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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第七章:東方寒冷大陸と絶命の寒邪(かんじゃ)】

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第595話「黒穴の回廊!狂乱の血風邪と湧泉の足根」

大聖堂の地下深く、漆黒の階段を下りきった往診チーム。正気を取り戻した壱号の言葉通り、そこには大陸全土の生命力を吸い上げる黒穴会の本陣「黒穴の回廊」が広がっていました。王都の運命を賭けた決戦が、いま始まります。

 ――静寂と、湿り気のある禍々しい気が満ちていた。


 大聖堂の地下最深部へ続く長い螺旋階段を下りきった往診チームの眼前に広範囲に広がっていたのは、黒い濡れた石材で組み上げられた巨大な円形回廊「黒穴こくけつの回廊」であった。


 回廊の天井からは、太い根のような黒い脈管が無数に伸び、中央に聳え立つ巨大なオベリスク――「真の悪鍼・きわみ」へと繋がっている。

その脈管を伝って、王都ガルフレイド、そして大陸各地から吸い上げられた人々の「生命の気」が、赤黒い光の奔流となって脈打つように吸い上げられていた。


 「……なんという気血の搾取……! 大陸全体から生命力を無理やり吸い上げ、この一箇所に集中させています……!」

くるるは往診鞄を固く抱え直し、眼前の光景に息をのんだ。


 「おいおい……マジかよ。こんなデカいオベリスクで全員の気力を吸い取ってたのか……!? 王都の人たちが死んだように倒れてた理由がよく分かったぜ!」

ガストンが戦斧を構え、壁沿いに広がる黒い脈管を睨みつける。


 「……相棒。油断するな」

隠密・コクが短剣の柄に手を置き、低く鋭い声で警戒を促した。

「ここにいるぜ。教皇ゼノすら前座に過ぎなかった、この黒穴会の『真の主』がな」


 回廊の中央、真の悪鍼・極の前に、一人の老人が静かに浮かんでいた。

全身にびっしりと漆黒の経絡図が刻まれ、その瞳は光を一切反射しない暗黒の空間そのものだった。


「……よくぞ辿り着いた、往診チームの鍼術師よ。そして……我が『零号』よ」

老人の声は、まるで地底の岩が擦れ合うような重低音となって回廊全体に響き渡った。


「我が名は黒穴会総帥・陰元いんげん。……この大陸の人間どもは、無駄な感情と軟弱な体躯で命を浪費する豚に過ぎぬ。ゆえに我がこの『悪鍼・極』を以て全生命力を回収し、選ばれし者のみが持つ絶対の生命ネットワークを構築するのだ」


「人を豚だと……!? ふざけるなッ!」

ガストンが床を蹴り、黄金の気を撒き散らしながら一直線に陰元へ躍りかかった!

「豪力・絆の太刀割りぃぃぃッ!」


バチィィィィィンッ!!!!


「ぬあっ……!?」

ガストンの渾身の振りが、陰元の数メートル手前で不気味な黒紫色の力場によって完全に受け止められた!

そればかりか、陰元が軽く指を振ると、回廊全体から猛烈な「寒邪かんじゃ血風邪けつふうじゃ」の暴風が吹き荒れた!


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!


「うあぁぁぁぁぁッ!?」

ガストンが巨体ごと吹き飛ばされ、足元から急速に氷漬けにされていく!

ただの氷ではない。体内の熱源である「腎陽じんよう」を直接凍らせ、足元から崩れ落ちさせる、死の冷気攻撃であった!


「きゃあああっ! 足が……足が冷たくて、動かない……!」

ネネが膝をつき、ハクとリナも寒さで身体を震わせる。


「ふははは! 人間の生命の源流は『足の裏』にある! 腎の気が枯れ、足元から冷気が侵入すれば、人間は立ち上がることすらできずに衰弱死するのだ!」

陰元が腕を広げると、さらなる冷気の暴風が往診チーム全体を包み込み、生命力を削ぎ取ろうとする!


「……ッ! 足元からの過剰な寒邪の侵入……! 体内の生命の根源である『じん』の気が凍りつき、立身すら困難になっています……!」

枢の顔にも冷や汗が流れる。だが、彼の瞳に宿る治癒の意志は、一切途切れることはなかった。


「足元が冷え、生命の根源が失われかけた時こそ……大地から生命の源泉を汲み上げる『腎経の始点』を解き放ちます!」


枢がすばやく往診鞄から、純金製の温熱補法鍼を取り出した!


「ハク、リナ! 体内の根底にある冷えを即座に温め、腎の命門めいもんを活性化させる『附子ぶし』と『肉桂にっけい』を配合した強熱補陽アロマを全員の足元へ集中噴霧しなさい!」

「了解です枢先生! 腎陽補給・温熱アロマ、足元へ全開噴射ッ!!」


濃厚でスパイシーな温かい生薬の香りが足元を包み込み、まとわりついていた黒い氷がわずかに溶け始める!


「ガストンさん、哭さん! 足の裏の命の泉を開きます!」


シュパッ! シュパッ――!!


枢の手から打ち出された純金鍼が、ガストンと哭の**「足の指を折り曲げた時に、足の裏の前にできる『人』の字状の凹みの中央」へ、深部まで正確無比に刺入された!

打ち込まれたのは、全身の生命力を足元から一気に沸き立たせ、冷気を吹き飛ばす絶対の名穴――『湧泉ゆうせん』!


ジュワァァァァァァッ!!!!!


「――ぐ、オォォォォォォォォッ!?!? 足の裏から、まるでマグマのような熱いエネルギーがドカンと突き上げてきたぞぉぉぉッ!?」

ガストンが叫び声を上げると同時に、足元を覆っていた漆黒の氷が木端微塵に砕け散った!


「身体が……熱い! 全身に命のパワーがみなぎってくるぜぇぇぇッ!」

ガストンがガバッと跳び起きる!


「『湧泉』は、腎経の井穴せいけつであり、文字通り『命のエネルギー(気血)が泉のように湧き出る場所』**! 冷えで凍りついた体内の最深部を強力に温め、失われた気力を瞬時に湧き上がらせる最高峰の生命補給穴です!」


「 clinical に見て……相棒、最高の足場が完成したぜ!」

哭の瞳に圧倒的な闘志が宿る!

『湧泉』の刺鍼によって足元から漲る命の熱気を得た哭が、漆黒の回廊の壁を蹴り、光を超える速度で跳躍した!


「陰元ッ! お前がどれほど巨大な悪鍼を構えようと……人間の生きる力を舐めるなぇぇぇッ!」

白銀の気流を纏った哭の短剣が、陰元の広げる黒紫色の力場を真ん中から一刀両断に切り裂いた!


バシィィィィィンッ!!


「ぬ……何……!? 足元から冷気を流し込んだはずの人間が、なぜこれほどの生命力を出せるのだ……ッ!?」

陰元が初めて顔を歪め、後方へ退いた。


「これが……私たちが紡いできた東洋医学と、生きようとする人間の力です!」

枢が往診鞄を構え、力強く言い放つ!


往診チーム全員の気が一つに重なり、真の悪鍼・極を巡る最終決戦の火蓋が、いま切って落とされた――!

 第595話をお読みいただき、ありがとうございました!


黒穴会の総帥・陰元との決戦が開幕! 足元から身体を凍らせる恐ろしい寒邪の攻撃に対し、枢先生が『湧泉ゆうせん』の刺鍼によって足裏から生命エネルギーを爆発させる激しい救命バトルをお届けいたしました。


 さて、今回は作中で枢先生がガストンさんたちの足元の激しい冷えと生命力の衰弱を解消した「腎虚(生命エネルギーの不足)・足元の強烈な冷え」の病理に基づき、日常で「足先が冷えて寒気がする、立ちくらみや疲労感が抜けない、身体の底から元気が出ない、むくみがひどい時」に、体内の深部からパワーを湧き出させて全身を温めてくれる絶対の名穴をご紹介します。


 今回登場した『湧泉ゆうせん』は、**足の裏にあり、足の指をギュッと足側に折り曲げた時に、足の裏の前にできる凹み(「人」の字模様が交わる中央)**にあります。


 東洋医学において『湧泉』は、生命力や遺伝的なエネルギーを蓄える「足の少陰腎経あしのしょういんじんけい」の井穴せいけつであり、文字通り**「湧き出る泉のようにエネルギーが湧き上がる場所」**を意味しています。冷えや疲労によって体内の根幹(腎)が弱った際、このツボを刺激することで、大地からの気を取り込み、足元から全身へ向かって熱とパワーを巡らせる絶大な体力回復・冷え撃退穴です。


 ケアする場合は、手のみね(親指の関節や拳)または親指の腹を『湧泉』の凹みに当て、足の甲に向かって痛気持ちいい強さで5秒間じわーっと強く押し込みます。これを息をゆっくり吐きながら左右5回ずつ試してみてください!

足先からじんわりと温かさが広がり、身体の底から活力が湧いてきますよ!


 次なる第596話は、本日**8月4日(火曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております。

総帥・陰元との最終決戦の行方と、真の悪鍼・極の破壊なるか――!? 21時の更新をどうぞお楽しみに!

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