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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第八章:南海灼熱諸島と炎の熱邪(ねつじゃ)】

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第630話「赤熱の試練!炎の脈穴と猛暑の猛威」

創始者の幻影から提示された「三つの脈穴の試練」へと挑むことになった往診チーム! 伝説の『天恵の霊針』を手に入れ、白銀霊峰を病の根源から救うため、まず往診チームが足を踏み入れたのは第一の試練――「赤熱の炎の脈穴」でした。足元から吹き荒れる激しい熱気と干上がった空気の中、灼熱の魔物と極限の環境が往診チームの体力を奪っていきます。仲間たちの絆と連携、そして鍼灸師・枢の手腕によってこの灼熱の試練を乗り越えることができるのか――!?

 グラグラと足元の岩肌が煮えたぎり、赤い光が壁面の亀裂から激しく漏れ出していた。


 ミモザに見送られ、「赤熱の脈穴」へと続く赤い通路を進んできた往診チームを待ち受けていたのは、巨大なマグマ溜まりの上に作られた不安定な石橋と、室内全体を埋め尽くす猛烈な熱気であった。


 「うぐっ……! なんだこの暑さは……!? 息を吸うだけで喉と肺が焼け焦げそうだぞ……ッ!」

ガストンが額から滝のように汗を流しながら、戦斧の柄を固く握りしめる。しかし、その手元すら熱気で熱を帯びており、油断すれば火傷をしそうなほどだった。


 「汗が……止まりませんわ……。水筒のお水も、あっという間にお湯になっちゃいそうです……!」

ネネが真っ赤になった顔を拭いながら、荒い息を吐き出す。


 「みなさん、水筒の水を一気に飲んではいけません! 少しずつ口に含み、体内の水分と塩分のバランスを保ってください!」

くるるがすばやく全員に声をかける。


「この部屋は単に温度が高いだけではありません。激しい熱によって体内の『陰液(身体を潤す水分と栄養)』が急速に失われ、激しい喉の渇き、立ちくらみ、筋肉のこむら返りを引き起こす『傷津しょうしん熱邪ねつじゃ』の危険な状態に陥りやすくなっています!」


枢は往診鞄から、事前に調合しておいた生薬の清涼粉末を取り出し、みんなの水筒へ素早く投入した。


「これは『五味子ごみし』や『麦門冬ばくもんどう』を配合した生薬水です。体内の潤いを守り、激しい汗による体力の消耗を防ぐ効果があります! まずはこれを一口飲んでください!」


「ゴクッ……ゴクッ……! ああ……! 喉の奥にスッと甘酸っぱい冷涼感が広がって、息が楽になってきたぜ……ッ!」

ガストンが生薬水を口にし、一瞬で顔色を取り戻した。


「ふぅ……身体の奥の火照りが和らぎますわ! 枢先生、ありがとうございます!」

ネネも安堵の表情を浮かべる。


「……だが、試練は単なる暑さだけではなさそうだ」

影の中から静かに声をかけた哭の視線の先――マグマの池から、泡立つ音とともに巨大な火の塊が湧き上がってきた!


ゴオォォォォンッ!


それは、高熱の溶岩と赤熱の鉱石が融合して生まれた、身の丈5メートルを超える巨大な火焔の魔獣『赤熱の熔岩獣マグマ・ゴーレム』だった!

胸の中心には、過熱して白く輝く核がうねりを上げて暴れている。


『試練ヲ受ける者ヨ……。我が灼熱の炎に耐えかねるならば……灰となって散るがいいッ!』


熔岩獣が太い腕を振り上げると、周囲のマグマが爆発し、火の雨が往診チームの頭上へ大量に降り注いできた!


「危ないッ! 散開してくださいッ!」

枢が叫ぶ!


「へっ! 熱いのなんざ、俺たちの熱い魂で吹き飛ばしてやるぜぇぇぇッ!」

ガストンが戦斧を頭上で旋回させ、降り注ぐ火の粉を猛烈な風圧で弾き飛ばす!

しかし、一歩踏み込むたびに灼熱の石畳が足裏を焼き、激しい熱風が体力を削っていく。


「ガストンさん、正面から長引かせては熱負けします! あの怪物の核は、過剰な熱によって暴走状態にあります!」

枢が目を見開き、鋭い臨床の目で怪物の構造を見抜いた。


「東洋医学において、過剰な『火邪かじゃ』は冷やすだけでは収まりません。熱の抜け道を作り、内部の蒸気を逃がしてやることが必要です!」


「熱の抜け道か! 要するに穴を開けてガス抜きしてやりゃいいんだな!?」

ガストンがニヤリと笑う。


「その通りです! ネネさん、怪物の背中にある二箇所の放熱孔ベンチレーションを狙ってください! そこに矢を打ち込めば、内部の熱気が外へ吹き出します!」


「了解よッ! 任せて枢先生!」

ネネが弓を引き絞り、猛烈な上昇気流と熱風を計算に入れながら集中を高める。

「風よ……狙いを狂わせないで! 一閃・熱気貫通矢ッ!」


シュバババッ!

ネネの手から放たれた二本の光る矢が、激しい火の雨を縫うように飛び、熔岩獣の背中にある小さな穴へ完璧に突き刺さった!


プシィィィィィッ!!!!


穴から猛烈な白い蒸気と熱風が噴き出し、熔岩獣が「グオォォッ!?」と苦悶の声を上げて体勢を崩した。


「今だッ、哭さん! 正面の核を囲む冷却パイプを切断し、冷気の巡りを遮断している熱の詰まりを解除してください!」


「……承知した!」

黒い影となった哭が、過熱した空気の中を一直線に駆け抜けた!

灼熱の皮膚を物ともせず、二本の短剣を交差させて熔岩獣の胸元へ跳びかかる!

キィィィンッ!

核の周りに絡みついていた溶岩の鎖が一瞬で断ち切られ、溜め込まれていた熱エネルギーが勢いよく外部へと拡散を始めた!


「よしッ! 内部の過熱状態が解け、体の表面が固まり始めています! ガストンさん、最後の仕上げです!」

枢が叫ぶ!


「おうよぁぁぁッ! 枢先生の的確な指示と、みんなの繋いでくれたチャンス……無駄にはしねえッ!」

ガストンが大きく足を踏み鳴らし、全身の熱気とエネルギーを戦斧に集中させる。


「熱さに負けてたまるかぁぁぁッ! これが俺たちの……炎を凌ぐ冷徹なる一撃だぁぁぁッ!!」

ガストンが渾身の力で叩き下ろした戦斧が、熱を失い脆くなった熔岩獣の胸の核を真っ二つに砕いた!


ドカァァァァァンッ!!!!


巨体とともに爆発した熔岩獣は、溢れ出た清涼な生薬気と冷風の渦によって鎮火され、やがて静かな黒い溶岩の固まりとなって崩れ去った。


それと同時に、部屋を覆っていた猛烈な熱気がスッと引き、中央の台座に真っ赤に輝く『赤熱の宝玉』が浮かび上がったのだ。


「や……やりましたわッ! 暑さが引いていきます!」

ネネが膝をつき、安堵の息をつく。


「へへっ……なんとかなったな! 枢先生の生薬水と指示がなかったら、戦う前に干からびてたぜ!」

ガストンが汗を拭い、爽やかな笑顔を見せた。


「見事な戦いでした、みなさん。これで第一の試練『赤熱の脈穴』はクリアです」

枢が宝玉を丁寧に回収し、深く頷いた。


第一の試練を突破した往診チーム。

しかし、休む間もなく次に待ち受けるのは、真逆の極限状態――すべてを凍りつかせる第二の試練「凍てつく寒氷の脈穴」であった――!

 第630話をお読みいただき、ありがとうございました!


今回は第一の試練である「赤熱の脈穴」での白熱したバトルと、灼熱の熱気(熱邪・傷津)に立ち向かうチームの絆を描かせていただきました!


鍼灸師・枢先生の観察眼と生薬の知識、そしてガストンさんたちの息の合った連携により、熱暴走した熔岩獣を撃破する爽快な展開を楽しんでいただけましたら幸いです!


 さて、今回は作中で「激しい暑さと汗によって体内の潤いと体力が奪われる状態」にちなみ、日常で「猛暑や長時間の屋外作業で体が熱を帯びている、喉がカラカラに乾いてだるさが抜けない、室内に入っても体が火照って落ち着かない時」に、身体を内側から優しく潤して熱を冷ます東洋医学の知恵をご紹介します!


 激しい熱気や汗によって体内の水分(陰液)が不足すると、東洋医学では「体の冷やす力」が弱まり、夏バテや熱中症のような症状を引き起こしやすくなります。


そんな時におすすめなのが、手首の内側近くにある**『太淵たいえん』**というツボです!

場所は、親指の付け根のふくらみの下、手首の横シワの上で脈がトクトクと触れる凹みです。


ここを反対側の指で、優しくもみほぐすように押してあげると、体内の「肺の気」が高まり、呼吸が楽になると同時に体に必要な潤いが巡りやすくなります!


また、冷たいジュースや氷水を一気に飲むのではなく、作中で枢先生が用意したように**「常温のお茶や白湯を少しずつこまめに飲む」**ことで、胃腸を痛めずに効果的に体内の熱を冷ますことができますよ!


 次なる第631話は、明日**8月22日(土曜日)のお昼【12:00】**に更新を予定しております!


第二の試練「凍てつく寒氷の脈穴」へと足を踏み入れた往診チーム! 極寒の吹雪と全身を締め付ける激しい冷えの中、次なるガーディアンが立ち塞がり――!? 12時の更新をどうぞお楽しみに!

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