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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第八章:南海灼熱諸島と炎の熱邪(ねつじゃ)】

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第602話「山道の奇襲!赤腕の煉獄と曲池の清熱」

『少商』の刺鍼によって島民たちの猛烈な咽喉痛を鎮め、火山の最深部へと急ぐ往診チーム。しかし、山道に広がる灼熱の霧の中から、黒穴会残党「炎血衆」を束ねる四天王が一人「赤腕の煉獄れんごく」が立ちはだかります。熱邪による激しい肘・腕の激痛と麻痺に襲われる中、枢先生の新たな治癒の鍼が冴え渡ります!

 カルデラ岳の山道を覆う空気は、標高が上がるにつれて重く、そして耐え難いほどの熱気を帯びていた。


 足元の岩肌はまるで加熱された鉄板のように熱せられ、踏み出すたびに靴底から焦げた匂いが漂い始める。周囲に生い茂っていたはずの熱帯植物たちはすっかり黒く炭化し、時折吹き抜ける熱風に揉まれてさらさらと灰を散らしていた。


 「くっ……! 上に行けば行くほど、熱気が物理的な圧力となって体にのしかかってきやがる……!」

巨斧を肩に担いだガストンが、額から滝のように吹き出す汗を太い腕で乱暴に拭った。その腕の皮膚は、すでに熱風によって赤く激しい炎症を起こしかけている。


 「皆さん、焦って息を乱してはいけません。深く静かに呼吸をし、体内の水分を極力維持するのです」

往診鞄を胸元でしっかりと抱え直したくるるが、前行を続ける仲間の背中に向かって声をかける。

「火山の奥から漂うこの気は、単なる自然の熱気ではありません……。あらかじめ意図的に練り上げられた、極めて毒性の強い『風熱ふうねつの邪気』です。油断すれば、一瞬で関節や皮膚の脈絡みゃくらくを侵されます!」


 「……気をつけてください、枢先生。前方の熱霧の中に、明確な殺気が潜んでいます」

先頭を走っていた隠密・コクが、ピタリと足を止めて短剣の柄に手をかけた。その瞳が、前方から湧き出す赤黒い蒸気の奥を鋭く見据える。


 シュバッ――!!


 次の瞬間、赤黒い蒸気を引き裂いて、巨大な鉄製の大鎖が音速を超えて飛来した!


 「ぬぁっ!?」

ガストンが瞬時に巨斧を掲げ、重厚な刃で飛来した大鎖を受け止める!


キィィィィィィィンッ!!!!!


火花が激しく散り散りになり、凄まじい衝撃波が狭い山道を駆け抜けた。

だが、異変はその直後に起こった。ガストンが受け止めた大鎖の表面から、ドッと不気味な赤紫色の炎が噴き出し、鎖を伝ってガストンの両腕へと瞬く間に燃え移ったのだ!


「ぐあぁぁぁぁぁぁッ!?!? あ、熱いッ! 何だこの炎は……ッ! 腕に巻きついて離れねぇぇぇッ!」


「ハハハハハ! 愚か者めが! 我が『煉獄の鎖』に触れたが最期、その腕は内側から筋肉と脈絡が焼き切れるまで燃え続けるのだッ!」


赤黒い蒸気の奥から、全身に真っ赤な金属甲冑を身に纏った巨漢が姿を現した。その両腕は刺青と火傷の跡で埋め尽くされ、異様な熱気を放っている。

黒穴会残党「炎血四天王」の一人――「赤腕の煉獄れんごく」であった。


「ガハハハ! 我が編み出した『風熱浸透殺術』は、気付けば腕の関節から全身の血流へと邪熱を送り込み、全身の皮膚を腐らせ、腕を麻痺させて激痛で狂い死にさせる! 往診チームとやら、ここで全員蒸し焼きにしてくれるわッ!」


煉獄が腕を振ると、大鎖が蠢く蛇のように空中で旋回し、二次、三次と熱波の波動を叩きつけてくる!


「く……っ! 腕が……肘の関節が痛くて、斧を持ち上げられねぇ……ッ!」

ガストンが膝をつき、激痛に顔を歪めた。その両腕は肘から手首にかけて赤く腫れ上がり、激しい熱感とともに激しい痙攣を起こしている。


「ガストンさんッ!」

ネネが駆け寄ろうとするが、煉獄が放つ風熱の波動が山道全体に広がり、ネネもハクもリナも、皮膚の激しい痒みと発熱、そして首から腕にかけて走る劇痛に悲鳴を上げた。


「うあぁぁ……! 首と腕が熱くて痛い……! まるで蜂に刺されたみたいに、皮膚が真っ赤に腫れてきたわ……ッ!」


「これは……ッ! 風熱の邪気が体表の『陽明経ようめいけい』に深く侵入し、肘や腕の関節、さらには全身の皮膚と経絡に猛烈な熱毒ねつどくと炎症を引き起こしています!」

枢の視界の中で、仲間たちの腕をめぐる気血の流れが赤く鬱滞し、熱邪によって完全に塞ぎ止められているのが見えた。


「肘の関節は、手から首や頭へと繋がる気が集まる大きな分岐点……。ここが風熱で塞がれれば、腕の運動障害だけでなく、高熱や強い皮膚症状、さらには全身の不調へと波及します! この熱毒の滞りを一刻も早く解き放ち、全身の風熱を体外へ叩き出さなければなりません!」


枢が息を呑み、往診鞄の特等席から一本の長鍼を取り出した。

それは、太陽の光を浴びて青白く輝く、最高級の「清熱散風せいねつさんぷう純銀大鍼」であった!


「……相棒! 煉獄の追撃は俺が喰い止める! 3秒だ……3秒でガストンたちの腕を治してくれッ!」

哭が白銀の気を全身から爆発させ、短剣を交差させて煉獄の大鎖の連撃を間一髪で弾き返した!


「3秒もいりません……! 1秒で解き放ちますッ!」

枢の瞳が青い清涼な光を放つ!


「ハク、リナ! 関節に溜まった猛烈な熱を冷却し、皮膚の発疹と激痛を鎮める『金銀花きんぎんか』と『連翹れんぎょう』の清熱解毒アロマを、全員の肘と腕へ集中噴霧しなさい!」

「了解です枢先生! 清熱解毒アロマ、腕部へ全開噴射ッ!!」


シュワーッ!!

ひんやりとした清涼感あふれる霧が全員の腕を包み込み、燻ぶっていた赤紫色の炎を鎮めていく!


「風熱の邪気よ、関節の凹みより霧散せよッ! 肘の清熱・解毒の要穴……解放ッ!!」


シュパッ! シュパッ! シュパッ――!!


枢の手から放たれた銀鍼が、ガストン、ネネ、ハク、リナたちの**「肘を曲げた時にできる外側の横紋シワの端にある凹み」へ、雷光のような速度で深く的確に打ち込まれた!

打ち込まれたのは、手陽明大腸経の合土穴であり、全身の風熱・高熱・皮膚疾患・腕の激痛を劇的に打ち払う至高の名穴――『曲池きょくち』!


ジュワァァァァァァァッ!!!!!


「――つ……あぁぁぁぁぁぁぁッ!?!? 肘の奥で燻ぶっていた灼熱のマグマが……一気に外へ吹き飛んでいく……ッ!」

ガストンが目を見開き、両腕を力強く突き出した!


「腕が……腕が動くぞ! 腫れも熱も一瞬で引いて、全身の痒みと皮膚の赤みが消えていくぅぅぅッ!」

ガストンが地面に落ちていた巨斧を軽々と掴み上げ、豪快にぶん回した!


「『曲池』は、全身を通る『手陽明大腸経てようめいだいちょうけい』の合土穴ごうどけつであり、東洋医学において『全身の風熱(熱感や炎症)を最も強力に清掃・排出する絶対の清熱解毒穴』**です! 外感の風熱による高熱、肘や腕の激痛・麻痺、肩こり、さらには蕁麻疹やアトピーなどの皮膚の激しい痒み・腫れを劇的に鎮める、清熱の王様と称される名穴です!」


「すごいです枢先生! 腕の激痛が嘘みたいになくなって、全身がスッキリ涼しくなりました!」

ネネが弓を構え直し、笑顔を取り戻す!


「な……何だとぉぉぉッ!? 我が『風熱浸透殺術』が、肘のツボ一本で破られたというのかぁぁぁッ!?」

煉獄が信じられないという顔で絶叫した。


「ガストンさん、哭さん! 風熱を散らした今、あの男の術はもう通用しません! 行ってくださいッ!」

枢が力強く指を突き出す!


「おうよッ! 俺様の腕を焼こうなんて、百年前だぜぇぇぇッ!」

ガストンが勢いよく地面を蹴り、黄金の気を纏って空中に跳躍した!


「……終わりだ、煉獄」

哭の身体が影のようにブレ、煉獄の背後へと一瞬で回り込む!


「豪力・絆の太刀割り――清熱爆砕撃ッ!!」

「閃光・両断斬ッ!!」


ドカァァァァァァァンッ!!!!!!!!


二人の完璧な連携攻撃が、煉獄の赤鋼の甲冑を真ん中から打ち砕いた!

煉獄は凄まじい悲鳴を上げながら山道の下へと吹き飛んでいき、周囲を覆っていた風熱の邪気も一気に霧散していったのだった。


「ふぅ……これで第一の刺客は倒せましたね」

枢が静かに往診鞄のチャックを閉める。


「よしッ! このまま一気に火山の噴火口まで駆け上るぞぉぉぉッ!」

ガストンが戦斧を掲げて叫び、往診チームは再び火山の最深部を目指して走り出した。


しかし、山頂の噴火口からは、さらに禍々しい紫色の熱気が渦を巻き始めていた。

黒穴会残党が目論む「炎帝」の復活、そして南海灼熱諸島を襲う病魔との戦いは、より深く、より熾烈な展開へと進んでいくのだった――。

 第602話をお読みいただき、ありがとうございました!


風熱の邪気と激しい腕の腫れ・痛みに苦しむ往診チームを、枢先生が『曲池きょくち』の刺鍼で見事に救い出し、四天王の一人「煉獄」を撃破する大迫力のバトル&東洋医学アクションをお楽しみいただけましたでしょうか。


 さて、今回は作中で枢先生がガストンさんたちの腕の激しい痛みや腫れ、皮膚の赤みや高熱を解消した「風熱襲表・経絡鬱滞(風熱の邪気による関節炎・皮膚の炎症)」の病理に基づき、日常で「風邪で高熱が出ている、肘や腕・肩が痛んで上がらない、ニキビや吹き出物・蕁麻疹などの皮膚の赤みや痒みが酷い、便秘がちで体に熱がこもっている時」に、全身のこもった熱をスッと引き散らして炎症を鎮めてくれる絶対の清熱名穴をご紹介します。


 今回登場した『曲池きょくち』は、肘を曲げた時にできる内側のシワの端(親指側の外側の端)にある凹みにあります。


 東洋医学において『曲池』は、大腸と頭面部・皮膚を繋ぐ「手陽明大腸経てようめいだいちょうけい」の要穴であり、**「全身の風熱(熱感・炎症)を排出し、毒素を落とす最強の清熱解毒穴」**として非常に有名です。風邪による発熱はもちろん、腕や肘の痛みの緩和、顔や全身の皮膚トラブル(ニキビ、蕁麻疹、痒み)、さらには高血圧や目赤(目の充血)まで、体内に滞った余分な「熱」を効率よく体外へ洗い流してくれます。


 ケアする場合は、反対の手の親指を『曲池』の凹みに当て、肘の骨に向かって痛気持ちいい強さで5秒間じわーっと強く押し込みます。これを息をゆっくり吐きながら左右5回ずつ試してみてください!

肘から先が軽くなり、顔や全身の火照りがスーッと引いてスッキリしますよ!


 次なる第603話は、明日**8月8日(土曜日)のお昼【12:00】**に更新を予定しております!


火山の噴火口で待ち受ける、第二の刺客「紫炎の禍毒」! 往診チームを襲う未知の病魔とは――!? 12時の更新をどうぞお楽しみに!

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