凱旋の儀
王都の大広間。
重厚な大理石の床に、王家の紋章が刻まれ、天蓋付きの玉座が中央に構えられていた。
厳かなファンファーレとともに、戦勝報告の凱旋式が始まった。
玉座の上に座すは、セレンの伯父にして王国を統べる現王。
その前へと歩み出たのは――
銀の軍服に身を包んだ、総司令官・セレン・カリス・レオント。
その背筋は真っ直ぐに伸び、顔には一切の揺らぎがなかった。
「第三軍団長、並びに西方戦線 総司令官、セレン・カリス・レオント。
このたびの一連の戦役、殊に西方戦線における勝利において、汝の功績は比類なきものなり」
王の声が、堂内に朗々と響いた。
「敵国王子を降し、戦の終結を導いたこと、
三軍を束ね、一軍の損耗を最小に留めたこと、
王国軍の威信を高め、民を守ったこと――
これらすべてを、王国は深く誇りとする」
兵たち、貴族たち、そして文官たちが並ぶ中、
セレンは静かに片膝をつき、答えた。
「……陛下の命あればこそ。
この命、ただ国家のために」
王は立ち上がり、玉座の階段を下りた。
その手には、金で象られた勲章の台座がある。
「これは、王国軍最高位勲章『金翼十字章』――
もはや、誰も貴女の階級や年齢を疑う者はいまい」
王自らがセレンの胸元に勲章を授け、
銀の髪を撫でるようにその肩に手を置いた。
「遅すぎたかもしれぬが……お前は、王国の真の将である。
誇りに思うぞ、カリス」
セレンの目元がわずかに揺れる。
だがすぐにまた、静かに顔を上げて、王に向かって言葉を返した。
「……光栄の極み。伯父上」
その一言に、王の口元が、父のように優しく緩んだ。
やがて、第ニ軍団長リシュモン、第五軍団長イェルネスも前へ進み出て、
それぞれの勲功に応じた表彰が行われた。
そして、ゼイルとガロット。
二人はそれぞれ「第三軍師団長」として名を呼ばれ、
従軍勲章と「雷剣士」「盾の将」として王国名鑑にも記録される名誉称号を授与された。
ゼイルは肩をすくめながらも真面目な表情で拝礼し、
ガロットはやや照れた様子で頭を下げた。
その横に立つセレンの姿は、
ただの“氷の死神”ではない、国家の礎を背負う将のそれだった。
式の終わり、王は堂内を見渡し、ゆっくりと告げた。
「この戦の勝利は、王族や貴族の功ではない。
真に、戦に臨んだ将と兵たちの、血と知と誇りによる勝利である」
「我らは、この平和を決して無駄にはしない。
――今この時より、戦ではなく、人々の明日を築く日々が始まるのだ」
その言葉に、堂内に静かな拍手が広がった。
やがて扉が開き、陽光の差し込む中、
新たな国の礎として凱旋した将たちが、外へと歩みを進める。
その中央には、銀の将軍――セレンの姿があった。




