第604話「最深部の決戦!黒炎の狂熱と百会の清脳」
『中脘』の刺鍼によって胃熱と激しい吐き気を打ち払い、四天王二人目「紫炎の禍毒」を倒した往診チーム。しかし、山頂の噴火口最深部から噴き出す黒紫色の邪気はますます勢いを増し、チームの前に四天王最高幹部「黒炎の虚妄」が立ちはだかります。意識を奪う猛烈な高熱と頭痛の中、枢先生の閃く鍼が真の治癒をもたらします!
噴火口の最深部――そこは、大地が割れて真っ赤なマグマが渦を巻く、まさにこの世の地獄と呼ぶにふさわしい灼熱の空間であった。
溶岩の表面からは黒紫色の気泡が弾け、そのたびに空間全体がぐにゃりと歪むほどの凄まじい衝撃波と熱風が吹き荒れている。
「くっ……! ここが火山脈の核か……! 息をするだけで鼻と喉の粘膜が焼け焦げそうだぞ……ッ!」
巨斧を握りしめたガストンが、踏みしめる足元から上がる煙に舌打ちしながら前方を睨みつける。
「皆さん、足元に気を付けてください……! ここの空気中に漂う熱気は、これまでの比ではありません。脳の脈絡に直接侵入し、意識を奪う『熱入心包・清竅閉塞』の邪気です!」
往診鞄を抱えた枢が、緊迫した声で仲間に注意を促す。
しかし、その警告が言い終わるよりも早く、異変は起こった。
空間を覆う黒紫色の熱気が一気に収束し、往診チームの頭上から、まるで真夏の太陽が落ちてきたかのような猛烈な頭重感と眩暈が襲いかかったのである!
「うっ……!? な、頭が……頭が割れるように痛い……ッ! 視界が真っ赤に染まって……立っていられない……ッ!」
弓を構えていたネネが、突然両手で頭を抱え込み、よろめくようにその場に崩れ落ちた。
「ガハッ……!? なんだこの熱さは……! 頭の中に直接火のついた炭を詰め込まれたみたいだぁぁぁッ!」
豪胆なガストンすらも巨斧を地面に落とし、激しい頭痛と高熱によるせん妄状態に陥り、眼球を血走らせて狂乱しそうになっていた。
「……くっ! 意識が……薄れていく……! 脳の『清竅(せいきょう・思考や感覚を司る穴)』が、過剰な熱邪によって塞がれていきます……!」
枢自身も激しいめまいと高熱に襲われ、膝をつきそうになる。視界がグラグラと揺れ、仲間の声が遠くの幻聴のように聞こえ始めていた。
「フハハハハ! ようこそ、炎帝様の復活を司る祭壇へッ!」
マグマの池の中頭から、黒い炎を全身に纏った長身の男がゆっくりと浮かび上がってきた。
黒穴会残党「炎血四天王」の筆頭――「黒炎の虚妄」であった。
「我が『黒炎脳毒術』は、人の頭頂に集まるすべての陽気を焼き尽くし、脳の血流を狂わせ、高熱と狂乱の中で意識を奪い去る極殺の邪法! 貴様らの浅薄な医術で、この頭脳を焼く熱気を鎮められると思うなよッ!」
虚妄が両手を掲げると、天井から黒い火の雨が降り注ぎ、チーム全体を容赦なく炙り立てる!
「……相棒! 倒れるなッ! 俺の気が保つうちに……全員の脳の熱を抜けッ!」
隠密・哭が全身の気を限界まで絞り出し、白銀の光の繭となって黒い火の雨を必死に防ぎ止める! しかしその哭の顔からも、高熱による滝のような汗が流れ落ちていた。
「……哭さん……! ありがとうございます……! 僕は……絶対に諦めない……ッ!」
枢は歯を強く食いしばり、自らの掌に小さく鍼を刺して激痛で意識を強引に覚醒させた。
震える手で往診鞄から取り出したのは、透き通るような白銀の輝きを放つ最高級の「清熱開竅極細銀長鍼」であった!
「……脳は『元神(げんしん・意識や精神)の府』! そして頭頂は、全身の陽気が集まるすべての脈の交差点です! 侵入した猛烈な熱邪を頭頂から一気に天へと放散させ、閉塞した清竅を即座に開通させます!」
「ハク、リナ! 脳の熱を急速に冷却し、意識を清涼にする『龍脳』と『薄荷』の清脳開竅アロマを、全員の頭頂部へ集中噴霧しなさい!」
「了解です枢先生! 清脳開竅アロマ、頭頂へ全開噴射ッ!!」
氷のように冷たい清涼な香りが頭上に広がり、焼けるような頭の熱感が一瞬だけ緩む!
「頭頂に宿る百の陽気よ、邪熱を天へ解き放てッ! 百神の交会・清脳開竅……解放ッ!!」
シュパッ! シュパッ! シュパッ――!!
枢の手から放たれた銀鍼が、苦しむガストン、ネネ、ハク、リナ、そして自らの**「両耳の上の端を結んだラインと、顔の正中線(鼻筋の延長線)が頭頂部で交差する一番凹んでいる場所」**へ、寸分の狂いもなく的確に打ち込まれた!
打ち込まれたのは、督脈に所属し、全身の陽気を統括して脳の熱を劇的に鎮める絶対の頭部最高穴――『百会』!
ジュワァァァァァァッ!!!!!
「――つ……ハッ!? あ、頭のなかが……冷たい清水で一気に洗われていく……ッ!?」
ガストンが正気を取り戻し、大きく目を見開いて立ち上がった!
「激しい頭痛と眩暈が……一瞬で消えたわ! 視界が真っ白から、すごくクリアに見える……ッ!」
ネネが頭を押さえていた手を離し、力強く弓を構え直す!
「『百会』は、頭頂部に位置し、体を通るすべての陽経(手足の陽の経絡)と督脈が交差する『百脈の会(すべての気が集まる場所)』です! 高熱による意識障害、激しい頭痛、眩暈、立ちくらみ、さらには自律神経の失調やストレスによる頭重感を、頭頂から熱を逃がすことで劇的に改善する、脳と精神の救急治療において最高峰の名穴です!」
枢の目が、青い清涼な光を放つ!
「な……なにぃぃぃッ!? 我が黒炎脳毒術による脳の破壊が、頭のツボ一つで完全に解除されたというのかッ!?」
虚妄が信じられないといった様子で叫び、顔を歪める。
「ガストンさん、哭さん! 脳の気が清涼を取り戻した今なら、あの男の幻惑も邪熱も恐れるに足りません! 行ってくださいッ!」
枢が力強く指を突き出す!
「おうよッ! 頭がスッキリ冴え渡ったぜぇぇぇッ! 狂乱させようとしたツケを払ってもらうぞッ!」
ガストンが戦斧を黄金の気で満たし、溶岩の池を跳び越えて肉薄する!
「……これで四天王も全滅だ」
哭の影が虚妄の懐へと滑り込み、短剣の一撃が黒炎の結界を切り裂く!
「豪力・絆の太刀割り――清脳爆砕一閃ッ!!」
ドカァァァァァァァンッ!!!!!!!!
ガストンの渾身の一撃が虚妄を打ち砕き、四天王筆頭・虚妄は凄まじい悲鳴とともに溶岩の底へと沈んでいった!
「ふぅ……これで四天王は全員倒せましたね」
枢が静かに息を吐き、往診鞄を構え直す。
しかしその時、溶岩の池の中央に安置されていた巨大な赤黒い繭が、ドクン……ドクン……と不気味な脈動を始め、島全体を揺るがすほどの凄まじい邪気が噴き出し始めたのだった――!
第604話をお読みいただき、ありがとうございました!
噴火口の最深部で高熱と激しい頭痛・眩暈に苦しむ往診チームを、枢先生が『百会』の刺鍼で見事に救い出し、四天王筆頭「虚妄」を撃破する熱い展開をお届けいたしました。
さて、今回は作中で枢先生がガストンさんたちの激しい頭痛や高熱による眩暈を解消した「熱入心包・清竅閉塞(邪熱による脳の機能障害と頭部の炎症)」の病理に基づき、日常で「風邪や知恵熱で頭が割れるように痛む、高熱で頭がボーッとして意識が霞む、めまいや立ちくらみがする、ストレスで頭に血が上って熱っぽい時」に、頭にこもった過剰な熱をスーッと天へ逃がして脳をクリアに整えてくれる絶対の名穴をご紹介します。
今回登場した『百会』は、左右の耳の一番高い場所を結んだラインと、顔の真ん中を通るライン(鼻筋の延長線)が頭頂部で交差する、一番凹んでいる場所にあります。
東洋医学において『百会』は、身体を通る数多くの気が集まる「百脈の会」であり、頭部や脳の働きを正常に保つ最高峰の要穴です。高熱やストレス、自律神経の乱れによって頭部に過剰な熱や気が昇りつめた際、このツボを刺激することで頭の熱を効率よく放散させ、眩暈や頭痛、気の滞りをスッキリと解消してくれます。
ケアする場合は、両手の集めた指先(または中指の腹)を『百会』に当て、頭の中心に向かって心地よい痛気持ちよさを感じる強さで5秒間じわーっと垂直に押し込みます。これを息をゆっくり吐きながら5回ほど試してみてください!
頭の重みやモヤモヤが晴れ、視界がパッと明るくなりますよ!
次なる第605話は、明日**8月9日(日曜日)のお昼【12:00】**に更新を予定しております!
ついに覚醒する古代の大魔獣「炎帝」! 南海灼熱諸島の命運をかけた最終決戦を、どうぞお楽しみに!




