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平凡希望しかし現実苦し  作者: 澤木弘志
第一章 優しき愚者 ~朱ノ篇~
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調合

習慣ゆえかまだ夜の明けきらない午前四時に目が覚める。

二時間しか寝ていないせいで少々眠い。



ソルはベッドから起き上がり一階へと降りる。

洗面所で顔を洗い、キッチンに行き一杯だけ水を飲む。

リビングの端に置いてあった籠を取り出して外へと出てゆく。


庭の左手側に群生する『薬鈴』の朝摘みだ。

夜が明けきらないこの時間帯が最も効果が高いく、花が咲いている状態でないと薬にならない。どの種類の薬鈴の花が咲いているのはこの時間帯であるためやっぱりどうしてもこの時間に集中してしまうのだ。


この薬鈴は色で効用が違うのだが咲いている時間を多少違う。

体力回復の赤の花と精神及び魔力の回復に効く白は最も咲いている時間が長く約一日。

外傷治癒の黄色は半日で病に効く青は約三時間。

最も短いのは黒で三十分間しか開いておらずしかも一カ月に一回、一株しか咲かない貴重な花だ。


今咲いているのは赤、青、黄、白。そして端の方に一株黒色の花が咲いていた。

一カ月ぶりの黒の開花である。

この花は他色花よりも脆くゆっくり触れないと花弁が落ちてしまい薬の効果を著しく低下させてしまう。

だから黒だけは別個に摘まなくてはならない。


最初に赤の花を十一株、次に白を八株、黄色と青は五株程取って一端キッチンに置く。最後に黒を摘むのだが、黒の花弁を散らさぬように綿糸で柔らかく花弁を包んで運ぶ。


キッチンで土の付いた茎を軽く洗い、三階の小部屋へと運ぶ。

サンルーム兼調合室になっているこの部屋の一角には薬研や乳鉢、計量器、こね鉢など調薬器具が机の上に乱雑に並ぶ。

その机の隣には薬を乾燥させる場もありこの頃は調薬室としてしか使用していない。

室内栽培の薬も幾つか並んでいるので少々手狭だ。


まずは花を乾燥させるため花弁と茎を分けておく。黒の花だけは薬品に漬けてからの乾燥手順になるため四色花だけを並べてゆく。


黒の花をつける薬品は薬鈴の根と室内栽培の『霜草』と名付けた真白い草を混ぜたものだ。

この白い草『霜草』の効用は強化だ。黒の花に至っては細胞を凝縮して効用を高めるために漬けこんでいる。薬鈴の根に対しても同様の効果があり、霜草だけでは効果期限が短いため黒の花が成熟するまで期限を長持ちするため同効果のモノを二つ混ぜ込む必要があったのだ。


この混ぜ込んだ透明な液体に花弁保護で包んでいた綿糸を外してそのまま漬け込む。約一週間ほど漬け込んでから次の工程に進めるので薬として出来上がるのは摘んでから三週間程かかることもある。

ちなみに他の花は長くても二日には薬として出来上がる。


半日ほど乾燥させるため今できる作業は終了。まだ六時前のためもう少し仮眠しようと二階に下りる。




そこでちょうど部屋から出てきたスウェンと鉢合わせする。


スウェンの顔には焦燥感が浮かんでいた。


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