第607話「激闘の果て!灼熱の余波と足三里の補気」
『太渓』の刺鍼によって体内に豊かな潤いを取り戻し、古の大魔獣「炎帝」を倒して南海灼熱諸島に平穏を取り戻した往診チーム。しかし、激戦を終えた島民や往診チームを待っていたのは、過度の緊張状態から解放されたことによる全身の激しい疲労、だるさ(倦怠感)、そして胃腸の著しい低下でした。疲れ切った人々を救うため、枢先生の温かな鍼が冴え渡ります!
大魔獣「炎帝」が倒れ、山頂を包んでいた激しい熱波と毒気が嘘のように引いていく。
噴火口の上空を覆っていた真っ黒な煙は海風によって吹き払われ、雲の切れ間から差し込む太陽の光が、青く澄み渡る南海の海を優しく照らし出していた。
「やった……やったんだな、俺たち……ッ! あの大悪党どもも、巨大なバケモノも……全部片付いたんだなッ!」
ガストンが巨大な戦斧を岩肌に立てかけ、空を仰ぎながら勝利の叫びを上げた。
「ええ……! 島を包んでいた禍々しい気も、完全に消え去りました! これで、灼熱諸島の人々も安心して暮らせます……!」
ネネが弓を仕舞い、安堵の笑みを浮かべる。
しかし、緊張の糸が切れたその瞬間であった。
「ぐっ……!? な、なんだ……急に足腰から力が抜けて……目前が真っ暗に……ッ!?」
ガストンが突然膝から崩れ落ち、その場に突っ伏してしまった。巨斧を持ち上げることすらできず、肩を激しく上下させて荒い息をついている。
「ガストンさん……!? 嫌だ、私まで……手が震えて……力が入らない……ッ! お腹の底が空っぽになったみたいに、重くてだるい……ッ!」
ネネもまた、弓を握りしめる握力を失い、その場に崩れ落ちるように座り込んでしまった。
「……これは、大不調の二次波ではありません……。激戦による『極度の気血大耗・脾胃虚弱』です……!」
枢が苦しい息を整えながら、倒れ込んだ仲間たちのもとへ駆け寄る。
往診チームだけでなく、麓の村で避難していた島民たちもまた、長期間の恐怖と邪熱によるストレスから解放された途端、激しい全身倦怠感、食欲不振、腹部膨満感(お腹の張り)、手足の冷えとだるさに襲われ、立ち上がることすらできなくなっていたのだ。
「東洋医学において『脾胃(ひい・消化器系)』は、食べたものから『気』と『血(栄養)』を作り出す『後天の精の源』です! 四天王や炎帝との連続する死闘により、全身の『気』を極限まで消耗した結果、脾胃の消化吸収機能が完全にダウンしています……! 気を作り出す工場が停止したため、全身にエネルギーが行き渡らず、立っていることすら困難なほどの激しい疲労と脱力感が襲っているのです!」
「ハハ……情けねぇ話だ……。戦いが終わった途端に、腹が減って力が出ねぇなんてよ……」
ガストンが苦笑いを浮かべるが、その顔色は青白く、お腹を押さえて苦しそうだ。
「……相棒。島民たちの救護も必要だ。だが、今の俺たちには……村まで下りる体力すら残っていない……」
隠密・哭すらも、木陰に背中を預けたまま、指一本動かすのがやっとの状態であった。
「大丈夫です、皆さん! 倒れた木々を塞ぐ必要も、戦う必要ももうありません。今必要なのは、傷ついた脾胃を温めて補い、全身に生命エネルギー(気)を一気に充填することです!」
枢が往診鞄から丁寧に取り出したのは、陽光のような黄金色の温かな光を放つ特製の「補気健脾純金大鍼」であった!
「ハク、リナ! 脾胃の働きを力強く高め、気血の生成を促す『人参』と『黄耆』の補気養生ミストを、全員のお腹と足元へ噴霧しなさい!」
「了解です枢先生! 補気養生ミスト、足元へ全開噴射ッ!!」
甘く香ばしい温かな生薬の香りが漂い、重く冷え切っていたお腹の底がじんわりと温まり始める!
「脾胃の地に宿る命の源泉よ、全身の巡りを力強く呼び覚ませッ! 足の陽明胃経の合穴……解放ッ!!」
シュパッ! シュパッ! シュパッ――!!
枢の手から放たれた金鍼が、苦しむガストン、ネネ、ハク、リナ、そして自らの**「膝のお皿のすぐ下にある外側の凹み(外膝眼)から、指幅4本分下へ進んだ骨(脛骨)の外側の凹み」へ、温かな気を込めながら深々と打ち込まれた!
打ち込まれたのは、胃の経絡の気が巡り、脾胃を活性化して全身に無限のエネルギーを補給する東洋医学至高の補気健脾名穴――『足三里』!
ジュワァァァァァァッ!!!!!
「――つ……あぁぁぁぁぁぁぁッ!?!? 膝の下から……ポカポカとした温かい湯のような気が、お腹を通って全身へ一気に駆け巡っていく……ッ!」
ガストンが目を見開き、自分の両手を見つめながら一気に立ち上がった!
「お腹の底から、ムクムクと元気が湧き出てくるわ……! 手足のだるさが消えて、全身がすごく軽くなったみたい……ッ!」
ネネが驚きに満ちた声を上げ、背筋をピンと伸ばして立ち上がる!
「『足三里』は、消化吸収を司る『足の陽明胃経』の合穴であり、古来より『三里に灸す生気長存す(足三里をケアすれば長寿と元気が保たれる)』**と称えられてきた不老長寿・強壮の至高の名穴です! 脾胃の働きを強力に高めて『気血』の生成を促進し、激しい全身倦怠感、食欲不振、胃もたれ、下痢、足腰の疲れを劇的に回復させる、養生と補気の絶対要穴です!」
枢が温かな笑顔で仲間たちを見つめる。
「さあ、皆さん! 『足三里』でエネルギーを補給した僕たちの脚なら、麓の村まで一気に駆け下りられます! 島民の皆さんにもこの『足三里』のケアを施し、みんなで勝利のお祝いをしましょうッ!」
「おうよッ! 腹の底から力がみなぎってきたぜぇぇぇッ! 宴だ、宴だぁぁぁッ!」
ガストンが巨斧を軽々と掲げ、元気いっぱいに叫ぶ!
往診チームは力強い足取りで山を下り、麓の村で苦しむ島民たち一人ひとりに『足三里』の施術を施していった。
やがて村全体に笑顔と元気が戻り、夜には南海灼熱諸島の復興と平和を祝う、盛大な大宴会が催されるのだった――。
第607話をお読みいただき、ありがとうございました!
激戦後の激しい全身倦怠感と胃腸の低下に苦しむ往診チームと島民たちを、枢先生が『足三里』の刺鍼で見事に救い出し、島全体に元気と笑顔を取り戻す心温まる回復回をお届けいたしました。
さて、今回は作中で枢先生がガストンさんたちの激しい全身疲労や食欲不振、足腰のだるさを解消した「気血大耗・脾胃虚弱(激しい消耗による消化機能と生命エネルギーの著しい低下)」の病理に基づき、日常で「夏バテや連日の残業で体がだるくて力が入らない、食欲が出ない・胃がもたれる、疲れが溜まって足腰が重い、元気を底上げしたい時」に、体内でエネルギー(気血)を作り出す力を高め、全身の疲労をスッキリ回復させてくれる絶対の名穴をご紹介します。
今回登場した『足三里』は、膝のお皿のすぐ下にある外側の凹み(外膝眼)から、指幅4本分(人差し指から小指まで)下がったところにある、すねの骨の外側の凹みにあります。
東洋医学において『足三里』は、消化器系を統括する「足の陽明胃経」の最も重要なツボであり、松尾芭蕉が『おくのほそ道』の旅で灸をすえて旅を続けたことでも有名な「元気を養う万能穴」です。胃腸の働きを活発にして食べたものから元気を効率よく生み出し、免疫力向上や疲労回復、足のむくみ・だるさを劇的に改善してくれます。
ケアする場合は、親指の腹を『足三里』の凹みに当て、すねの骨に向かって痛気持ちいい強さで5秒間じわーっと垂直に押し込みます。これを息をゆっくり吐きながら左右5回ずつ試してみてください!
お腹の奥がじんわり温かくなり、足元から全身へ元気が湧き出てきますよ!
次なる第608話は、本日**8月10日(月曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております!
灼熱諸島での往診を終え、次なる目的地へと舵を切る往診チーム! 新たな章の幕開けを、どうぞお楽しみに!




