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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第八章:南海灼熱諸島と炎の熱邪(ねつじゃ)】

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第638話「陰陽の調和!地脈の沈静と秘められた古文書」

「結節の間」にて、暴走する地脈の化身『氷炎地脈獣グラシアル=ヴァルカン』と対峙する往診チーム! ガストン、ネネ、哭の三人が命懸けで切り開いた一瞬の隙を突いて、くるるが秘宝『天恵の霊針』を手に地脈獣の胸元へと跳躍します。火と氷、相反する二つの過剰な気が渦巻く「陰陽離決」の病態に対し、東洋医学の深遠なる理と仲間の想いを込めた絶技が放たれます。暴走する地脈獣を救い、深層洞窟に平和を取り戻すことができるのか――クライマックスの治療劇が始まります!

 「巡り合え、陰と陽の力よッ!!」


 空中で往診鞄を抱えた枢の叫びが、激しい蒸気と不気味な地鳴りを突き破って響き渡った。


 枢の右手に握られた『天恵の霊針』が、まるで夜空に煌めく一番星のように眩い銀光を放つ。その針先が見据えるのは、地脈獣グラシアル=ヴァルカンの胸元中央――燃え盛る溶岩の赤と、凍てつく青氷が激しく衝突し、爆発を起こし続けている命の要穴『気海きかい』であった。


『グ……オォォォォォォッ!! 寄るな……我が身を破滅させる不快な気よぉぉぉッ!!』


絶望的な苦痛に狂乱する地脈獣が、残された左の巨大な氷爪を振り上げ、枢を叩き潰そうと振り下ろしてくる!


「させまへん……ッ! 枢先生の治療を、絶対に邪魔させへんのやからッ!」

ネネが渾身の力で弓を引き絞り、風の力を凝縮させた連射矢を地脈獣の左目へ向けて放った!

チュチュチュィンッ!


『グアッ……!? 目の前が……見えん……ッ!』

地脈獣の巨体がわずかに揺らぎ、振り下ろされた氷爪の軌道が大きく逸れる!


「今だぜぇぇぇッ! いけぇぇぇ、枢先生ぇぇぇッ!!」

ガストンが右前脚を戦斧で力任せに押さえ込み、叫び声をあげた!


「……隙は作った。頼むぞ」

影から躍り出た哭が、地脈獣の首元へ短剣の柄を叩きつけ、体勢を完全に崩させる!


仲間たちが繋いでくれた絶体絶命のコンマ数秒――枢の身体は、すでに地脈獣の胸元へと到達していた。


「過剰なる火の陽気、冷酷なる氷の陰気……互いに退け合い、生命を苛む毒気と化すことなかれ!」

枢の瞳に、澄み切った理の光が宿る。


「『土』の気が間を保ち、陰陽を巡らせて命の円環を成す……! 霊針技・『三和交和・天地開泰さんわこうわ・てんちかいたい』ッ!!」


ズバァァァァンッ!!!!


天恵の霊針が寸分の狂いもなく地脈獣の胸元『気海穴』へと深々と突き刺さった!


その瞬間、霊針の先端から溢れ出た銀光が、赤と青の二色に分裂していた体内の経絡を網の目のように駆け巡り始めた。

刺された気海穴を中心に、右半身の灼熱の火が左半身へと流れ込み、左半身の極寒の氷が右半身へと巡り出していく。


『ガ……ッ!? あ……熱が……冷気が……体の中を……混ざり合って……滑らかに……流れていく……!?』


地脈獣の瞳から、それまでの激しい狂気と苦悶の色が消え去り、驚愕と温かな安らぎの色が広がっていった。


ジュゥゥゥゥゥ……ッ!

激しく噴出していた不快な蒸気が収まり、赤くドロドロに溶けていた右半身と、青く凍りついていた左半身の境界線が、次第に柔らかな萌黄色の光へと包まれていく。

二つの過剰な属性が中和され、温かな「生命の地脈気」へと変化を遂げたのだ。


ドシャァァン……ッ!


地脈獣は静かに膝をつき、そのまま巨体を横たえた。しかし、それは死による倒伏ではなく、長年の激痛から解放された穏やかな眠りであった。

その身体は徐々に収縮し、数分後には、体長二メートルほどの輝く毛皮を持った静かな二尾の霊獣――『地脈の守護獣』としての本来の姿へと戻っていたのである。


「ハァ……ハァ……っ……。うまくいきました……ッ!」

枢が静かに着地し、深く息を吐きながら霊針を往診鞄へと納めた。


「やった……! やったわね、枢先生ッ!」

ネネが駆け寄り、枢の腕をぎゅっと抱きしめて涙ぐんだ。


「ガハハハハ! 見事だぜ先生! あのバカでかい化け物を、針一本で大人しい猫ちゃんみたいにしちまうんだからなッ!」

ガストンが豪快に笑いながら、枢の背中をバシッと叩いた。


「……静かになったな。空間の寒熱の荒れが、一瞬で収まった」

哭が短剣を鞘に納め、洞窟の周囲を見回した。


その言葉通り、あれほど荒れ狂っていた右側の熱風と左側の冷気が完全に消え去り、「結節の間」全体に春の陽気のような清々しく温かな風が吹き渡っていた。

フロスト族の集落を苛んでいた「寒熱錯雑」の病気も、これで根本から解決されたのである。


『キュキュ〜ン……』


目を覚ました守護獣が、愛らしい声をあげながら枢の足元へ擦り寄ってきた。自分を苦しみから救ってくれた命の恩人だと理解しているようだ。


「ふふ、もう大丈夫ですよ。体内の気は正しく巡っています」

枢が優しく守護獣の頭を撫でてやると、守護獣は口にくわえていた古びた小さな金属の筒を、枢の手元へそっと差し出した。


「ん? これは……?」

枢が筒を受け取り、蓋を開けると、中から羊皮紙で保護された一枚の羊皮紙――『古代アルゲンタ・深層診療記録』が出てきたのだった。


「これって……昔のお医者さんが残したカルテかしら……?」

ネネが興味深そうに覗き込む。


羊皮紙を開いた枢の表情が、驚きによって固まった。


「これは……! この深層洞窟のさらに奥、地下最深部に存在する『古の聖薬の泉』と、そこに眠る『不治の病を癒やす幻の霊薬』についての記録です……!」


「幻の霊薬……!?」

ガストンが身を乗り出す。


「はい。ですが……その泉に辿り着くには、深層に棲まう未知の病魔たちを治療し、三つの『地脈の鍵』を集めなければならないと書かれています」


枢は仲間たちを見つめ直し、力強く頷いた。


「フロスト族のみなさんへ朗報を届けたら、私たちはさらに深層へ進みましょう。病に苦しむすべての存在を救うために……!」


「「「おおっ!!」」」


地脈の暴走を鎮め、新たなる手がかりを得た往診チーム。白銀霊峰の深層を巡る往診の旅は、更なる神秘と冒険の領域へと足を踏み入れていくのだった――!

 第638話をお読みいただき、ありがとうございました!


今回は「結節の間」でのクライマックスとして、暴走する『氷炎地脈獣グラシアル=ヴァルカン』に対し、枢先生が『天恵の霊針』を用いて体内の火と氷の気を中和・和解させる「三和交和・天地開泰」の施術を行い、見事に地脈の安定と環境の浄化を成し遂げる展開を描かせていただきました!


さて、作中で激しい火と氷の気がぶつかり合い、身体を苛む描写がありましたが、私たちの日常生活においても「上半身はカッと熱くなってイライラするのに、下半身や手足は氷のように冷え切っている(冷えのぼせ)」という状態は非常に多く見られます。


これはストレスや過労、自律神経の乱れによって体内の「気の昇降運動」がスムーズにいかなくなり、温かい気が上へ上へと昇り、冷たい気が下へ下へと沈んで停滞してしまうことで起こります。


このような「体内の陰陽の偏り」を感じた時におすすめの東洋医学の養生法が、足のすねにある名穴**『足三里あしさんり』**のツボ押しと、温冷のメリハリです!


『足三里』の場所は、膝のお皿のすぐ下外側にある凹みから、指幅4本分下に下がったところにあります。


ここを手の親指で、やや強めにじわーっと押し揉んであげると、胃腸の働きが高まると同時に、上部に滞っていた過剰な気がすーっと足元へと引き下ろされ、作中で枢先生が陰陽を和解させたように、体全体の循環が綺麗に整っていきます。


「頭が重くてのぼせるのに、足元が冷えて眠れない」という時は、ぜひ『足三里』のツボを優しく刺激して、温かいお湯で足を温めてみてくださいね!


次なる第639話は、明日**8月26日(水曜日)のお昼【12:00】**に更新を予定しております!

お昼12時の更新をどうぞお楽しみに!

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