凱旋の道
王都の大通りに、陽光が差し込む。
冬の名残が風に残る日だったが、空気は確かに、柔らかくあたたかかった。
「来たぞ、王国軍だ!」
誰かが叫び、子どもたちが道の端に駆けていく。
窓辺に花を並べる商人の娘。手を振る老婆。
通りには、びっしりと市民たちが詰めかけていた。
その間を進んでくるのは――
凱旋した第三軍と、第二・第五軍の選抜部隊。
剣を収め、槍は立て、正装のまま整然と行進する兵たち。
だが、その顔には緊張ではなく、安堵と誇りがにじんでいた。
「ありがとう、兵隊さん!」
「生きて帰ってくれて、よかった!」
「おかえりなさい、みんな!」
花びらが舞う。
それは歓喜と、無事を喜ぶ祈りそのものだった。
列の中にいた若い兵士が、不意に帽子を脱いで立ち止まる。
母親と小さな妹が、通りの端で泣きながら手を振っていた。
「……ただいま、帰ったよ」
その声に周囲の兵たちも立ち止まり、
少し照れながらも、家族の姿を探して笑みを浮かべた。
やがて先頭に姿を現したのは、
三軍を率いた将たち――
セレン・カリス・レオント。
ゼイル。
ガロット。
第二軍団長リシュモン。
第五軍団長イェルネス。
白馬に乗ったセレンの姿に、どよめきが起きる。
その銀の髪と、静かな気品。
都市の彫像が動き出したかのような美しさと、遠い威厳。
だが――
一人の少女が、思いきって花束を持って駆け出した。
衛兵が止めかけたその瞬間、セレンは手をかざした。
「……通して」
少女は震える手で、白い小さな花束を差し出した。
「ありがとう……お姉ちゃん」
セレンは一瞬、何かを言いかけて言葉に詰まり――
小さく笑って、その花を受け取った。
「……うん。生きて、帰った」
少女の目が見開き、ぱっと笑顔が広がった。
セレンの背後では、ゼイルが口を歪めながらも柔らかい目をしていた。
「すごいな、あんた。人気者だぜ、セレン」
「……何か、言うのか?」
「いや。言わねぇよ。ただ、鼻が高いってだけだ」
ガロットは手綱を片手に、子どもたちに飴を配りながらつぶやいた。
「こりゃ、次に戦があったら志願兵殺到だな。……やれやれ、平和に育てばいいのにさ」
背後には、兵たちが花を受け取り、
手を握られ、泣き笑いする市民と言葉を交わしていた。
敵国の王子を屈服させた勝利。
それが血と火ではなく、帰還者の存在として残ったこと。
それこそが――
王都が今、もっとも誇る「勝利の証」だった。




