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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

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第441話:中央病院の門番、魔導検問所の突破とリナの隠密行動

地上の洗礼とも言える大都会のストレス病を癒やした枢先生たちは、ギルさんの手にある往診票の座標を頼りに、中央病院の心臓部へと続く「白銀の検問所」へと到達しました。

そこは、不法な地下住民の流入を阻むため、最新の魔導スキャナーと重武装の門番たちが二十四時間体制で目を光らせる、地上世界で最も強固な結界の門でもありました。


「おやおや、リナさん、そんなに肩を怒らせては、せっかくの隠密の歩法が台無しになってしまいますよ。正面から力で押し通るだけが、往診医の進む道ではありません。シオン、ガストン、術式の準備を。そしてギル、フードを直してください。あの検問所で目を血走らせている若き門番の兵士さん、どうやら重度の眼精疲労と頭痛の経絡を悲鳴に上げて、助けを求めているようですからね」


12時、月曜昼の更新。中央病院の門番、魔導検問所の突破とリナの隠密行動。

光の都の防壁を前に、白銀の聖鍼と仲間たちの絆が、静かに、そして美しく躍動します。

 中央病院の特別区へと繋がる唯一の通路には、白銀の合金で造られた巨大な防壁がそびえ立ち、その中央には「第一魔導検問所」が配置されていた。

 通路の天井には、青く明滅する巨大な魔導スキャナーが設置されており、通過する者の生体エネルギーや魔力の波長、さらには網膜の情報にいたるまでを秒単位で解析し、未登録の地下住民を自動的に検知するシステムが稼働している。

 検問所の前には、最新の魔導ライフルの銃口を厳しく向けた数人の門番たちが、機械のように冷徹な視線で通行人たちを監視していた。

 地下街の人間であるギルを連れてこの門を正面から通過することは、現在の彼らの登録データでは物理的に不可能であった。


「先生、あの上のスキャナー、ただの魔力感知じゃなくて、人間の骨格の密度や血液の鉄分量まで計算しているよ。シオンの錬金術で一時的に身分証を偽造しても、あの機械の網の目を潜り抜けるのは、確率として一パーセント以下だね」


 ガストンが物陰から計測器を覗き込み、冷や汗を拭いながら数字を報告した。

 ギルはフードの隙間から検問所の様子を睨みつけ、漆黒の長鍼を握る右手にじわりと黒い気を溜め始める。


「正面突破しかないだろう。私が黒鍼の衝撃波でスキャナーの回路を一時的に焼き切る。その隙にお嬢さんたちが門番を制圧すれば、数分間は通路を開放できるはずだ」


「ダメよ、ギル。そんな派手な真似をしたら、中央病院の本陣にすぐに警報が伝わって、最高議長の元にたどり着く前に街全体の魔導防壁が閉じられてしまうわ。ここは、私の錬金術と、リナの身体能力を組み合わせた隠密戦術でいくべきよ」


 シオンが魔導書を静かに開き、そのページから無色透明な微粒子を空中へと解き放った。

 それは、光の屈折率を一時的に歪め、スキャナーのレンズを誤魔化すための「幻朧の錬金砂」であった。


「リナ、私の砂がスキャナーの視界を狂わせる時間は、正確に二十秒。その間に、あの検問所の裏側にある制御レバーを操作して、手動のパスラインを開放してちょうだい」


「任せて、シオン! 先生、みんな、ここで待っていてね。電光石火で行ってくるから!」


 リナは短槍を完全に体の一部として同調させると、黄金の気を極限まですり足の歩法へと集中させた。

 シオンの錬金砂が天井のスキャナーの周囲を包み込み、機械の感知ランプが一瞬だけ黄色へと変わったその瞬間、リナの肉体は一本の透明な矢と化して地を奔った。

 衣服の擦れる音さえ残さない、完璧な隠密の突撃。

 彼女は門番たちの視界の死角を正確にすり抜け、影のように検問所の管制室の裏手へと滑り込んでいった。


 しかし、想定外の事態が起きた。

 管制室の入り口には、交代要員と思われる一人の若い兵士が、銃を抱えたまま、激しい頭痛に耐えるように壁に頭を打ち付けていたのだ。

 彼の呼吸は不自然に細く、目は真っ赤に充血し、過酷な監視任務による極限の疲労が、彼の肉体を限界まで追い詰めているのは一目瞭然であった。

 彼が驚いて目を見開き、リナの姿を捉えて大声を上げようとしたその瞬間、彼の背後から風のように現れた白銀の影が、その口を優しく塞いだ。

 枢であった。


「おやおや、リナさん。素晴らしい突撃でしたが、この若き兵士さんの悲鳴を見落としてはいけませんよ。地上のエリートであっても、二十四時間の監視任務と最新の精神魔法による強制労働のせいで、彼の脳の経絡は完全に爆発寸前です」


「せ、先生!? いつから私の後ろに……!」


 リナが驚愕する中、枢は若い兵士の身体を優しく抱きとめ、彼の衣服の襟元を緩めた。

 兵士は恐怖と、頭を割るような激痛のせいで、言葉を発することさえできずに白目を剥きかけていた。

急性の眼精疲労からくる、重度の緊張型頭痛と脳圧の亢進。

枢は左手で兵士を支えたまま、右手の指先から、ひときわ細くしなやかな純銀の鍼を一本、抜き放った。


「足の少陽胆経の、風池ふうちを穿ちます。首の後ろから頭部へと向かう、すべての邪熱と血液の滞りを、この一刺しで完璧にアース(排熱)しましょう」


 枢の銀鍼が、兵士の後頭部、髪の生え際の大きなくぼみにある経穴、風池へと、一瞬の迷いもなく深く刺入された。

白銀の気が鍼を通じて脳底の血管へと直接流れ込み、カチカチに硬直していた首の筋肉が、まるで魔法が解けたかのようにふわりと柔らかさを取り戻していく。

それだけでなく、枢は兵士の親指と人差し指を優しく開き、その手の甲の経穴へと、もう一本の鍼を素早く滑らせた。


「続けて、同じく胆経を支える手陽明大腸経の合谷ごうこくを刺激します。頭部のありとあらゆる痛みを鎮め、目の奥の充血を瞬時に解消させる万能の特効穴です。静かに、目を開けてごらんなさい」


 二本の鍼が完璧な連携をもって施された次の瞬間、若い兵士の目は驚くほどクリアに開き、真っ赤だった白目の充血が、みるみるうちに健康的な白色へと戻っていった。

頭を締め付けていた地獄のような激痛が一瞬にして霧散し、彼の脳内には、何年ぶりか分からないほどの清々しい爽快感が広がっていた。

兵士は枢の白銀の瞳を見つめながら、その圧倒的な治療の心地よさに、思わず涙を零した。


「あ……、頭が、割れそうだったのに……、目が、すごくよく見える。痛みが、どこにもない……。あなたは、神様か何かですか……」


「私はただの往診医ですよ、兵士さん。あなたのその頭痛は、地上の過酷なシステムがあなたに強いた『拒絶反応』です。これより私たちは、そのシステムの一番大きな病根を治療しに向かいます。少しの間、ここで良い夢を見て休んでいてくださいね」


 枢の優しい声と共に、兵士は完全に緊張から解放され、ベンチの上へと倒れ込むようにして、深く、穏やかな眠りへと落ちていった。

 その隙にリナが管制室の制御レバーを力強く引き下げると、白銀の巨大な防壁が、重々しい音を立てて静かに上方へとせり上がっていった。


「よし、検問所のロック解除完了! ギル、シオン、ガストン、今のうちに走って!」


 リナの合図を受け、物陰から飛び出した三人が、開かれた門を潜り抜けて特別区の内側へと滑り込む。

 他の門番たちが防壁の異常に気づいて振り返った時には、すでに枢とリナもまた、影のように壁の向こうの闇へと姿を消した後であった。

地上の厳重な科学の目を、白銀の医術と仲間たちの絆で完璧に裏をかいた完全なる突破。

中央病院の最深部、最高議長が待つ特別区へと向かう彼らの足音は、もはや誰にも止めることはできない。


 つづく。


 5月18日(月)12:00、中央病院の門番。

 聖鍼師·枢。門番の頭痛を癒やし、リナの隠密行動で検問所を完全突破する。

 18時、月曜夕方の更新は、第442話「特別区の罠、高級病棟に潜む影とシオンの錬金調剤」へと突入します。

 第441話「中央病院の門番、魔導検問所の突破とリナの隠密行動」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


 最新鋭の生体魔導スキャナーと重武装の門番が立ち塞がる、地上世界で最も強固な結界の門。

 普通であれば正面からの大激突が避けられない絶体絶命のシチュエーションでしたが、シオンさんの機転の利いた錬金砂と、リナさんの神速の隠密の歩法が見事に噛み合い、一人の警報も鳴らされることなく防壁を突破する展開は、まさにチームとしての素晴らしい連携の勝利でしたね。


 そして何より、過酷な監視任務と地上のストレスシステムによって、脳圧が上がり頭痛に苦しんでいた若い門番の兵士さんを、敵味方関係なくその場で優しく治療してあげた枢先生の往診医としての姿には、深い感動を覚えました。


 そんな若い兵士さんの急性頭痛と眼精疲労を劇的に緩和するため、枢先生が繰り出した見事な二本の一刺し。

 今回は、東洋医学において頭部と目、そして自律神経の緊張を司る極めて実践的な二つの経穴ツボの流れを、自然な形で解説させていただきますね。


 まず、後頭部の髪の生え際にある風池ふうちを穿つことで、長時間の画面監視によって首の付け根に溜まりきっていた悪質な熱と気の滞りを一気に引き下げ、脳への正常な血流を呼び戻して頭を割るような緊張型頭痛を瞬時に解消しました。

 さらに続けて、手の甲にある合谷ごうこくを刺激し、全身の気の巡りを劇的に活性化させることで、目の奥に溜まっていた充血と精神的なパニック状態を同時にアース(排熱)し、まるで五月の爽やかな風が脳内を吹き抜けるような、最高の安らぎを兵士さんに与えました。

 ただ敵を排除するのではなく、彼らが抱える現代病とも言える痛みを癒やし、眠らせることで道を切り開く姿は、まさに東洋医学のプロとしての絶対的な説得力に満ちていましたね。


見事に第一の門を突破し、ついに特権階級だけが立ち入ることを許された最高級病棟「特別区」へと足を踏み入れた枢先生たち。しかし、そこには中央病院の上層部が仕掛けた、さらに巧妙な「医療の罠」が待ち受けていました。


 次回の第442話は、本日【18:00】に定期更新予定です。

 お仕事や日常のひとときが一段落する夕暮れ時、シオンさんの錬金調剤の腕がどのように炸裂し、枢先生の銀鍼がどのように光るのか。

 さらにスケールアップしていく「聖鍼師・枢」の物語を、これからもどうぞお楽しみに!

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