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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第八章:南海灼熱諸島と炎の熱邪(ねつじゃ)】

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第634話「天恵の一針!絶望の毒帝と命脈の解放」

『白銀の心臓の間』にて、山脈の命脈を汚染していた『金毒帝ゼノ=アルゲン』との最終決戦に挑む往診チーム! 仲間たちの息の合った連携によって、ゼノ=アルゲンに毒気を供給していた三本の『毒脈』を見事に断ち切ることに成功します。しかし、追いつめられたゼノ=アルゲンは、心臓水晶に残された最悪の金毒を一気に吸収し、暴虐なる最終形態へと変貌を遂げます。白銀霊峰の命運、そして仲間の想いを背負い、鍼灸師・枢が手にした秘宝『天恵の霊針』による最大の治療が今、解き放たれます!

 「そこだぁぁぁッ! 毒のラインを打ち砕けぇぇぇッ!」


 ガストンの魂を乗せた戦斧が、ネネの放った風の矢が、そして哭の短剣が同時に閃いた!

ドガァァァンッ! バキバキバキッ!

ゼノ=アルゲンの背後から心臓水晶へと伸びていた三本の太い毒脈が、目障りな音を立てて弾け飛び、紫黒い毒泥となって四散した!


 『ぐ、ぬおぉぉぉぉッ!? 我が毒脈が……心臓からのエネルギー供給が絶たれたというのか……ッ!?』

ゼノ=アルゲンが巨体を激しく震わせ、驚愕と怒りに満ちた悲鳴をあげる。


 「やったわ! 毒脈の遮断に成功しましたわッ!」

ネネが弓を握り直し、歓声をあげた。


 「よしッ! これで無敵の再生能力も消えたはずだぜ! 一気に畳みかけるぞッ!」

ガストンが戦斧を担ぎ直し、一歩前へ踏み出す。


しかし――事態はそう易々とは終わらなかった。


『おのれ……おのれ小僧どもめぇぇぇッ! ここまで我を追い詰めるとは……! だが、タダで倒れると思うなよッ! この白銀霊峰の心臓に残るすべての金毒を我の身に集め、お前たちもろとも、この山全体を道連れにして破滅させてやるわぁぁぁッ!!』


ゼノ=アルゲンが狂ったように叫ぶと、心臓水晶の中に沈殿していたドロドロの金毒の残留物が、一気にゼノ=アルゲンの黄金の鎧へと吸い上げられていった!

ズズズズズ……ッ!

過剰な毒気を限界を超えて取り込んだゼノ=アルゲンの体が、数倍の大きさに膨れ上がり、胸元には邪悪な紫金色の超巨大コアが剥き出しとなって発熱を始めたのだ。


「な……なんて禍々しいエネルギーなの……!? 身体が吹き飛ばされそう……ッ!」

ネネが激しい毒風に吹き煽られ、思わず腕で顔を覆う。


「暴走しやがったか……! だがなぁ、土壇場での悪あがきなら俺たちだって負けてねえんだよッ!」

ガストンが足元に深く踏み込み、巨獣の威圧に耐える。


「みなさん、下がっていてください……!」

くるるが静かに、しかし決然とした足取りで前へ出た。その手には、眩い銀の輝きを放つ『天恵の霊針』が握られている。


「枢先生……!? 危険です、あのコアに近づいたら先生の体まで金毒に侵されてしまいます!」

ネネが叫ぶが、枢は温かな微笑みを浮かべて首を振った。


「大丈夫です、ネネさん。みなさんが命懸けで毒脈を断ち、この道を作ってくださいました。ここからは……鍼灸師である私の仕事です」


枢の瞳が、鋭く冷徹な「臨床家の眼」へと切り替わる。


「ゼノ=アルゲンの今の状態は、全身に過剰な邪気が充満し、排泄の途を失って破裂寸前となっている『実邪じつじゃ熱極ねつきょく』の極限状態です。無理に攻撃を加えれば、その衝撃で体内の金毒が一気に爆発し、白銀霊峰の心臓部を完膚なきまでに破壊してしまうでしょう」


「爆発だと……!? じゃあどうすればいいんだよ、先生ッ!?」

ガストンが目を見開く。


「破裂させるのではなく……正しき『ツボ(経穴)』へ極上の針を打ち込み、過剰な毒気を安全に体外へ泄熱せつねつ瀉血しゃけつさせ、邪気の旋風を鎮めるのです!」


枢は天恵の霊針を高く掲げた。針先から放たれる清らかな銀色の光線が、ゼノ=アルゲンの巨体に浮かび上がる無数の気の通り道――「経絡」を白日下に晒し出す。


「見えました……! 胸のコアの直下、全身の気が集中する命の要穴『膻中だんちゅう』と、邪気を体外へ排泄する『行間こうかん』の投影点……! あの二点こそが、この暴走を止める唯一の施術部位です!」

『戯言をなぁぁぁッ! 鍼一本で我が絶対的な破壊のパワーを止められるものかぁぁぁッ!!』

ゼノ=アルゲンが超巨大な金毒の光線を、枢を目掛けて一直線に放たれた!


「させん……ッ!」

影の中から飛び出した哭が、二本の短剣で光線の軌道を力任せに逸らす!


「行けぇぇぇッ、枢先生ぇぇぇッ!!」

ガストンとネネが左右から突き進み、ゼノ=アルゲンの巨大な両腕を渾身の力で押さえ込んだ!


「みなさん……感謝しますッ!」

枢が地を蹴った!

身体を取り巻く空気の抵抗が消え去り、天恵の霊針から放たれる銀の光が、一直線にゼノ=アルゲンの胸元へと吸い込まれていく。


東洋医学の深遠なる真理、そして往診チーム全員の想いを込めた一針――!


「病根を断ち、命の巡りを今一度ここに……ッ! 奥義・『天恵霊針・九鍼開通てんけいれいしん・きゅうしんかいつう』ッ!!」


シュバァァァァンッ!!!!


眩い銀の光が、ゼノ=アルゲンの胸元の『膻中穴』へ完璧な角度と深さで突き刺さった!


『ゴッ……ハ……ッ!? な……なんだ……これは……!? 体内の熱が……毒気が……抜け……て……いく……!?』


針が刺さった瞬間、ゼノ=アルゲンの巨大な体内から、黒紫色の金毒がシュゥゥゥゥと音を立てて銀の光とともに綺麗な空気へと浄化されながら噴出し始めた!

過熱していた巨大コアの赤みがみるみるうちに引き、膨れ上がっていた暴虐の肉体が、本来の静かな金属の彫像のような姿へと収縮していく。


「成功……です……!」

枢が深く息を吐き、刺さった霊針を静かに引き抜いた。


『バカな……我が金毒が……消える……。循環……だと……? これが……命の……巡り……というのか……』


ゼノ=アルゲンは崩れ落ちるように膝をつき、そのまま光の粒子となって消滅していった。


その瞬間――ドクンッ!! と、部屋の中央にある巨大な心臓水晶が、力強く温かな鼓動を打った!

水晶を覆っていた最後の金毒の泥が綺麗に剥がれ落ち、純白の眩い光が最深部全体を包み込んでいく。

澄み切った清流が水路へと溢れ出し、白銀霊峰全体へと「生きた気」が巡り始めたのだ!


「やった……! やりましたわッ! 山が……白銀霊峰が元に戻っていきます!」

ネネが溢れ出る涙を拭いながら、枢へ抱きついた。


「ガハハハハッ! 見たかッ! これが俺たちの誇る鍼灸師、枢先生の一針だぁぁぁッ!」

ガストンが戦斧を高く掲げ、勝ち開きの雄叫びをあげる。


「……見事な手際だった」

哭も静かに微笑み、短剣を鞘へと納めた。


白銀霊峰を病ませていた元凶・金毒帝ゼノ=アルゲンを撃破し、山脈全体へ清らかな巡りを取り戻した往診チーム。

しかし、この過酷な白銀霊峰編(第8章)の冒険は、さらなる広大な世界へと続いていくのだった――!

 第634話をお読みいただき、ありがとうございました!


今回は白銀霊峰の最深部での『金毒帝ゼノ=アルゲン』との最終決戦のクライマックスを描かせていただきました!


暴走した毒帝に対し、仲間たちが作った一瞬の隙を突き、鍼灸師・枢先生が秘宝『天恵の霊針』を用いて「泄熱・瀉血」の理に基づいた渾身の一針を打ち込む爽快かつ感動の決着を楽しんでいただけましたら幸いです!


 さて、今回は作中で「過剰な熱や毒気が体内に溜まり爆発寸前になっている状態(実邪・熱極)」にちなみ、日常で「イライラやストレスで頭に血が上っている、顔が真っ赤にのぼせて目が充血している、激しい頭痛や熱っぽさで落ち着かない時」に、身体の上部に溜まった過剰な熱をスーッと下へ逃がして落ち着かせる東洋医学の知恵をご紹介します!


 頭に熱や気が急激に上っている時は、東洋医学では「上実下虚じょうじつかきょ」や「肝火上炎かんかじょうえん」という状態と考えます。

そんな時におすすめなのが、足の甲にある名穴**『太衝たいしょう』と『行間こうかん』**です!


場所は、**足の親指と人差し指の骨が交わる手前の凹みが『太衝』**で、**親指と人差し指の水かきのすぐ近くにある凹みが『行間』**です。


ここを手の親指で、足先に向かって押し下げるようにじわーっと強めに押してあげると、頭に上った血と熱が足元へと誘導され、作中で枢先生が毒気を泄熱したように、頭ののぼせやイライラがスーッと静まっていきます!

カッとなって頭に血が上った時や、目の疲れ・のぼせを感じた時は、ぜひ足元のツボを揉んでみてくださいね!


 次なる第635話は、明日**8月24日(月曜日)のお昼【12:00】**に更新を予定しております!


白銀霊峰に平和が戻り、ミモザや街の人々と歓喜を分かち合う往診チーム! しかし、霊峰の浄化によって古代都市のさらに奥深く「未開の深層地下ルート」が明らかになり――!? 12時の更新をどうぞお楽しみに!

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