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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第七章:東方寒冷大陸と絶命の寒邪(かんじゃ)】

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第591話「王都への暗道!黒穴の陰影と太衝の巡り」

ノース・ヴェイルの地下遺跡で明かされた「黒穴会」の存在と、死んだはずの男・壱号の謎。往診チームは新たなる異変の兆候を追い、王都へと続く旧地下連絡坑道へと足を進めます。

 地下遺跡の最深部、崩落した黒鉄の祭壇の背後にひっそりと残されていたのは、かつて王都とノース・ヴェイルを結んでいた古代の地下連絡坑道であった。


 無数に枝分かれする薄暗い坑道の中を、往診チームは静かに歩みを進めていた。

松明の火光が湿った岩壁をほのかに照らし出し、足元では冷たい地下水が小さな音を立てて流れている。


 「……コク、大丈夫か?」

最前線を歩くガストンが、ふと足を止めて振り返った。


 「……ああ。問題ねぇよ」

哭は短く答え、左腕の袖をぐっと引き下げた。

仮面の男・蛇骨との戦いによって『太衝』と『内関』の刺鍼を受け、刺青から噴き出していた激しい不快感や痛むような気の滞りはすっかり消え去っている。だが、その瞳の奥には、砕けた仮面の下から現れた「壱号」の顔が焼き付いて離れなかった。


 「 clinical に見て……相棒」

哭は、隣を歩くくるるへ視線を向けた。

「壱号は確かに言った。『王都の地下』で本当の地獄が待っている、と。奴らが狙っているのは、ただのノース・ヴェイルの冷気やエネルギーじゃねぇ。王都に住む何十万もの人間の生命力そのものだ」


 「ええ」

枢は往診鞄のベルトを固く握り締め、深く頷いた。

「教皇ゼノが使っていた冷気も、古代遺跡の吸気悪鍼も、すべては王都にある『本陣』へ大量の気を送り込むための集気装置に過ぎなかった……。だとしたら、王都ではすでに深刻な病状や異変が広がり始めている可能性があります」


 「王都には……たくさんの人がいるんだよね……。みんな、大丈夫なのかな……」

ネネが不安そうに両手を胸の前で合わせる。


 「大丈夫だ、ネネちゃん! 俺たちがついてる! どんな妙な病気やバケモノが出てこようと、枢先生の針と俺の斧で蹴散らしてやるさ!」

ガストンが大きな手でネネの頭をポンポンと叩き、豪快に笑ってみせた。だが、そのガストンの表情にも、これまでとは違う引き締まった緊張感が漂っていた。


 その時――。


ズズズ……ドスンッ……!


前方数十メートルの坑道で、天井の岩石が崩落し、大量の黒い泥と薄気味悪い蒸気が路面を塞ぎ始めた!


「うわっ!? 天井が落ちてきたぞ!?」

ガストンが戦斧を構える。


崩れ落ちた泥の中から現れたのは、黒い泥と不気味な紫色の根が複雑に絡み合った、巨大な蜘蛛のような形をした怪物――「黒穴の怪異・根腐れ病魔ねぐされびょうま」であった。


「ギシャァァァァァッ……! 王都へは……行かせん……! ここでお前たちの『気』を枯らし……土の肥やしとしてくれるわッ!」


根腐れ病魔が八本の足を激しく打ち鳴らすと、湿った空気全体に、酸っぱい腐敗臭と濃厚な「湿気と気の停滞」が充満した!


「くっ……!? なんだこの匂いは……! 胸の奥が詰まって、全身の力が抜けていくような感じがするぞ……ッ!」

ガストンが膝をつき、大きく息を吐き出した。


「……気をつけてください! この怪物が放っているのは、体内の気の巡りを強制的に止め、精神を塞ぎ込ませる『憂鬱と停滞の気』です!」

枢がすばやく往診鞄を開く。


「ヒハハハッ! 気が滞れば、人間は不安と重だるさで身体が動かなくなる! 息を吸うのも億劫になり、そのままじわじわと腐り落ちるのだッ!」

根腐れ病魔が粘着性のある黒い泥糸を噴出し、往診チームの足元を絡め取り始める!


「……相棒。こいつはただの病魔じゃねぇ」

哭が短剣を引き抜き、冷や汗を拭いながら前に出た。

「黒穴会が仕掛けた、王都への侵入を防ぐための『見張り』だ。ここで足止めを食らっている時間ねぇぞ!」


「はい! 気の滞りによって起きる身体の重だるさと精神の塞ぎ込み……! 『かん』の巡りを一気に高めて、滞りを打ち破ります!」

枢の指先が、光の速度で交差する!


「ハク、リナ! 身体の滞った水分と邪気を散らし、気の流れをスムーズにする『香附子こうぶし』と『紫蘇葉しそよう』を配合した清涼気流ミストを散布してください!」

「了解です枢先生! 気流改善ミスト、噴射ッ!!」


爽やかな紫蘇と香草の香りが坑道内に広がり、黒い泥糸の粘り気がわずかに弱まる!


「ガストンさん、哭さん! 足の甲にある『太衝たいしょう』へ、巡りの清熱鍼を打ちます!」


シュパッ! シュパッ――!!


枢の手から放たれた白銀の長鍼が、ガストンと哭の足の親指と人差し指の間にある『太衝』へ、深部まで的確に刺入された!

さらに、手の甲にある気の巡りの絶対穴『合谷ごうこく』へ連動刺激を加える!


ジュワァァァァァッ……!


「――ぐ、おぉぉぉぉッ!? 足の甲から、全身に向かって清々しい風がドカンと突き抜けていくぞぉぉぉッ!」

ガストンが叫び声を上げると同時に、体内に溜まっていた重だるい疲労感と不安感が一瞬で吹き飛んだ!


「『太衝』と『合谷』を同時に刺激する『四関しかん開熱刺』! これにより、体内に滞っていた全ての気が解き放たれ、全身の巡りが劇的に復活します!」


「 clinical に見て……体が軽いぜ、相棒ッ!」

哭が疾風のようなスピードで地を蹴り、根腐れ病魔の脚を次々と切断していく!


「行くぞぉぉぉッ! 豪力・開穴一閃ッ!」

ガストンの戦斧が黄金の気を纏い、根腐れ病魔の核である泥の頭部を一散に叩き割った!


ドガァァァァァンッ!!


根腐れ病魔は悲鳴を上げながら、ただの乾いた砂となって崩れ去った。



崩落した土砂を払い除けると、その先には地上へと続く古い螺旋階段と、かすかな日光の光が差し込んでいた。


「……出られたみたいだね、枢先生!」

ネネが嬉しそうに階段を見上げる。


「ええ。ですが、ここからが本当の戦いです」

枢は階段の先にある明るい光を見つめ、静かに呼吸を整えた。


暗い地下坑道を抜け出た先――そこには、異様な静けさに包まれた「王都ガルフレイド」の巨大な城壁がそびえ立っていた。

第591話をお読みいただき、ありがとうございました!


ノース・ヴェイルの地下を抜け出し、ついに物語の舞台は「王都ガルフレイド」へと移ります。


 さて、今回は作中でガストンさんたちの身体の重だるさや気の停滞を解消した「気の滞り(ストレスや環境による全身の怠さ・気分の塞ぎ込み)」の病理に基づき、日常で「気分が晴れない、身体が重くて動き出しが辛い、イライラや不安でお腹や胸が張る」という時に、全身の気の巡りを一気に高めて気分をスッキリさせてくれる名穴をご紹介します。


 今回登場した『太衝たいしょう』は、足の甲側にあり、足の親指と人差し指の骨が交わる(V字状に合流する)手前にある凹みにあります。


 ケアする場合は、反対の手の親指の腹を『太衝』の凹みに当て、かかとに向かって斜め奥へ痛気持ちいい強さで5秒間じわーっと押し込みます。これを息を吐きながら左右5回ずつ試してみてください!

頭へ上った熱や全身に滞っていた「気」がスムーズに巡り始め、身体の重だるさや気分の塞ぎ込みがスッと楽になっていきますよ!


 次なる第592話は、本日**8月2日(日曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております!


静まり返る王都で往診チームを待ち受けるものとは――!? 21時の更新をどうぞお楽しみに!

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