速い。でも、その分ちょっと崩れる時がある。サラさんはずっと同じリズムだ」
蓮も二台を見比べながら頷く。
「鷹宮さん、今の方がさっきより走りいい気する」
「無茶しなくなったからじゃない?」
ナナが言うと、蓮は少し考えてから頷いた。
「それはあるかもな」
◇
御堂の圧は止まっていなかった。
クロフォードは何度も仕掛ける素振りを見せられ、そのたびにミラーを確認し、ラインを選び直してきた。それでも大きなミスは一度もしていない。
だが、コース中盤の右コーナーで、ほんのわずかな乱れが出た。
ヴェノムはいつも通りのラインへ乗ったつもりだった。ところが出口で車体が少しだけ外へ流れ、立ち上がりの加速が一瞬だけ鈍る。
大きなミスではない。普通なら、そのまま何事もなく次へ進める程度だった。
だが御堂は、すぐ後ろにいた。
「……ここだ」
セレスが一気に距離を詰め、短いストレートへ入った瞬間、そのまま横へ出る。
『一成、行ける!』
クロフォードもすぐにミラーを見る。
「やっぱ来るよなあ……!」
次のコーナーは御堂が内側、クロフォードが外側。二台はほとんど並んだままブレーキングへ入り、御堂は無理に速度を残しすぎず、確実に車を止めて先に内側のラインへ乗せた。
クロフォードも外から立ち上がろうとする。だが、そのまま押し込めば接触する距離だった。
「っ……!」
ほんの一瞬だけアクセルを緩める。その瞬間、セレスが前へ出た。
「御堂さん!」
悠斗の声と同時に、観客席から一気に歓声が上がった。
一位、御堂一成。
二位、エリック・クロフォード。
『エリック、まだ時間ある!』
「分かってる!」
クロフォードはすぐにヴェノムをセレスの後ろへ入れた。先ほどまであった軽い笑みは消え、視線は完全に前の一台へ向いていた。
◇
残り四分。
今度はクロフォードが追う側になった。
残された周回は、もう三周あるかどうか。悠長に様子を見る時間はない。
セレスがブレーキへ入ればヴェノムが距離を詰め、立ち上がりでは少し外へ振って次のラインを探る。クロフォードはすぐにでも仕掛けたいはずだが、御堂も不用意に守りすぎない。抜かれにくい区間では普段通りのラインを使い、勝負になりやすい場所だけきっちり内側を押さえていた。
『エリック、近い。無理に一発で行くなよ』
「分かってるって」
クロフォードは答えながら、セレスの立ち上がりへぴたりとつく。
『言わないと行くだろ』
「否定できないね」
軽く返しながらも、視線は完全に前のセレスへ向いていた。
最初の一周では、ヴェノムが何度か外へ顔を出す。それでも御堂は余計な反応をせず、抜かれる可能性の高い場所だけラインを閉じた。
「御堂さん、全部守ろうとしてないね」
悠斗が二台を追いながら言う。
「守るところだけ守ってんだろ。全部で防ごうとしたら逆に遅くなる」
カイが答える。
次の周に入っても、クロフォードは離れない。第一コーナーで少し近づき、中盤では一度距離を戻され、それでも長い直線へ向けてまた詰める。
残された機会が少ないからこそ、無理にでも飛び込む――そうしてもおかしくない場面だった。
だがクロフォードは行かなかった。
並び切れない距離なら、一度引く。
接触して終われば、それで二時間すべてが台無しになる。
『エリック、あと少しだ』
「分かってる。ちゃんと狙ってるよ」
軽口は残っている。それでも、その声は真剣だった。
◇
三位争いでも、鷹宮が再びサラへ近づいていた。
『セイヤ、残り少ない。チャンスあるなら一回だぞ』
「分かってる」
鷹宮は深く息を吐き、サラの後ろへ丁寧についていく。
サラもミラーを見る。
『サラ、かなり近い』
「見えてる」
そう返しながら、サラは次のコーナーへ向けてフェルゼン911Rをゆっくり内側へ寄せる。
『最後来るぞ』
「来ればいいじゃん」
『余裕だな』
「余裕ないって。めっちゃ来てるから」
口調は軽いが、ミラーを見る回数は少し増えていた。それでも操作は崩れない。
次のコーナーで鷹宮は少しだけブレーキを奥へ使った。今度は出口で膨らまず、フェルゼン911Rとの距離をさらに縮める。
「行ける……!」
それでも、そこで無理に飛び込まなかった。
『そう、それでいい』
「言われなくても分かってる」
『今日はちょっと信用できる』
「ちょっとかよ」
疲れている。悔しさもある。それでも、鷹宮の走りは前半より明らかに落ち着いていた。
◇
残り一分を切ると、観客席の空気が目に見えて変わった。
先頭の御堂とクロフォードは、まだほとんど離れていない。
『一成、次にゴールラインを通過したら最後の周回だ』
「ああ」
セレスが最終コーナーを抜け、そのすぐ後ろからヴェノムも立ち上がる。二台は二時間を迎える前にゴールラインを通過し、そのまま最後の一周へ入った。
『一成、ラスト一周』
「分かった」
御堂が短く返す一方、ヴェノム側でもすぐに無線が飛ぶ。
『エリック、ラストだ!』
「分かってる!」
悠斗も無意識に身体を前へ出していた。
第一コーナーではクロフォードが再び距離を詰める。だが御堂は必要なラインだけを残して隙を作らない。第二コーナーではヴェノムが少し外へ振ったが、セレスは内側を確保したままきれいに立ち上がった。
「近い……!」
ナナもコースから目を離せない。
中盤の高速区間では、クロフォードは無理に並ばず御堂の後ろへつき、最後の長い直線へ向けて距離を詰める。
そして直線へ入った瞬間、ヴェノムがセレスの背後から飛び出した。
「行った!」
蓮が叫んだ。
二台の間隔が一気に縮まる。御堂もミラーでクロフォードを確認し、最後のコーナーへ向けて内側を守った。
クロフォードは外側からブレーキングへ入る。ヴェノムがぎりぎりまで粘る。それでも完全には並べない。
「くっ……!」
クロフォードが思わず声を漏らした。
無理に押し込めば接触する。その一線だけは越えなかった。
セレスが先に最終コーナーへ入り、ヴェノムもそのすぐ後ろから立ち上がる。二台はほとんど間を置かず、全開のままホームストレートへ飛び出した。
「御堂さん!」
悠斗が叫ぶ。
先にゴールラインを通過したのはセレスだった。ほんのわずか遅れて、ヴェノムが続く。
御堂陣営のピットから大きな歓声が上がった。
『チェッカー! 一成、トップ!』
セレスの車内で、御堂がようやく長く息を吐く。
「……よし」
一方、ヴェノム側でもすぐに無線が入った。
『エリック、二位! 惜しかった!』
クロフォードはすぐには返事をしなかった。ゴールラインの先を走りながら、前にいるセレスをしばらく見つめる。
やがて、悔しそうに笑った。
「強いなあ、一成」
◇
その少し後、三位を走るサラと四位の鷹宮も最後の周回へ入っていた。
『サラ、ラスト!』
「了解!」
サラは短く返し、最終区間へ向けてフェルゼン911Rを加速させる。その後方では鷹宮の無線にも声が飛んだ。
『セイヤ、これ最後だぞ』
「分かってる!」
鷹宮は最後まで諦めなかった。
最終区間へ入ると、フェルゼン911Rの後ろへヴェルティアX12が迫り、コーナー一つごとに距離が縮まっていく。
「あとちょっと……!」
鷹宮が歯を食いしばる。
だがサラも崩れない。
『サラ、後ろすぐいるぞ!』
「見えてるって!」
サラはミラーを一度だけ確認すると、すぐに視線を前へ戻した。
最終コーナーへ入るサラは、それまでと同じ位置でブレーキを踏み、フェルゼン911Rをきれいに向ける。鷹宮もその後ろから続き、立ち上がりではヴェルティアX12がさらに距離を縮めた。
それでも届かなかった。
フェルゼン911Rが先にゴールラインを通過する。
『サラ、三位!』
「っしゃあ!」
サラが車内で拳を握る。その直後、鷹宮もラインを越えた。
『セイヤ、四位!』
「……くそー!」
鷹宮はハンドルへ額をつけそうになるのを堪え、代わりに深く息を吐いた。
『でも最後よかったぞ』
「三位がよかった」
悔しそうに返した鷹宮へ、メカニックが少し笑いながら言う。
『じゃあ次は前半からあんな無茶すんな』
「……それはそう」
今度は素直に認めた。
◇
上位四台の順位が確定した。
一位 御堂一成
二位 エリック・クロフォード《ラグナード・ヴェノム》
三位 柊サラ《フェルゼン911R》
四位 鷹宮セイヤ《ヴェルティアX12》
悠斗はピットへ戻ってくる車を見ながら、ようやく張りつめていた息を吐いた。
「……すごかった」
「だろ?」
なぜか蓮が得意そうに言うので、悠斗はそちらへ顔を向けた。
「蓮が走ったわけじゃないでしょ」
「分かってるわ」
そう返しながらも、蓮の視線は先頭で戻ってくる《アルシオン・セレス》へ向いたままだった。
「やっぱセレスいいな……」
「また言ってる」
「いや、今の見たら言うだろ」
その隣では、二位のヴェノムもゆっくりピットへ戻ってくる。
勝った御堂。最後まで追い続けたクロフォード。最後のピットでわずかに間隔を広げ、そのまま三位を守ったサラ。そして最後までその背中を追い続けた鷹宮。
同じ二時間を走っていても、四人の戦い方はまるで違った。
悠斗はしばらく何も言わず、コースとピットを見渡した。耳にはまだエンジン音の余韻が残り、空気にはタイヤの焼けた匂いが漂っている。ピットではメカニックたちが戻ってくる車を迎え、観客席ではレースの感想を興奮気味に話す声があちこちから聞こえていた。
生前なら、画面越しに眺めていたはずの光景だった。
今は違う。ただ見ている側ではない。NOXとSHIFTで準備し、人を集め、何度も話し合いながら作ったイベントの中に、自分自身がいる。
「悠斗」
ナナに呼ばれ、悠斗はようやく振り返った。
「何?」
「次、表彰式でしょ」
「あ」
レースが終わっても、イベントはまだ終わっていない。
悠斗はもう一度だけコースへ目を向けると、小さく笑った。
「行こう」
ピットへ戻ってくる車たちを背に、悠斗たちは表彰式の準備へ向かった。
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