第611話「最深部の金毒!極寒の腹痛と中脘の温中」
『委中』の刺鍼によって重痛い湿熱腰痛を打ち払い、銀爪会副頭領・砕骨を粉砕した往診チーム。しかし、旧鉱道の巨結晶を突き破って姿を現したのは、白銀霊峰の金毒と寒気をその身に宿した銀爪会首領「金爪の金剛」でした。首領が解き放つ極寒の金毒気は、チームの「脾胃」を凍てつかせ、冷えによる激しい腹痛と下痢を引き起こします。新章の佳境、枢先生の温かな鍼術が腹部の危機を救います!
グラグラと旧鉱道の天井が崩れ落ち、巨結晶の亀裂から噴き出したのは、光すら吸い込むような白銀色の極寒の気であった。
その気が触れた岩肌は一瞬で白く凍りつき、空気中の水分が微細な氷の結晶となってキラキラと空間を舞う。
「フハハハ! 我が副頭領どもを倒してここまで辿り着いたことは褒めてやろう。だが、ここが行き止まりだッ!」
凍りつく白銀の霧の中から、全身に白金色の重甲冑を纏い、両腕に巨大な金剛爪を装着した巨漢が現れた。
白銀霊峰の陰の支配者――銀爪会首領「金爪の金剛」であった。
「金剛……! 貴様がこの白銀霊峰の鉱脈を汚し、町民たちを苦しめていた元凶ですね……!」
往診鞄を胸元で強く抱え直し、枢が凛とした眼光で金剛を睨みつける。
「元凶だと? 違うな! この山に眠る金毒と極寒の気こそが、人間を排除し真の秩序をもたらす至高の力! 貴様らの生ぬるい医術ごと、その腹の底から凍てつかせてやるわッ!」
金剛が巨大な金剛爪を交差させて振り下ろすと、白銀色の極寒波が往診チーム全体を飲み込んだ!
「くっ……!? な、なんだ……この刺すような冷気は……ッ!? お腹が……お腹の底が急激に冷えて、絞り上げられるように痛ぇぇぇッ!」
ガストンが突然お腹(みぞおちからおへそ周辺)を強く抱え込み、激しい腹痛にその場に膝をついて悶絶した。
「うあぁっ……! お腹の中に氷の塊をぶち込まれたみたい……ッ! キリキリと激しい痛みが走って……全身の青ざめと寒気が止まらない……ッ!」
ネネもまた、弓を落としてお腹を抱え、冷や汗を流しながらガタガタと震え始めてしまう。
「……皆さん、お腹を温めて丸くなってください……! これは極寒の金毒気が直中し、脾胃を急速に凍てつかせた『脾胃虚寒・寒泥腹痛』です!」
枢がすばやくガストンのお腹に触れる。お腹の皮膚は氷のように冷たく、お腹の底でキュ〜ッと筋肉が痙攣を起こしている感覚が手から伝わってきた。
舌を診ると、過剰な冷えと水分停滞を示す「薄白滑苔」を呈し、脈は沈んで遅い「沈遅の脈」を打っていた。
「東洋医学において『脾胃』は、体内の温かさを保つ『中央の土』です! 外邪である極寒の気が身体の最奥である脾胃に直接侵入(直中)すると、胃腸の温かな陽気が一瞬で失われ、内臓の筋肉が激しく収縮します。それによって、お腹を抱え込むような激しい刺痛、お腹の冷え、水のような下痢、顔面蒼白、吐き気が引き起こされるのです!」
「ハーッハッハッ! 腹を痛めて悶絶する姿は無様だなッ! 胃腸が凍りついた貴様らに、我が金剛爪を防ぐ術などないッ!」
金剛が冷気の爪を突き出し、動けなくなったガストンとネネへ向けて跳躍する!
「……相棒! 胃腸の冷えと激痛を抜けッ! 腹に力が戻らねば、大斧を振るうことすらできんッ!」
隠密・哭が全身の気功膜を必死に広げ、金剛の爪から発せられる極寒の刃を短剣の乱舞で必死に防ぎ止める!
「任せました、哭さん! 脾胃の陽気を一気に呼び覚まし、腹に溜まった極寒の邪気を温めて散じます!」
枢の手が往診鞄から取り出したのは、太陽の如き陽気を宿した至高の「温中散寒・健脾和胃純金灸鍼」であった!
「ハク、リナ! 凍てついた胃腸を内部から急速に温め、激しい腹痛を和らげる『乾姜』と『高良姜』の温中散寒アロマを、全員のお腹へ集中噴霧しなさい!」
「了解です枢先生! 温中散寒アロマ、お腹へ全開噴射ッ!!」
スパイシーで温かな香ばしい香りがお腹全体を包み込み、冷え切っていたお腹の底がじんわりと温まり始める!
「脾胃の地に宿る命の太陽よ、極寒の邪気を温め散じたまえッ! 胃の募穴・六腑の会穴……解放ッ!!」
シュパッ! シュパッ! シュパッ――!!
枢の手から放たれた金鍼が、苦しむガストン、ネネ、ハク、リナ、そして自らの**「みぞおち(胸骨の下端)とおへそを結んだ直線上の、ちょうど中央(おへそから指幅4本分上)」**へ、ぽかぽかとした温熱を伴いながら深々と的確に打ち込まれた!
打ち込まれたのは、胃の気が集まる募穴であり、冷えによる激しい腹痛と胃腸障害を即座に温めて和らげる至高の温中名穴――『中脘』!
ジュワァァァァァァッ!!!!!
「――つ……あぁぁぁぁぁぁぁッ!?!? お腹の底に……ポカポカとした大きな太陽が生まれたみたいだ……ッ!」
ガストンが目を見開き、両手でお腹をさすりながら勢いよく立ち上がった!
「キリキリとした激しい腹痛が……すーっと消えていくわ! お腹が温かくなって、全身に元気がみなぎってくる……ッ!」
ネネが顔に紅潮を取り戻し、力強く弓を引き絞る!
「『中脘』は、任脈に所属し、胃の気が直接集まる『胃の募穴』にして、すべての腑の要となる『腑会』です! 温熱とともに刺激することで、冷えによって凍りついた脾胃の陽気を劇的に蘇らせ、極寒や冷え物による激しい腹痛、下痢、胃痛、吐き気、消化不振を速やかに改善する、お腹の温熱治療において絶対の特効穴です!」
枢が力強く往診鞄を構え直し、金剛を指さす!
「な……何だとぉぉぉッ!? 我が極寒の金毒気が、お腹のツボ一つで温め散らされたというのかぁぁぁッ!?」
金剛が驚愕の声を上げ、金剛爪を構えてたじろぐ。
「ガストンさん、哭さん、ネネさん! お腹の温かさを取り戻した僕たちの気は、どんな冷気にも負けません! 一気に決めましょうッ!」
枢の叫びが旧鉱道全体に響き渡る!
「おうよッ! お腹がポカポカで力が湧き出て止まらねぇぜぇぇぇッ! 喰らいやがれ金剛ッ!」
ガストンが戦斧に溢れんばかりの黄金の気を纏わせ、大地を砕く勢いで突進を開始した!
白銀霊峰の命運をかけた、銀爪会首領・金剛との最終決戦が、いよいよ火蓋を切るのだった――!
第611話をお読みいただき、ありがとうございました!
銀爪会首領・金剛の極寒金毒気によって激しい腹痛と冷えに苦しむ往診チームを、枢先生が『中脘』の温鍼術で見事に救い出し、いよいよ最終決戦へと突入する熱い展開をお届けいたしました。
さて、今回は作中で枢先生がガストンさんたちの激しい腹痛や冷えを解消した「脾胃虚寒・冷気直中(冷えによる胃腸の急速な機能低下と激痛)」の病理に基づき、日常で「冷たいものの食べ過ぎやクーラーの冷えでお腹がキリキリ痛む、冷えて水のような下痢が出る、お腹が冷えて胃もたれや吐き気がする時」に、お腹の底からじんわりと温めてお腹の痛みを和らげてくれる絶対の名穴をご紹介します。
今回登場した『中脘』は、**みぞおち(胸骨のすぐ下)とおへそを結んだ直線上の、ちょうど中央(おへそから指幅4本分上)**にあります。
東洋医学において『中脘』は、胃の気が直接集まる「胃の募穴」であり、お腹を温めて胃腸の働きを活性化させる万能のツボです。冷えや冷飲食によってお腹が冷えて痛む際、このツボを温めながら刺激することで、胃腸の血流を改善して筋肉の痙攣を鎮め、お腹の不調をスーッと落ち着かせてくれます。
ケアする場合は、手のひらを温めてから『中脘』に当て、息をゆっくり吐きながら、お腹の奥に向かって痛気持ちいい強さで5秒間優しく押し込みます。また、ホットタオルやカイロでこの部分を温めるのも非常に効果的です! これを左右の深呼吸に合わせて5回ほど試してみてください!
お腹の奥がじんわりと温まり、嫌な腹痛や冷えが和らいでいきますよ!
次なる第612話は、本日**8月12日(水曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております!
白銀霊峰での最終決戦が決着! 往診チームの放つ絆の一撃と、白銀霊峰に訪れる真の平穏とは――!? 21時の更新をどうぞお楽しみに!




