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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第六章:過労の覇権と再生の経絡】

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第561話「砕かれた潤いと、システムの強制駆動」

CEOアルスラーンの圧倒的な「燥邪そうじゃ」の暴風に対し、脈を統括する聖鍼『太淵たいえん』を手に対峙する枢先生。哭の影の経絡と共鳴し、いよいよアルスラーンの経絡を潤し、その支配を終わらせるかと思われたその瞬間、ギガワークス本営の「真の狂気」が牙を剥きます。システムの操り人形としてのCEO、そしてその背後に広がる底知れぬ深淵を描写いたします。

 「効率という名の病に蝕まれたその瞳に、いま一度、生命の本来の美しさを映し出しなさい!」


 枢の叫びが、乾ききった鉄の部屋に凛と響き渡った。

彼の指先に握られた聖鍼『太淵』は、彼の内なる「津液(水分)」と「純陽の気」を吸い上げて、まるで深海のような、深く澄み切った深青色の光を放っている。その光は、アルスラーンが放つ、すべてを灰色のチリへと変える黒い燥邪のビームと正面から衝突し、激しい気の火花を散らした。


 「無駄だ、聖鍼師。その鍼がどれほど高名なものであろうと、このタワーの稼働エネルギーは新大陸の全土から吸い上げた生命の総和なのだ。個人の気血が、システム全体の出力に勝てるわけがない!」


 アルスラーンが冷酷に指を突き出すと、背後の魔導配管がさらに激しく明滅し、乾燥の波動が倍増した。

枢の足元からじわじわと水分が奪われ、白い医療着の端がカサカサと音を立てて崩れ始める。喉は灼熱の砂を飲み込んだように張り付き、肺が空気を拒絶して激しく疼いた。


 「 clinical に見て、あんたの言う『システム』ってのは、ただの搾取の積み木細工だ。相棒! 俺の経絡かげを全部お前に預ける! 遠慮なく使い倒しな!」


 「――ええ、哭! あなたの影を、大地の潤いを運ぶ『水路』として使わせてもらいます!」


 哭が自身の両手を地面へと突き立てた。

その瞬間、彼の影がドロリと液体のように溶け出し、激しい熱風を無視して、枢の足元へと一気に伸びて重なった。哭の影は、ただの闇ではない。枢に整えられ、大地の深い水脈(足の少陰腎経)と繋がった「潤いを秘めた影」である。


 枢は哭の影から無限に湧き上がる冷涼な気のサポートを受け、一歩、また一歩と、乾燥の暴風の中をアルスラーンへと向かって歩み進めた。


 「なに……!? 我が燥邪の嵐の中を、なぜ進める!? 貴様たちの肉体は、とっくに干からびて砂に還っているはずだ!」


 「人間の身体は、あなたが思うほど弱くはありません。私たちは傷つけば補い合い、乾けば互いを潤すことができる。一人では干からびる砂漠であっても、手を取り合えば、そこは命が芽吹くオアシスへと変わるのです!」


 枢の全身から、五臓(心・肝・脾・肺・腎)を象徴する五色の気の巡りが噴き出した。

限界を超えて自己を高めた『五行調和ごぎょうちょうわ』の領域。アルスラーンが切り捨てた「無駄な感情や絆」こそが、五臓の気を極限まで活性化させる最強の触媒となっていた。


 「あり得ん……! そんな数値化できない力など、我が効率の計算式には存在しない!」


 アルスラーンが初めて表情を歪め、玉座の横にある「黒いガラスの砂時計」に手を伸ばし、その禁忌のエネルギーを直接自身の肉体へと流し込もうとした。


 「させねえよ! clinical に見て、その動きは『完全な悪手』だ!」


 哭の身体が、枢の背後から影の弾丸となって射出された。

超高速で空間を滑り降りた哭の短剣が、アルスラーンの伸ばした手首を正確に弾き飛ばす。さらにその隙を逃さず、ガストンが満身創痍の身体を奮い立たせ、ボロボロになった盾を投げ捨てて突進した。


 「オラァァァ!! これが俺たちの、生きてる人間の底力だァ!!」


 ガストンの渾身の体当たりが、アルスラーンの分厚い魔導障壁を粉々に粉砕した。

障壁が割れた瞬間、すべての防御を失ったアルスラーンの胸元へ、枢の白銀の影が滑り込む。


 「――『太淵』、天水を以て、その乾いた魂を潤しなさい!」


 枢の手にした聖鍼が、アルスラーンの胸の真ん中にある、全身の気と呼吸を司る最重要穴『膻中だんちゅう』へと、一寸の狂いもなく突き刺さった。


 シュウウウウウ――ッ!!


 聖鍼から溢れ出た清らかな水気が、アルスラーンの体内に流れる「燥邪」を劇的に中和し始める。彼の皮膚に人間の血色が戻り、その瞳に「人間としての感情の揺らぎ」が灯りかけた、まさにその瞬間だった。


 ガガギギギギギギギギギッ!!!!


 タワーの床下、そして背後の鉄壁から、脳を直接かきむしるような、おぞましい機械的なエラー音が鳴り響いた。

アルスラーンの背中に接続されていた数本の太い黒鉄のパイプが、まるで生き物のように蠢き、彼の肉体へ「赤黒い高圧の魔導電流」を容赦なく逆流させ始めたのだ。


 「が、はっ……あ、あァァァァァッ!!」


 アルスラーンが、白目を剥いて激しく痙攣した。彼の口から流れ出たのは血ではなく、凝固したドス黒いオイルのような液体だった。


 「アルスラーン!? 経絡の強制駆動……これは、外部からの上書き書き換え(ハッキング)ですか!?」


 枢は驚愕し、咄嗟に鍼を引き抜こうとしたが、アルスラーンの肉体そのものが強力な磁力を帯びたように、鍼が吸い付いて離れない。


 『――エラー。CEO端末「アルスラーン」に機能不全を検知。自律思考回路の汚染と判断。これより、本営ホストシステム「マザー・ギガ」による強制オーバーライドを実行する』


 天井のスピーカーから響いたのは、アルスラーンの声ではない。

感情を完全に削ぎ落とした、地鳴りのように冷たい「巨大なシステムそのものの声」だった。


 「なんだ、この音は……!? 地下から、とんでもねえ『邪気のカタマリ』が上がってきやがるぞ!」


 ガストンが地面に斧を突き立て、押し寄せる凄まじい震動に耐えながら絶叫した。


 『システム防衛のため、CEO端末を一時回収。地下深部プラント・セクター4へ強制転移デポを実行する』


 「なっ……逃げる気か!」


 哭が短剣を構えて飛びかかったが、アルスラーンの足元の床が急激に開き、彼を玉座ごと奈落の底へと引きずり落とした。それと同時に、最上階の床全体が、まるで巨大な乾燥機のように急速に赤黒く加熱され、爆発的な「熱風」を吹き上げ始めたのだ。


 「相棒、危ねえ! ここはもう崩壊する! clinical に見て、一旦引くしかねえ!」


 哭が枢の身体を抱き抱え、巨大な影の盾を展開して爆風を防ぐ。

ガストンもまた、ハクとリナが乗る馬車をその剛腕で庇いながら、崩落する天井のガレキを叩き落とした。


 「枢先生! 昇降機が破壊されました! このままではタワーごと、地下の巨大な空洞に真っ逆さまです!」


 ハクの悲鳴のような叫び声が響く。

見下ろすと、床が抜け落ちたタワーの底には、これまでの「新大陸」の常識を覆す、どこまでも広大な**『地下巨大重工業都市ギガ・アンダーグラウンド』**の金属的な輝きが、不気味に広がっていた。

地上に見えていた『黒鉄の城塞』は、この地下に眠る巨大な「地脈搾取システム」のほんの吸気口エントツに過ぎなかったのだ。


 「ガストンさん、哭! 下へ……地下へ向かって、馬車ごと滑り降ります! 彼らが拉致したアルスラーンの経絡を完全に焼き切らせるわけにはいきません。それに、この新大陸を蝕む本当の『病魔の巣窟』は、あの地下深くにある!」


 枢の白銀の瞳は、崩落する瓦礫の隙間から、地下深部を流れるドス黒い気の奔流をまっすぐに見据えていた。


 「へっ、面白ぇ。奈落の底がお望みなら、どこまでもお伴してやるぜ、相棒!」


 哭が不敵に笑い、影のロープを天井の梁に引っ掛けて、馬車の落下軌道を制御する。

往診チームを乗せた馬車は、崩れ落ちる黒鉄の城塞と共に、すべてを非効率として使い潰す「本営の真の暗部」――暗黒の地下世界へと、真っ逆さまに突入していくのだった。

 第561話をお読みいただき、ありがとうございました。


今回は、CEOアルスラーンに勝利するかと思われた瞬間、ギガワークスの「真のホストシステム」が暴走し、彼を操り人形として強制的に地下深部へと回収、往診チームをさらなる深淵へと引きずり込む、衝撃の大どんでん返しを描写いたしました!


地上にそびえ立つ『黒鉄の城塞』は、実は巨大な氷山の一角に過ぎず、新大陸のエネルギーを貪る本当の「地殻病理」は、広大な地下都市『ギガ・アンダーグラウンド』に存在していたのです。ここから、さらにスケールアップした長期戦が幕を開けます。


 さて、今回は作中のアルスラーンのように「外部からの過酷なストレスや、システムの暴走によって急激に脳の血流(自律神経)が乱れ、頭が割れるように痛んだり、胸が激しく動悸してパニック状態に陥ったりした時」に、頭部の気血を劇的に引き下げて脳をクールダウンさせ、強制的に深いリラックス状態(システムの強制終了とリセット)をもたらしてくれる頭の最高名穴をお届けします。


 今回ご紹介するのは、頭のてっぺんにある、すべての気の交差点『百会ひゃくえ』です。

場所は、**頭頂部にあり、左右の耳の穴を結んだ線と、鼻筋から頭の真ん中を通る線が、頭のてっぺんで交わるところ(少しペコッとくぼんでいるところ)**にあります。


東洋医学において、ここは「督脈とくみゃく」の上にあり、全身のあらゆる経絡(百の気)が交わる、自律神経調整の最重要拠点です。過労やストレスで頭がオーバーヒート(強制駆動)している時は、この『百会』の周囲に血が昇り、非常に硬く、熱を持っています。ここを適切に刺激することで、作中でシステムが暴走したアルスラーンを鎮めようとしたように、脳の過剰な興奮(上実下虚)を劇的に鎮め、全身の気血を本来の穏やかな巡りへと戻すことができます。


ケアする場合は、両手の中指の腹を重ねてツボに当て、頭の中心に向かって、心地よい「ズーン」とする響きを感じるまで、ゆっくり5秒間押し込むのを5回ほど繰り返してみてください。息を吐きながら、体の余分な熱が足裏へ抜けていくイメージで押すと効果は絶大で、暗黒の地下世界へと挑む枢先生たちのように、いかなるパニックや極限状態にあっても、冷静沈着な絶対的クリアな思考と心身の平穏を取り戻すことができますよ。


 次なる第562話は、本日**7月18日(土曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております。地下世界に不時着した枢先生たちの前に現れた、かつてない「地下の防衛組織」とは!? どうぞお楽しみに!

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