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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第八章:南海灼熱諸島と炎の熱邪(ねつじゃ)】

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第639話「古文書の導き!結晶の回廊と麻痺の影」

「結節の間」の激闘を制し、地脈の暴走体『氷炎地脈獣グラシアル=ヴァルカン』を本来の静かな守護獣へと戻すことに成功した往診チーム! 寒熱錯雑の恐怖から解放されたフロスト族の集落は平穏を取り戻し、枢たちは守護獣から託された古文書『古代アルゲンタ・深層診療記録』によって、地下最深部に眠る「幻の霊薬」とそれを解くための「三つの地脈の鍵」の存在を知ります。フロスト族の民に見送られ、一行は第一の鍵が眠るという未知のエリア「水晶鍾乳の回廊」へと足を踏み入れます!

 「枢先生、本当に……本当にありがとうございました……ッ!」


 フロスト族の集落の広場で、長老がチロや村人たちと共に深々と頭を下げていた。


 先ほどまで村人たちを苦しめていた胸の発熱や手足の凍結は綺麗に消え去り、集落の空気は心地よい澄み切った清涼さに満ちあふれている。

村人たちは互いの手を握り合い、健康を取り戻した喜びを分かち合っていた。


 「いいえ、長老さん。みなさんが元気に立ち上がってくださることが、私たち治療家にとって一番の喜びです」

鍼灸師・くるるが温かな笑みを浮かべ、往診鞄を肩に掛け直した。


 「先生方……この『白銀地脈・深層大洞窟』のさらに奥へ進まれるとお聞きしました。これは我が族に代々伝わる、鍾乳洞の安全な抜け道を示した皮袋です。どうか旅のお供にお持ちください」

チロが小さな羊皮紙の袋をネネへ手渡す。


 「ありがとう、チロちゃん! 大切に使わせてもらうわね!」

ネネがチロの頭を優しく撫で、笑顔で受け取った。


 「よしっ、お礼も言えたし、いよいよ古文書に書かれてた『第一の地脈の鍵』を探しに行くとするか!」

ガストンが戦斧を担ぎ直し、やる気満々に拳を握りしめる。


 「……気を引き締めろ。長老の話では、ここから先は『水晶鍾乳の回廊』と呼ばれる未開の難所だ」

影から姿を現した哭が、洞窟の奥へと伸びる薄暗い通路を鋭い眼差しで見つめた。


フロスト族の温かな見送りを受け、往診チームは集落をあとにし、深層の新たなるエリアへと足を踏み入れた。


通り抜ける「水晶鍾乳の回廊」は、これまで以上に壮大で幻想的な景観を呈していた。

天井からは巨大な水晶の鐘乳石が無数に垂れ下がり、足元からも青や紫に輝く結晶の竹の子が突き出している。壁面全体が自発光する微光によって照らし出され、まるで巨大な宝石の体内を歩いているかのようであった。


「うわあ……! なんて幻想的な場所なのかしら……! まるで星空の中を歩いているみたい!」

ネネが感嘆の息を漏らし、きらめく水晶壁に見とれる。


「へっ、綺麗なのは良いが、足元がゴツゴツして歩きにくいぜ。うっかり転んだら水晶の刺で大ケガしそうだ」

ガストンが足元を警戒しながら進む。


「みなさん、景観に見とれるのは結構ですが、呼吸に気をつけてください」

枢が歩みを止め、往診鞄から特製の香草が入った匂い袋を全員に手渡した。


「この回廊の空気には、微細な水晶の粉塵と、特定のキノコが撒き散らす甘い胞子が充満しています。これを吸い込み続けると、手足の運動神経が徐々に麻痺し、力が入らなくなる『痺証ひしょう』を引き起こします」


「なっ……!? 麻痺だと……!?」

ガストンが慌てて匂い袋を鼻に押し当てる。


「東洋医学において、このような湿気と風邪、過剰な不純物が経絡に侵入して起こる麻痺を『風寒湿痺ふうかんしつひ』と呼びます。この匂い袋の芳香で鼻と肺の気を清め、体内の巡りを守ってください」


「ふぅ……! 爽やかなハーブの香りで、スッキリするわね! 枢先生がいてくれて本当に助かるわ」

ネネが胸を撫で下ろす。


その時であった。


「……止まれ」

先頭を歩いていた哭が立ち止まり、低く短い声で制した。

「前方の鐘乳石の影……何かが倒れている」


往診チームが警戒しながら近づくと、そこには美しい装飾の施された鎧を纏った二人の探索者の姿があった。しかし、二人はピクリとも動かず、壁に背を預けたまま苦しそうなうめき声を漏らしていた。


「だ、大丈夫ですか!?」

枢がすぐさま駆け寄り、倒れている男性探索者の手首を取って脈を診る。


「手足が完全に弛緩し、力が入っていません……。顔色は蒼白で、脈はきわめて弱く停滞しています。完全に『痺症』が進行し、体内の気血が手足まで届かなくなっています!」


「う……ううっ……。た、助けてくれ……。急に手足の感覚がなくなって……動けなくなったんだ……っ」

男性探索者が途切れ途切れの声で訴える。


「大丈夫です、今すぐ手当をします!」

枢はすぐさま往診鞄から鍼セットを取り出した。


「この状態は、外からの不純物によって経絡の伝達が遮断され、筋膜が栄養を失っている状態です。手足の運動機能を司る要穴に刺激を与え、一気に気血を通開させます!」


枢は素早い手つきで、男性の肘にある『曲池きょくち』と、手首の『外関がいかん』、そして足の『陽陵泉ようりょうせん』へ銀針を正確に打ち込んだ。


「開通せよ、経絡の気よ……! 鍼技・『通経活絡のつうけいかつらくのほう』!」


枢が針の頭を軽やかにトントンと叩くと、柔らかな気が手足の先へ向かって一気に流れ出した。


「あ……あれっ……!? 手の指先にじわーっと温かい感覚が戻ってきた……! 力が入るぞ……ッ!」

男性探索者が驚き目を見開き、自身の両手を握ったり開いたりしてみせた。


「すごいです……! 全然動かなかった足も、ちゃんと曲げ伸ばしができます!」

もう一人の探索者も立ち上がり、感激の声をあげた。


「よかった……! 無事で本当によかったです」

ネネが微笑む。


「助けていただいて感謝します……! 私たちは『第一の地脈の鍵』を求めてこの洞窟へ入ったのですが、この先の水晶の広場に、巨大な蜂のような怪物が巣を作っていて……その粉塵を吸って倒れてしまったのです」

男性探索者が悔しそうに拳を握る。


「巨大な蜂の怪物……!?」

ガストンが身を乗り出す。


「はい……『晶蜂后クリスタル・クイーン』と呼ばれる怪物です。あの怪物の巣の奥に、光輝く『地の鍵』が祀られているのを見ました!」


「第一の地脈の鍵を守るボスというわけですね……!」

枢の瞳が力強く光る。


「探索者のお二人、この匂い袋を持って引き返してください。ここから先は、私たちが引き受けます!」


「ありがとうございます……! どうかお気をつけて!」


助け出された探索者たちを見送り、往診チームは第一の鍵『地の鍵』が眠る晶蜂后の巣へと向かって、力強い足取りで進み始めるのだった――!

 第639話をお読みいただき、ありがとうございました!


今回は「水晶鍾乳の回廊」へと足を踏み入れた往診チームが、空気中の粉塵による麻痺(風寒湿痺)に苦しむ探索者を救出し、第一の地脈の鍵を守る『晶蜂后クリスタル・クイーン』の情報を得る展開を描かせていただきました。


さて、作中で探索者たちが苦しんでいた「手足の感覚が痺れ、力が入らなくなる(痺症・麻痺)」という状態は、日常の私たちにとっても決して他人事ではありません。


長時間のデスクワークやスマホ操作で同じ姿勢を続けたり、肘や正座で神経・血管を圧迫すると手足が痺れて動かなくなったり、冷えや湿気によって筋肉や関節が固まり、スムーズに動かせなくなることがあります。


このように「手足の痺れや動かしにくさ」を感じた時におすすめの東洋医学のツボが、腕にある**『曲池きょくち』と、足の膝下にある『陽陵泉ようりょうせん』**です!


『曲池』は、肘を曲げた時にできる外側の横シワの端にある凹みです。


『陽陵泉』は、膝の外側やや下にある、小さな骨の出っ張り(腓骨頭)のすぐ下前の凹みにあります。


ここを反対の手の親指で、痛気持ちいい強さでじわーっと押し揉んであげると、腕や脚全体の経絡の巡り(気血の通り)が一気に良くなり、作中で枢先生が経絡を開通させたように、手足の痺れや重だるさがスーッと和らいでいきます。


手足の冷えや痺れ、使いすぎによる違和感を感じた時は、ぜひこれらのツボを優しくケアしてみてくださいね!


次なる第640話は、本日**8月26日(水曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております!

夜21時の更新をどうぞお楽しみに!

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