第605話「古の覚醒!炎帝の脈動と神門の安神」
『百会』の刺鍼によって脳を焼く狂熱と猛烈な頭痛・眩暈を打ち払い、黒穴会「炎血四天王」の筆頭・虚妄を退けた往診チーム。しかし、崩れ去った四天王たちの邪気とマグマ脈の全熱エネルギーを吸収し、噴火口中央の巨大な繭からついに古の大魔獣「炎帝」が不完全ながらも覚醒を果たします。島全域を襲う激しい心悸(動悸)と高熱の嵐の中、枢先生の治癒の鍼が冴え渡ります!
ドクン……ッ! ドクン……ッ!
溶岩の池の中央に鎮座していた巨大な赤黒い岩の繭が、まるで生き物の心臓のように不気味な脈動を刻み始めた。
その脈動が響くたび、噴火口の岩壁全体が大きく振動し、激しい地鳴りとともに真っ赤なマグマのしぶきが天井高くへと吹き上がる。
「な……なんだこの地響きは……ッ!? まだ何か残ってたっていうのかッ!?」
ガストンが戦斧を深く岩肌に突き立て、揺れに耐えながら絶叫した。
「皆さん、警戒してください……! この気は、四天王たちのものとは根底から次元が違います……! 南海灼熱諸島の底に数千年間封印されていた、炎の概念そのものが肉体を得た古の災厄……大魔獣『炎帝』の鼓動です!」
往診鞄を胸元で固く抱え直した枢が、青ざめた表情で前方を見据える。
バリバリバリッ――!!
次の瞬間、赤黒い繭の表面にクモの巣状の亀裂が走り、そこからまぶしいほどの黄金色と朱色が入り交じった超高熱の光線が全方位へと噴き出した!
「ガハッ……!? うあぁぁぁぁぁぁッ!?」
「きゃぁぁぁぁぁッ!?」
光線が空間を薙ぎ払った瞬間、直接攻撃を受けたわけでもないのに、往診チーム全員の胸の奥で爆発が起きたかのような激痛が走った!
ガストン、ネネ、ハク、リナたちが一斉に胸を押さえ、その場に膝をついて激しく悶え始める。
「はぁっ……はぁっ……! 胸が……胸の奥が激しく脈打って……裂けそうに痛い……ッ! 鼓動が速すぎて……息が……息が吸えない……ッ!」
ネネが真っ赤に火照った顔で首元を掻きむしり、激しい動悸と恐怖に瞳を揺ら揺らと濡らしている。
「お……俺様の心臓が……暴れてやがる……ッ! まるで胸の中で太鼓を打ち鳴らされてるみたいだ……ッ! 頭がパニックになって……腕に力が入らねぇぇぇッ!」
豪胆なガストンすらも、尋常ではない心悸(動悸)と胸の圧迫感、そして全身を襲う強烈な不安感と精神の錯乱によって、立っていることすら困難な状態に陥っていた。
「……くっ! これは……『心』の経絡への直接的な熱邪の侵入……! 火の精霊たる炎帝の覚醒波が、人間精神の宿る『心』を激しく揺さぶり、過剰な邪火を送り込んでいます!」
枢がすばやく自らの脈に触れる。脈拍は一分間に150回を超え、不規則に飛び跳ねる「促脈」を呈していた。
「東洋医学において『心』は、全身の血脈を支配すると同時に、人間の精神・意識・思考を司る『神』が宿る場所です! 炎帝の放つ邪火が『心包』を通り抜けて『心』に直撃し、激しい動悸(心悸・怔忡)、胸の絞扼感、激しい不安、精神の狂乱を引き起こしています……! このままでは、心臓が疲弊しきって停止してしまう……!」
「……フハハハハ! 無駄だ……無駄だ医術士よッ!」
崩れ去る岩の繭の中から、体長十メートルを超える巨大な炎の影がゆっくりと立ち上がった。
頭部からは巨大な二本の角が伸び、全身が流動するマグマで形成された四足の巨獣――覚醒した大魔獣「炎帝」であった!
「我が覚醒の脈動は、生きとし生ける者の『心臓』を直接共鳴させ、その生命力を内側から焼き尽くす! 恐怖に狂い、己の鼓動の爆発によって死に絶えるがよいッ!」
炎帝が咆哮を上げると、噴火口全体にさらなる超高熱の衝撃波が広がり、ガストンたちの鼓動はさらに速く、さらに激しく狂い始めていく!
「……相棒! 俺の『心』は……気功で無理やり押さえつけた……ッ! だが、保ってあと十秒だ……! みんなの命を繋いでくれッ!」
隠密・哭が胸に強く拳を当て、白銀の気を体内で暴走させて心臓の暴動を力ずくで抑え込みながら、炎帝の前に立ちはだかった!
「哭さん……! わかりました、今すぐ『心』の火を鎮め、狂った脈動を静寂へと戻します!」
枢の目が、静けさを湛えた深い青色の光を放つ!
往診鞄の奥から取り出したのは、心身の平安を取り戻すために鍛え上げられた最高級の「安神定志純銀細鍼」であった!
「ハク、リナ! 暴走する心の火を冷却し、精神を穏やかに静める『遠志』と『酸棗仁』の養心安神アロマを、全員の胸元と手首へ集中噴霧しなさい!」
「了解です枢先生! 養心安神アロマ、手首と胸元へ全開噴射ッ!!」
清涼で甘く穏やかな生薬の香りが包み込み、激しく打ち鳴らされていた胸の鼓動がほんのわずかに落ち着きを見せる!
「心の腑に燃えさかる邪火よ、安らぎの門より鎮まりたまえッ! 手少陰心経の原穴……解放ッ!!」
シュパッ! シュパッ! シュパッ――!!
枢の手から放たれた銀鍼が、苦しむガストン、ネネ、ハク、リナ、そして自らの**「手首の小指側のシワの上で、手首の骨(豆状骨)のすぐ手前にある凹み」へ、寸分の狂いもなく的確に打ち込まれた!
打ち込まれたのは、心の経絡の原気が集まり、激しい動悸・胸痛・不安・精神錯乱を即座に鎮める絶対の安神名穴――『神門』!
ジュワァァァァァァッ!!!!!
「――つ……あぁぁぁぁぁぁぁッ!?!? 胸の中で暴れていた巨大な火の玉が……すーっと静かな水底に沈んでいく……ッ!」
ガストンが両手を胸に当て、大きく息を吐き出しながら目を見開いた!
「心臓のバクバクが……消えたわ……! 恐ろしい不安と恐怖が消えて、お心がすごく静かで穏やかになっていく……ッ!」
ネネが涙を拭い、しっかりと地に足をつけて弓を構え直す!
「『神門』は、精神と血脈を司る『手少陰心経』の原穴であり、輸土穴です! 文字通り『心の神(精神)が宿る静かなる神聖な門』**を意味し、邪火によって乱れた心の気を鎮め、激しい動悸、胸の痛み、不眠、恐怖感、パニック状態を劇的に和らげる、東洋医学において最高峰の精神安定・心臓保護の要穴です!」
枢が力強く往診鞄を構え直す!
「な……何だとぉぉぉッ!? 我が覚醒の脈動による心の破壊が、手首のツボ一つで完全に無効化されたというのかぁぁぁッ!?」
炎帝が驚愕の声を上げ、巨大な炎の尾を激しく振るう!
「ガストンさん、哭さん、ネネさん! 心の平静を取り戻した僕たちの絆は、どんな邪火にも打ち破れません! 炎帝を倒し、この南海灼熱諸島に平和を取り戻しましょうッ!」
枢の叫びが、噴火口全体に響き渡った!
「おうよッ! 心臓がどっしり落ち着いたぜぇぇぇッ! いくぞ大魔獣、俺たちの絆の力を見せてやるッ!」
ガストンが黄金の気を全身から爆発させ、巨大な戦斧を掲げて跳躍した!
ついに始まった、古の大魔獣「炎帝」との最終決戦! 往診チームの総力を挙げた戦いが、灼熱の噴火口で繰り広げられるのだった――!
第605話をお読みいただき、ありがとうございました!
古の大魔獣「炎帝」の覚醒波によって激しい動悸・胸痛・精神の錯乱に苦しむ往診チームを、枢先生が『神門』の刺鍼で見事に救い出し、全員で最終決戦へと立ち向かう胸熱の展開をお届けいたしました。
さて、今回は作中で枢先生がガストンさんたちの激しい動悸や胸の圧迫感、不安感を解消した「心火熾盛・心神不安(邪熱による心臓・精神の著しい乱れ)」の病理に基づき、日常で「緊張やストレスで心臓がバクバクと激しく動悸する、胸が苦しくなる、不安やプレッシャーでパニックになりそう、夜緊張して眠れない時」に、心臓の負担を軽くして精神をスーっと落ち着かせてくれる絶対の名穴をご紹介します。
今回登場した『神門』は、手首の掌側(内側)の横シワの上で、小指側の端にある骨(豆状骨)の手前にある凹みにあります。
東洋医学において『神門』は、心臓と精神を司る「手少陰心経」の原穴であり、精神の安定と心臓機能の調整において最も重要なツボの一つです。ストレスや自律神経の乱れ、過度の緊張によって心臓に負担がかかり、動悸や不安感が襲ってきた際、このツボを刺激することで「心」にこもった過剰な熱を鎮め、乱れた自律神経を整えて心身に深い安らぎをもたらしてくれます。
ケアする場合は、反対の手の親指を『神門』の凹みに当て、手首の骨のキワに向かって痛気持ちいい強さで5秒間じわーっと優しく押し込みます。これを息をゆっくり吐きながら左右5回ずつ試してみてください!
激しい動悸がすーっと鎮まり、心が驚くほど穏やかになりますよ!
次なる第606話は、本日**8月9日(日曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております!
大魔獣「炎帝」との熾烈を極める最終決戦! 往診チームの放つ絆の一撃と、枢先生の真の極意とは――!? 21時の更新をどうぞお楽しみに!




