第628話「大水車の誓い!毒気吹き払う三連起動」
からくり技師の少女ミモザと出会い、古代製錬都市アルゲンタの命である「大水車」を再始動させるため、毒ガスが立ち込める水車室へと足を踏み入れた往診チーム! しかし、大水車の動力室には金毒帝の刺客によって仕掛けられた強烈な毒気の罠と、古代都市の防衛システムが融合した異形の守護者が待ち受けていました。仲間たちの熱い絆と連携、そして鍼灸師・枢の手腕が試される大迫力の決戦をお届けします!
「うわっ、なんだこの匂い……!? 鼻がツンとして、喉の奥が焼けるように熱いぞ……ッ!」
大水車の動力室へ続く頑丈な鉄扉を開けた瞬間、ガストンが思わず顔を背けて激しく咳き込んだ。
広い室内は、視界を遮るほどの濃密な紫色の毒ガスで満たされていた。
本来であれば、地下水脈から引き込まれた清涼な水流がゴーゴーと音を立てて水車を回しているはずの場所だが、水路の各所にはドロリとした金毒の泥がへばりつき、黒く濁った泡を泡立てている。
「みなさん、ハンカチや布で口と鼻を覆ってください! 息を深 we 吸い込んではいけません!」
枢が往診鞄から取り出した清涼感のある生薬の抽出液を素早く全員の布へ湿らせ、手渡していく。
「うう……目がチカチカするわ……。ミモザちゃん、このガスの奥にレバーがあるのね!?」
ネネが目元をぬぐいながら、弓を強く握り締めて問いかける。
「うんっ! この部屋の東、西、そして中央の奥にある3つの『清流レバー』を同時に引き下ろせば、緊急浄化水流が流れて大水車が動き出す仕組みになってるの! でも……!」
ミモザが悔しそうに歯噛みをし、奥の闇を指さした。
「レバーの周りに、毒の泥で固められた巨大な守護ロボット(ガーディアン)が陣取ってるんだよ……!」
ミモザの指さす先――紫色のガスを押し分けるようにして、ぬうっと姿を現したのは、身の丈4メートルを超える巨大な四足歩行の鋼鉄獣だった。
かつては古代都市を守る優美な獅子の姿をしていたのであろうその表面には、金毒の泥が幾重にもこびりつき、赤黒いスパークを散らしながら低く不気味な動作音を響かせていた。
『ギギギ……侵入者……発見……。ギガ・ホイールノ……起動ヲ……阻止セヨ……』
「へっ……! 毒のガスで息が苦しいからって、ビビってちゃあ仕事にならねえな! 鍼灸師の枢先生がくれた薬の布のおかげで、喉の痛みもだいぶ楽になったぜ!」
ガストンが戦斧を豪快に担ぎ直し、口元を布で覆ったまま不敵に笑った。
「ガストンさん、無茶は厳禁です! あのガスの密度の中で激しく動けば、体力を急速に奪われます!」
枢が注意を促すが、ガストンは力強く頷いて見せた。
「分かってるさ、先生! ダラダラ長引かせるのが一番ヤバいんだろ? だったら一気に片付けるまでだ! ネネ、哭! 俺が正面からあのデカブツを引きつける! その隙に東と西のレバーへ走れッ!」
「了解よ! ガストン、絶対に無理しちゃダメだからねッ!」
ネネが身を翻し、軽やかな足取りで西側の階段へと駆け上がる!
「……東は任せろ。一瞬で終わらせる」
哭が黒い影のように滑らかな動きで、東側のパイプラインの上を跳び渡っていく!
「よしッ! 俺は中央の一番デカいレバーと、あのデカブツをまとめて引き受けるぜぁぁぁッ!!」
ガストンが豪快な雄叫びをあげ、巨獣へ向けて一直線に突き進んだ!
『排除……排除……! 金毒弾……発射……!』
鋼鉄の巨獣が口を大きく開け、溜め込まれた金毒の泥弾を連続で吐き出してきた!
ドカドカドカンッ!
足元の石畳が爆ぜ、激しい泥跳ねがガストンを襲う。しかし、ガストンは戦斧を風車のように回転させ、迫り来る泥弾をすべて力任せに撃ち払っていく!
「ぬおぉぉぉッ! こんな泥っ端、俺と先生の作ってきた絆に比べたら蚊の刺したようなもんだぜッ!」
「ガストン! 後ろから足元を狙ってくるわッ!」
西側の高台に到達したネネが、弓を引き絞って叫んだ。
巨獣の背中から伸ばされた幾つもの太い真鍮の触手が、ガストンの背後から迫る!
シビィィンッ!
ネネが放った三連の矢が触手の関節部へ完璧に突き刺さり、その動きを封じ込めた!
「助かったぜネネッ! 東はどうだ!?」
「……完了した」
闇の中から哭の声が響く。東側の壁際に立つ巨大なレバーの横で、哭が短剣の柄を叩きつけ、ひとつ目のレバーを見事に引き下ろしていた!
ゴーッ! と東側のパイプから澄んだ水音が響き始める。
「すごい……! 本当にひとつ目のレバーが動いたよ!」
ミモザが歓声をあげる。
「よーし、次はわたしねッ!」
ネネが西側のレバーに手を掛け、全身の体重を乗せて一気に引き下ろした!
ガチャンッ!
ふたつ目のレバーが噛み合い、西側の水路からも清らかな水流が吹き出し始める!
「残るは中央、あの巨獣の真後ろにある最大のレバーだけです!」
枢が声を張り上げる。
『警告……機能停止……不可……! 全方位……毒気放射……!』
ふたつのレバーが引かれたことで危機感を募らせた巨獣が、胸のコアを赤く発熱させ、部屋全体へ向けて致命的な濃度の毒ガスを爆発的に撒き散らそうと体組みを膨らませた!
「しまっ……!? あんな濃度のガスを喰らったら、みんな息ができなくなっちゃうよッ!」
ミモザが悲鳴をあげる。
「させま……せんッ!」
枢が往診鞄から一包の粉末を取り出し、手に持っていた松明の火へ投じ込んだ!
フッと炎が蒼白く燃え上がり、清涼感あふれる薬草の香煙が部屋全体へ一気に広がっていく!
東洋医学における「芳香化湿」――強い香気を持つ生薬の煙によって、空間に停滞した邪気と湿毒を瞬時に打ち払い、空気の巡りを清める秘策である!
「な……なんだか空気が急にすっきりして、胸がすーっと通るようになったよ!?」
ミモザが目を丸くする。
「今です、ガストンさんッ! 巨獣の足元、右前脚の関節にある軸が緩んでいます! そこを叩いてくださいッ!」
枢の鋭い観察眼が、巨獣の体勢の崩れを見抜いて叫んだ。
「任せとけぇぇぇッ! 先生の目利きに狂いはねえッ!」
ガストンが大きく踏み込み、全身の筋肉を極限まで躍動させる。
お腹の奥から溢れる力が腕へ、そして愛用の戦斧へと伝わっていく。
「この街の綺麗な水と空気を取り戻す! 俺たちの……一撃を受けてみやがれぇぇぇッ!!」
ガストンが回転の勢いを乗せ、戦斧を巨獣の右前脚へ一閃叩きつけた!
ズドォォォォンッ!!!!
激しい衝撃音とともに、巨獣の脚部が根元からへし折れ、大きな体躯が激しく傾いて崩れ落ちた!
「今だッ、ミモザちゃん! 最後のレバーだッ!」
「うんっ! 任せてぇぇぇッ!」
ミモザが背中の巨大スパナを両手で構え、傾いた巨獣の頭上を跳び越えて、中央の最後となる三つ目の巨大レバーへ飛びついた!
「動けぇぇぇッ! あたしたちのアルゲンタぁぁぁッ!!」
ガチャンッ!!!!
三つ目のレバーが重厚な音を立てて完全に噛み合った。
その瞬間――ドバアァァァァッ! と部屋の奥からけた外れの水音とともに、輝くばかりの清流が爆発的な勢いで流れ込んできた!
清らかな水流は瞬く間に毒の泥を洗い流し、充満していた紫色の毒ガスをみるみるうちに吹き消していく。
ゴゴゴゴゴ……と地鳴りのような重低音が響き、巨大な鋼鉄の水車「大水車」が、数百年ぶりの眠りから目を覚ましてゆっくりと動き始めた!
「や……やったぁぁぁッ! 大水車が動いたよぉぉぉッ!」
ミモザが躍り上がって歓声をあげ、ガストンと力いっぱいハイタッチを交わした。
「ふぅ……見事な手際でしたね、みなさん」
枢が汗をぬぐい、仲間たちの無事と清々しくなった空気を感じ取って温かな微笑みを浮かべた。
大水車の復活によって、古代都市アルゲンタに清らかな風と水が巡り始める。
しかし、水車が回り始めたことで、都市の最下層にある「隠された開かずの扉」が重々しく開き始めていたのだった――!
第628話お読みいただき、ありがとうございました!
今回は毒ガスが充満する水車室での白熱したアクション、仲間たちの息の合った三方向からの同時攻略、そして鍼灸師である枢先生の観察眼と生薬の知識を活かしたサポートを描かせていただきました!
古代都市のシンボルである大水車が見事に再始動し、爽快な達成感を味わっていただけましたら幸いです!
さて、今回は作中で「毒気や閉め切った部屋の重い空気によって胸が苦しくなり、生薬の香気でスッキリ深呼吸を取り戻した」場面にちなみ、日常で「部屋にこもっていて頭がボーッとする、長時間の作業で息が浅くなり胸が苦しい、気分が晴れない時」に、手軽に胸をすっきりさせて深呼吸をしやすくする東洋医学の知恵をご紹介します!
頭がボーッとしたり息が浅くなっている時は、東洋医学では「気の流れが胸で滞り、新鮮な空気を取り込めていない」状態と考えます。
そんな時におすすめなのが、手首の内側にある**『内関』**というツボです!
場所は、手のひら側の手首のシワから、指幅3本分肘に向かったところにある、2本の筋の間です。
ここを反対側の親指で、気持ちいいと感じる強さでじわーっと押しながら、ゆっくり息を吐き出し、深く吸い込んでみてください。
ここを刺激すると、胸のつかえが解けてスーッと息が深く吸えるようになり、作中で大水車が動いて風が通り抜けた時のように、頭と胸がフレッシュにリフレッシュされますよ!
デスクワークや長時間のドライブの合間にも非常に効果的ですので、ぜひ試してみてくださいね!
次なる第629話は、明日**8月21日(金曜日)のお昼【12:00】**に更新を予定しております!
大水車の稼働により、都市の最下層に眠る「古代の試練の扉」が開放! 扉の向こうで往診チームを待つものとは……!? 12時の更新をどうぞお楽しみに!




