第597話「王都の解放!芽吹く生命と足三里の快復」
黒穴会の総帥・陰元を倒し、「真の悪鍼・極」を粉砕した往診チーム。王都ガルフレイドに平和が戻ったかに見えましたが、崩壊する大聖堂の地下深くで、最後の試練と温かな奇跡が待ち受けていました。
「真の悪鍼・極」が粉砕された瞬間、大聖堂の地下回廊を包み込んでいた禍々しい赤黒い気流は、眩い純白の光の粒子となって天井へ向かって吹き抜けた。
無数の光の粒子は、地下の岩盤を透過し、地上へと広がっていく。
邪気に閉塞されていた王都ガルフレイドの空を覆う黒雲が割れ、数日ぶりに温かな太陽の光が街全体へと降り注いだ。
「あ……温かい……。体が……軽くなっていく……!」
大聖堂の前でへたり込んでいた王都の町人たちが、一人、また一人と顔を上げ、自らの手を見つめた。
心臓を締め付けていた激しい動悸と強い恐怖が消え去り、身体の底からじんわりと生きる活力が湧き上がってくる。
「助かったんだ……! 往診チームの先生たちが……俺たちを救ってくれたんだッ!」
街のあちこちで、歓喜の声と涙が弾けた。
一方、崩落を始める「黒穴の回廊」の地下深く。
ズズズズズ……ッ!
天井の石材が音を立てて崩れ落ち、粉塵が立ち込める中、往診チームは横たわる壱号の身を抱えて救出に当たっていた。
「急いでください! この回廊自体が、悪鍼の崩壊とともに崩れ始めています!」
枢が声を張り上げ、往診鞄を抱え直す。
「よしッ、壱号は俺が担ぐ! 哭、先導を頼むぞッ!」
ガストンが大きな背中に壱号をしっかりとおぶい、太い腕で固定した。
「了解だッ! 出口はあっちだ、ついて来いッ!」
哭が短剣を握り直し、落下してくる巨大な岩片を瞬時に打ち砕きながら、崩壊する螺旋階段を駆け上がっていく。
地上へ出た往診チームを待っていたのは、太陽の眩い光と、大聖堂の前を埋め尽くす王都の人々の大歓声であった。
「出たぞ! 往診チームの皆さんだぁぁぁッ!」
「ありがとうございます! ありがとうございます……ッ!」
人々が押し寄せ、涙を流しながら感謝を述べる。
しかし、地上に脱出した往診チームの表情は、まだ晴れてはいなかった。長引く激闘と悪気の侵食により、全員の胃腸と全身の体力が限界を迎えていたからである。
「く……ッ! 終わった途端に、どっと疲れが……。胃がキリキリ痛んで、脚に力が入らねぇ……」
ガストンが大きな体を揺らし、その場に片膝をついた。
「……私もです……。息が上がって……全身の疲れと吐き気が……」
ネネも青ざめた顔で胸を押さえ、ハクとリナもぐったりと地面に座り込んでしまう。
長期間にわたる悪邪との闘いと、過酷な緊張感によって、全員の「脾胃(ひい:消化吸収機能と全身のエネルギー生成)」が枯渇し、慢性的な重疲労状態に陥っていたのだった。
「……全員の胃腸が衰弱し、後天の気(食事や呼吸から作る活力)が途絶えています……! このままでは、せっかく助かった命も衰弱してしまいます!」
枢自身も激しい疲労に襲われていたが、すばやく往診鞄から、黄金に輝く大補気鍼を取り出した!
「長旅と激闘の疲れを根本から癒やし、消化吸収を高めて全身に爆発的なスタミナをみなぎらせる……! 東洋医学が誇る最大の養生・万能穴を解放します!」
「ハク、リナ! 胃腸を温めて消化力を高め、体力を一気に回復させる『人参』と『黄耆』の補気養生アロマを全員へ!」
「了解です、枢先生……! 補気養生アロマ、噴射ッ!!」
香ばしく甘い生薬の香りが広がり、全員の胃の不快感が和らぎ始める。
「そして……身体の衰弱を追い払い、千 an 走っても疲れない体を作る最高の万能名穴……!」
シュパッ! シュパッ――!!
枢の手から打ち出された黄金鍼が、仲間たちの**「膝のお皿のすぐ下外側にある凹みから、指幅4本分下」にある絶対の名穴――『足三里』へ、深く的確に打ち込まれた!
ドクゥゥゥゥゥンッ!!
「――つ……おぉぉぉぉぉッ!? 胃の奥から……温かい熱が広がって、脚の底から力が湧いてくるぞぉぉぉッ!」
ガストンが目を見開き、お腹を押さえながら立ち上がった!
「疲れが一瞬で消え去っていく……! 身体が軽い! いくらでも歩けそうだぞッ!」
「『足三里』は、胃の働きを司る『足の陽明胃経』の合土穴であり、文字通り『三里(膨大な距離)を歩いても疲れない健脚と健康をもたらす穴』**! 胃腸の不調、全身の激しい疲労感、消化不良、免疫力の低下を劇的に改善する、東洋医学において最も有名な養生・補気穴です!」
「 clinical に見て……相棒、身体の芯から腹が減ってきたぜ!」
哭がニッと笑い、お腹を鳴らした。
「ふふ、食欲が出るのは元気になる一番の証拠です!」
枢も心から和やかな笑顔を浮かべた。
王都の青空の下、倒れていた壱号も静かに目を覚まし、哭と強く手を取り合った。
東方寒冷大陸を脅かした黒穴会の脅威は去り、往診チームの長きにわたる激闘の旅は、温かな救済とともに一つの区切りを迎えたのだった――。
第597話をお読みいただき、ありがとうございました!
王都ガルフレイドを包んでいた黒穴会の脅威がついに去り、長旅と激闘で疲弊した往診チームを、枢先生が『足三里』の刺鍼で見事に快復させる感動のエピローグをお届けいたしました。
さて、今回は作中で枢先生がガストンさんたちの激しい疲労感や胃腸の衰弱、脚の重さを解消した「脾胃気虚(胃腸の弱りによる全身のエネルギー不足)」の病理に基づき、日常で「最近どうも疲れが抜けない、胃が重くて食欲がない、脚がだるくて力が入らない、夏バテや体力の衰えを感じる時」に、胃腸を元気にし体幹からパワーをみなぎらせてくれる絶対の名穴をご紹介します。
今回登場した『足三里』は、膝のお皿のすぐ下、外側の凹み(むこうずねの骨の外側)から、指幅4本分(人差し指から小指までを揃えた幅)下に降りたところにあります。
東洋医学において『足三里』は、消化吸収とエネルギー生成を司る「足の陽明胃経」の要穴であり、松尾芭蕉が『おくのほそ道』の旅で灸をすえていたことでも有名な**「養生・長寿・疲労回復の最高峰ツボ」**です。このツボを刺激することで、衰えた胃腸の働きを活性化させ、食べたものから効率よくエネルギーを作り出し、全身の疲労や体力の低下、足腰のだるさを劇的に改善してくれます。
ケアする場合は、反対の手の親指の腹(または拳の関節)を『足三里』の凹みに当て、すねの骨に向かって痛気持ちいい強さで5秒間じわーっと強く押し込みます。これを息をゆっくり吐きながら左右5回ずつ試してみてください!
お腹の奥がじわーっと温かくなり、脚の重さがスッキリ抜けて元気が湧いてきますよ!
次なる第598話は、本日**8月5日(水曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております!
王都を救った往診チームに届いた、次なる大陸からのSOSとは――!? 21時の更新をどうぞお楽しみに!




