第613話「崩落の旧鉱道!閉塞の息苦しさと肺兪の宣気」
名穴『気海』の刺鍼によって生命の原気を極限まで呼び覚まし、ついに銀爪会首領「金剛」を打ち破った往診チーム。しかし、敗れ去った金剛が最期に放った悪あがきにより、旧鉱道全体を支えていた巨大な金毒結晶が破壊され、頭上から無数の巨岩と猛烈な粉塵が降り注ぐ「大崩落」が巻き起こります。逃げ道を塞がれ、密閉された空間で舞い散る岩粉に呼吸を奪われる一行! 八章の熱闘は終わらない! 枢先生の冷静なる刺鍼とチームの絆が、閉塞した岩盤の窮地に挑みます!
グラグラグラッ――ドスゥゥゥゥンッ!!!!!
白銀霊峰の地下深くに穿たれた旧鉱道が、耳をつんざく地鳴りとともに激しく揺れ動いていた。
倒れ伏した首領・金剛の手によって支えの結晶が砕かれたことで、天井の岩盤が次々と剥がれ落ち、往診チームの前後を巨大な岩石の山が完全に遮断してしまったのだ。
「くそっ……! 出口も奥の道も、完全に崩れた岩で埋まりやがった! 閉じ込められたぞ……ッ!」
ガストンが戦斧で降り注ぐ小石を弾き飛ばしながら、八方ふさがりの脱出ルートを見渡して悔しそうに歯噛みする。
「ゲホッ……! ゴホッ、ゴホッ……! き、気が遠くなるほどの粉塵ね……ッ! 目を開けていることすら難しいわ……ッ!」
ネネが口元を衣で覆いながら、岩が砕けた際に発生した分厚い灰白色の粉塵の渦に視界を奪われ、激しく咳き込む。
脱出路を失っただけでなく、狭い密閉空間に充満した高濃度の微細な岩粉と冷気が、往診チームの呼吸器系を容赦なく追い詰めていった。
「クホッ……ガハッ……! 胸が……胸が押し潰されるみたいに苦しい……ッ! 空気が吸えない……息が……通らない……ッ!」
ガストンが胸元を拳で叩き、喘ぐように背中を丸めて吐息を漏らす。
「息を吸おうとすると……胸の奥が固まったみたいに引き攣れて……意識が……遠のく……ッ!」
ネネもまた胸の圧迫感と息苦しさに顔を惨白に染め、崩れ落ちるように膝をついた。
「……皆さん、慌てて深く息を吸わないでください……! これは閉塞された空間での猛烈な粉塵と恐怖、冷気によって、肺の気が胸中に停滞し、呼吸の出入りが完全に途絶えた『肺気阻痺・胸中気塞』です!」
枢が自らの口元を湿らせた布で覆いながら、すばやくガストンとネネの背中に手を当てる。
背中の中央、肩甲骨の間にある「肺の気が注ぐ部位(背部輸穴)」の筋肉が、まるで鉄板のように硬く跳ね返って収縮していた。
「東洋医学において『肺は気を司り、一呼一吸(呼吸)を統括する』臓器です! このように空気の流通が途絶えた密閉空間で多量の粉塵を吸引すると、肺の宣発(気を拡散させる働き)と粛降(気を下へと降ろす働き)が完全に機能不全を起こし、肺中に気が詰まって激しい胸の圧迫感、息切れ、窒息感、喘鳴を引き起こします! すぐに背中から肺の気を解放しなければ、窒息してしまいます!」
「フハハハ……! 貴様らの命運もここまでだッ!」
崩れ残った壁面の穴から、まだ息のあった銀爪会残党の残兵たちが、鉄の鉤爪を構えて這い出してきた!
「我が首領は敗れたが、この旧鉱道は貴様らの墓場となる! 空気が干上がる前に、我らの手で引導を渡してやるわッ!」
残兵たちが最後のがむしゃらな突撃を仕掛け、爪を振り下ろす!
「ぐぁっ……! 体が……胸が苦しくて……斧が持ち上がらねぇ……ッ!」
ガストンが胸を強圧され、迎撃の体勢を取ることができない。
「……相棒! 胸の塞がりを叩き開けッ! 呼吸さえ戻れば……こんな残党など一息で吹き飛ばせるッ!」
隠密・哭が必死に呼吸を整えながら短剣を滑らせ、襲いかかる残兵の鉄爪を滑り込みで弾き返す!
「任せてください、哭さん! 肺の背部輸穴を直接刺激し、胸の中に溜まった気塞と粉塵の滞留を一気に散じます!」
枢の手が往診鞄から取り出したのは、背中の深い経絡まで通気させる清涼な輝きの「宣肺利気・胸中開通長銀鍼」であった!
「ハク、リナ! 肺の機能を直接活性化させ、気管支の収縮を和らげる『紫苑』と『款冬花』の宣肺通気アロマを、全員の背中へ広範囲に噴霧しなさい!」
「了解です枢先生! 宣肺通気アロマ、背中へ全開噴射ッ!!」
胸がすっと広がるような甘く爽やかな香味が背中に広がり、固まっていた背部筋肉の張りが和らぎ始める!
「背部に注ぐ肺の精気よ、胸中の塞がりを打ち破り通じたまえッ! 足の太陽膀胱経の背部輸穴……解放ッ!!」
シュパッ! シュパッ! シュパッ――!!
枢の手から放たれた銀鍼が、苦しむガストン、ネネ、哭、ハク、リナ、そして自らの**「第3胸椎棘突起の下から、左右外側へ指幅2本分(1.5寸)離れた背中の凹み(肩甲骨の間の上部)」**へ、寸分の狂いもなく的確に打ち込まれた!
打ち込まれたのは、肺の気が直接集まる背部の輸穴であり、激しい胸苦しさや呼吸困難を劇的に開通させる至高の呼吸器特効穴――『肺兪』!
ジュワァァァァァァッ!!!!!
「――つ……ハッ!? 胸を縛り上げていた分厚い鉄の鎖が……バチーンと千切れて弾け飛んだぞ……ッ!?」
ガストンが目を見開き、大きく胸を膨らませて新鮮な気を一気に吸い込んだ!
「息ができる……! 胸の苦しさが消えて、風が胸の奥までまっすぐに通り抜けていくわ……ッ!」
ネネが胸元を押さえていた手を離し、潤いを取り戻した呼吸で力強く叫ぶ!
「『肺兪』は、背中を通る『足の太陽膀胱経』に所属し、肺臓の精気が直接注ぐ『背部輸穴』です! ここに適切な鍼刺激を与えることで、肺の宣発・粛降機能をダイレクトに呼び覚まし、胸の圧迫感、激しい喘息、呼吸困難、連続する咳、背中の痛みを即座に解放する、東洋医学において肺疾患治療の根本となる絶対の名穴です!」
枢が力強く往診鞄を構え直す!
「な……何だとぉぉぉッ!? 密閉空間の息苦しさが、背中のツボ一つで破られたというのかッ!?」
残兵たちが絶望に顔を歪める。
「ガストンさん、今です! 呼吸を取り戻した力で、残党を退け、この崩落した岩盤を打ち破りましょう!」
「おうよッ! 息が吸えるってのは、こんなにもパワーが湧いてくるもんなんだなッ! 残党もろとも、崩れた岩山ごと吹き飛ばしてやるぜぇぇぇッ!」
ガストンが全身から湧き上がる黄金の気を戦斧に極限まで充填させ、叫びとともに跳躍した!
「豪力・絆の太刀割り――宣気爆砕全開断ッ!!!!」
ドカァァァァァァァンッ!!!!!!!!
ガストンの一撃が立ち塞がる残兵たちを吹き飛ばし、その凄まじい衝撃波が旧鉱道を塞いでいた崩落岩盤の脆い亀裂を真っ直ぐに貫いた!
ズズズズズンッ……!!
砕け散る巨岩の向こうから、一筋の眩しい外光と、澄み渡る山の清風が旧鉱道の中へと勢いよく流れ込んでくる!
「やった……! 外への抜け道が開いたぞッ!」
ガストンが歓声を上げる。
しかし、岩盤を吹き飛ばしたその瞬間、旧鉱道の奥底から地鳴りとともに「さらなる古代の寒寒とした冷気」が噴き出し始めていたのだった――!
第613話をお読みいただき、ありがとうございました!
金剛を倒したものの、旧鉱道の崩落と充満する粉塵によって激しい胸の苦しさと窒息感に襲われた往診チームを、枢先生が『肺兪』の刺鍼で見事に救い出し、ガストンさんの大技で脱出口を切り開く熱い展開をお届けいたしました。
さて、今回は作中で枢先生がガストンさんたちの胸の圧迫感や激しい呼吸困難を解消した「肺気阻痺・背部輸穴閉塞(肺の気流が途絶えて胸が苦しくなる病態)」の病理に基づき、日常で「風邪や喘息で胸が苦しくて息が吸いにくい、背中や肩甲骨の間がガチガチに凝って息苦しい、連続する咳で胸が痛む、タバコやホコリで喉・胸が不快な時」に、胸の通りをスーッと良くして楽な呼吸を取り戻してくれる絶対の名穴をご紹介します。
今回登場した『肺兪』は、首を前に倒した時に一番飛び出る背骨の出っ張りから下に数えて「3番目の胸椎(背骨)」の下から、左右それぞれ指幅2本分(人差し指と中指の幅)外側へ離れた背中にあります。
東洋医学において『肺兪』は、肺の気が直接注ぐ最も重要な背部のツボであり、呼吸器系のあらゆるトラブルを解消する第一選択穴です。背中の凝りをほぐしつつこのツボを刺激することで、肺の「宣発・粛降」運動を促し、胸の苦しさや咳、息切れをスーッと和らげてくれます。
ケアする場合は、背中の後ろで両手をまわし、中指や薬指の腹を『肺兪』に当てて、息をゆっくり吐きながら痛気持ちいい強さで5秒間じわーっと押します。家族やパートナーに押してもらうか、テニスボールなどを背中と床の間に挟んでゴロゴロと刺激するのも非常に効果的です! これを5回ほど試してみてください!
胸が大きく開き、深呼吸が驚くほど楽になりますよ!
次なる第614話は、本日**8月13日(木曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております!
崩れ去る鉱道の奥底から噴き出すさらなる邪気! 白銀霊峰に隠された真の秘め事とは――!? 21時の更新をどうぞお楽しみに!




