第606話「最終決戦!灼熱の炎帝と太渓の滋陰」
『神門』の刺鍼によって暴走する心火を鎮め、激しい動悸とパニックを克服した往診チーム。しかし、完全覚醒を目指す古の大魔獣「炎帝」は、噴火口のマグマ脈から際限なく灼熱のエネルギーを吸い上げ、激しい口渇(乾き)と脱水、そして高熱による全身の衰弱を引き起こす超広域邪熱を放ちます。チーム全滅の危機の中、枢先生の放つ至高の刺鍼が奇跡を呼び込みます!
ドバァァァァァンッ!!
大魔獣・炎帝がマグマの池を踏み荒らすたび、数千度の溶岩の津波が噴火口の壁面を削り取り、激しい火柱となって天井へと吹き上がった。
その圧倒的な質量と熱量は、すでにこれまでの黒穴会の幹部たちとは比べものにならない、まさに天地を揺るがす自然災害そのものであった。
「ハハハハハ! 弱き人間どもめが! 我が肉体は南海灼熱諸島を巡るすべてのマグマ脈と繋がっている! この島が存在する限り、我が炎が潰えることはないのだッ!」
炎帝の巨大な頭部から咆哮が轟き、空間全体が真っ赤な熱波の壁となって往診チームに押し寄せる!
「ぐ……ぬぅぅぅッ! 戦斧の刃が……熱で溶けて歪んでいきやがる……ッ! 近づくだけで全身の皮膚が焦げ付くぞッ!」
黄金の気を纏ったガストンが巨斧を掲げて突進を試みるが、炎帝の周囲に展開された超高熱の力場に阻まれ、数歩進むことすらできずに後退を余儀なくされた。
「ネネの矢も、届く前に焼き尽くされているわ……! 一体どうすればあの熱の壁を破れるの……!?」
ネネが放った必殺の霊矢も、炎帝の放つ熱波に触れた瞬間に一瞬で灰と化してしまう。
さらに恐ろしい事態がチームを襲った。
炎帝が放つ超高熱の邪気は、空間中の水分だけでなく、往診チームの体内に蓄えられた貴重な「陰液(血や体液、潤い)」を一瞬で蒸発させていったのである!
「はぁっ……はぁっ……! のどが……のどと唇がカラカラに乾いて……声が出ない……ッ! 水……水を飲んでも、飲んだ先から体中の水分が抜け出ていくみたいだ……ッ!」
ネネが喉を押さえて膝をつき、激しい脱水症状と高熱によって顔色を赤黒く変色させていた。
「く……体の中の水分が干上がって……足腰が力尽きて力が入らねぇ……! 関節がキシキシと悲鳴を上げてやがる……ッ!」
豪胆なガストンも、激しい口渇と体液の枯渇、そして高熱による「陰虚火旺」の極限状態に陥り、その場に両手をついて激しく息を乱す。
「……これは、ただの熱気ではありません……! 炎帝の邪火が、人間の生命維持の根源である『腎』の陰液を強力に灼熱して蒸発させています……! いわゆる『熱病後期の熱盛傷陰・腎陰枯渇』です!」
枢が苦しい息の下から自らの状態を観察する。舌を出すと、水分が完全に失われて真っ赤で乾燥し、苔がすっかり剥がれ落ちた「紅降無苔」の病態を示していた。
「東洋医学において『腎』は、全身の水分代謝を統括し、体内に潤いを供給して過剰な火を冷却する『水』の源です! 猛烈な邪熱によって腎の陰液が干上がると、体を冷やす冷却水が底をつき、体内に骨を削るような激しい虚熱が吹き荒れ、猛烈な喉の渇き、足腰の脱力、意識障害を引き起こします! 冷却水(腎陰)を今すぐ底から汲み上げ、体内に潤いを補給しなければ、全員が全身の体液を失って死に至ります……!」
「……フハハハ! 干からびて死ぬがよい! 我が前に立ち塞がる哀れな虫ケラどもよッ!」
炎帝が巨大な前足を掲げ、無数の溶岩弾を雨あられと往診チームへ振り注ぐ!
「……相棒! 俺の体液も……もう限界に近い……ッ! だが、お前が刺鍼を終えるまで……この一歩は引かんッ!」
隠密・哭が全身の水分を失って肌をカサカサに乾かせながらも、白銀の気を限界を超えて引き伸ばし、溶岩の雨を短剣の乱舞で必死に撃ち落とし続けた!
「哭さん……! 皆さん……! 諦めてはいけません! 体の最奥に眠る『原水の泉』を叩き起こし、枯れ果てた体に尽きることのない潤いを湧き出させます!」
枢の瞳が、氷河の底のような澄み渡る蒼藍の光を放つ!
往診鞄の最深部、厳重な封印から解き放たれたのは、太古の氷結晶の気を宿す至高の「滋陰降火純銀極細長鍼」であった!
「ハク、リナ! 乾ききった体内と全身の脈絡に急速な潤いを与え、熱を強力に冷ます『生地黄』と『麦門冬』の滋陰清熱ミストを、全員の足元と喉へ集中噴霧しなさい!」
「了解です枢先生! 滋陰清熱ミスト、足元へ全開噴射ッ!!」
ひんやりとした清涼な潤いの霧が全身を包み込み、焼けつくような喉の渇きがわずかに和らぎ始める!
「腎の奥底に眠る原水の泉よ、枯れ果てし体内に清流を滾らせたまえッ! 足少陰腎経の原穴……解放ッ!!」
シュパッ! シュパッ! シュパッ――!!
枢の手から放たれた銀鍼が、苦しむガストン、ネネ、ハク、リナ、そして自らの**「足の内くるぶしの頂点と、アキレス腱との間にある凹み」へ、雷光のような速度で深く的確に打ち込まれた!
打ち込まれたのは、腎の経絡の原気が湧き出し、全身に潤いを補給して熱邪を根本から冷却する絶対の滋陰名穴――『太渓』!
ジュワァァァァァァッ!!!!!
「――つ……あぁぁぁぁぁぁぁッ!?!? 足の底から……冷たく澄み切った清らかな湧き水が、全身の血脈を駆け巡っていく……ッ!」
ガストンが目を見開き、乾ききっていた筋肉に一気に力が戻るのを感じて力強く立ち上がった!
「喉の激しい乾きと痛みが……スーッと消えていくわ! 体の中から溢れるような潤いが湧き出て……体温が冷やされていく……ッ!」
ネネが潤いを取り戻した唇で息を整え、再び凛とした表情で弓を力強く引き絞る!
「『太渓』は、全身の水分と生命力を司る『足少陰腎経』の原穴であり、輸水穴です! 東洋医学において『体内に尽きることのない清らかな渓流(水)を補給する最大の滋陰要穴』**と称され、高熱や脱水によって枯渇した陰液を劇的に補い、猛烈な口渇、虚熱、足腰の脱力、手足の火照りを根本から冷却・鎮静化させる最高峰の名穴です!」
枢が力強く往診鞄を構え直し、炎帝を指さす!
「な……何だとぉぉぉッ!? 枯れ果てさせたはずの体液が、足のツボ一本で一瞬にして蘇ったというのかぁぁぁッ!?」
炎帝が驚愕と怒りに狂い、全身のマグマを極限まで昂ぶらせる!
「ガストンさん、哭さん、ネネさん! 体内に豊かな潤いを取り戻した今、炎帝の熱波は僕たちの絆を焼き切ることはできません! 全員で一気に決めますよッ!」
枢の力強い叫びが、響き渡る!
「おうよッ! 体の底から力が湧き出て止まらねぇぜぇぇぇッ! 喰らいやがれ大魔獣ッ!」
ガストンが黄金の気を全身から爆発させ、巨大な戦斧を両手で構えて大地を踏み荒らした!
「……潤いは満ちた。切り裂くぞ」
哭の身体が白銀の光となって旋回し、炎帝の巨大な前足へ肉薄する!
「霊弓・絆の追撃――清熱穿孔貫ッ!!」
「豪力・絆の太刀割り――滋陰爆砕断ッ!!」
ドカァァァァァァァンッ!!!!!!!!
ネネの放った渾身の霊矢が炎帝の熱波の壁を貫通し、ガストンの一撃が炎帝の巨大な前足を真ん中から砕いた!
炎帝は凄まじい悲鳴を上げながらマグマの池へと倒れ込み、山頂を包んでいた超高熱の邪気も一気に退いていくのだった。
「やった……! ついに大魔獣炎帝を倒したぞぉぉぉッ!」
ガストンが戦斧を掲げて歓声を上げる!
長かった南海灼熱諸島での死闘がついに決着し、島全域に爽やかな海風と平穏な空気が戻り始めるのだった――。
第606話をお読みいただき、ありがとうございました!
超高熱による猛烈な脱水と高熱、全身の虚脱に苦しむ往診チームを、枢先生が『太渓』の刺鍼で見事に救い出し、大魔獣「炎帝」を退けて南海灼熱諸島に平和を取り戻す感動のクライマックスをお届けいたしました。
さて、今回は作中で枢先生がガストンさんたちの猛烈な喉の渇きや熱感、全身の倦怠感を解消した「熱盛傷陰・腎陰枯渇(高熱や脱水による体液の著しい損傷)」の病理に基づき、日常で「風邪や猛暑で高熱が出て喉がカラカラに乾く、手足や体が火照って寝苦しい、水分を摂っても乾きが癒えない、疲労で足腰がだるく力が入らない時」に、体内に豊かな潤いを与えて熱を根本から冷ましてくれる絶対の名穴をご紹介します。
今回登場した『太渓』は、足の内くるぶしの頂点と、アキレス腱との間にある一番凹んでいる場所にあります。
東洋医学において『太渓』は、身体の水分と生命力を司る「足少陰腎経」の原穴であり、体に潤いを与える「滋陰」の最も重要なツボです。高熱や暑さ、過労によって体内の潤い(陰液)が不足し、火照りや猛烈な乾きが生じた際、このツボを刺激することで「腎」の働きを高め、体にコンコンと湧き出る湧水のような潤いを供給して余分な熱を鎮めてくれます。
ケアする場合は、反対の手の親指を『太渓』の凹みに当て、アキレス腱の方向に向かって痛気持ちいい強さで5秒間じわーっと優しく押し込みます。これを息をゆっくり吐きながら左右5回ずつ試してみてください!
足元から体温がスッと落ち着き、喉の乾きや体の火照りが和らいでいきますよ!
次なる第607話は、明日**8月10日(月曜日)のお昼【12:00】**に更新を予定しております!
激闘を終えた南海灼熱諸島での復興と、往診チームの新たなる旅立ち! 12時の更新をどうぞお楽しみに!




