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たこ焼き 八粒堂  作者: さんご


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11/13

未来のたこ焼きと人生のたい焼きを同時に食べた男

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

商店街には二つの不思議な店がある。


一つは、

五分に一粒落ちてくるたこ焼き屋。


もう一つは、

人生を焼くたい焼き屋。


その二つの店の距離は、

歩いて三十歩。


商店街では有名な話だった。


「片方だけでも不思議なのに」


常連が言う。


「二つ並んでるのが一番おかしい」


そんなある日。


一人の男がやってきた。


スーツ姿。


少し疲れた顔。


しかし目は妙に真剣だ。


男はまずたこ焼き屋に入った。


「一パックください」


店主はうなずく。


「はいよ」


機械が回る。


ぽと。


五分。


男は腕時計を見ながら待っている。


そして四十分後。


たこ焼きが完成した。


男は一つ口に入れる。


その瞬間だった。


景色が変わる。


未来のたこ焼きだった。


男の目の前に映像が流れる。


自分が歩いている。


商店街。


そして——


たい焼き屋に入る自分。


男は驚いた。


「なるほど」


つぶやく。


「未来を見た」


つまりこういうことだ。


このあと自分は、

たい焼きを買う未来がある。


男は少し得意げになる。


「未来予知か」


残りのたこ焼きを見つめる。


「よし」


男は立ち上がった。


そして未来通り、


たい焼き屋に入る。


屋台の店主が笑う。


「いらっしゃい」


男は言う。


「たい焼き一つ」


店主は聞いた。


「どんな人生にします?」


男は少し考える。


そして言う。


「成功する人生」


店主はうなずいた。


「いいですね」


鉄板に生地を流す。


あんこを入れる。


そして焼く。


香ばしい匂い。


数分後、


たい焼きが完成した。


男は一口かじる。


その瞬間——


また景色が変わる。


男は未来を見た。


そこには自分がいる。


商店街。


たこ焼き屋。


そして——


たこ焼きを食べている。


男は固まった。


「……あれ?」


もう一口たい焼きを食べる。


また未来が見える。


やっぱり同じ。


たこ焼きを食べている。


男は混乱する。


「え?」


たい焼きを見る。


「成功する人生じゃないのか?」


もう一口。


未来。


やっぱり同じ。


たこ焼き。


また。


たこ焼き。


また。


たこ焼き。


男は叫んだ。


「たこ焼きしか出てこない!」


たい焼き屋の店主が笑った。


「そりゃそうです」


男は言う。


「なんで?」


店主は指をさす。


商店街の向こう。


たこ焼き屋。


「さっき未来見たでしょう」


男はうなずく。


「ああ」


店主は言った。


「その未来を信じて」


「あなたはここに来た」


男はハッとする。


店主は続ける。


「そして今」


たい焼きを指す。


「このたい焼きで見た未来を信じて」


たこ焼き屋を見る。


「また戻る」


男は黙る。


店主は少し笑う。


「つまり」


鉄板を閉じる。


「あなたの未来は」


少し間を置く。


「自分で未来を見て、自分でその通り動く人生です」


男はしばらく考えた。


そして言った。


「それって……」


たい焼きを見つめる。


「成功なのか?」


店主は肩をすくめた。


「少なくとも」


たこ焼き屋を見る。


「商店街は繁盛しますね」


男は笑ってしまった。


そして結局、


またたこ焼き屋に戻った。


常連が言う。


「また来た」


男は座る。


「未来なんで」


機械が回る。


ぽと。


常連がつぶやく。


「この店」


「未来が見える人ほど」


少し笑う。


「同じ未来をぐるぐる回るよな」


店主は言う。


「たこ焼きみたいにですね」


商店街には今日も、


少しおかしな未来が焼けている。


この話のテーマは少し哲学です。


未来予知には

一つの落とし穴があります。


それは


未来を見たことで

その未来を実行してしまうこと。


つまり


未来を見る


それを信じる


その通り行動する


未来が当たる


という無限ループ。


たこ焼きが丸く回るように、

人生も時々ぐるぐる回る。


でも不思議なことに、


それでも人は


また次の未来を見たくなる。


まるで、


もう一個たこ焼きを食べるみたいに。

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