第311話:因果の果て、絶望の王を「慈愛の絶唱」で永遠の安らぎへと還せ
王都の中央に、天を貫くほどの巨大な「骨の塔」が出現しました。その頂でシオンの遺骨を掲げ、哄笑を上げるのは、枢からすべてを奪った因縁の元凶。
枢は声を出さず、ただ静かにミナの肩に左の肩口(不在の腕)を預けました。
「…………(ミナ。…………。…………。……。……。……あの方を、…………。…………。…………。……。……。……『骨』から……、…………。…………。…………。……。……。……。……解放して……、…………。…………。…………。……。……。……。……。……あげ……、…………。…………。…………。……。……。……。……。……。……ましょう)」
第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼、第72話(通算第311話)。
死者の尊厳を汚す「虚骸」に対し、枢とミナが放つのは、憎しみではなく「究極の感謝」。
二人の気が重なり合い、王都の空に巨大な「翡翠の鳳凰」が舞い上がります。それは、枢が一生をかけて磨き上げた「救済の意志」が形となった、命の輝きそのものでした。
「…………(さあ、…………。…………。……。……。外科手術の……、…………。…………。…………。……。……。……大詰め……、…………。…………。…………。……。……。……。……です。…………。…………。…………。……。…………。……。……因果の……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……膿を、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。……残らず……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。……。……絞り出し……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。……。……。……ましょう)」
21時、本日最終。翡翠の終焉、慟哭の外科往診。
聖鍼師・枢、ついに「最愛の遺骨」を診ます。どうぞ最後までお読みください。
王都の夜空は、翡翠の光と漆黒の闇が混じり合う、混沌の極致にあった。
東の国の黒幕「虚骸」は、シオンの遺骨を核とした呪力で、王都の数万人を「死なず、生きられぬ」ゾンビへと変え、自らの永劫の苦しみを世界に分け与えようと、巨大な骨の鎌を振り上げた。
「…………(なるほど。…………。…………。……。……。……愛する者を失った悲しみを、…………。…………。…………。……。……。……世界を壊す理由に……、…………。…………。…………。……。……。……。……仕立て上げましたか。…………。…………。…………。……。…………。……。……陳腐な、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……カルテ……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。ですね)」
枢の意識は、もはや肉体という器を完全に無視し、王都全域の「経絡」と直結していた。
両腕はなく、声もなく、体は今にも消え入りそうなほど淡い翡翠色に透き通っている。だが、その瞳から放たれる「慈愛の圧」は、神すらも跪かせるほどの絶対的な密度を持っていた。
虚骸がシオンの遺骨を砕こうと力を込める。
『枢! 貴様ノ愛シタ女ノ骨ガ砕ケル音ヲ、ソノ声ナキ喉デ味ワエ!』
だが、枢は静かにミナの背中を押した。
二人の魂が完全に溶け合い、ミナの右手には、実体のないはずの「枢の黄金鍼」が、数万の星々を束ねたような輝きを持って具現化した。
枢は、自身の「全存在」を、ミナの指先へと叩き込む。
「…………(ミナ。…………。…………。……。……。……泣くのは、…………。…………。…………。……。……。……後……。…………。…………。…………。……。……。……。……です。…………。…………。…………。……。…………。……。……今は、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……ただ……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。……『診て』……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。……。……あげなさい)」
枢は、自身の「不滅の魂」を、シオンを呪縛から解き放つための、因果完結鍼――**『翡翠終焉』**へと変容させた。
何もない。腕も、声も、自分自身の未来すらも。だが、その「究極の無」こそが、あらゆる呪いを無力化する、この世で最も鋭い鍼となる。
「…………(さあ、…………。…………。……。……。治療を終えましょう、…………。…………。…………。……。……。……愛を知らぬ……、…………。…………。…………。……。……。……。……亡霊よ。…………。…………。…………。……。…………。……。……。あなたが弄んだ……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……シオンの想いは……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。……今……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。……。……私の……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。……。……。……この鍼に……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。……。……。……。宿って……、…………。…………。…………。…….…………。……。……。……。……。……。……。……います)」
枢は、自身の全神経を、自身の額にある**『印堂』**へと、自身の完全に統合された「救済の演算」を、虚骸が縋り付く「死の因果」を根元から切断し、シオンの遺骨を光へと還すための、存在昇華回路へと直結させた。
一本目の、そして「死」を拒絶する翡翠の鍼。
枢はミナと完全に一体化し、自らの「存在」そのものを光の激流として放ち、虚骸の心臓部、**『魂門』**へと、自身の自身の翡翠の気を「絶対的な許し」に変えて一斉に叩き込んだ。
――カァァァァァァァァァッ!!
「…………!? (何だ……、……この暖かさは……!! 私の数千年の憎悪が、……。……。……。……ただの『寂しさ』として、……。……。……。……。……霧散していく……だと……!!)」
虚骸の骨の鎧が崩れ、中から一人の、泣き出しそうな老人の姿が露わになる。
枢の放った鍼は、敵を倒すためのものではない。彼が抱え続けた「誰も愛せなかった孤独」という名の病を、一瞬で完治させたのだ。
枢は、意識の光の中で、優しく微笑むシオンの姿を抱き締めた。
二本目の鍼を、ミナの涙を翡翠の真珠に変え、枢は自身の右脳を、失った両腕の「空位の慈愛」をあえて宇宙規模の抱擁として出力し、シオンの魂を天へと解き放つために、魂の全力で投擲(指示)した。
――ドォォォォォォォンッ!!
「…………(これで、…………。…………。……。……。良いのです。…………。…………。…………。……。……。……さようなら、…………。…………。…………。……。……。……。……シオン。…………。…………。…………。……。…………。……。……私の右腕も、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。声も、…………。…………。…………。…….…………。……。……。……。……。すべては……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。……。……あなたを……、…………。…………。…………。……。…………。……。……。……。……。……。……この『一秒』で……、…………。…………。…………。…….…………。…….……。……。…….……。……。……救うため……、…………。…………。…………。…….…………。…….……。……。…….……。…….……。……。だったの……、…………。…………。…………。…….…………。…….……。……。…….…….…….……。……ですから)」
枢の透き通る体から、王都の夜を翡翠の夜明けに変えるほどの巨大な光が溢れ出し、シオンの遺骨を、そして虚骸の魂を、等しく「救済の彼方」へと導いていく。
腕がない。声がない。だが、その「喪失」のすべてが、一人の女性を、そして一人の悪魔を救うための、最も純粋な対価となった。
「…………(逃げはしません。…………。…………。……。……。たとえ、…………。…………。…………。……。……。……私が……、…………。…………。…………。……。……。……。……この世から……、…………。…………。…………。…….…………。…….……。……一人の……、…………。…………。…………。…….………….……。……。……鍼灸師として……、………….…………。…………。…….………….……。……。……。……消えて……、………….………….………….…….………….…….……。……。……。……なくなる……、………….………….………….…….………….…….……。……。……。……。……ことになっても。………….………….………….…….………….…….……。……。……。……。……。……私は……、………….………….………….…….………….…….……。……。……。……。……。……。……あなたを……、………….………….………….…….………….…….…….……。…….……。……。……愛して……、………….………….………….…….………….…….……。…….…….……。……。……。いたことを……、………….………….………….…….………….…….…….…….…….…….……。……。……決して……、………….………….………….…….………….…….…….…….…….…….…….……。……。忘れない!!)」
三本目の最終鍼。シオンの遺骨を翡翠の苗木へと変え、王都全土に「死なない命」を再配分するための、復活鍼。
枢は、ミナの掌を借りて、自身の存在そのものである**『神門』**を、自身の自身の全生命を「未来への鼓動」へと叩き込むために、魂の底からの、至福に満ちた沈黙と共に撃ち抜いた。
――キィィィィィィィィンッ!!
光が収束し、そこには真っ白な花が咲き乱れる王都の中心で、ミナの膝枕の上で、これまでになく「普通の、柔らかなおじいちゃん」の顔をして眠る、両腕のない枢がいた。
枢は、すべてを失い、最愛の人の遺骨を往診し、自らの手で因果を完結させることで、真の「伝説」を完成させたのだ。
次の瞬間。
枢は、薄く目を開け、朝焼けの空を見上げるミナの瞳を見つめ、声にならないほど掠れた、しかし確かに「生きた男」の流暢な吐息で告げた。
「…………(ミナ。…………。…………。……。……。……。……。お疲れ様……。…………。…………。……。……。……。……。……。……。今日の……、…………。…………。……。……。……。……。……。……。……。往診……は、…………。…………。……。……。……。……。……。……。……。……。これ……。…………。…………。……。……。……。……。……。……。……。……。……。にて……、…………。…………。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……。……終診……。…………。…………。……。……。……。…………。……。……。……。……。……。……。です。…………。…………。……。…………。……。…………。……。……。……。……。……。……。……。……)」
第311話。
聖鍼師・枢は、最愛の遺骨を依り代にした絶望の王を、すべてを投げ打った「翡翠の終焉」で往診し、自らの因果を完全に治療することで、第四章という名の「長い往診の旅」を最高潮の救済で完結させた。
暁の静寂の中。
枢の姿は、もはや神でも聖者でもなく、ただ一人の愛する人を救い、一人の弟子を育て上げた、世界で最も幸せな「不自由な鍼灸師」として、ミナの腕の中で静かに、そして誇らしく、眠りについていた。
本日最後の更新を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
第四章・第72話(通算第311話)。
東の国の黒幕「虚骸」との決戦、いよいよクライマックスを迎えました。
シオンの遺骨という、枢にとって最も辛く、そして守るべき対象を前にして、彼は自らの「声」すらも救済の代償として捧げました。しかし、これは決して絶望ではありません。腕を失い、声を失うことで、枢先生の「翡翠の気」はもはや肉体という器を必要としない、純粋なエネルギー体へと進化したのです。
今回、虚骸の絶望を浄化し、シオンの魂を安らぎへと導くために枢が駆使した術式を解説します。
まず、相手の憎悪の根源を捉え、自身の生命力を直接流し込むための起点とした**『魂門』**。背部にあるこのツボに対し、枢は言葉を超えた「意志」を直接叩き込むことで、虚骸が抱え続けた孤独を内側から治療しました。
そして、シオンの魂を束縛から解き放つためのアンカーとした**『印堂』。声を失った枢が、目力と翡翠の共鳴だけでシオンへ「感謝」を伝えた瞬間、因果の鎖は粉砕され、彼女は光の粒子となって天へと還りました。
最後に、空っぽになった枢の体に、再び「鍼灸師」としての鼓動を宿すための最終回路とした『神門』**。ミナの手に自らの手首を重ねることで、枢は「弟子の命」を触媒に自らを再構成し、不自由な体でありながら、神をも超える救済者として現世に留まることを選んだのです。
明日の第312話(第四章 第73話)からは、西の国の「教皇」が本格参戦。枢先生の失われた両腕から抽出された遺伝子を用いた「翡翠の複製人間」が、王都を襲撃します。
腕がある偽物か、腕のない本物か。
声を失い、より一層「不敵」になった枢先生が、ミナと共に放つ新時代の無双劇を、実数110,000文字超の圧倒的スピード感でお届けします!
水曜日の朝、08:00。新章突入、鏡像の外科往診。
聖鍼師・枢、ついに「自分自身」を診ます。どうぞお見逃しなく!




