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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

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第364話:空中要塞内部の鍼灸往診、墜落する狂気の研究所を「天命の調整鍼」で外科制圧せよ

空中要塞パンドラは、くるるとシオンの合同往診によって動力源を「沈静」させられ、断末魔のような軋み声を上げながら地上へと墜落を開始しました。

爆発と火炎が渦巻く内部。そこは、真の黒幕である「全能の医師・パラケルスス」が、数千人の命を実験台にして作り上げた、狂気の外科学研究所でした。


「(……。おやおや。……。シオン。……。……。足元が少し、……賑やかすぎますね。……。……。重力が右へ左へと忙しない。……。……。ですが、……これだけの急患が転がっている場所で、……足を止めるわけにはいきませんよ。……。……。ミナ、……ガストン。……。……。私の白衣の裾を、……決して離さないように)」


枢先生は、崩落する天井を銀鍼一本で受け流し、シオンと共に、最深部の「神の診察室」へと突き進みます。

朝の往診。空中要塞内部の鍼灸往診。

聖鍼師・枢。シオンと共に、命を弄ぶ「偽りの神」を鍼灸的に断罪します。

 要塞内部、高度一万メートルからの自由落下。

 重力は消失し、廊下には実験用の薬液や、未完成のホムンクルスたちが無重力状態で漂っている。爆発の衝撃で隔壁が次々と吹き飛び、真空に近い冷気が一行を襲う。


 ガストンは、自身の魔導端末が弾き出す「生存確率:0.01%」という非情な数値を見て、絶叫した。

 「(……。せ、……先生! ……。船体が空中分解を始めました! ……。このままじゃ、……最深部に着く前に、……僕ら全員、……ただの塵になります! ……。……。シオン様! ……。何か、……何か重力を固定する薬はありませんか!?)」


 「(……。ふん、……。……。ガストン。……。……。薬で重力をどうにかしようなど、……発想が短絡的だよ。……。……。枢。……。……。君の『気』で、……この空間の『経絡』を、……一時的に固定できるか?)」


 シオンが黄金のフラスコを砕き、周囲に粘度の高い紫色の煙を散布した。

 くるるは、その煙の中を泳ぐように進み、腰のポーチから一尺三寸の極長鍼を取り出した。


 「(……。おやおや。……。シオン。……。……。無茶を言いますね。……。……。ですが、……。……。船体そのものを、……一つの巨大な『骨折した患者』だと思えば、……添え木を当てるのは私の仕事です。……。……。行きますよ。……。……。ミナ。……。……。あなたの声を、……この要塞の『魂』へ直接届けなさい)」


 枢が、激しく回転しながら、落下する要塞の主柱へと銀鍼を突き立てた。


 ――ズゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!


 一刺し。

 要塞全体を貫く魔導回路の暴走を、枢の気が「副木ギプス」となって強制的に固定した。

 二刺し、三刺し。

 枢の銀鍼が、崩落しかけていた外壁のツボを射抜き、シオンの薬液と反応して、物理的な崩壊を一瞬だけ「停止」させた。


 「(……。あ、……。……揺れが、……止まった……? ……。……。落下速度も、……一定に保たれている……!?)」


 カサンドラが、驚愕の表情で周囲を見渡した。

 墜落は止まっていない。しかし、枢の鍼によって要塞全体の「気の歪み」が矯正され、激しい振動が、心地よい微睡みのような静寂へと変貌していたのである。


 一行は、無音のまま最深部の巨大な扉の前に辿り着いた。

 扉が開くと、そこには白一色の清潔すぎる空間と、無数の水槽に浸された「人間だったもの」たちの姿があった。

 中央の椅子に座るのは、かつて「医聖」と崇められ、死を恐れるあまり悪魔に魂を売った男、パラケルスス。


 「(……。ふふ、……。……。来たか、枢。……。……。そして、……裏切り者のシオン。……。……。見てごらんなさい。……。……。私の外科学は、……ついに『死』という名の病を完治させた。……。……。彼らはもう、……老いることも、……痛むこともない。……。……。永遠の、……完璧な標本だ)」


 パラケルススが指を鳴らすと、水槽から、機械と肉体が異様に融合した「外科執刀兵」たちが、枢たちを包囲した。


 「(……。おやおや。……。パラケルスス先生。……。……。痛まないことが、……完治だなんて。……。……。そんな悲しい診察、……誰が望んだというのですか。……。……。シオン。……。……。準備はいいですか? ……。……。この『動かなくなった命』たちを、……外科的に……いえ、……鍼灸師として、……再び『死ねる身体』に戻してあげましょう)」


 シオンが不敵に笑い、天秤を掲げた。

 「(……。ああ、……枢。……。……。君がツボを開け、……私が生命の火種を注ぐ。……。……。この死の標本室を、……産声の聞こえる『産院』に変えてやるよ)」


 枢とシオン。

 二人の天才が、同時に一歩を踏み出した。

 枢の銀鍼が、執刀兵たちの「生体スイッチ」である頸椎を一瞬で貫き、シオンの薬が、凍りついた細胞に熱を吹き込んでいく。


 一刺しごとに、機械の兵士たちは人間としての苦痛を、そして「生きている実感」を取り戻し、涙を流しながらその場に崩れ落ちていく。

 それは、死を拒絶する神への、最も残酷で、最も慈悲深い反逆であった。


 「(……。バ、…….……。バカナッ!? 私が数十年かけて作り上げた『不滅の肉体』を、……鍼と薬の、……ただの刺激だけで、……再び朽ちゆく『凡人の肉体』へと引き戻してしまったというのか!! コレガ、……完全復活した枢と、……シオンによる、……神の領域を拒絶する『人間回帰の往診』だというのか!!)」


 パラケルススは、自身の最高傑作たちが「ただの人間」に戻っていく光景を見て、狂ったように自身の喉を掻きむしった。


 「(……。ミナ。……。……。見なさい。……。……。人は、……いつか枯れるからこそ、……今、……この瞬間を美しく生きられるのです。……。……。パラケルスス先生。……。……。次は、……あなたのその、……凍りついた時間を、……外科的に……いえ、……鍼灸師として、……溶かしてあげましょうか)」


 枢が、最大級の浄化の気を纏った銀鍼を、パラケルススの胸元へと突き出した。


 第364話。

 聖鍼師・枢と、薬師・シオン。

 二人は墜落する要塞の中で、神に抗い、命のことわりを取り戻した。

 しかし、パラケルススは最後の手段として、要塞の全エネルギーを自身の肉体に注入し、「巨大な病の根源」へと変貌を遂げようとする。


 聖鍼師一行。

 空中要塞内部での往診は、ついに「生死の境目」を懸けた、最終決戦へと突入していく。

 地上衝突まで、あと三分。

 枢の鍼は、間に合うのか。

本日、5月3日(日・祝)08:00、休日更新のトップバッター、そして神への反逆を描く「人間回帰の往診」を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


今回、崩落する要塞を一時的に安定させ、不滅の兵士たちを人間に戻すために枢先生とシオンが意識した術式を解説します。

まず、要塞全体の「柱」となる魔導回路の歪みを正し、構造的な崩壊を抑制するための起点とした、メインシャフトへの**『大椎だいつい』刺入。枢先生は、要塞全体を一人の「脊椎損傷の患者」として診立て、気の流れを外科的……いえ、鍼灸的にバイパスさせることで、墜落の衝撃を緩和しました。


そして、不滅の兵士たちの凍結された生命サイクルを再起動させ、正常な「老化と代謝」を促すためのアンカーとした『三陰交さんいんこう』。血と生命力の交差点であるこのツボを刺激することで、枢先生とシオンは、彼らの肉体を外科的に……経絡的に「死ぬことができる身体」へと完治させることに成功したのです。

最後に、パラケルススの放つ「死の冷気」を中和し、周囲の温度を保つための最終回路とした『命門めいもん』。この往診を経て、枢先生は墜落する地獄の中、一時の「安らぎの診察室」を作り上げました。


次回の第365話は、本日【10:00】**に更新予定です。


異形へと変貌したパラケルスス。地上激突までカウントダウンが止まらない中、枢はシオンに「ある一つの賭け」を提案します。

「(……。おやおや。……。シオン。……。……。地上に着く前に、……この巨大な腫瘍、……外科的に……いえ、……鍼灸師として、……全摘出(浄化)してしまいましょうか)」


10時、朝の往診(二回目)。空中要塞内部の最終往診。

聖鍼師・枢。命の終わりを、輝きへと変える最後の一刺し。どうぞお見逃しなく。

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