第633話「霊峰の心臓!最深部に潜む毒帝と天恵の霊針」
『赤熱』『寒氷』『湿泥』という三つの試練をことごとく突破し、ついに古代アルゲンタの至宝『天恵の霊針』を手に入れた往診チーム! 試練の間をあとにした枢たちは、霊峰の地気を正しく導くため、いよいよ山全体の命脈が集中する最深部――「白銀の心臓の間」へと足を踏み入れます。しかし、そこに待ち受けていたのは、霊峰の命脈そのものを歪んだ金毒で汚染し、山ごと滅ぼそうと画策する『金毒帝ゼノ=アルゲン』でした。白銀霊峰の運命を懸けた最終決戦が、ついに幕を開けます!
ドックン……ドックン……と、地鳴りとも鼓動ともつかない重苦しい振動が、往診チームの全身を揺さぶっていた。
三つの宝玉が共鳴し、開放された最深部への極彩色の通路。その先を抜けた枢たちが辿り着いたのは、天井が果てしなく高く聳え立つ、白銀霊峰の真の最深部――「白銀の心臓の間」であった。
部屋の中央には、山全体へ純粋な地気と清らかな水脈を送り出すための巨大な脈穴が存在していた。しかし、本来なら眩い白銀に輝いているはずのその巨大な水晶体は、どろりと濁ったドス黒い金毒の蔓に絡み取られ、激しく喘ぐように不気味な紫光を明滅させていたのだ。
「な……何よこれ……!? 山の心臓が、あんなドロドロの毒塗れに……ッ!」
ネネが弓を握りしめ、痛ましそうに息を呑む。
「酷え有様だな……。大水車を動かして街の毒気を抜いたっていうのに、一番肝心な心臓部がこれじゃ、山が苦しむわけだぜ……ッ!」
ガストンが戦斧を固く握り直し、怒りに表情を歪めた。
「……静かに。頭上から、異常な気が降りてくる」
哭が短剣の柄に手を伸ばし、影のように枢の前に滑り込んだ。
『クハハハハ……よくぞここまで辿り着いたな、ネズミどもめ』
汚染された心臓水晶の頂点から、金属が擦れ合うような不快な高笑いが響き渡った。
そこに舞い降りたのは、全身をギラギラと光る歪な黄金の鎧で包み、手にはドロドロとした金毒を噴き出す巨大な魔槍を携えた異形の存在――『金毒帝ゼノ=アルゲン』であった!
「あなたが……この白銀霊峰を病ませ、毒気で生き物たちを苦しめていた元凶ですね……ッ!」
枢が往診鞄を抱え直し、真っ直ぐにゼノ=アルゲンを見据えた。
『病ませただと? 違うな、治療家気取りの小僧! 我はこの白銀霊峰を、永遠に腐ることのない『完全なる黄金の山』へと造り替えてやっているのだ! 生き物も、風も、水も、すべて我が金毒によって固められれば、病も死も存在しない永久不滅の存在となる!』
ゼノ=アルゲンが魔槍を振るうと、心臓水晶から大量の金毒が噴き出し、フロア全体へ激しい毒の波となって広がっていく!
「命あるものを固め、循環を止めることが不滅だと……!? それは永遠の死と同義です!」
枢の声が、静かな怒りを帯びて響き渡った。
「自然も、人間も、絶えず気が巡り、新しく生まれ変わるからこそ生きているのです! 循環を止め、痛みを無視して押し潰すあなたのやり方は……絶望の押し付けでしかありません!」
『口うるさい小僧め! 我が金毒の循環に呑み込まれ、愚かな肉体ごと金塊となるがいいッ!』
ゼノ=アルゲンが魔槍を突き出すと、紫金の光を放つ巨大な蛇のような毒気の奔流が、往診チームを目掛けて襲いかかってきた!
「させるかぁぁぁッ! 枢先生の言う通りだッ! 生きてねえ金塊なんぞにされてたまるかぁッ!」
ガストンが前に躍り出で、戦斧を激しく振り下ろして毒気の蛇を真っ二つに切り裂いた!
しかし、切断された金毒の奔流は衰えることなく、空間全体に重苦しい毒気と金属臭を撒き散らしていく!
「くっ……! 空間全体の『気』が重く澱んでいきますわ! 息をするだけで身体の芯が固まっていくみたい……!」
ネネが膝をつきそうになりながら、必死に弓を構える。
「みなさん! これが金毒帝の真の恐怖……『金毒凝滞』の病態です!」
枢がすばやく『天恵の霊針』を取り出し、眩い銀の光を空間へ放った!
「この金毒は、体内の気血の通り道である経絡を重金属の毒で物理的に塞ぎ、命の循環を完全に停止させようとしています! ですが、私たちには試練を越えて授かった、この『天恵の霊針』があります!」
天恵の霊針から溢れ出る柔らかな銀色の光芒が、往診チームを優しく包み込み、金毒の重苦しい威圧感を一瞬で撥ね退けた!
「おおおッ!? 身体が……軽いッ! さっきまでの重苦しさが嘘みたいに吹き飛んだぜ!」
ガストンが自身の両手を見つめ、驚喜の声を開かせる。
「ふふ、霊針の気光が、私たちの経絡を完璧に保護してくれているのね……! 枢先生、指示を!」
ネネが力強く立ち上がり、目を見開いた。
「はい! ゼノ=アルゲン本体は、山の心臓水晶から直接毒気を吸い上げて自己再生を行っています! まずはあの心臓水晶とゼノ=アルゲンを繋ぐ『毒気脈』を断ち切らなければなりません!」
枢が鋭い眼差しでゼノ=アルゲンの背後に伸びる三本の毒脈を指し示した。
「東洋医学で言う『病根の遮断』です! 脈脈と注がれる毒の供給源を絶てば、ゼノ=アルゲンの不死身の防具も威力を失います!」
「了解だ! あの三本の気味の悪いラインを切ればいいんだな!?」
ガストンが戦斧を高く掲げる。
「……右の毒脈は私が絶つ」
哭が影となり、壁面を跳ねるようにして急接近する!
「左の毒脈は私が射抜くわッ!」
ネネが天恵の霊針の光を矢に纏わせ、弓を引き絞る!
「真ん中の太い奴は、俺の斧でぶち叩き割ってやるぜぇぇぇッ!」
ガストンが地を蹴り、爆発的な踏み込みで突進を開始した!
『ぬううっ!? 愚か者どもめ、我と山の結合を邪魔させはせんッ!』
ゼノ=アルゲンが焦りを色濃くし、巨大な魔槍を振り回して全方位へ金毒の乱撃を放つ!
しかし、枢が掲げる『天恵の霊針』が放つ絶え間ない銀光のサポートにより、往診チームの動きには一切の迷いも停滞もなかった!
山全体の命を救うため、そして病める白銀霊峰を真の姿へ取り戻すため――往診チームの決戦の刃が、毒帝の病根へと一斉に襲いかかるのだった!
第633話をお読みいただき、ありがとうございました!
今回は白銀霊峰の最深部「白銀の心臓の間」での最終決戦の開幕を描かせていただきました!
山を歪んだ金塊へと変えようとする『金毒帝ゼノ=アルゲン』の圧倒的な脅威に対し、手に入れた『天恵の霊針』の威光と、枢先生の的確な病理分析、そして仲間たちの力強い連携を楽しんでいただけましたら幸いです!
さて、今回は作中で「体内に重苦しい毒気や不要なものが溜まり、全身の循環が止まって身体が重固まる状態(凝滞・濁気)」にちなみ、日常で「長時間同じ姿勢でいて全身がガチガチに固まっている、身体の巡りが悪くて老廃物が溜まっている気がする、体が重くて動くのが億劫な時」に、身体の滞りを解消してスムーズな巡りを取り戻す東洋医学の知恵をご紹介します!
東洋医学では、身体の巡りが悪くなって頑固なコリや重だるさが生じる状態を「気滞」や「血瘀」と呼びます。
そんな時におすすめなのが、背中の肩甲骨の間にある**『膈兪』と、手の甲にある名穴『合谷』**です!
特に自分で押しやすい『合谷』は、人差し指と親指の骨が交わる凹みのやや人差し指寄りにあります。
ここを反対側の親指で、痛気持ちいい強さでじわーっと揉み解すように押してあげると、全身の気の巡りが一気に高まり、溜まった不要な滞りが吹き飛びます!
また、作中で枢先生が霊針の光でみんなの巡りを整えたように、**「肩を上下に大きく回す」「ゆっくりと深呼吸をして新鮮な空気を身体の隅々まで行き渡らせる」**だけでも、身体に溜まった「重苦しい空気」が抜けやすくなりますよ!
デスクワークや作業の合間に、ぜひ試してみてくださいね!
次なる第634話は、本日**8月23日(日曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております!
毒脈を断ち切られた金毒帝ゼノ=アルゲンが暴走! 暴虐なる最後の形態へと変化する毒帝に対し、枢先生と『天恵の霊針』による「究極の鍼治療」が解き放たれる――!? 白銀霊峰編、感動のクライマックス! 21時の更新をどうぞお楽しみに!




