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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第七章:東方寒冷大陸と絶命の寒邪(かんじゃ)】

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第590話「絶望の吸気悪鍼!太衝開穴と解き放たれし絆」

隠密・コクの左腕に刻まれた「黒穴会」の呪いの刺青、そして突如として現れた第三の針術師・蛇骨じゃこつ

吸気悪鍼きゅうきあくしん』から解き放たれた赤黒い閃光が往診チームに襲いかかる絶体絶命の危機の中、仲間を見捨てないくるる先生の熱き決意と、東洋医学の奥義が火を噴きます!

哭の悲しき過去と、自律神経(気の巡り)の暴走を打ち破る最高峰の名穴『太衝たいしょう』と『内関ないかん』の真の解放術とは――!? 息をのむ怒涛の第590話、開幕です

 ――赤黒い閃光が、地下の円形の間を眩まんばかりに焼き尽くした。


 「ガハッ……ゥアァァァァァッ!?」

ガストンが巨大な戦斧を盾にして前に立ちふさがったが、衝撃波だけで壁際まで激しく吹き飛ばされ、石壁に背中を強打して崩れ落ちた。


 「ガストンさんッ!」

ネネが叫ぶが、彼女とハク、リナの足元にも赤黒い気がまとわりつき、まるで底なし沼のように全身の自由を奪っていく。


 「フハハハハ! 無駄だと言ったはずだ! この『吸気悪鍼』が放つ血風邪けつふうじゃは、人間の体内の気血を強制的に吸い上げ、激しい恐怖と抑圧によって自律神経をズタズタに引き裂く!」

仮面の針術師・蛇骨が、両手を掲げて不気味に高笑いする。


 「恐怖に怯え、精神が失調した人間ほど、気血を奪いやすいものはない! コクよ、お前が隠し続けていた恐怖の記憶が、今やこの部屋を満たす最高の糧となっているのだぞ!」


 「く……ッ……あぁぁぁぁぁ……ッ!!」

コクは左腕の黒い刺青を押さえ、膝をついて激しく悶絶していた。

彼の額からは油汗が噴き出し、瞳は焦燥と強い罪悪感で焦点を失いかけている。


 「(……俺のせいで……俺の忌まわしい過去のせいで、相棒たちが……ネネたちが死ぬ……! 俺が……俺がこの場所に足を踏み入れなければ……ッ!)」


哭の心の中で、かつて黒穴会で受けた苛烈な人体実験と、「道具」として扱われていた恐怖の記憶が泥濁の渦となって蘇り、彼の胸(心包経)を強く締め付けていた。

心が折れかかり、完全に生きる意欲を削ぎ落とされかけた……その時だった。


スッ――。


冷たく、だが驚くほど温かい「人間の手」が、哭の震える肩へそっと置かれた。


「……ッ!?」

哭が弾かれたように顔を上げると、そこには赤黒い暴風と毒気の中で、一切の揺らぎなく不敵に微笑む枢の姿があった。


「相……棒……? なぜ……近寄るな……ッ! 俺の身体からは今、奴らの邪気が……ッ!」


「哭さん。あなたがどれほど深い暗闇と恐怖を背負ってきたとしても……私たちが今まで共に過ごし、共に命を救ってきた事実は変わりません」

枢の声は、嵐の中でも一切ぶれることなく、哭の耳奥へ澄み渡るように届いた。


「自分を責めてはいけません。心が激しい恐怖や苛立ちで乱れ、気が頭へ上って『かん』が暴走しているだけです! 心と気血の混乱など……私たちの鍼で、今すぐ正してみせます!」


「青臭いお題目をッ! 邪気の中で動けるはずがないッ!」

蛇骨が怒声とともに指を刺すと、浮遊する吸気悪鍼から太い赤黒い触手が枢の首元をめがけて襲いかかった!


「ハク、リナ! 敵の邪気による精神支配を跳ね返す、最高峰の鎮静生薬――『柴胡さいこ』と『竜骨りゅうこつ』、『牡蛎ぼれい』の精油を空間全体に拡散させなさい!」


「了解です枢先生! 精神安寧・柴胡加竜骨牡蛎さいこかりゅうこつぼれいアロマ、全開噴射ッ!!」

ハクとリナが背中の噴霧器を起動させると、どこか懐かしく厳かな樹木と柑橘の香りが円形の間を満たし、襲いかかった赤黒い触手の動きが一瞬だけ鈍った!


「今です! 哭さん、足を出してください!」


枢の指先が、疾風の如き速度で哭の足元へ伸びる!

狙うは――足の甲にある、ストレスや感情の激しい乱れによって暴走した『肝の気』を強力に引き下ろし、全身の気の巡りを一瞬で正常化させる絶対の名穴『太衝たいしょう』!


シュパッ――!!


白銀の長鍼が、哭の足の第一趾と第二趾の間を一直線に貫き、深部に正確に刺入された!

さらに、枢は先ほど自ら手繰り寄せた哭の手首の内側――心包経の要穴『内関ないかん』へ、二本目の黄金鍼を連動させて打ち込んだ!


「――『太衝』で足元から暴走した邪気を引き抜き、『内関』で心にこもった恐怖と痛みの抑圧を完全に開放する……! 合わせ技――『四関・開心気しかん・かいしんき』の刺鍼ッ!!」


ドクゥゥゥゥゥゥンッ!!!!!


「――ッ!?!?!?!?!?」

哭の全身の血管が、眩い白銀の光を放って跳ね上がった!


足の甲から突き抜けた清涼な気が、頭に上っていた狂おしい恐怖とイライラを一瞬で冷まし、締め付けられていた胸の奥が、まるで大空へ解き放たれたかのように大きく開いた!


「……あ……あぁ……ッ! 息が……吸える……! 胸の苦しみが……消えていく……ッ!」

哭の両目から、溜め込まれていた涙がぽろぽろと零れ落ちた。だがその瞳には、すでに失われていた「生への執着」と「仲間を守る意志」が、青い炎となって揺らめいていた。


「…… clinical に見て……相棒」

哭が低く、だが鋼のように力強い声で立ち上がった。

左腕の黒い刺青から噴き出していた邪気の黒煙が、完全な純白の気に塗り替えられていく。


「俺は……もう逃げねぇ。お前たちがくれたこの命……奴らのくだらねぇ過去なんぞに、二度と引き渡してまるかよぁぁぁッ!」


「な……何だと!? 呪いの刺青の精神支配を……東洋医学のツボごときで打ち破ったというのかぁぁぁッ!?」

蛇骨が顔の仮面を歪めて戦慄する!


「ガストンさん、今です!」

枢が叫ぶ!


「うおぉぉぉぉぉッ! お腹の底から力が湧いてきたぞぉぉッ! 哭をいじめる仮面野郎、ぶっ飛ばしてやるぜぇぇッ!」

『太衝』の気流によって全身の金縛りを解かれたガストンが、地響きを立てて跳躍! 巨大な戦斧を両手で構え、吸気悪鍼を支えていた黒鉄の祭壇へ向けて振り下ろした!


「豪力・絆の剛斧割りッ!!」


ドガァァァァァァァンッ!!!!!


響き渡る大音響とともに、黒鉄の祭壇が真ん中から真二つに叩き割られ、浮遊していた巨大な吸気悪鍼が激しい火花を散らして床へ落下した!


「ギギャァァァァァッ!? わ、我が祭壇が……生命の気が逆流してくるぅぅぅッ!?」

蛇骨が血を吐いて後ろへ倒れ込む!


「これで終わりだ……蛇骨ッ!」

哭が覚醒した超スピードで空を駆け、短剣の柄で蛇骨の青銅の仮面を叩き割った!


バシィィィィンッ!


仮面が粉々になって砕け散り、中に隠されていた「蛇骨の真の素顔」が露わになった。

だが――その素顔を見た瞬間、哭の動きがピタリと止まった。


「……な……なんだと……!? お前……お前は……ッ!?」

哭が絶句する。


砕けた仮面の下から現れたのは……かつて哭が幼少期、黒穴会の地獄のような施設で「実の兄」のように自分を庇い、死んだはずの男――『壱号イチ』の顔であったのだ……!


「……ククク……久しぶりだな……『零号』……」

顔から血を流しながら、壱号は不気味な笑みを浮かべた。


「……なぜだ……! なぜお前が生きている!? なぜ黒穴会の刺客なんぞになってやがるんだ……壱号ぉぉぉッ!?」

哭の悲痛な叫びが、地下の円形の間へ虚しく響き渡る。


だが、壱号は答えず、不気味に指を鳴らした。


「……教皇ゼノも、この遺跡も……全ては始まりに過ぎん。……本当の地獄は、ガルフレイド大陸の最奥……『王都の地下』で待っているぞ……」


シュワァァァァ……!


壱号の身体が黒い霧となって弾け飛び、跡形もなく消え去った。

あとに残されたのは、不気味に静まり返る地下の空間と、膝をついて呆然とする哭の姿だけだった。



「哭さん……」

ネネが静かに寄り添う。


「……相棒」

哭がゆっくりと顔を上げた。その表情には、悲しみを超えた強い決意が宿っていた。


「王都だ。王都へ行こう……! 奴らが何を企んでいようと、俺たちの東洋医学で……俺の手で、全てに決着をつけてやるッ!」


「ええ、行きましょう! どこへ行こうと、私たちは往診チームです!」

枢が深く頷き、全員の手が固く重ね合わされた。


ノース・ヴェイルの地下遺跡を巡る戦いは終わりを告げ、物語は大陸の命運を賭けた「王都決戦編」へ――!

 第590話をお読みいただき、ありがとうございました!


コクの過去の刺青を巡る激闘、そして死んだはずの「壱号」との衝撃の再会! 1話完結を脱した連続ドラマ編、いかがでしたでしょうか!?


 さて、今回は作中で枢先生が哭の激しい恐怖・苛立ち・抑圧された精神の暴走を劇的に沈静化させた「肝気上逆・イライラ・強いストレスによる自律神経の乱れ」の病理に基づき、「仕事や人間関係でストレスが溜まってイライラが止まらない、頭に血が上ってカッとなる、夜眠れない、足先が冷えて頭がのぼせる時」に、頭へ上った不快な熱と気をスーッと引き下ろし、心を平静に整えてくれる最高峰の特効穴をお届けします。


 今回ご紹介するのは、足の甲にある、ストレス緩和と肝の調整の絶対王者『太衝たいしょう』です。

場所は、足の甲側にあり、足の親指(第1趾)と人差し指(第2趾)の骨が交わる(V字状に合流する)手前にある凹みにあります。


東洋医学において『太衝』は、感情や自律神経のコントロールを司る「肝経」の原穴(最も重要なツボ)であり、精神的なストレスで「気」が頭へ突き上がった時に、その余分な熱を足先からドカンと引き抜いてくれる最高峰の沈静スイッチです。イライラや緊張が強い時、この『太衝』を押すとズーンと強い響きや痛みを感じます。ここを適切に刺激することで、作中の枢先生が哭の心を救ったように、全身の気がすーっと巡り、穏やかで強い心を取り戻すことができます。


ケアする場合は、親指の腹を『太衝』の凹みに当て、かかとに向かって斜め奥へじわーっと5秒間押し込むのを左右5回ずつおこなってみてください。心がすーっと落ち着き、深いリラックス効果を得ることができますよ!


 次なる第591話は、明日**8月2日(日曜日)のお昼【12:00】**に更新を予定しております!


王都へと向かう往診チームを待ち受ける新たな陰謀とは!? どうぞお楽しみに!

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