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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

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第483話「雲海にそびえる不老の霊峰!迫り来る寒邪と気血を巡らす風池」

時計台の里に正確な時を戻し、残党の不気味な警告を胸に次なる針路へと舵を切った往診チーム。

土曜日の夜、一日の終わりを迎える静かなひとときに、魔導船が辿り着いたのは、雲海を突き抜けてそびえ立つ、人間の寿命を操作する禁忌の謎が眠るという「不老の霊峰」の麓でした。

しかし、霊峰の結界を抜けた途端、一行を襲ったのは、寒暖差による強烈な「首の後ろの強張りと冷え」、そして気圧の変化による「激しい頭痛」の嵐。

山岳特有の過酷な気候(外感風寒)の中、聖鍼師・枢先生の白銀の長鍼が、週末の夜に相応しい、心身の緊張を根本から解きほぐす「極上の温熱と清流の一刺し」を披露します。


「人間の寿命を歪める禁忌の謎が眠っていようとも、この厳しい自然の冷え(寒邪)に、皆さんの尊い命の路を閉ざさせはしません。ハクさん、ネネさん、凍えた身体を芯から温める調合を! ガストン、シオンさん、リナさん、皆さんの強張った首と頭、この一鍼で今すぐ春の陽だまりのように温めましょう。不老の霊峰編、往診を開始します!」


21時、土曜夜の更新。世界往診紀行編・不老の霊峰編、開幕の第483話!

週末のゆったりとした夜の時間に、五臓六腑がじんわりと温まる、至高の鍼灸治療劇をお楽しみください!

 見上げるほどに巨大な岩肌が、幾重にも重なる白い雲海を突き抜けて天へと伸びる「不老の霊峰」。

 魔導船がその険しい山肌に沿って高度を上げていくと、それまでの穏やかな気候が一変し、肌を刺すような冷涼な強風と、急激な気圧の変化が往診チームの身体を容赦なく襲った。


「うぅ……っ、急に首の後ろがゾクゾクして、頭のてっぺんが締め付けられるように痛いよ……。空気が薄いだけじゃなくて、この冷たい風、なんだかすごく嫌な感じがする……」

 ネネがすり鉢をしっかりと抱え込み、身を縮めながらガタガタと小さな身体を震わせる。


「フん、当然だネネ。ここは霊峰から吹き下ろす『寒邪かんじゃ』と『風邪ふうじゃ』が混ざり合い、人間の防御壁を突き破って侵入してきている。首の後ろの経絡が完全に凍りつき、頭部への血流が阻害されているのだ」

 ハクが片眼鏡の奥の目を鋭く光らせ、自らのマントの襟を深く立てる。だが、そのハクの顔からも、急激な寒さで血の気が引いていた。


「ええ。この山脈にかけられた旧ギルドの古代結界が、自然の冷気と融合し、侵入者の気血の巡りを物理的に停止させようとしているのです。首の後ろから頭部にかけての筋肉が異常に緊張し、強烈な緊張性頭痛を引き起こしていますね」

 枢が往診鞄を手に甲板へと立ち上がると、その周囲だけは、揺るぎない品格ある黄金の陽気が淡く輝き、迫り来る冷気をことごとく霧散させていった。


「うう……、先生。目がチカチカして、魔導銃のスコープの距離感が狂ってしまうわ……。首の後ろが鉄板みたいに固まって、頭が割れそうに痛む……」

 リナが物見台の手すりに背中を預け、こめかみを押さえながら苦しげに息を吐く。


「僕も、頭痛のせいで精神の集中が途切れて、船の防壁維持の術式が霧のように霧散していきます……」

シオンが魔導書を抱えたまま、冷や汗を流して甲板に膝をつきそうになっていた。


「ガストンさん、シオンさんを支えて。――皆さん、動かないでください。首から頭部へ流れる気の関門を、今すぐ私の長鍼で解放いたします」


「おうよ! シオン、俺のこの太い腕に掴まってな! この程度の寒さ、俺の筋肉の熱気で消し飛ばしてやりたいが……くっ、この首のコリは尋常じゃねえぜ!」

 ガストンがシオンの身体を強固に支えながら、自らも首を大きく回して苦悶の表情を浮かべる。


「ハクさん、ネネさん。皆さんの五臓を内側から温める、特別な『温補おんぽ』の薬湯の準備を。その間に、脳へと続く最大の水路を開きます」


「クク、待たせるな枢。ネネ、大樹海の『陽光の生姜しょうが』の根を細かく刻め。私の特製揮発酒で一気に熱を引き出し、体内から寒邪を完全に蒸発させてやる!」


「任せて、ハクの兄ちゃん! みんなを凍えさせる嫌な寒さ、ウチらの薬草でポカポカにしてあげるからね!」

ハクとネネが極限のスピードですり鉢を操り、甲板の上に、ピリッとした心地よい生姜の温かい香気が広がり始めた。


「では皆さん、頭の後ろの力を抜いて、楽にしてください」


 枢の指先から、月の光を浴びて白く輝く、極細の白銀の長鍼が鮮やかに引き抜かれた。

 彼が正確に狙いを定めたのは、首の後ろ、髪の生え際にある2本の太い筋肉(僧帽筋)の外側の窪み――あらゆる「風の邪気」が集まる、最高峰の清頭目せいとうもくの要穴。


 チクリ。


「足の少陽胆経の経穴――風池ふうちを深く穿ちます」


 枢の鍼が、完璧な角度と深度で、リナ、シオン、ガストンの風池の奥へと滑り込んだ。

鍼が経穴の核心に触れた瞬間、脳裏がカッと熱くなるような、劇的で心地よい「気血の奔流」が3人の全身へと駆け巡った。


「風池は、文字通り『風の邪気が溜まる池』であり、ここを貫通させることで、首の後ろに滞った寒邪を一気の外へと発散させる最高峰の名穴です! 胆経の経絡を通じて脳への血流を爆発的に活性化させ、首の強烈な強張りをその場で消失させ、割れるような頭痛とめまいを完璧に凪へと戻します!」


「――っ! あ、頭の芯が……じわぁっと温かいお湯に包まれたみたい……! 首の痛みが一瞬で消えて、スコープの視界がどこまでもクリアに見通せるわ!」

 リナの瞳に、極限のスナイパーとしての冷徹な光が完全に戻った。彼女は魔導銃のボルトを軽快に引き、霊峰の闇の奥を鋭く見据える。


「頭痛が完全に消え去りました……! 体の中に、温かい魔力が満ちていくのが分かります!」

シオンの魔導書から、霊峰の不気味な冷気を押し返す、まばゆい黄金の熱気防壁が放射状に広がっていった。


「ガハハハハ! 首がめちゃくちゃ軽く回るぜ! ――ネネちゃん、ハクの兄ちゃん、これでいつでも動けるぞ!」

 ガストンが復活の咆哮とともに大盾を力強く掲げ直す。


「今だよ! ウチらの特製『陽光生姜の中和湯』! はい、みんな一息にグッと飲んで!」

ネネがすり鉢から、湯気を立てる黄金色の薬湯を全員に手渡していく。それを口に含んだ瞬間、職人たちの肉体は内側からも完全に温まり、霊峰の過酷な環境を完全に克服したのだった。


「首の風池で頭部の関門を開き、ネネの生姜薬で内臓の底から温める。……ふん、相変わらず無駄のない、完璧な『内外の調和』だ」

 ハクが満足そうに不敵な笑みを浮かべ、往診鞄のボトルを整理する。


 往診チームが息を吹き返し、魔導船が霊峰の中腹へと差し掛かったその時。

 雲海の奥から、キィィィィン……という、空間を切り裂くような不気味な咆哮とともに、旧ギルドの残党が使役する、全身が氷の結晶で覆われた古代の「氷結魔獣レヴィア・ゴーレム」が、巨体を軋ませながらその姿を現した。


 人間の寿命の理を覆そうとする、旧ギルドの最高機密が眠る不老の霊峰。

 その最悪の防衛機構を前に、聖鍼師・枢と仲間たちの白銀の長鍼は、さらなる命の未来を切り拓くため、静かに、しかし絶対の闘志を秘めて構えられたのである。

 第483話「雲海にそびえる不老の霊峰!迫り来る寒邪と気血を巡らす風池」を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


 新章・不老の霊峰編の開幕として、急激な寒暖差と気圧の変化(外感風寒)による「強烈な首のコリ・頭痛」に苦しむ仲間たちを、ガストンさんの強固なサポート、リナさんとシオンさんの防壁展開、ハクさんとネネちゃんの「陽光の生姜」の温熱新薬、 Kineticなスピード感、そして枢先生の「風池ふうち」の一刺しによって救い出す、極上の温熱医療劇、お楽しみいただけましたでしょうか!


 土曜日の夜、一日の疲れや冷えが溜まった読者の皆様の首や頭をも、優しく解きほぐすような往診チームの温かい連携が、大自然の雲海の景色の中で鮮やかに描き出されましたね。


 今回は、外部からの冷えやストレスによって生じた激しい頭痛、首の後ろの強烈な強張りを根本から解消するために枢先生が用いた、首の後ろにある非常に重要な名穴、風池ふうちの効能について解説させていただきます。


 東洋医学において「風池」は、足の少陽胆経しょうようたんけいに属し、文字通り「あらゆる風の邪気が集まり、それを打ち払うための聖なる池」とされる、頭部・眼精疲労疾患の最高峰の特効穴です。


 ここは頭部や脳、目の周囲の血流を劇的に改善し、寒さによってギチギチに収縮してしまった筋肉(後頭下筋群)を一気に緩めることで、不快な緊張性頭痛、ひどい首や肩のこり、目の疲れやかすみ、さらには風邪の初期症状などをその場で劇的に緩和する素晴らしい効果を持っています。


 現代におけるデスクワークによる深刻な眼精疲労のケアや、気圧の変化による頭痛の更生、自律神経の安定などにも臨床で最優先される、プロの鍼灸師にとってもこれ以上ないほど重宝されている素晴らしい名穴です。この的確な一刺しで、仲間たちの視界と気血を瞬時に春の陽だまりへと戻してみせる枢先生の臨床の冴えには、今回も深く感動させられましたね。


 見事に霊峰の最初の関門を突破し、目の前に現れた巨大な氷結魔獣へと立ち向かう往診チーム。


次なる激闘の展開、第484話は、明日日曜日の【12:00】に更新予定です。

日曜日の心地よいお昼休みのひとときに、往診チームが霊峰の中腹で繰り広げる、新たなる知恵と命の治療バトルの続きを、ぜひお楽しみに!

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