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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第八章:南海灼熱諸島と炎の熱邪(ねつじゃ)】

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第629話「試練の鑑識間!解放されし霊峰の心臓」

ミモザとの連携によって『大水車ギガ・ホイール』を見事に再始動させ、古代製錬都市アルゲンタへ清らかな風と水を取り戻した往診チーム! しかし、大水車が巡り始めたことで都市の最最下層に封印されていた「古代の試練の扉」が重々しく開放されます。扉の奥に広がっていたのは、白銀霊峰の地気を正しく制御するための「試練の鑑識の間」。山全体の病態を完全に解き明かすため、鍼灸師である枢と仲間たちが新たな謎と試練に挑みます!

 ズズズ……と地鳴りのような重低音が地下空間全体に響き渡っていた。


 大水車が力強く回転を始めたことで、澄み切った地下水が勢いよく水路を駆け巡り、街全体を覆っていた濁った毒気が目に見える速さで薄れていく。

それと同時に、広場の最下層にあった巨大な両開きの石扉が、数百年ぶりの封印を解かれてゆっくりと押し開かれたのだ。


 「うわぁ……見てミモザちゃん! 街の奥の大きな扉が開いたわよ!」

ネネが弓を肩に掛け直し、目を見開いて指をさす。


 「すごーい! あたしもあの扉が開いてるの、生まれて初めて見たよ! おじいちゃんの古い日記には『都市の心臓部へ通じる扉』って書いてあったけど……!」

ミモザが興奮した様子でゴーグルを跳ね上げ、巨大なスパナを抱え直した。


 「……気をつけて進みましょう。毒気は退きましたが、何が残されているか分かりません」

鍼灸師・くるるは往診鞄をしっかりと持ち直し、先頭に立って開かれた扉の奥へと足を踏み入れた。


 扉の先に広がっていたのは、これまでの武骨な製錬施設とは一線を画す、どこか神聖な空気が漂うドーム状の巨大な部屋だった。

壁面全体には、白銀霊峰の山脈や地下水脈の図解が鮮やかな青と銀の鉱石で立体的に描かれており、中央には透き通った水晶の台座が鎮座している。


 「へぇ……! なんか知らねえが、すげえ綺麗な部屋だな! 毒のドロドロも全然ねえぞ!」

ガストンが戦斧を担ぎながら部屋を見回し、感嘆の声をあげる。


「……いや、油断は禁物だ。壁の図面……光が不規則に明滅している」

影の中から姿を現した隠密・コクが、鋭い視線で中央の台座と壁面のマップを見つめた。


枢がゆっくりと中央の台座へ近づき、そこに刻まれた古代文字と図形に目を通す。

長年積み重ねてきた東洋医学の観察眼と、人体・自然の経絡(気の流れ)に関する知見が、その図面の意味を解き明かしていった。


「これは……山全体の『経絡図』ですね。白銀霊峰という巨大な大自然の身体の中で、どこに気が流れ、どこに血水が滞っているのかを示す、いわば巨大なカルテのようなものです」


「山全体のカルテ……!? そんなものまで作ってたのね、昔の人たちは……!」

ネネが感心したように息を呑む。


「ええ。ですが見てください。大水車が動いたことで表面の毒気は流せましたが、この山脈の深部――ちょうど第8章の舞台となっている白銀霊峰の最深部を示すこの部分に、まだ黒く淀んだ巨大な『滞り』が残っています」

枢が指示した壁の部分は、ドクンドクンと不気味な黒紫色の光を放っていた。


「あちゃー……やっぱりかぁ。金毒帝の奴ら、表面の施設だけじゃなくて、山の命脈のいちばん深い根っこまで毒を流し込んでたんだね」

ミモザが悔しそうに拳を握りしめる。


「根っこが腐ったままだと、また時間が経てば毒が溢れ出して大水車も止まっちゃうってことか……?」

ガストンが眉をひそめて枢を見る。


「その通りです、ガストンさん。木の枝葉を剪定するだけでは病気は治りません。根幹にある『病の根本原因』を取り除かなければ、本当の完治とは言えないのです」

枢が静かに、しかし力強い声で答えた。


その時であった――!


ボウンッ! と中央の水晶台座が眩い光を放ち、部屋の中央に青白い光で作られた立体的な幻影ホログラムが浮かび上がった!

それは古風な衣服を纏った古代の老技師の姿であり、静かに往診チームへ向かって語りかけ始めたのだ。


『試練の間に至りし者たちよ……。我はアルゲンタの創始者。この山を護りし者なり。汝らが山を救わんと欲するならば、我が遺せし『三つの脈穴の試練』を解き明かさねばならぬ……』


「わっ!? 幽霊!? それともからくりのからくり幻影!?」

ミモザが驚いて飛び上がる。


『霊峰の病は深し。単なる力任せの破壊では、山そのものが崩壊し麓の命を奪うであろう。山を治めるには、自然の巡りを理解し、正しき順序で病脈を解きほぐす『治療の道筋』を示さねばならぬ……』


老人の幻影が手を掲げると、部屋の奥に三つの異なる色(赤・青・黄)で輝く新たな通路が浮かび上がった。


『第一の脈穴は『赤熱の炎』。第二の脈穴は『凍てつく寒氷』。第三の脈穴は『濁れる湿泥』。この三つの異常な気候を正しく調和させ、中央の『心臓脈』へ到達せよ。さすれば、白銀霊峰を完全なる復活へと導く『古代の至宝・天恵の霊針』が授けられん……!』


「天恵の霊針……!?」

枢の瞳が大きく見開かれた。

それはかつて伝説の治療家が使用したと伝えられる、自然の気脈を自在に調和させる伝説の医療具の名であった。


「へっ! 面白いじゃねえか! 試練だか何だか知らねえが、要するにその三つの部屋の異常をぶち破って、伝説の針を手に入れりゃいいんだろ!?」

ガストンがニッと豪快に笑い、戦斧を肩の上でポンポンと叩いた。


「ガストンさん、ただ暴れるだけじゃダメっておじいさんも言ってたでしょ! 枢先生の指示を聞いて、正しく治していかなきゃ!」

ネネがクスッと笑いながらガストンの背中を小突く。


「……フッ。炎と氷と泥か。我ら往診チームの絆があれば、破れぬ試練などない」

哭も短剣の柄に手を当て、静かな闘志を燃やす。


「ミモザさん、都市の管理と大水車の維持をお願いできますか? 私たちはこの三つの試練へと挑みます」

枢が振り返ってミモザに優しく語りかけた。


「うん! 街の守りはあたしに任せて! 枢先生、ガストンたち、絶対に無事で戻ってきてね! 大水車を一番良い状態にして待ってるから!」

ミモザが胸を張って元気いっぱいに送り出してくれる。


「よしッ! 往診チーム、白銀霊峰を真の復活へと導くため……試練の脈穴へ出発です!」


「「「おうッ!!!!」」」


仲間たちの威勢の良い掛け声が、静かな試練の間に力強く響き渡る。

鍼灸師・枢率いる往診チームは、山脈の命を救うための「三つの試練」と、伝説の秘宝を求めて、新たな未知なる通路へと力強く歩みを進めるのであった――!

 第629話をお読みいただき、ありがとうございました!


今回は大水車起動後の新たな展開として「試練の鑑識の間」の発見と、創始者の幻影から提示された「三つの脈穴の試練」への挑戦を描かせていただきました!


単なるバトルだけでなく、山全体を一つの巨大な身体に見立てて治療していくという東洋医学的なアプローチと、仲間たちの明るい絆、そしてワクワクする冒険の広がりを楽しんでいただけましたら幸いです!


 さて、今回は作中で「山脈の全体像カルテを観察し、病の根本原因を見つけ出す」場面にちなみ、日常で「なんとなく体調が悪いけれど、どこが原因か分からない、全身が重だるくてシャキッとしない時」に、身体のサインを自分で読み解き、バランスを整える東洋医学の知恵をご紹介します!


 東洋医学では、人の身体も白銀霊峰のように「気・血・水」が巡る一つの大きな自然だと考えます。

体調が優れない時は、無理に体を動かそうとする前に、まず**「自分の手足やお腹に触れてみる」**ことが大切です!


お腹や足先が冷えていたら「温めるケア(お風呂や温かい飲み物)」を、頭や顔が熱くのぼせていたら「深呼吸とリラックス」を意識してみてください。


特に、手首のシワから指幅2本分肘に向かったところにある**『間使かんし』**というツボを優しく押してあげると、心身の乱れたペースが整い、作中で枢先生が山の脈を解き明かしたように、自分の体の声が聞き取りやすくなりますよ!


日頃から自分の身体の「カルテ」を意識して、優しくケアしてあげてくださいね!


 次なる第630話は、本日**8月21日(金曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております!


第一の試練「赤熱の炎の脈穴」へ足を踏み入れた往診チーム! 灼熱のマグマと熱気が吹き荒れる洞窟で、ガストンたちの体調に異変が……!? 21時の更新をどうぞお楽しみに!

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