横に幽霊、前にペンギン
突然、僕は頭を引っ叩かれた。
全くの突然で、僕は面食らった。
見上げれば、今まで向かいに座っていたいかにも悪そうな下里中の一人が立っていたのだ。
叩いたのはこの学生に違いない。
学生と言っても、ひょろ長いみすぼらしい体格でシャツの前をはだけ日焼けした貧弱な胸を見せ、ズボンは股下四十センチの今にも脱げそうなぐらいに腰の下まで下げ、お前はペンギンか?と言いたいぐらいのクソガキだが。
僕はこの男をペンギン一号の名付けた。
「ハハハ、ペンギン一号か。確かに、こいつはペンギンだ。しかも、程度の悪い羽根の無いペンギンってところか」
隣に座る幽霊は僕の思った事が分かるみたいだ。
横には幽霊、前には不良。
僕はどうすればいいんだ!と、パニクル頭をなだめながら
とりあえず、目の前の敵に抵抗を試みた。
「なんで殴ったんですか」
僕はあたりまえの質問をあたりまえの顔で尋ねた。
ペンギン一号はそれが相当気に入らなかったのかもしれない。
目が血走り始めた。
一号は、こう言った。
「お前、俺の顔を見て人生最悪の日だと言っただろうどういうつもりだ」
しまった。僕は誤解を解こうとペンギン一号に言った。
「違うんです。僕が言ったのはこの隣のおじさんに言ったんです」
「隣?おじさん?どこのおじさんだよ?」
しまった。このおじさんは僕にしか見えないんだった。
「てめえー、俺をからかってるのか!」
ペンギン一号はすさまじい顔で僕を怒鳴った。
それを見ていた残りのペンギン三匹が立ち上がり僕の方に近寄ってきた。
頭をモヒカンカットにした超笑える男、これをトサカペンギン二号と僕は咄嗟に名付けたが、その二号が、僕の隣、つまり幽霊のおじさんが座っている場所に重なるように座り始めた。
突然、おじさんが大声で怒鳴った。
「このクソガキ!わしに尻を向けて座るとはドたわけが!」
鼓膜を突き破るような声が響いたと同時に、モヒカンカットの二号が椅子から放り出されるように床につんのめった。
一号はそれを見て二号に言った。
「何やってんだ」
「すごい声で怒鳴り声がしたんだ。聞こえたろう?」
「はァ?また空耳かよ」
一号は呆れた顔で言った。
それを見ていたおじさんの幽霊はこう呟いた。
「このモヒカンカットの男、わしの声が聞こえるらしい。話し相手がもう一人増えたようだ」
そう言いながら、僕の方を見てほくそ笑んだ。




