第599話「噴煙の灼熱魔獣!心火の暴走と内関の防壁」
南海灼熱諸島を襲う猛烈な「熱邪」と顔面の不調を、東洋医学最強の鎮痛穴『合谷』で沈静化した往診チーム。しかし安堵も束の間、火山の噴火口から溢れ出したマグマとともに、熱邪の源泉たる巨獣「灼熱魔獣・炎頭鬼」が港町へと襲来します。長期戦となる南海編、その激闘の火蓋が切って落とされます!
グラグラグラグラッ……!!
地響きは収まるどころか、凄まじい周期で激しさを増していった。
島の中央に聳え立つ赤褐色の火山「カルデラ岳」の噴火口から、赤黒い太い火柱が天空へと突き抜ける。
「ガ……ガハハハハ! 逃げろ、逃げろぉぉぉッ! 『炎頭鬼』様がお目覚めだぁぁぁッ!」
逃げ惑う島民たちを押し分け、港の崩れた石垣の上に姿を現したのは、全身に真っ赤な刺青を彫り込んだ怪しげな男たち――黒穴会の残党「炎血衆」の面々であった。
「黒穴会……! まだ息の根が残っていたというのですか……ッ!」
枢が往診鞄を固く握り締め、鋭い眼光で残党らを睨みつける。
「へっ! 王都の本陣が潰れようが、この南海灼熱諸島には古代より眠る熱邪の巨獣がいるのさ! 陰元様の仇討ちとして、この島もろともお前たちを焼き尽くしてやるぜぇぇぇッ!」
男が手に持った黒い角笛を吹き鳴らすと、火山から流れ出る溶岩の川を割り、体長数十メートルに及ぶ全身が灼熱のマグマで形成された四足の巨獣――「炎頭鬼」が咆哮を上げた!
ゴォォォォォォォォッ!!!!!
その咆哮とともに放たれたのは、超高熱の衝撃波であった。
港に漂っていた冷気が一瞬で蒸発し、周囲の木造建築や船が次々と自然発火を起こしていく!
「うわぁぁぁッ!? 熱い、熱いぞぉぉぉッ!」
ガストンが戦斧を盾にして身を隠すが、その金属の柄すらも瞬く間に素手で持てないほどの熱を帯び始めた。
「ガストンさんッ!」
ネネが叫ぶが、彼女自身もあまりの熱風に皮膚が赤く腫れ上がり、激しい胸の苦しさと動悸を訴えてその場に倒れ込んだ。
「くっ……! 胸が……胸が圧迫されて息が吸えない……! 心臓が割れるようにバクバク言ってるわ……ッ!」
「ネネさん! リナ! ハク!」
枢がすばやく駆け寄る。
ただの暑さではない。炎頭鬼が放つ「心火の熱邪」が、人々の胸部(胸中)に直接侵入し、心臓の鼓動を乱して激しい動悸、胸悶(胸の圧迫感)、そして強い不安と恐怖を引き起こしているのだ!
「心臓を包む『心包』が熱邪によって焼き侵され、胸の気が完全に閉塞しています! このまま胸の圧迫を放置すれば、激しいパニックと心機能の低下で命に関わります……!」
「……相棒! 街の防衛は俺とガストンで食い止める! お前はみんなの胸の気を救ってやってくれッ!」
隠密・哭が白銀の気を纏い、熱風を掻き分けて前線へ飛び出した!
「任せました、哭さん! ……胸の圧迫感を打ち破り、心臓を強力に保護して興奮した自律神経を鎮める『心包経の絶対防壁』を展開します!」
枢が往診鞄から、純銀製の清心鎮定鍼を取り出した!
「ハク、リナ! 胸の熱を冷まし、精神を安定させる『蓮肉』と『酸棗仁』の清心鎮静アロマを胸元へ噴霧しなさい!」
「了解です枢先生! 清心鎮静アロマ、胸元へ全開噴射ッ!!」
爽やかで穏やかな薬草の香りが胸元を包み込み、激しい動悸がわずかに落ち着き始める!
「胸の塞がりを解き放ち、心の安定を取り戻しなさいッ!」
シュパッ! シュパッ――!!
枢の手から放たれた銀鍼が、苦しむネネやハク、リナたちの**「手首の横紋(内側のシワ)の中央から、肘に向かって指幅3本分上がったところ(2本の腱の間)」へ、正確無比に打ち込まれた!
打ち込まれたのは、胸の苦しさや動悸、吐き気を劇的に和らげる心包経の至高の名穴――『内関』!
ジュワァァァァァッ……!!
「――つ……ハぁぁぁぁぁぁッ……!! 押し潰されそうだった胸が……すーっと広くなって、息が吸える……ッ!」
ネネが胸に手を当て、深く大きな息を吐き出した。
「激しい動悸とバクバクが治まっていく……! 恐怖で震えていた心が、嘘みたいに落ち着いていくわ……ッ!」
「『内関』は、心臓を保護する『手厥陰心包経』の絡穴であり、八脈交会穴の一つ! 文字通り『関所のように体内の内側(心臓・胸部・胃)を守る場所』**です! ストレスや熱邪による胸の圧迫感、激しい動悸、不安感、さらには吐き気や胃の不快感を強力に鎮め、自律神経のバランスを正常に戻す絶大な胸部保護穴です!」
「よしッ! 胸の苦しさが消えたなら、あたしたちも負けていられないわ!」
ネネがシャキッと立ち上がり、ハクとリナも笑顔を取り戻した!
「枢先生、ありがとうございます! 救護所の島民たちにも『内関』のケアを施して回ります!」
「ええ、お願いします! ……ガストンさん、哭さん、お待たせしました!」
枢が往診鞄を構え、炎頭鬼と対峙する前線へと合流した。
「へっ、待ちかねたぜ枢先生! 胸のモヤモヤが晴れて、腹の底から力が湧いてきたぜぇぇぇッ!」
ガストンが巨大な戦斧を振り上げ、咆哮する炎頭鬼を睨みつける。
「……よし。南海灼熱諸島を脅かす熱邪の源、そして黒穴会の残党ども……! 一つひとつ、確実に破砕していくぞッ!」
哭の短剣が鋭い白銀の光を放ち、広大な南海編の壮絶な長期戦が、いま本格的に幕を開けたのだった――!
第599話をお読みいただき、ありがとうございました!
第七章の大決戦を終え、いよいよ長編・第八章「南海灼熱諸島編」の本格的な戦いがスタート! 魔獣・炎頭鬼が撒き散らす心火の熱邪に対し、枢先生が『内関』の刺鍼によって胸の圧迫感と動悸を劇的に打ち破る熱き救命劇をお届けいたしました。
さて、今回は作中で枢先生がネネさんたちの胸の激しい圧迫感や動悸、不安感を解消した「心包熱盛・胸陽閉塞(ストレスや熱感による心臓・胸部の不調)」の病理に基づき、日常で「ストレスで胸が苦しくなる・息苦しい、動悸やバクバクが気になる、緊張や不安で心が落ち着かない、乗り物酔いや胃のムカムカ・吐き気がある時」に、胸の通りを良くして心身をホッと落ち着かせてくれる絶対の名穴をご紹介します。
今回登場した『内関』は、手のひら側の手首のシワの中央から、肘に向かって指幅3本分(人差し指・中指・薬指を揃えた幅)上がったところの、中央に走る2本の太い腱の間にあります。
東洋医学において『内関』は、心臓のガードマンである「手厥陰心包経」の要穴であり、**「胸・心・胃の不調を鎮める万能穴」**として非常に有名です。精神的なプレッシャーや自律神経の乱れによって胸が締め付けられる時や、胃からこみ上げる吐き気・不快感がある際、このツボを刺激することで胸の気を通暢させ、自律神経(副交感神経)を優位にして心身に深い安心感をもたらしてくれます。
ケアする場合は、反対の手の親指を『内関』の凹み(2本の腱の間)に当て、手首の骨に向かって痛気持ちいい強さで5秒間じわーっと優しく押し込みます。これを深呼吸しながら左右5回ずつ試してみてください!
胸のつかえがすーっと下りて息が深く吸えるようになり、心が穏やかに整っていきますよ!
次なる記念すべき第600話は、本日**8月6日(木曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております!
ついに大台達成の第600話! 迫り来る灼熱魔獣・炎頭鬼に対し、往診チームが繰り出す起死回生の大技とは――!? 21時の更新をどうぞお楽しみに!




