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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

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第489話「嵐の大航海!荒れ狂う魔導渦と吐き気を鎮める内関」

蒸気都市の熱狂を完全に調律し、魔導船は新たなる大陸を目指す「大航海編」へと突入しました!

火曜日の夜、一日の仕事を終えてホッと一息つくリラックスタイムに、往診チームを待ち受けていたのは、見渡す限りの大海洋で発生した、空間の歪みを伴う不気味な「巨大魔導渦」。

船を激しく揺さぶる荒波と魔力の乱高下によって、チーム全員がかつてないほどの激しい「船酔い(水毒の暴走)」と「激しい眩暈・嘔吐感」に襲われます。

足元が定まらず全滅の危機に瀕する中、新メンバー・ネネの野生の調合と、聖鍼師・枢先生の白銀の長鍼が、胃の腑の底から込み上げる嵐を完璧な「凪」へと調律します!


「大自然の荒波が命のバランスを崩し、皆さんの気血エネルギーを乱そうというのなら、私の一鍼が、その内なる嵐を根本から鎮めてみせましょう。ハクさん、ネネさん、内臓の水分を正しく巡らせる調合を! 大航海編、最初の緊急往診を開始します!」


21時、火曜夜の更新。世界往診紀行編・大航海編開幕、第489話!

一日の終わりのゆったりとした夜の時間に、体の中の余分な水分と濁気がスーッと引き、心身が芯から深く落ち着く至高の鍼灸治療劇をお楽しみください!

 ザザーーッ、ドシャァァン!!!

 見渡す限りの大海洋。魔導船の行く手を阻むように現れたのは、不気味な紫色の雷雲を纏い、海面を激しく狂わせる巨大な「魔導渦まどううず」だった。

 船体は前後左右に激しく傾ぎ、凄まじいG(重力)の乱高下と、空間の魔力濃度の急変が、往診チームの肉体を容赦なく直撃する。


「う、うぷっ……。お腹の中が、右に左にぐわんぐわん回るよ……。天井と床がひっくり返ったみたいで、もう一歩も動けない……っ」

 ネネが甲板の柱に必死にしがみつき、涙目で自分の胃のあたりを押さえてうずくまった。野生の勘で危機を察知する彼女にとって、空間そのものが歪むこの揺れは、あまりにも過酷なダメージだった。


「……クソ、不覚だ。頭が割れるように揺れて……胃の底から、酸っぱいものが込み上げてきやがる……っ」

あの強靭な肉体を誇るガストンでさえ、大盾を床に投げ出し、両手を甲板について激しく嘔吐感を堪えている。


「魔力の乱れが……三半規管のリンパ液を異常に沸騰させています……。吐き気で……結界の術式を構築するどころか、目を開けていることすら……っ」

シオンが魔導書を胸に抱きしめたまま、真っ白な顔で激しく息を乱し、甲板をゴロゴロと転がりそうになっていた。リナもまた、激しい眩暈で視界が完全に二重、三重にブレてしまい、魔導銃の重さに耐えかねて膝をついている。


「皆さん、無理に立とうとしないでください。これは急激な空間の揺れ(気機の乱れ)によって、体内の水分代謝が完全に崩壊した『水毒すいどく』の急性症状です。胃の気が上へと逆流し、精神を安定させる『心包しんぽう』の経絡が完全にパニックを起こしています」

 船体が垂直に近い角度まで傾き、激しい水しぶきが甲板を洗う極限の状況下。聖鍼師・枢だけは、まるで重力そのものを支配しているかのように、一歩もブレずに真っ直ぐに立ち続けていた。


 彼の十指の間に、荒波のしぶきを反射して美しく煌めく、一本の白銀の長鍼が滑らかに引き抜かれる。


「ハクさん、ネネさん。胃の水分を正しく下へと巡らせ、眩暈を止める『五苓中和散ごれいちゅうわさん』の準備を。……その前に、私が皆さんの内臓の暴風雨を、その場ですべて静めます!」


「フん、船酔いごときに遅れをとるなよ。ネネ、大樹海の『乾燥のウコン』の根を細かく砕け! 私の風の術式で一気に水分を飛ばし、体内の泥水を乾燥させてやる!」


「う、うん……っ! みんなが吐いちゃう前に、ウチらの薬草で絶対にお腹を落ち着かせるんだから……っ!」

ネネが吐き気を必死に堪えながら、執念ですり鉢を操り、ハクの風とともにピリッとした大地の香気を甲板へと散布し始める。船内に漂う不気味な魔力の臭気がわずかに和らいだ。


「では皆さん、手首の内側を私に見せてください」


 枢の鋭い視線が、リナ、シオン、ガストンの手首の内側へと注がれた。

手のひら側の手首のしわから、肘に向かって指幅2本分上がったところ。2本の太い腱(橈側手根屈筋腱と長掌筋腱)のちょうど真ん中に位置する、胃と心を結ぶ最大の防波堤。


 チクリ。


「手の厥陰心包経の絡穴であり、八脈交会穴――内関ないかんを深く穿ちます!」


 枢の鍼先が、完璧な深度で3人の内関の奥へと滑り込んだ。

鍼が経穴の核心を射抜いた瞬間、ガストンたちの体内を「スーッ……」と、胸から胃の底に向けて、冷たい一陣の清風が吹き抜けるような劇的な感覚が突き抜けた。


「内関は、心臓を包む『心包経』の重要穴であり、胃の逆流するエネルギーを強力に引き下げて、激しい吐き気や嘔吐感をその場でピタッと止める最高峰の特効穴です! 自律神経の乱れを劇的に調律し、三半規管の狂いを戻すことで、嵐のなかの船酔いや激しい眩暈、胃のつかえを完璧な『凪』へと戻します!」


「――っ! ふはぁぁぁ……! 胸の、あの嫌なムカムカが……一瞬で消え去ったわ……! 視界のブレが止まって、世界が真っ直ぐに見える!」

 リナの瞳に、冷徹な光が完全に戻った。彼女は魔導銃のボルトを軽快に引き、魔導渦の「コア」である嵐の目を鋭く見据える。


「胃の底が、ストンと落ち着きました……。これなら、船全体を包む最高級の『絶対障壁』を展開できます!」

シオンの魔導書から、荒れ狂う大波をすべて弾き返す、巨大な純白の半球形結界が魔導船を完全に包み込んだ。船体の激しい揺れが、嘘のようにピタッと静止する。


「ガハハハハ! 腕に力が戻ってきたぜ! ――ネネちゃん、ハクの兄ちゃん、あの嵐のど真ん中に特大のやつ、ぶち込んでやりな!」

ガストンが完全復活の咆哮とともに舵輪を力強く掴み直し、凄まじい操船技術で魔導渦の核心へと船を進めていく。


「今だよ、ネネ! 命を脅かす歪んだ海の渦を、清らかな調和へと還すぞ!」


「いっけえええーーーっ! ウチらの特製『五苓中和湯』! 嵐の目に向かって、特大サイズで飛んでいけーーっっ!!」

 ハクが天空へと美しく跳躍してリナの銃弾に中和薬液を纏わせ、放たれた一撃が魔導渦の中心核へと正確に着弾した。


 ドガァァァァン、シュウウウウウウウッッッ!!!


 激しく渦巻いていた紫色の魔導渦は、内側から清らかな水蒸気となって完全に霧散し、大海洋には、どこまでも美しく穏やかな、月光に照らされる「本物の凪の海」が広がったのだった。


「ふぅ……。実に見事な大往診でしたね、皆さん。お腹の嵐が収まれば、いかなる大航海も恐れることはありません」

 枢は白銀の長鍼を鮮やかに消毒し、いつもの穏やかな微笑みを仲間たちへと向けた。


「へへ、先生の『内関』って本当に不思議だね! 手首をちょっとツンってされただけなのに、お腹の中のジェットコースターが急に止まっちゃった!」

ネネが自分の手首を不思議そうに眺めながら、満面の笑顔を見せる。


「当然だ。内関は胃の気を下げる要。ふん、大航海のスタートとしては上出来の往診だったな」

ハクが満足そうに不敵な笑みを浮かべ、往診鞄のボトルを整理した。


 魔導渦を突破し、月明かりの穏やかな海を滑るように進む魔導船。

 しかし、救われた安堵に包まれる往診チームの前に、水平線の彼方から、怪しく緑色の不気味な光を放つ、漂流する巨大な「幽霊病院船」が、静かにその姿を現そうとしていた――。

 第489話「嵐の大航海!荒れ狂う魔導渦と吐き気を鎮める内関」を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


 新章・大航海編の開幕として、魔導渦による激しい空間の歪みと「猛烈な船酔い・吐き気・眩暈(水毒の暴走)」に苦しむ仲間たちを、ガストンさんの超絶操船、シオンさんの絶対障壁、リナさんの精密射撃、そしてハクさんとネネちゃんの「乾燥ウコン」の中和新薬から、枢先生の「内関ないかん」による劇的な嘔吐鎮静の一刺しによって救い出す、最高に爽快な新章第1回、お楽しみいただけましたでしょうか!


 移動の過酷さや自律神経の乱れによって、胃の底から込み上げる不快な症状を、手首にある重要な「防波堤のスイッチ」を入れることで一瞬にして穏やかな凪へと戻してみせる枢先生のプロとしての圧倒的な臨床能力が、美しい大海洋の夜景の中で鮮やかに描き出されましたね。


 今回は、急激な乗り物酔いやストレス、気圧の変化によって生じた激しい吐き気、眩暈、胃のムカムカを根本から解消するために枢先生が用いた、手首の内側にある非常に有名な名穴、内関ないかんの効能について解説させていただきます。


 東洋医学において「内関」は、手の厥陰心包経けついんしんぽうけいに属し、すべての内臓の通り道を統括する『陰維脈いんいまく』とも交わる、消化器・自律神経系最高峰の特効穴です。


 ここは、胃の逆流するエネルギー(胃気上逆)を強力に引き下げ、心臓や精神を包む「心包」の興奮を鎮めることで、突発的な乗り物酔い、つわり、ストレス性の胃痛、激しい嘔吐感、さらには動悸や不眠などをその場で劇的に緩和する素晴らしい効果を持っています。


 現代における旅行時の乗り物酔い対策のケアや、精神的なプレッシャーによる胃の不調の更生、自律神経の安定などにも臨床で最優先される、プロの鍼灸師にとって最も信頼の厚い名穴の一つです。この的確な一刺しで、仲間たちの胃腸を一瞬で穏やかな凪へと戻してみせる枢先生の臨床の冴えには、今回も深く感動させられましたね。


 見事に最初の難所を突破し、目の前に現れた不気味な漂流幽霊病院船へと立ち向かう往診チーム。


次なる大航海編のさらなる深部、第490話は、明日水曜日の【12:00】に更新予定です。

ホッと一息つく大切なひとときに、往診チームが未知の幽霊船で繰り広げる、新たなる知恵と感動の治療バトルの続きを、ぜひお楽しみに!

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