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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第七章:東方寒冷大陸と絶命の寒邪(かんじゃ)】

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第580話「膏肓(こうこう)の潜伏邪と、陰の黒幕」

命門めいもん』への温熱刺鍼と『四逆加人参湯』の煎じ薬によって体内の原熱(命門の火)を爆発的に蘇らせ、絶血の氷帝・アルヴァと『絶対零度のコア』を打ち砕いた枢先生率いる往診チーム。数百年の凍結から解き放たれた古都アバランシュの住民たちは奇跡の生還を果たし、街にはあたたかな歓喜の春が訪れました。しかし、古都の救済に喜ぶ一行の前に、突如として空間を歪めて姿を現したのは、ガルフレイド全土の寒邪を陰から糸引いていた真の黒幕――「寒邪の教皇・ゼノ」の影でした。教皇が仕掛ける邪悪な呪印と「膏肓こうこう」に潜む深遠な病理に対し、枢先生が挑む新たな東洋医学の境地を描きます!

 数百年ぶりに古都アバランシュを包み込んだのは、刺すような冷気ではなく、柔らかく温かな陽光の光と、鳥たちのさえずりであった。


 街の至る所で、解凍された住民たちが身を寄せ合い、涙を流しながら生還の喜びをかみ締めている。

かつて凍てついていた広場には、ガストンとガイルが薪を積み上げて作った巨大な焚き火が焚かれ、ハクとリナが大量に煎じた温かな脾胃の生薬茶が振る舞われていた。


 「いやぁ……! 身体のお腹の底から、ポカポカとした熱い湯が湧き出てくるみたいだ……! 枢先生、往診チームの皆さん、本当に……本当にありがとうございました!」

古都の長老が枢の手を両手で固く握り締め、深く頭を下げた。


 「感謝するのは私どもの方です。皆さんの胸の奥に『生きたい』という強い熱意(陽気)が残っていたからこそ、私の鍼も命の火を再点火することができたのです」

枢は優しく微笑み、長老の背中を優しく撫でた。


 「 clinical に見て、完璧な大勝利だな相棒! これでノース・ヴェイルの港町からこの古都アバランシュまで、ガルフレイドの体温は完全に正常化されたぜ!」

哭が満足そうに短剣を鞘に収め、焚き火の傍らで伸びをした。


 「おうよ! 寒邪の四天王もコアも叩き潰したんだ、もうこの大陸に凍える奴はいねぇ!」

ガストンも豪快に笑い、干し肉を豪快にかじりついた。


だが――その平穏と安堵の空気は、突如として天から降り注いだ「禍々しい紫黒色の雷光」によって無惨にも引き裂かれた。


ズザザザザザザァァァァンッ!!!!


「な……何だぁぁッ!? 空が……空間が引き裂かれていくぞ!?」

ガストンが戦斧を構え、即座に身構えた。


青空が広がりつつあった古都の上空に、不気味な紫黒色の亀裂が走り、そこからドロドロとした泥のような冷気(腐敗した湿寒の邪気)が滴り落ちてくる。

その空間の割れ目からゆっくりと姿を現したのは、黒と紫の重厚な法衣に身を包み、蛇の彫刻が施された巨大な杖を携えた老人――『寒邪の教皇・ゼノ』の立体幻影であった。


『――クックック……見事だ、東方の異国より来たりし鍼師よ。我が手駒であったアルヴァすら打ち破るとはな……』


ゼノの声は、まるで地底の底から響いてくるように重く、聞く者の精神を直接揺さぶる不快な波動を帯びていた。


「……あなたが、アルヴァたちの背後にいた者ですね。これほど膨大な寒邪を自在に操り、大陸中の生命力を掠め取っていた目的は何ですか!」

枢は仲間たちを背後に庇い、静かな怒りを込めてゼノの幻影を見上げた。


『目的だと? 決まっている……。人間の肉体とは、あまりに脆弱で不完全な器。我はその不完全な生命から熱を削ぎ落とし、完璧な「永遠の冷体」へと再構築しているのだ。……だが、貴様の施す刺鍼術は、我がことわりを乱す極めて不愉快な雑音に過ぎん』


ゼノが蛇の杖をゆっくりと持ち上げ、往診チーム全体へ向けて邪悪な呪印を解き放った。


『喰らうが良い……病魔が最も深く潜む聖域――「膏肓の呪印こうこうのじゅいん」をッ!』


黒紫色の光芒が閃光となって往診チームを襲った!


「くっ……! ガストンさん、全員私の背後へ!」

枢が咄嗟に往診鞄から特製の防御障壁(気血の結界)を展開しようとしたが、ゼノの解き放った光芒は物理的な防御をすり抜け、ガイルの背中(肩甲骨の内側)へと直接吸い込まれていった。


ツ……ッ!


「ぐ……あ……ッ! ぐああぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

ガイルが突如として叫び声を上げ、両手で自らの背中を掻きむしりながら床へ倒れ込んだ。


「ガイルさんッ!?」

ネネが悲鳴を上げ、ハクとリナが駆け寄る。


ガイルの背中、両方の肩甲骨の真ん中あたりに、不気味な黒紫色の蛇の紋章(膏肓の邪印)が浮かび上がり、そこから激しい紫煙が立ち上っていた。

彼の顔色は瞬時に土色へと変わり、激しい吐き気と呼吸困難、そして全身を苛む「身体の最も深い骨の真ん中が凍りつくような劇痛」に襲われ、脈拍が不規則に乱れ始めた(結代脈)。


「な……なんだこれは……!? 表面の筋肉じゃない……胸の奥……心臓と内臓の隙間の『届かない場所』が激しく痛んで……力が抜けていく……ッ!」

ガイルが血吐く思いでうめく。


「 clinical に見て、おい相棒! これは一体どうなってやがる!? 表面にいくら温熱生薬を塗っても、熱が全然奥まで届いていかねえぞ!」

哭がガイルの背中に手を当て、青ざめた表情で叫んだ。


「……病、膏肓こうこうに入る……!」


枢の表情が厳しく引き締まった。

「東洋医学において『膏(心臓の下の脂肪組織)』と『肓(横隔膜の上の領域)』の隙間は、薬や通常の施術が最も届きにくい『体内の最も深遠な聖域』とされています。昔から『病が膏肓に入ると治しがたい』と言われる通り、ゼノは邪気を意図的に経絡の最深部であるこの膏肓領域へ潜伏させ、内臓と気血の根源を内側から崩壊させようとしているのです!」


『ハハハハ! 気付いたところで遅い! 膏肓へ打ち込まれた寒邪の毒は、どんな名医の薬も、どのような浅い針術も届かぬ深淵! ガイルの身体はやがて内臓から腐り落ち、貴様らの絶望の標本となるのだ!』

ゼノの不気味な笑い声が空に響き渡る。


「……いいえ、治らない病などありません!」


枢は力強く宣言すると、往診鞄の極細二重底から、他とは一線を画す「超長鍼(深部到達用の特注白銀長鍼)」を取り出した。


「薬や通常の刺激が届かぬ深部であるならば……その深部(膏肓)へ直接アプローチし、滞った邪気を体外へ排泄させる『奇穴きけつ』が存在します!」


「ハク、リナ! 膏肓の奥底に潜む寒毒を外へ引っ張り出すため、最高濃度の発散解毒生薬――『麻黄まおう』『細辛さいしん』『附子ぶし』を『麻黄附子細辛湯まおうぶしさいしんとう』の深部浸透蒸気としてガイルさんの背中へ照射しなさい!」


「了解です、枢先生! 深部解毒・温経散寒蒸気、最大照射ッ!!」

ハクとリナの放った鋭く温かな生薬の香りが、ガイルの背中の毛穴を限界まで開放する。


「ガストンさん、哭! ガイルさんの姿勢を少し前傾させ、肩甲骨を大きく外側へ開かせてください! 膏肓の門を開きます!」


「おうよッ! ガイル、歯を食いしばれ! 枢先生が絶対に助けてくれるぜ!」

ガストンと哭がガイルの腕を抱え、肩甲骨をぐっと外側へ広げる姿勢(抱胸姿勢)を完璧に保持した。


肩甲骨が大きく外側へ移動したことで、背骨の脇に存在する「膏肓の領域」がくっきりと浮かび上がる。


「背部の特異名穴――第4胸椎棘突起下から指4本分外側、肩甲骨の内縁に存在する『膏肓こうこう』に、超微細旋転刺を施します!」


シュッ――!!


枢の指先から解き放たれた超長鍼が、ガイルの背中――『膏肓』の深部へと、ミリ単位の精確さで滑らかに刺入された!

さらに、枢はその鍼の頭に「最高級もぐさ」をセットし、深く優しく熱を深部へと浸透させていく(深部温針術)!


ジュウゥゥゥゥ……ッ!


「――つ……ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?!? 背中の奥深く……心臓と胃の裏側の『届かなかった場所』に……生温かい熱の槍が直接突き刺さってくるぅぅぅッ!?」

ガイルが叫んだ瞬間、彼の背中に浮き上がっていた黒紫色の蛇の紋章(膏肓の邪印)が激しくのたうち回り、鍼の根本から「ドロドロとした黒い冷気の毒汗」となって体外へドッと噴き出した!


「ハァ……ハァ……! 胸のつかえが……奥底の凍りつくような劇痛が……消えていく……! 息が……深く吸える……ッ!」

ガイルの顔色に劇的な血色が戻り、乱れていた脈拍が静かで均整の取れたリズムを取り戻したのだ。


「『膏肓』は、慢性の深部疾患や、体内の最も深い場所に潜んだ邪気を排泄させる最高峰の救命穴! どんなに深くに潜んだ寒邪であっても、正しくこの穴を捉え、温熱の気を通じさせれば、必ず病根を打ち破ることができるのです!」


『な……何だと……!? 我が膏肓の呪印を……深部刺鍼で打ち破ったというのか……ッ!?』

天空のゼノの幻影が激しいショックに揺らめく。


「 clinical に見て、お前の小細工なんて相棒の刺鍼の前じゃ何の意味もねえんだよ! 陰の黒幕さんよ、どこに隠れてやがるッ!」

哭が短剣を構え、影の刃をゼノの幻影へと叩きつけた。


パリン……ッ!


ゼノの幻影は粉々に砕け散り、空の黒紫色の亀裂も静かに塞がっていった。


『クックック……見事だ、聖鍼師・枢。だが……我が本陣たる『氷結教皇庁』の最深部……『絶陰の真玉座』へ来られるかな? そこには、貴様らの想像を絶する「極寒の絶望」が待っているぞ……』


ゼノの残響が遥か北の氷の山脈へと消えていく。


「枢先生……ありがとうございました。あなたに命を救われました……」

ガイルが深く頭を下げ、力強く立ち上がった。


「いいえ、ガイルさん。あなたの不屈の精神があったからこそです」

枢は優しく微笑み、遥か北の地にそびえ立つ漆黒の山脈を見つめた。


港町ノース・ヴェイルを救い、古都アバランシュを全快させた往診チーム。

しかし、ガルフレイド大陸を侵食する本当の元凶――「寒邪の教皇・ゼノ」との最終決戦に向け、一行の熱き往診の旅は、いよいよ最高潮のクライマックスへと突き進んでいくのだった――!

 第580話をお読みいただき、ありがとうございました。


今回は、古都アバランシュの解放に歓喜する往診チームの前に、寒邪の真の黒幕である『寒邪の教皇・ゼノ』の幻影が現れ、通常の薬や浅い治療が届かない体内の最深部領域「膏肓こうこう」へ直接冷気の毒を打ち込む悪夢の攻撃に対し、枢先生が深部到達の超長鍼と『膏肓』穴への温針術によって病根を一瞬で解毒・排泄させる、東洋医学の奥義を描いた熱い展開をお届けいたしました! 


 さて、今回は作中でガイルさんが不意を突かれ、枢先生が速やかに救命した「膏肓に入った病(慢性の深部疲労・長引く咳や冷え・体内の奥深くの凝りや不調)」の病理に基づき、「冬場の激しい冷え込みや長年の不摂生、あるいは頑固なデスクワークやストレスによって、背中や肩甲骨の裏側(奥深く)が鉄板のように固まって痛む、どれだけマッサージしても奥の凝りが取れない、長引く体調不良や喘息・慢性的な疲労感が抜けない時」に、体内の最も深い聖域(膏肓)へ直接温かな気を通じさせ、蓄積した慢性疲労と深部の冷えをスーッと吹き飛ばしてくれる最高峰の深部解放名穴をお届けします。


 今回ご紹介するのは、背中(肩甲骨の内側)にある、慢性疾患と深部疲労を解き放つ特異穴『膏肓こうこう』です。


場所は、**背中側にあり、第4胸椎棘突起(背骨の上の突起)の下から指4本分外側、ちょうど「肩甲骨の内側のキワ(腕を抱えるように前で組むと、肩甲骨が外に開いて押しやすくなるところ)」**にあります。


東洋医学において「病、膏肓に入る」という言葉があるように、この『膏肓』穴の周辺は、慢性的な疲労や冷え、病気が最も深く潜伏しやすい場所とされています。頑固な背中の張りや長引く不調を抱えている方は、この『膏肓』を押すと、ズーンと胸の奥や体内の深くまで届く特有の響きと痛みを感じます。ここを適切に温め・刺激することで、作中の枢先生が超長鍼で邪気を追い払ったように、体内の最深部に溜まった慢性疲労や冷えが一気に排出され、嘘のように背中と全身が軽やかになります。


ケアする場合は、テニスボールなどを床に置き、背中の『膏肓(肩甲骨の内側)』のあたりに当てて仰向けになり、自分の体重でゆっくりと10秒間圧をかけるか、市販の貼るカイロを背中の肩甲骨の間に1枚貼ってみてください。背中の奥深くからポカポカとした温もりと血流が溢れ出し、ゼノの呪印を打ち破った枢先生たちのように、慢性的な重だるさを吹き飛ばした軽やかで健やかな身体を取り戻すことができますよ。


 次なる第581話は、明日**7月28日(火曜日)のお昼【12:00】**に更新を予定しております。

教皇ゼノの待つ『氷結教皇庁』へ挑む往診チーム! さらなる過酷な極寒の病理とは!? どうぞお楽しみに!

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