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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

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第484話「氷結魔獣の猛吹雪!凍える内臓と胃気を温める中脘」

雲海を割って現れた、旧ギルドの負の遺産「氷結魔獣レヴィア・ゴーレム」。

霊峰の中腹で繰り広げられる激闘の中、魔獣が放つ絶対零度の吹雪は、周囲の空間だけでなく、往診チームの肉体をも芯から凍りつかせていきます。

極限の寒冷ストレスによって引き起こされる、急激な「胃の激痛」と「下痢(裏寒)」。

お腹を抱えて動けなくなる仲間たちを前に、新メンバー・ネネの野生の調合と、聖鍼師・枢先生の白銀の長鍼が、冷え切った内臓に劇的な命の灯火を点します!


「大自然の寒気を悪用し、人の内臓おなかのぬくもりまで奪おうというのなら、私の一鍼が、その凍えた五臓六腑を芯から温め直しましょう。ハクさん、ネネさん、胃を保護する温熱薬の準備を! ガストン、シオンさん、リナさん、皆さんの冷え切ったお腹、この一鍼で今すぐ真夏の太陽のように熱くしてみせます。霊峰中腹戦、往診を開始します!」


12時、日曜昼の更新。世界往診紀行編・不老の霊峰編中編、第484話!

週末の日曜お昼休みのひとときに、冷えた身体が芯からぽかぽかと温まる、大迫力のバトルと至高の温熱治療劇をお楽しみください!

 ゴゴゴゴゴ……!

 地鳴りのような轟音とともに、氷結魔獣がその巨大な氷の腕を振り下ろした。刹那、魔導船の甲板を激しい吹雪が吹き荒れ、視界は一瞬で真っ白な極寒の世界へと変貌する。


「う、うわああっ! 寒い、寒いよ……っ! お腹の奥が、まるで氷を詰め込まれたみたいにキリキリ痛む……!」

 ネネがすり鉢を抱えたまま甲板にうずくまり、小さな身体を丸めて激しくお腹を押さえた。その顔からは完全に血の気が引き、額からは冷や汗が流れ落ちている。


「……クソッ、これはただの冷気じゃねえ。人間の皮膚を通り抜けて、直接『内臓』を凍らせにきてやがる……っ。お腹が、お腹が捩じ切れるように痛ぇ……!」

 ガストンが大盾を床に突き立て、強靭な肉体を極限まで縮こまらせて呻いた。あまりの激痛に、自慢の剛腕にも力が入らない。


「胃の経絡(胃経)が完全に凍結し、消化器の動きが停止しています……。くっ、吐き気と腹痛で……魔法の詠唱が、まともに紡げない……!」

シオンが魔導書を落とし、両手でお腹を抱えながら甲板に膝をついた。


「皆さん、その場から動かないでください。これは強力な『寒邪かんじゃ』が直接、五臓六腑の『脾胃ひい』を直撃したことによる『裏寒りかん』の急性症状です。胃腸の血管が急激に収縮し、命のエネルギー源である『胃気いき』が絶えかけています」

 絶対零度の吹雪が吹き荒れる中、聖鍼師・枢の白衣だけは、周囲の氷を融かすほどの圧倒的な黄金の陽気を放ち続けていた。彼の十指の間に、眩い光を放つ一本の太い白銀の長鍼が握られる。


「ハクさん、ネネさん。胃の粘膜を保護し、寒邪を内側から追い出す『温中散おんちゅうさん』の調合を。……その前に、私が皆さんの胃の底に、消えない『太陽の火種』を点します」


「フん、言われずとも分かっている。ネネ、痛む腹をさすりながらでいい、大樹海の『陽光ニッケイ(シナモン)』の皮をすり鉢へ入れろ! 私が熱の術式で一気に揮発させてやる!」


「う、うん……! みんなのお腹、ウチらの薬草で絶対に温め直すんだから……っ!」

ネネが執念で起き上がり、ハクの指示のもとで猛烈にすり鉢を回し始める。甲板の上に、ツンと甘く芳醇な、身体を芯から震わせる温熱の香気が漂い始めた。


「では皆さん、お腹の力を抜いて、大きく息を吐いてください」


 枢の長鍼が、リナに支えられたシオン、そしてガストンの腹部へと次々に滑り込んだ。

みぞおちとおへそを結んだ直線のちょうど真ん中――すべての腑(臓器)の気が集まる、体内最大のエネルギーの交差点。


 ズン……!!!


「任脈の経穴であり、胃の募穴、そして腑会ふえ――中脘ちゅうかんを深く穿ちます!」


 枢の鍼が完璧な深度で中脘の奥へと到達した瞬間、ガストンたちの体内から「ゴロゴロッ!」と大きな音が響き渡った。


「中脘は、胃の機能を直接コントロールする最大の拠点であり、六つの腑(消化器系すべて)のエネルギーを統括する最高峰の名穴です! この一鍼により、凍りついていた胃腸の血管を一気に拡張させ、胃の陽気を大爆発させて寒邪を完全に駆逐します!」


「――ハァァァァァッッ!!!」


 ガストンの口から、白い凍てついた息が激しく吐き出され、次の瞬間、彼のお腹の奥からカッと燃え上がるような凄まじい熱気が湧き上がった。


「おおおお……っ! 治まった……胃の激痛が、一瞬で消え去りやがった! それどころか、腹の底に太陽を呑み込んだみたいに、エネルギーが溢れてくるぜ!!」

ガストンが復活の咆哮とともに大盾を掲げ、再び前線へと飛び出していく。


「吐き気が完全に消えました……! お腹が、すごくポカポカして温かいです!」

シオンの瞳に光が戻り、魔導書から魔獣の吹雪を完全に相殺する、巨大な紅蓮の炎壁が展開された。


「ターゲットをロック。――その大きな氷の心臓、撃ち抜くわ!」

リナが放った精密な魔導弾が、魔獣の胸の結界を粉砕し、核を剥き出しにする。


「今だよ! ウチらの特製『陽光ニッケイ湯』! これをあの魔獣の核にぶち込んで、氷を全部お湯に変えちゃうんだから!」

ハクが天空へと跳躍して魔獣の頭上を取り、ネネがすり鉢から放った超高熱の中和薬液が、魔獣の氷の身体へと一気に着弾した。


 バリバリバリ、ドシャァァァン!!!


 絶対零度の巨体を誇っていた氷結魔獣は、内側から激しく融解し、ただの温かい水蒸気となって雲海の中へと消え去っていったのだった。


「ふぅ……。実に見事な大往診でしたね、皆さん。お腹の冷えは、万病の元。これで皆さんの五臓六腑も、完全に調和を取り戻しましたよ」

 枢は白銀の長鍼を鮮やかに消毒し、いつもの穏やかな微笑みを仲間たちへと向けた。


「へへ、先生の『中脘』って本当にすごいね! 触っただけで、お腹の中にストーブが入ったみたいに温かくなっちゃった!」

ネネが自分のふっくらとしたお腹を叩きながら、満面の笑顔を見せる。


「当然だ。胃気いきを制する者は、いかなる過酷な環境をも制する。ふん、今回も完璧な治療劇だったな」

ハクが満足そうに不敵な笑みを浮かべ、往診鞄のボトルを整理した。


 魔獣を退け、さらに霊峰を登る往診チーム。しかし、雲海のさらに上、ついに姿を現した霊峰の山頂には、怪しく紫色の光を放つ、旧ギルドの最高機密「不老の霊床」がその巨大な姿を現そうとしていた――。

 第484話「氷結魔獣の猛吹雪!凍える内臓と胃気が温まる中脘」を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


 不老の霊峰編の中編として、極限の冷気(寒邪)によって生じた急激な「胃の激痛・裏寒」に苦しむ仲間たちを、ガストンさんの前線復帰、シオンさんの紅蓮防壁、リナさんの精密剥離、そしてハクさんとネネちゃんの「陽光ニッケイ」の温熱新薬から、枢先生の「中脘ちゅうかん」による劇的な内臓加温の一刺しによって救い出す、最高に熱い治療バトル、お楽しみいただけましたでしょうか!


 外からの攻撃を防ぐだけでなく、過酷な環境によってダメージを受けた内臓の機能を、経絡のスイッチ一つで劇的に蘇生させる枢先生のプロとしての圧倒的な臨床能力が、大迫力の映像美の中で鮮やかに描き出されましたね。


 今回は、急激な冷えやストレスによって生じた胃の激痛、腹痛、吐き気を根本から解消するために枢先生が用いた、お腹の非常に重要な名穴、中脘ちゅうかんの効能について解説させていただきます。


 東洋医学において「中脘」は、任脈にんみゃくに属し、胃の「募穴ぼけつ」であり、全ての腑のエネルギーが集まる「腑会ふえ」でもある、消化器系最高峰の聖穴です。


 ここは、冷えやストレスによってギチギチに緊張してしまった胃腸の平滑筋を一きに緩め、胃の血液循環を爆発的に高めることで、急性の胃痛、胃痙攣、腹 angularな痛み、嘔吐、食欲不振、さらには慢性的な胃炎や消化不良などをその場で劇的に緩和する素晴らしい効果を持っています。


 現代における胃の不調のケアや、ストレス性の胃痛の更生、胃腸の免疫力向上などにも臨床で最優先される、プロの鍼灸師にとって最も信頼の厚い名穴の一つです。この的確な一刺しで、仲間たちの胃腸を一瞬で真夏の太陽のように温めてみせる枢先生の臨床の冴えには、今回も深く感動させられましたね。


 見事に氷結魔獣を打ち破り、ついに霊峰の山頂に眠る旧ギルドの最高機密「不老の霊床」へと肉薄する往診チーム。


次なるマルセイユ編ならぬ霊峰編の大クライマックス、第485話は、本日【21:00】に更新予定です。

一日の終わりのリラックスタイムに、往診チームが命の根源の謎に挑む、新たなる知恵と感動の決戦完結回を、ぜひお楽しみに!

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