人生最初のピンチ
ペンギン一号は僕の髪の毛を鷲掴みにし思いっきり後ろに引いた。
僕の顔は天井を向かされペンギン一号の顔をまともに見る事になった。
一号の顔が僕の顔に接近し、
その何とも言えない臭ーい息がまともに僕の鼻に当る距離まで近づいた。
このペンギン野郎、臭すぎるぞ!歯を磨いたことあるのか、ボケ!
そう怒鳴っている僕を想像しながら、僕はペンギンに愛想笑いをした。
「おい、お前、俺達なめるんじゃないぞ。下里中の怖さを教えてやるよ」
そう言った後、一号は僕の顔の中央、つまり鼻先に頭突きを食らわした。
一瞬、僕の目の前が白くなった。
心臓が鼻に移動したのかと思うぐらいのドクドクと拍動する痛みが起き始めた。
そして、同時に鼻から喉に向かって怒涛のように金属製の、色で例えれば金色っぽい味のものが満ちはじめた。
僕は確実に確信した。
鼻血が出た。
三人目のペンギン野郎、そいつは、眉毛を抜いた凹凸のほとんど無いマッ平らな顔の奴で僕はノッペラボウペンギン三号
と名付けた。
この悲惨な状態の中にいても、なお僕の頭は恐いぐらいの平静を保っていた。
そのマッ平ら三号は僕のランドセルを取り上げ中身をまさぐり全部を床にばら撒いた。
ノートや教科書、筆箱が足元に散らばった。
「ランドセルにたいしたものが入ってないよ」マッ平三号はそう言った。
そして最後のペンギン、いやこいつはペンギンじゃない。
他の三人のようにだらしなくズボンを下げていない。まともにズボンをはいている奴だった。
ただ、目つきが…これが、普通なんだ。
まったくの普通少年に見えるのだが
でもこいつは僕の感では相当の悪だ。
たぶん、他の三人に比べて飛び級の超極悪って雰囲気がこいつの体の中から漂ってくる。
よし、こいつは超悪と名付けた。
その超悪が僕の首を絞めながら言った。
「定期券持っているだろう?出しなよ」
こいつ、僕のお金を狙っているんだ。
そう言えば、今日、良子さんから一か月分のお金を貰ったんだ。
…話は違いますが良子さんというのは僕の養母で僕は養子なんだ。
つまり僕は孤児。
まあ、詳しい話は後で。
でも、息苦しい…すごい握力だ。この超悪野朗め!
喉のもとに容赦なくこいつの手が食い込んでくる。
車内には三、四人の乗車客がいたが全員、見て見ぬ振りだ。
もう絶体絶命だ。
「どうだい?助けてやろうか}
そんな声が耳に入った。
あの幽霊だ。
「このままだとお前は、喉がつぶれるぞ」
その通りだった。もう息ができなくなった。
僕は藁をも掴むおもいで頼んだ。
「助けて!」
「わかった。ただし、条件がある。わしはこの場所では幽霊みたいな存在だ。お前を助ける事はできない。
この世界では実体が無いからだ。実態を作るためにお前の時間が欲しい」
「意味がわからない」
僕は失神寸前だった。
「お前の人生の長い時間の一部、三分をわしに渡せ。その時間でこいつらを片付けてやる」
「り、り、理解不能…」
「だから、三分渡しますと言え。言えばお前を助けることができるのだ」
僕は、意味不明のその幽霊の言葉通り声を出した。
「さ、三ぷん…渡し…ます」
「貰った!」




