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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

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第430話:銀鍼対魔導兵器、審問官ゼノスの冷徹と枢の神速穿刺

アムネシアの白い砂浜は、聖府軍が放つ魔導兵器の冷徹なプレッシャーによって、一瞬にして戦場へと変貌しました。

異端審問官ゼノスが背負う「裁きの天秤」から放たれるのは、空間そのものを圧殺する絶対的な重力波。

これに対し、枢先生は左手に一本の銀鍼を携え、白銀の気を刃のように研ぎ澄ませて立ち向かいます。


「おやおや、ゼノス審問官。そんなに重いものを背負っていては、腰を痛めてしまいますよ。あなたの正義がどれほど強固なものであれ、私にはそれが、肥大化した自己愛という名の腫瘍に見えて仕方がないのです。リナさん、ガストン、下がっていてください。ここから先は、一瞬の脈拍の乱れが命取りになる、超急性期の執刀時間ですから」


12時、昼の特別更新。銀鍼対魔導兵器、審問官ゼノスの冷徹と枢の神速穿刺。

法の檻を打ち破る、聖鍼師の神速の業が今、炸裂します。

 正午の太陽が真上から照らすアムネシアの砂浜は、白銀艦隊の影に遮られ、不気味な明暗のコントラストを描き出していた。

 異端審問官ゼノスの背後で展開した魔導兵器「裁きの天秤」は、金属音を立ててその両翼を広げ、周囲の砂粒を次々と不自然に陥没させていく。

 超高密度の重力障壁が、枢の足元を狙って容赦なく押し寄せていた。

 一歩動くだけで両脚の骨が圧砕されかねない緊迫感の中、枢は左手の指先に挟んだ一本の銀鍼を、静かに正眼へと構えた。


「貴公の執刀など、我が秩序の前には無力だ。すべての存在は数式であり、法によって管理されねばならん。数式から逸脱した奇跡を、我らは異端と呼ぶ」


 ゼノスが低く呟いた瞬間、裁きの天秤の右皿から、漆黒の重力弾が音もなく射出された。

 空間を歪めながら直進してくるその弾頭に対し、枢は避けるどころか、真っ直ぐに踏み込んだ。

 再生した右腕が風を切り、左手の銀鍼が、肉眼では捉えきれない速度で空中を数度、鋭く穿った。


 キィィィィィンッ!


 大気を引き裂くような高音が響き渡る。

 枢が放った白銀の気が、ピンポイントで重力弾の「歪みの核」を貫き、そのエネルギーを霧散させたのだ。

 これまでの力任せの救済とは違う、相手の技の経絡を正確に見極め、その最小の急所を突いて無力化する、これぞ聖鍼師の戦闘医術であった。


「おやおや、審問官。あなたの放つ力は一見完璧に見えますが、その根底にある法術の循環には、ひどい不整脈が起きていますよ。規則に縛られすぎるあまり、急激な気の変化に対応できていない。それでは、名医の診察は誤魔化せません」


「減口を。異端の言葉に耳を貸す必要はない」


 ゼノスの表情に初めて微かな苛立ちが走り、今度は天秤の両翼から、十数条の重力レーザーが網の目のように放たれた。

 逃げ場のない全方位からの面制圧。

 だが、その絶体絶命の瞬間に、枢の背後から眩い黄金の閃光が飛び出した。


「枢の邪魔はさせないって言ったでしょう!」


 リナが黄金の気を両拳に纏い、砂浜を蹴って跳躍した。

 彼女が放った気功の波は、枢の手前で巨大な盾となり、降り注ぐ重力レーザーを真っ向から受け止めて爆発させる。

 激しい砂煙が舞い上がる中、シオンの鋭い声が響いた。


「ガストン、敵艦隊の連動障壁の波長を読み取りなさい! 審問官の兵器は、上空の旗艦からエネルギーを直接受信しているわ。その供給源の経絡を叩けば、あの天秤はただのガラクタになる!」


「了解! 計測器の周波数を聖府軍の軍用ラインに合わせるよ。……見えた! 先生、上空三百メートル、三番艦からの供給経路が、ゼノスの項首にある受信核に繋がっている!」


 ガストンが叫びながら、光の軌跡を指し示す。

 煙の向こう側から、ゼノスが再び漆黒の鎖を蛇のように繰り出し、リナの防壁を破ろうと迫っていた。


「そこですか。ガストン、見事な問診です」


 枢の瞳が白銀に燃え上がった。

 彼はリナの肩を優しく引き戻すと、地を這うような低空の姿勢から、弾かれたように突進した。

 ゼノスが視線で追うよりも早く、枢の姿が砂浜から消える。

 それは、自身の経絡に白銀の気を爆発的に巡らせることで生み出される、一歩で数十メートルを駆ける神速の歩法。


「速い……!」


 ゼノスが天秤を防御陣形へと切り替えようとしたが、すでに遅かった。

 枢はゼノスの懐へと滑り込み、左手の銀鍼を、彼の項首にある細微な魔導受信核へと正確に突き立てた。


「神速穿刺。……これにて、エネルギーの供給を一時的に遮断します」


 パチチチッ! と激しい紫の火花が散り、ゼノスの背負う巨大な天秤から一瞬にして光が消え失せた。

 重量バランスを失った魔導兵器が、砂浜へと激しく激突し、ゼノスの巨体が大きくよろめく。


「バカな、我らの最新鋭魔導兵器の術式を、たった一本の鍼で停止させただと……」


 ゼノスが驚愕の声を上げる中、枢は静かに距離を取り、往診鞄を手に取り直した。

 しかし、上空の白銀艦隊は、地上の審問官の窮地を察し、その砲口を一斉にアムネシアの砂浜へと向け始めていた。

 一人の審問官を止めても、世界の軍隊そのものが相手では、本当の死闘はここから始まることを意味していた。


 つづく。


 5月16日(土)12:00、銀鍼対魔導兵器。

 聖鍼師・枢。神速の一撃で審問官を圧倒する。

 15時、土曜の特別更新は、第431話「一斉砲撃の嵐、白銀艦隊の猛威とシオンの大錬金術」へと突入します。

第430話「銀鍼対魔導兵器、審問官ゼノスの冷徹と枢の神速穿刺」を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


 異端審問官ゼノスの圧倒的な重力攻撃に対し、枢先生が見せたのは、力でねじ伏せるのではなく、相手のエネルギーの経絡を突くという、まさに聖鍼師ならではの洗練された戦闘医術でした。

 リナさんの命懸けの防御、ガストンの天才的な解析、そしてシオンさんの的確な指示。

 チームが一丸となって、世界の法を執行する死神の供給源を断ち切った瞬間は、これまでの旅の集大成とも言える熱い展開となりました。


 しかし、聖府軍の恐ろしさはその組織力と圧倒的な物量にあります。

 個人の技術を遥かに凌駕する艦隊の一斉砲撃が、今まさに一行に降り注ごうとしています。

 この大ピンチに、次は魔導の天才・シオンさんがどのような秘策を見せるのでしょうか。


次回の第431話は、本日【15:00】に特別更新予定です。

 空を埋め尽くす砲撃の嵐の中、アムネシアの砂浜で繰り広げられる次なる奇跡を、ぜひ見届けてください。


 皆様の熱い応援が、枢先生たちの次なる一歩の支えとなります。

 15時、硝煙煙る砂浜にて、再び皆様とお会いできることを楽しみにしております。

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